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15歳のラノベ作家とイラストレーター  作者: 黒目 朱鷺
15歳のラノベ作家とイラストレーター 一枚目
3/9

そのイラストレーターは大変めんどくさい人だそうです!?

 あれから二日がたった。

 返信以降、俺の作品には誰一人閲覧者は増えることなく、お先真っ暗ルートを進んでいた。

 昼頃、カップラーメンをすすりながらテレビを見ていると、手元にあるスマホが鳴った。

 まさかと思い、はっと手に取る。

 やはり、佐々流さんからだった。


「返信の方、遅くなりまして申し訳ございません。

 内容ではまだ、あまり納得されていないようなので、ここで1つ提案なのですが、一度お会いしませんか?

 恋さんのあとがきなどを見る限り城鋼文庫の方も触れていただいているようなので、嘘ではないと信じてはいただけると思うのですが。

 どうでしょうか?日付などはここ一週間は、時間がありますので。

 では。」


 見抜かれていた。

 まさしく、俺が打った文章は真偽を確かめるような疑う文が多かった。

 それを見つけられるあたり、きっと本物なのだろう。

 そうとなれば、早めに返信するべきだろう。

 俺はとりあえず、心の準備も兼ねてメールから二日後に設定した。

 佐々流さんの方からも大丈夫との事だった。


 うん。まずは服買おう。

 気持ち以前の問題だった。




 所定のカフェへと入る。

 とうとう、二日後となり俺の小説をいいと言った、城鋼文庫の佐々流編集者との対話となった。

 早めに五分前に入っておく。

 言われていた席は空いており、そこに座る。

 それから少し経ったぐらいに店の扉が開く。

「いらっしゃいませ」

 店員の声に一礼すると、俺の席までやってくる。

 彼は胸から名刺を出し俺の前へ出す。

 彼はニコニコしながら顔で訪ねてきた。

「あなたがあの小説を書いた前橋さんですね?」と。

「あ、はい。僕が前橋恋。『この月』の作者です」

 昨日考えた最初の挨拶は上手くいった。

 ふぅと心の中で安堵する。

「やぁ。僕が君の小説を一番最初に読み、魅力を感じた。佐々流傑だよ。今回は細かい話という訳だから、静かなここのカフェを選ばせてもらったよ。ご足労ありがとう」

 丁寧でありながら、砕けた喋り方。

 なぜか、気持ちが揺らいだ。

「い、いえいえ。家にこもりがちなので、いい店とか知らないので佐々流さんに示していただいて嬉しい限りです」

「なら、良かったです。それでは、詳しい話をしていきますね」

 その後、佐々流編集者は事細かに規約などを説明してくれた。

 心の中では、夢であるが故に決めていた。

 ラノベ作家になることを。

「ちょっとした、名言なのですがきっと、恋さんは夢だと思うんですよ。ラノベ作家になることが。そこでです。夢は決めた時から目標になる。という言葉を残している将棋棋士がいましてね。僕が恋さんをしっかりと、支えますのでどうか、契約して頂けませんか?」

 竜王だ。その名言を残しているのは、タイトル獲得数歴代一位の九十九期も取ってる有名な人だよ!

「羽○竜王の名言あっては、断れないです。よろしくお願いします」

 うまく決まった。いい感じに契約を結べた。

「分かりました。締切などについても説明しましたが、最初の方は難しいですし、まだ学生。もってのほかですが。頑張って締切までには渡してください。あ、あとこの後編集社行きましょうか。色々とそこでもありますので」

 言われるがままに、佐々流さんの車へと誘導される。

 中学三年生。仕事を手伝ってくれる人に誘拐されます!

 誤解を生みそうな言い方だな。

「誘拐じゃないので安心してくださいね」

「逆に怪しいです」

 早指し。

 別に俺は孤立していただけで、コミュ障な訳では無い。

 そう。よくある、引きこもりイコールコミュ障という方程式は成り立たないのだ!

「あと、きっと承諾してくれると思っていたので、すぐに文章訂正してネットの方に上げるために、イラストレーターさん。依頼してあります」

「あ。早いですね。いや。おかしくないですか?」

「早いにこしたことはないです。ましてやまだ城鋼文庫の公式ネット書店販売ですのでね」

「売れますか?勝算は?」

「大々的に宣伝してありますので、結果はいいと思いますが?」

「手を回すの早すぎませんか?」

「何事も早め早めです」

 ここまでで両者一歩も譲らず早指しです。

 息もたねぇよ。

 その後、好きなラノベを話しつつ、編集社へ到着。

 ロビーを抜け、エレベーターで三階。会議室へと向かう。

 中にはノートパソコンが数台と、そこに座る、一人の中年ぐらいの男性がいた。

「はやららせ先生。お疲れ様です」

「さささん。お疲れ様です。おっ?彼が俺の神絵を受け取る作品かい?」

「そーいうことになりますね。前橋恋先生です」

 先生呼びはどこかくすぐったかった。

 ただ。はやららせと呼ばれた、発言から見るに、俺のラノベの挿絵を担当する彼は。

 俺の苦手なタイプに入るぞ。

 なんだよ、神絵って。そんな評価されてるのか!?

「え、ええと佐々流さん、その方がイラストレーターの方なんでしょうか?」

「はい。はやららせ先生。pixivで拾ってきた人です。いいねの数はかなり凄いですよ」

「チェンジで!」

 気付けばそう叫んでいた。

「うん?どういうことですか?」

 ハッと慌ててテキトーな返事を返す。

「いや。今回の作品場面展開が多めなので、どこで挿絵だったりを入れるべきか、悩みどころなのかなとか思いまして」

 どうだ。佐々流さんなら普通に見抜かれると思うが。

「そうですね、それは後あと考えていきましょう。あと、恋先生?後で詳しく話しましょうか」

 バレテマシター。ですよねー。

「それじゃあさささん、はじめていきましょうか」

「そうですね」

 それから三時間後。会議室へ入ってくる日は赤く、よくある校舎に二人っきりみたいな雰囲気を出しそうでありながら、会議室の空気は重苦しかった。

 ことの発端は、イラストレーターはやららせの文句だった。

「さささん。俺、このシーンは書けるけど俺らしい絵じゃなくなるんで~」

「わかりました。恋先生はほかに挿絵がいるシーンなどはありますか?」

「ああ。あの。ちょっと佐々流さんいいですか?」

「は、はぁ」

 俺は佐々流さんを会議室、外の廊下へ連れ出した。

「佐々流さん?なんですかあの人!書く気あるんですか?」

「ごめんね。それは僕の方からはなんも言えないね。彼はもともとpixiv出身でそこでちやほやされすぎて自分は神だぜひゃっはーだから…」

「あの。それ俺と対照的すぎません?」

「そーですね!誰にも見られずに埃かぶりそうだったですからね」

 あっはっはと佐々流さんは高笑いする。人間の心あんのかこの人。

 とりあえず、今日はあげましょうと会議室に戻った佐々流さんは言い、今日のところはこれで終わりとなった。


「恋先生?勢いで言ったらだめですよ。ましてやあのめんど…気難しい人に言ったりなんかしたら」

「佐々流さんも大概ですねー」

 書類の類を先ほどの会議室とは変わって少し狭くなった部屋で書いていた。

 内容は書いた作品の著作権などについての規約を守ることを誓えとかだ。

「佐々流さんあと何枚ですか?」

「これで最後です。あと、彼の絵は一定のファンを持っていますが、彼が挿絵を担当した作品はかなり赤字が多いです」

「いやな情報出すなよ!」

 俺は最後に差し出された書類を受け取りつつ、叫んだ。

「いや。一作目ですよ?しかも大々的に宣伝したって佐々流さんいいましたよね?」

 焦り気味に佐々流さんを問い詰める。

「あ。大々的に宣伝した時も、悪い意味での反響すごかったよ」

「俺なんもしてないのになんか悪いイメージの作家になるじゃん!!」

「とりあえず、書き終わりましたか?」

「はい。全部書きましたよ。そして、売れなかったらどうするんですか?」

 俺は紙を受け取ろうとした佐々流さんの手をつかみ威圧的に顔を近づける。

「それは、おいおい考えましょ?あはは」

「笑いごとじゃねえぞおい」

「そうかっかしないで。ましてや恋先生?あなたまだ中学生なのをお忘れなく」

 そう。まだ、夏休みの二週間目である。

「とりあえず、今日はこれで終わりですので、帰りましょうか。送りますよ」

「はぁ、ありがとうございます」

 荷物を整え、会議室を出ていき、外へ出る。

 夏休みということもあり、外はまだ赤い色に包まれていた。

 後ろから車の鍵を持った佐々流さんがやってきた。

「お待たせ、さっ乗って。普通に送り返すから」

 普通じゃないのがあるのか。

「ありがとうございます。あの、少しお願いがあるのですが」

 俺は車に乗りこみつつ、会議室で考えていた案を佐々流さんへ提案することを決めた。

「佐々流さん的には今回の俺のラノベの勝率ってどれくらいですか」

「事実、かなり低いよ。言ったら悪いけどはやららせは、ほんとに。難しい」

「じゃあ、どうして俺のラノベにはやららせさんを付けたんですか?」

「急いでいたんだよ。趣味で見て決めた以上、色々と手を回すのは僕の仕事になる。イラストレーターへのお願いも僕からだ」

「つまりは、誰もいなかった?」

「悪い話がそういうことでもある。手の空いているレーターは他にもいるにはいるが、断る可能性が高かったんだよ。新人作家の挿絵ってミスりやすいから」

 新人作家はキャラ構成があやふやだったりして、イラストレーターの欲しい情報が足りなかったりするらしい。

 俺はそういった所はしっかりやっている。

 佐々流さんはそこも見ていたのだろうけど、頼む以上確実さを狙ってのことだろう。

「じゃあ、手短に言いますね。今回の新作、不評だったら。修行のために高校生までは城鋼文庫へ書きません」

 そう。俺にはたった一人。書いてほしい。いや。俺の作品のレベルを上げるのはその絵しかないと思う絵があった。


 ある日、ツッタカターで友人作家(ネット作家)のツカターを漁っていた時、見かけた。いいねもリツもされていない美しい絵。

 話してみると、今回は試しに出してみただけ。あまりいい評価ないからもう辞めるよ。

 そう返された。誰からも見られずに素晴らしい宝が消え去るのをまじかで見てしまった。

 その絵をもう一度。

 その絵が俺の作品を彩る。それもまた夢であった。

 夢の通路にラノベ作家になる必要があった。

 また、あの絵を描いた人ならば、また挑戦し、どこかに所属していると信じて。


「恋先生。着きましたよ。話はわかりました。検討はします。ですが、うちとしては先生の作品をより良くするよう尽力しますので」

「ありがとうございます。今日はありがとうございました」

 俺は一礼すると佐々流さんも一礼し、車へ乗り込み、走り去っていった。


『第一作品目公開まで残り2週間』

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