そのアマチュア作家は閲覧数1で書籍化の道を進むようです!?
えー。前作はほんとにすみません!
見つかり次第、次話公開としますので!
こんにちは。そんな作者の黒目朱鷺と申します。
ええ。作者から、なろう作家の皆様へ聞きます。
「行」ってどんな感じに空ければいいんですか!?
ジリジリと部屋の窓から日差しが差し込んでいた。
中学校の一学期が終了し、夏休みと入った一週間目。俺はパソコンとにらめっこをしていた。
学校のレポート課題のためににらめっこをしている訳では無い。
小学生の頃から夢見ていた、ラノベ作家になる。という夢を叶えるべく、今年の夏を全てラノベ文庫の新人賞へ投稿する作品に当てる予定だった。
そう。あんなことがあるまでは…
夏休み二週間目の月曜日。
投稿作品に合わせて、無料小説投稿サイトに出していた作品のコメント欄を見てみる。
第一部を投稿してから四日目。
昨日まではコメントはゼロ。閲覧数もゼロ。
つまり、スタートは酷かった。
無名スタートでは、よくある事だと理解していたが、そう現実を見ると少し心にモヤがかかる。
「今日もなし。閲覧数は一。一人だけ見てくれたか。でもまだまだだな」
内心。とても嬉しい。この閲覧数一の人が色々な人に宣伝するかは分からないが、この上ない嬉しさであった。
すると、スマホの方から通知が来た。
『あなたの小説にコメントが追加されました』
そう、画面には書かれていた。
パソコンの方で、コメント欄をもう一度確認する。
『コメント数1』
コメントの内容は、予想もしていなかったコメントだった。
「こんにちは。私は、城鋼文庫の編集者。佐々流と申します。
今回は、個人的な趣味で杉浦恋さんの小説を読ませていただきました。
まだまだ、文章は荒いのですが、ストーリーが整っており。また、豊富な語録で同じ言葉をキャラ別に言い換えたりと、細かなレベルの高い技術を見て取れました。
誠に勝手ながら、恋さんの小説をうちの文庫から出させてはいただけないでしょうか?
すぐとは言いませんが、文章のレベルは充分です。いいお返事貰えると嬉しいです。
メールアドレスの方を下に書いておきましたので、ご連絡お待ちしております。
メール:sasa0109@gmail.co.jp」
オファーと言われるコメントが送られていた。
気付けば、俺は記載されたメールアドレスへ返信の文章を打ち込み、送る直前だった。
そう。無意識であった。
本当に嬉しいこと。その筈だが、すぐには返事の文章を送り返せなかった。
昨日のこともあったせいか、朝早くに起きてしまった。
いつの間にか、寝てしまっていたらしく起きたら作業机に突っ伏して椅子に座ったまま寝てしまっていた。
共働きの両親はもう、出ていったらしく家には一人だけになっていた。
ふと、今日の夢のことを振り返る。
嫌な夢だった。
小学生の時と、中学生の時の夢。
いつまでも消えない、あの不吉な夢を。
俺が小説家になろうと思う前。その時はただのラノベが好きな学生だった。
学校には毎日二冊ほど、好きなタイトルを持っていき、休み時間などはほとんど読み老けていた。
ただの陰キャで済めばよかったものの、学級。いや、学校は俺がラノベを持ってくることを拒んだ。
最初は学級の中で絶対的中心にいた、暴力主義のやつだった。
「おい。お前、いつまでも本読んでる気か?なぁ?学校に相応しいか、俺が見てやるよ」
自己中の具現化したような彼は、俺の手の中にあった本を奪い取り、ラノベの面白さを一切見ようとしない、挿絵だけを見る。という最悪の確認をした。
「お前、なんだよこの水着。変態すぎかよ。学校にこんなもん持ってくんじゃねえよ!先生に言いつけるぞお前ら!」
最近のラノベ界ではよくある、最初に収録される色つきのイラスト。そこだけを見た彼はその一枚、キャラの水着姿を見てR18だと、発言した。
「はぁ?そんなんだけでエロとか言ってんの?お前何年だよ。幼稚園か?なぁ?水着見ただけでつべこべ言うなよ。低レベルの脳みそしわゼロ」
勢いで、言ってしまった。これが失言だった。
「おーけ。お前、覚えとけよ」
と言い残し、彼は教室を出ていく。
俺は、机に置かれた本を手に取り、また読み始めた。
それから数分後の事だった。
教室の扉が開くと先生と共に入ってくる、彼の姿があった。あと、取り巻きABCD。
先生と彼らは俺の席まで来ると、
「高橋くん。その本を見せなさい」
担任の先生はそう言うと、今日二回目の俺の手から本を奪った。
これも今日二回目。先生は色つきのイラストだけを見ると、血相を変えて言ってきた。
「高橋くん!なんですかこの本は!学校に相応しくない本です。その本は没収します」
一瞬、何を言ってるんだ。と思った。
奪われた。俺の大切な命にも変えられるような宝を。
今回の一件は先生方の会議にまで出され、最終的にラノベと位置づけられるレーベルは全て持ち込み禁止。
この事態により、絡まれずに読んでいた学年全体の人も巻き込み、俺はこの事件の主犯となり、学校自体からも嫌われた。
中学生になっても変わらず…つまりは、今もだ。
やっと中学三年となり、あと十数ヶ月だが、生徒からは嫌われたままであった。
中学校の最初、小学校三校の区域内の人が一気に集まった。
それから、一ヶ月。誰の手引きか知らないが、俺の小学校の事件は広がっていた。
誰からも相手にされなくなった。
最悪なのは、編入された学級から話は始まったため、誰とも仲良くなる前に。
俺は孤立した。
嫌な思い出である。
悲しいし、今でも学校には行きたくない。
ただ、唯一学校へ行く勇気を与えてくれている人がいる。
小学校と違い、学校自体に嫌われていたわけではなかったため、一年生の後輩が勇気を与えてくれていた。
その子は俺が「近付いたら君も先輩から嫌な仕打ちを受けるよ」と言っても、
「先輩は、なんでそんなに一人でいたいんですか?一人ぐらい、親身になれる人ぐらい置きましょーよ!ここにいる人とかね!」
その子は、部活内で先輩からかなりの嫌がらせをされていた。
俺のせいなのは確かだった。
俺は、心苦しかった。
「辛すぎるよなー。俺の過去」
そう呟きつつ、パソコンの電源を入れる。
そこには、昨日打ち込んだ佐々流という編集者への返信メールが開かれた。
意を決して、俺は送信ボタンを押した。
「はぁー。やっちゃったなー」
その日に返信は返ってこなかった。
また。ベッドではなく、机に突っ伏して寝た。