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これからと人生の転換点

「オウギ様、いつまでホーランジアに滞在出来るのですか?。」

 オウギとの散策の帰り道エリザベスが尋ねる。オウギが旅をしていることは知っている。ならばこの街を出るのも当然。改めて自覚した想い人との時間がどれだけ残されているのか気になったのだ。


「…そうですね。ホーランジアには長く居ました。そろそろ次の街へと向かうべきかもしれませんね。この世界はまだまだ僕の知らないことで溢れています。…本当に…素晴らしいです。」


「…あの、オウギ様は……。…いえなんでもありません。オウギ様の旅が豊かで実りあるものになるよう私は祈っております。ないとは思いますが私の力が必要になった際は是非お声掛け下さい。」

 知識に酷く偏りのあるオウギ。まるで初めて見るかのように色々な物にリアクションを示す。そのことに疑問を持っていたエリザベスは尋ねようとする。だが思いとどまる。それはオウギの核心に迫る部分。尋ねるのではなくオウギから話して欲しいと思ったからだ。


「出来れば安寧に旅を進めたいんですけどね。…でも誰かのためになる事をするのは気持ちがいいです。アノンの言っていた通りです。」


「…アノン?…えぇーと、その…アノン様?と言うのはもしかしてオウギ様が以前おっしゃっていた大事な方、のことでしょうか。」


「えぇ、そうです。僕に…生きることを教えてくれた。僕に全てを与えてくれたとても大切な人…でした。」


「…まさか…もぅ、…」


「…アノンはもうこの世にいません。ですがその言葉は僕の中に残っています。誰かが覚えている限りその人は生き続ける。…これもアノンが教えてくれたことなんですけどね。」


「…誰かが覚えている限り。…素敵な言葉ですね。…そんな素敵な言葉を言う方との約束ですもんね。…旅を楽しんでください。」


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「さぁ座れ、S4、S6。今日はお前たちに合わせる者がいる。入って来いS5。」

 その日もいつものように過ぎていくと思っていた。だけどそれは大きく違った。その日僕は生きる意味を教えくれる存在にあったんだ。


「……………。」

 先生に連れられて来た子は下を向いたまま顔をあげない。その体には何か傷のような物が見える。

 何より首には紐が付けられていて先生はそれを引っ張ってその子を連れて来ていた。


「…っち、暴れなくなったと思ったら心を閉したか。まぁ良い、研究にはその方が好都合だ。」

 先生に押されてその子が席に着く。相変わらず何も言わない。前の僕と同じで喋れないのかな。


「…今日からお前たちに適正についての本を読んでもらう。しっかり読んで理解するのだぞ。」

 そう言う先生から紙の束とペンを渡される。起きてる時に何かをしろと言われたの初めてだった。


「毎日テストをするからな。」

 それだけを言って先生は出て言ってしまう。先生の言ったテストという言葉も適正という言葉も初めて聞いたから意味は分からない。でもこの紙を読まないといけないのはわかった。


「…………見て。」

 内容は難しくて分からない。悩んでいると前に座るS5が紙を指差す。そこには


『わたしとはじでかいわして。それからわたしのことははなさないで。』

 と書かれていた。これが僕の生が変わった瞬間。僕はこの日の事を絶対に忘れない。






「何故実験体に知識を?。どうせ無意識下で発現させるのでしょう?。」


「なに、あくまで実験だよ。知識がある適正を埋め込まれた時無意識にでも使い方を知っているとどうなるかを知りたいらしい。」


「そうですか。それにしてもS5はあれだけ反抗的だったのに大人しくなりましたね。」


「あぁ、あの子は特別の特別だ。恐らく自分の体に何が起こっていて眠っている間になにをされているか勘付いていた。それなら心を閉してくれた方が便利だ。」


「…魔族に対する兵器になりますかね。」


「さぁ、それは彼ら次第だよ。…おい、盗聴はいつも通りしているな。」


「はい、問題ありません。読んでいるのか会話もありませんし。」


「なら良い。S5が偽証しているかと思ったが考えすぎだったようだ。…人類の救世主として健やかに育つ事を願うよ。心は壊れても良いがね。」


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