1-② どもどもども、シコロです!
「どもどもども、シコロです!」
「モートじゃ!」
「2人の魔王から行われる漫才、『まままマンザイ』です! 本日はよろしくー!」
「まが多い? 気にするな! 余が魔王なのだから仕方ないのじゃ!」
「いやー、最近めっきり夜が早くなりましたね」
「うむ、余が魔王じゃからな」
「……それに寒くなりました」
「うむ、やはり余が魔王じゃからな」
「……そういえば鍋もおいしくなりましたね」
「それも余が魔王じゃからな」
「ちょっとちょっとちょっと! 何なんですかさっきから! あなたおかしいでしょ!」
「無礼者!」
「何がですか!」
「余を箸と同列にするとは無礼者め!」
「何がですか!? もしかして『箸が転んでもおかしい』の格言を混同したんですか!?」
「違うのか?」
「違うわ! 全く違いますからね! あれはそもそも……ええい、辞書で調べておいてくださいね!」
「余は箸より重いものなど持てぬ。よって辞書で調べるなどできぬ」
「魔王なのに!?」
「魔王じゃからこそじゃ! 魔王は育ちがいいのじゃ、お前みたいなゴミ溜めを這う虫けらと違うのじゃ」
「口悪っ! というか、魔王と何が関係してんですか! 日が短くなったり気温が下がったりご飯がうまくなったりしますか!」
「余の威光を恐れたため太陽が出にくくなった。余の不興を買うことを恐怖したため気温が涼しくなった。余の幸福のために食材が美味となった。全てに論理的説明がついた。おかしいのはお前じゃ」
「何処が論理的ですか! 中身が丸々ぬけてますから!」
「何を言う。自慢では無いが余の内蔵脂肪率は高いんじゃぞ」
「違うそうじゃない! 体の話じゃなくて論理の話です!」
「それはさておきお前に話しておきたいことがあるのじゃ」
「流された!? 一切間違ったこと言って無いのに!?」
「当たり前じゃろう。部下の話など聞くわけない。社会とはそういうものじゃ、下の者は搾取されるためだけに存在しているのじゃ」
「悪魔! 鬼畜! 外道!」
「あんな下劣な奴等と一緒にするでない。魔王と呼べ!」
「じゃあ呼びますよ! この魔王! 大魔王!」
「ふっ、褒められて何だかこそばゆい」
「誉めてませんしそれは風呂に入ってないからです! そもそも話って何ですか」
「うむ、お前に渡していなかったものがあってな。それを渡したいのじゃ」
「えー、こんな上司からもらうものなんてろくでもなさそうなんですけどー?」
「お前の給料じゃぞ」
「いやあ! 僕はこんな話の分かる素晴らしい最高上司の元で働けて幸せだなぁ!」
「清々しい掌返しじゃな。まあいい。渡してやろう」
「うわあ重い! しかもこんなに厚みがある!」
「当たり前じゃ、中にずっしり石を詰めておいたのじゃから」
「石!? 何で石!?」
「決まっていよう。重さをごまかすためじゃ」
「堂々ということですか! あんた最低だよ!」
「何を言う。金もちゃんと入ってるぞ。銅貨を接着剤で繋ぎあわせて厚みをごまかしたものを」
「やっぱり魔王だ!」
「ちなみに残りは余が着服した」
「何で暴露したんですか! それで納得すると思ってんですか!」
「する、絶対にする」
「するわけないでしょ!」
「いいや、する。何故なら余は魔王じゃからな」
「理由になってないわ! もういいわ! どうも、ありがとうございましたー」