原因を探れ
次回投稿はお休みします。
次の投稿は1月13日になります。
「…すいません、もっと詳しくその話を聞かせてもらってもいいですか?。」
オウギが受け付け嬢に言う。今の話の中で龍王の怒りに触れたと言っていたがそれは間違いであることは知っている。寧ろミシュライオンはこの街のことを案じていた。ならば他に原因があることは明白である。
「…良いですけど…。…あのあなたたちは…」
食いついてきたオウギ達に受け付け嬢が訝しげに問いかける。旅をする冒険者にとって通り道の街が廃れていようと関係のない話である。普通依頼がないと分かればすぐに立ち去るものである。それが逆に踏み込んできたとなれば懐疑的になるのも無理はない。
「…これを見てください。」
オウギは説明を省く為最強の手札を切る。ノードルマン家の候翼の指輪。見る者が見れば分かるそれは抜群の効果を現す。
「…っ、こ、これは…‼︎。…しょ、少々お待ちください!。お、おほん!私がこのギルドのマスター、タリーニャです。」
指輪を見た受け付け嬢は居住まいを正し咳払いをする。そして改めて名乗る。なんと受け付け嬢だと思っていたのはこのギルドのマスターだったのだ。
「…えへへ、申し訳ありません。実は人件費の削減の為に他のみんなには休んでもらっているんです。…私1人で回せるぐらいには暇だったので。」
タリーニャが頭を掻きながら言う。
「…えーと…そのお前を伺っていいですか?。」
「あ、はい。僕の名前はオウギです。こっちがユーリでこっちはアネッサ。この子はカノンでそれとグーちゃんです。」
「…アネッサ?…あのアネッサさんってもしかして…」
「私は元イシュタル家の指輪の所持者だよ。前に来た時は変装してたから顔までは知らないよね。」
アネッサの名前に聞き覚えのあったタリーニャにアネッサが説明する。イシュタル家が起こした事件は庶民にはまだ知られていないが流石にギルドのマスターとなると知っている。
「…えぇー、どういう組み合わせか分かりませんけど…お願いします!。この街に起こっている何かを解決してください!。このままじゃ本当に街が終わってしまうんです。」
「街も3ヶ月前までなんとも無かったんです。それが少しずつ魚の量が減ってきて。初めは季節的なものかなと思っていました。けど…全然元に戻らなくて。このままじゃギルドの職員に払うお金も無くなっちゃいます。」
タリーニャが悲しそうに言う。
「…休んでいる人にも給料を払っているんですか?。」
「うん、…普通よりだいぶ少ないけどね。…休んでもらってるのはこっちの都合だもん。…払わないなんて出来ないよ。」
食卓は白米発言の理由はこれだった。職員に給料を回す為自らの生活を切り詰めていたのである。
「その3ヶ月前に何か変わったことは有りませんでしたか?。」
「…えぇーと、…特に何もなかったと思う。…雨が降って…虹がかかって………あ!虹が枯れた。」
オウギに尋ねられたタリーニャが記憶を辿っていく。そして頭の片隅に置いていた僅かな異変を思い出す。
「虹が枯れた?。」
「うん、この街では雨が降るといつも虹がかかるんです。その虹は1日消えないんですけど…あの日は虹がすぐに消えたんです。それからは雨が降っても虹がかからなくなって。」
「オウギ様、虹って。」
「うん、多分あれのことだね。」
龍王の名前を出すのはまずいのでぼかして伝え合う一行。
「ならその虹を…食ってる奴がいるってこと?。」
「…まだ断言は出来ません。一度湖に行ってみないと。」
「あ、じゃあ私が案内します。…ギルドは…閉めちゃっていいです。どうせ誰も来ないので。」
「…また、みんなで働ける日が来て欲しいです。」