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カラッサスの現状

 湖畔都市カラッサス。街の中心にある…というよりその湖を中心に造られたこの街はその湖から獲れる豊富かつ種類の多い魚介類で有名な街である。その街が3年に1度、特に活気付くタイミングがある。『恵龍大漁祭』恵みの龍王ミシュライオンと大漁に感謝して行われるその祭りは国中から人を集め貴族、大公家、果てや王族まで来訪することもある。そんな祭りを控えたカラッサスに到着したオウギ達。その感想は、


「…なんか微妙だね。人はいるけど戸惑ってる。外側だけで中身がない。」

 アネッサのこの一言である。オウギは祭りというのがどのようなものか知らないしユーリも規模の大きな祭りは知らない。なので今のカラッサスの違和感に気付くのはアネッサのみだった。街の至る所に『祭』と書かれた幟やミシュライオンを象った旗などが揺らめいているが明らかに街には熱がない。落胆する観光客と戸惑う住人、そして奔走する役人。それが今のカラッサスの全てだった。


「…取り敢えず冒険者ギルドに行ってみましょう。ミシュライオンから聞いた話の具体的な内容を知れるかもしれません。」


「…うん、…あのオウギさん、ミシュライオン様のことを呼び捨てにしちゃうんだね。…街中ではミシュライオン様のことは言わない方がいいよ。多分信じてもらえないから。」


「そうですね…はい、分かりました。」

 アネッサがオウギの発言に驚きつつ提案する。本来龍王と言葉を交わすことなど出来るはずもないことである。それを言っても信じてもらえないしミシュライオンを信奉しているこの街では怒りを買うかもしれないと思っての提案である。オウギはそれを受け入れそして一行はギルドを目指す。


「…オウギ様、お魚があまりいません…。」


『キュキュ…』

 歩く道中商店などを見ていたユーリとカノンが悲しそうな声をあげる。エリザベスに魚介類がおいしいと言われて大変楽しみにしていたユーリとカノン。ミシュライオンから聞いてはいたものの実際にスカスカの商品棚を見ると物悲しくなる。それは他の観光客も同様でそれ故街に悲壮感が溢れていた。


「…本当に漁業が有名な街なんですか?。」


「うん、半年前に来た時は街中の店の店頭に魚が並んでたよ。それに色んな店が露店を出したりしてさ。平時でもそれなりに賑わいがあったんだ。」

 元イシュタル家の指輪の所持者であるアネッサは以前この街に来たことがある。その時受けた印象と現状。その違いには驚きを隠せない。


「ここがギルドですか。…ここもなんとなく…」

 ギルドについたオウギ達だがギルドの中にも活気はなかった。


「…あの、すいません。依頼を受けたいんですけど!。」

 オウギが受け付け嬢に声をかける。


「…え?…あぁ、旅の方ですね。申し訳ありませんが現在カラッサスではあまりお金になる依頼がありません。出来れば他の街で受けられることをお勧めします。」

 オウギに声をかけられた受け付け嬢は初め自分に話しかけられていると分からずに呆けた声を出す。そして依頼を貼りつけてあるボードを指差しながら自嘲するように言う。その指さされた先には確かに依頼の紙が数枚貼ってあるだけだった。


「…びっくりされたでしょ。本当はカラッサスの街では湖での漁や水棲の魔物の討伐などが主だったんですけど…それが殆どなくなってしまったんです。…なんで魚さんどこかへ行っちゃったんだろ。…前まで一匹百ギルもしなかったのに、今は七百ギルを超えました。私の食卓は…白ご飯だけです。」

 受け付け嬢は悲壮感たっぷり呟く。カラッサスの湖での問題は生活する住人へも大きく影響を与えていた。


「…龍王様のお怒りに触れたのかもしれませんね。」

 そう悲しげに言う受け付け嬢を見たオウギ達は事態が思ったより深刻であることを知るのだった。

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