言いたいことをちゃんと言う
年内の更新はこれで最後です。良い年末をお過ごし下さい。
「…オウギさん、私が先行してカラッサスの様子を見に行こうか?。影のショートワープを使えばすぐに見てこれるけど。」
ミシュライオンが去った後アネッサがオウギに尋ねる。龍王直々の依頼とあってアネッサは急いだほうが良いと考えていた。
「…そこまで急を要する感じではなかったので普通に行きましょう。歩いても後1日ぐらいで着くはずです。」
アネッサの提案を断るオウギ。それはアネッサの身を案じてのことでもあった。ショートワープは魔力を大きく消耗する。もしカラッサスで何かが起こっていて到着したばかりのアネッサが魔力が減った状態で対敵したら危険が及ぶ。そのリスクを嫌って皆でカラッサスまで行くことを決定する。
「分かったよ。…それにしても分かっていたけど…大物だねぇ。オウギさんだけじゃなくてユーリちゃんもカノンちゃんもグーちゃんも。」
オウギの決定に頷くアネッサ。そして先ほどのミシュライオンとのやりとりでの一同の様子について感想を言う。オウギは当然としてユーリは龍王の恐ろしさも偉大さも知らないし、カノンは龍王の中でも暴君と呼ばれるガルガンディアの娘で並外れた図太さを持っているし、グーちゃんはグローリースライムと言うスライムの王となることが出来る魔物なので怯まない。そしてその異常さに気付いていないことにアネッサは驚いていた。
「…わ、私なんてそんな…。あの時もアネッサさんが手を握ってくれるまで危ない状況だって分かりませんでした…。」
「それは経験だからね。ぼちぼちやっていけば分かるようになるよ。それにいざとなればグーちゃんと合体したら攻撃を透かせるんでしょ。」
「はい、それはグーちゃんが自分でやってくれるんです。でも…まだ時間が短くて。3秒位しかもたないんです。」
「それでも凄いけどね。流石モンスターテイマー。」
『…キュァァァ…』
カノンがオウギの頭の上でため息をつく。期せずして初めて同族と会った。その同族にオウギ達が自分たちに害をもたらす存在ではないと必死に説明した為気疲れしていたのだ。
「カノンお疲れ。僕たちのことを教えてくれたんだよね。良い子だね。」
そんなカノンの苦労を察したオウギが手を伸ばしカノンの鱗を撫でる。それで体を捩らせるカノン。それでも頭の上からは退かない。
「お、オウギさん!。私のツノも撫でて良いんだよ。」
カノンを羨ましそうに見ていたアネッサが意を決したようにオウギに頭を差し出す。
「…え、あ、はい。…アネッサさんもユーリを守ろうとしてくれました。ありがとう。」
「…ふへへ。」
撫でられたアネッサのツノが僅かに光を帯びる。
「お、オウギ様!。わた…私は…何もしていません…。」
ユーリも頭を撫でて貰おうとするがその理由が見つからず声を落とす。
「…そんなの気にしなくて良いよ。ユーリが撫でてほしいならそう言ってくれれば良い。僕は我慢されるよりもはっきりと意思を表に出すことの方が嬉しいよ。」
「…あの、私も!頭を撫でてほしいです。」
「うん、おいで。」
オウギに手招きされユーリが隣にやって来る。そして頭を差し出してオウギの手を受け入れる。表情が緩むのはなんとか堪えたが尻尾はブンブンと振れ歓喜を表していた。先ほどまでの緊迫した空気は霧散しそこにはただの平和だけが流れていた。
『…全然来んな。あの人間なら転移ぐらい使えると思ったのだが…。』




