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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「長いチュートリアルは面倒だと思う」
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旅の始まり

「旅に?」


「はい、自分自身のこれまでの行いを皆から聞き、とても落胆いたしました…。

それを正すには、この身1つで旅をし、修行を重ね、見聞を広げる事が最も良いと思いましたので」


アザゼリアスさん…つまり、アルキウスの父親の私室で俺は直談判を敢行している。


保護されてから3日。

俺は森の中で事故り、頭を強く打ったが故に記憶の大半を失っているという事に、無理矢理した。


まぁわりとすんなりその設定は受け入れて貰えており、

理由としては完全に性格が変わっている事があげられるんだろうな。

身体は完全に「アルキウス」という少年なのだが、中身は俺「大和」なので、無理もない。


その間に執事やらメイドやらにいろいろ聞いてみたが…まぁうん。

アルキウスはクズだな…。


最寄りの街の娼館に行っては、他の来客と問題を起こすのがかなり頻繁にあったとか…。

「性技能」スキルの出所がなんか分かった。

「逃走」スキルも似た様な理由が出所だろうよ…。


「一人旅か…私個人としてはお前の心意気は嬉しく思う。

だが、その身分故にお前を狙う者が居ないとも限らん。

それが私は心配なのだが」


「その点を含めての修行なのです。

兄上は王都の騎士団に入る程の実力があります。

しかし私の取り柄と言えば弓が少し得意なくらいです。

私を狙ってくる者を返り討ちに出来ないようでは、兄にも到底敵わないでしょう。そんな貧弱な弟を持って兄も喜びますでしょうか?

むしろ情けないと思われても仕方がない程です!

父上もどうでしょう?

兄に比べてこの貧弱な私は?!


私は必ずこの旅を無事に終え、立派になって帰ってくると約束しましょう!!」


我ながらかなり乱雑な説得文句である。

聞いたところアルキウスには本当に王都騎士団の兄が居るらしいからな。

躊躇いなく名前を出させて貰ったよ。


さて、この穴だらけの説得でどれだけ押せるか…


「アルキウスよ…お前は遊んでばかりだと思っていたが…しっかりと物事を考えられる人間になっていたのだな…!」


ああ…押し倒せたわ。

というか、元の「アルキウス」の性格から考えればかなりの成長に見えるんだろうな…。


程なくして、一人旅の許可を得て俺は父上の私室を後にした。


さてと。

次に旅の資金だが、

まぁそれは割とすぐ手に入るのが決まっていた。


「アルキウス様、カドナ様から買取金が届きました」


部屋を出るとすぐ執事のサンドリアスさんが声をかけてきた。

銀盆の上に袋が4つ置かれており、おそらく金貨とかが入っているんだろう。


ちなみに「カドナ様」とは、キャメロット家が贔屓にしている信頼できる商人さんらしい。

買取金と言っていたが、その通りであり、

端的に言うと、自室に置いてあった数多くの調度品を売り払ったのだ。


今俺の自室はかなりさっぱりしている。

逆にデカいベッドが浮いてるくらいだ。


「内訳は王金貨が2枚、金貨655枚、銀貨72枚、銅貨19枚でございました。

後ほどご確認下さい」


あぁ…貨幣価値が分かんないからどれくらいかパッとしない。

金貨はわかるが、王金貨ってなんだ?

さすがに記憶喪失設定でもコレは聞けないな…。


〜〜〜〜〜


次の日の昼には荷造りは終了し、更にその翌日の朝には家を出発した。

見送りの時、やたら父上さんが泣いてた…見た目がガタイが良い傑物故に中々反応に困ったわ。


さてと…取り敢えずまずは街に向かうかな。


とぼとぼと街道を歩いていると、ちょうど商人の馬車が通ったので乗せてもらえた。


商人さんの馬車に揺られて約2〜3時間。

着いた街の名は「キャメリア」といい、キャメロット伯爵領では1〜2の大きな街だとか。

商人さんに銀貨を一枚渡して礼を言い、取り敢えず詮索を始める。


やはり中世的な文明レベルらしい。

まぁお決まりですよね。


ふらふらと街を軽く見て回りつつ「マップ」と照らし合わせる。


この「キャメリア」という街は中央に運河が流れており、その運河も王都のまで続いている。

故に王都との物流も盛んで、その間に点在する街からの物品や人も流れ込んでくる。

お手頃価格設定の商店から、貴族御用達の豪華な店まである。


そんな街がある領地の主の息子です、俺。

ある意味能力よりもそのステータスがチートな気がする。


〜〜〜


一人旅はなかなか面白いし、元の世界でも結構プチ冒険してたし、結構楽しんでいたりする。


キャメリア中央運河に掛かる巨大な橋。

通称「露店大橋」。

橋の両端に露店、屋台、フリマ的な物が並んでいるわけで、常に縁日のような活気に溢れているらしい。


その橋の手前にある宿屋「カトレア」にお世話になる事となった。

外観は3階建てで、1階がレストラン…とゆうか食堂となっており、受付もそこにある。2階から上が部屋であり、俺は3階の1番端っこの個室を取った。


朝夕の食事付きで1泊5銅貨。

元の世界の価値観なら格安にも程があるわ…。


ザックリとした印象だが、1銅貨100円くらいだと思う。

それが100枚毎に銀貨、金貨になる感じだ。

ただ、王金貨は金貨何枚なんだ…?

やっぱりちゃんと聞いておけばよかったな…。


取り敢えず5日間泊まる事にしてある。


食事は強制じゃないが、食べなかったからと言って値引きは出来ないと念を押された上で先払いだった。

そーゆーイチャモンを付けるヤツがいるわけか。


さて。

当面の旅費は問題無いのだが、やはり長期的な旅を考えれば、職を持っているべきなわけで、

ファンタジー世界の職といえばやっぱ…


「ギルド?少年、良いとこの坊っちゃんみたいな格好なのにギルドに入りたいのかい?」


「カトレア」の受付兼看板娘の女性=カトリーンさんに尋ねる。

まぁその判断は間違ってませんよ。

領主の次男です。


「まぁ少年の自由だし良いんだけどねぇ。

取り敢えず、キャメリアのギルドは露店大橋の向こうだよ。

依頼(クエスト)の受注だけならこっちにも窓口はあるけど、登録は川向こうじゃないとダメだからねぇ」


カトリーンさんは、見た感じ20歳くらいの快活そうな女性だ。

飛び切りの美人とか可愛いとかでは無いが、顔の作りは整っており、話した感じから結構モテるのではないか?

あと俺のことを「少年」と呼んでくる。

まぁ14歳なんて少年だよなぁ。


「そう言えば少年は旅でもしてるのかい?それとも何か目的が?」


「目的は正直無いですね。

正直ギルドの登録も「取り敢えず」って感じですし、

基本ふらふらと観光気分で旅をしています」


「ほぇ〜その歳でそんな悠長な事やってるなんて…やっぱホントにどっかの坊っちゃん?」


あぁそう捉えたか…。


「出自については余り詮索しないで頂けると…」


俺の苦笑いに何か察した様で、カトリーンさんは満面の笑みで親指を立ててきた。

何故笑顔…?


「あ、カトリーンさん。

ちょっとお聞きしたいことが幾つか有るんですけど良いでしょうか?」


「ん?アタシに答えられることなら良いよ?」


今の時間帯は暇なのか、テーブルに促されたので座った。


「旅に出る前に父に旅費としてこの硬貨を渡されたんですが…」


そう言って俺は白い陶器の様に輝く硬貨を取り出した。

瞬間カトリーンの表情が、

怪訝→驚愕→焦り→青ざめる、と面白いほどに変わっていった。


「そ、そそ、それ!そんなもん大っぴらに出しちゃダメって!!!」


かなり声を潜めてはいたが相当驚いたのか一瞬にして汗だくになっている

何汗だ?


「あ、あの…コレの価値って…?」


「王金貨!1枚で1000金貨分の硬貨だよ!」


1枚1000金貨・・・。


えっと…1金貨が100銀貨で?

1銀貨が1万円くらいだから…100万円の1000倍か。


100万円の1000倍ぃぃいい!!??


10億円相当かよ!!!

待て!

確か今持ってるのは2枚の王金貨!

20億円が手元に・・・しかも655枚の金貨があるから・・・

26億5500万円の手持ちだと!!??


あぁ…待って分からないわ。

なんか感覚が狂ってきた。


「しょ、少年…どんだけ長旅するつもりなのよ…」


「あ、あはは…ちょっとコレは俺も予想外と言いますか…」


確かスキルに「ポーカーフェイス」ってあったなぁ…今の俺、絶対そのスキル発動出来てないわ。


俺もカトリーンさんもちょっとボーっとしてしまった。


「あ、あともう1つ良いですか?」


「え?う、うん。

なんか次に何聞かれても驚かないわ」


「ははは…。

あのギルドについて何ですけど、具体的な仕組みが知りたくて」


「あぁ、なるほどね。

まぁ詳しくは分からないから詳細は登録の時に聞いたら良いと思うんだけど…

まぁ概要くらいは知ってるから教えてあげるわ」


〜〜〜


ギルド。または冒険者ギルドは、まぁザックリと言えば俺の想像通りの組織であり、

様々な「依頼(クエスト)」の斡旋を行う、異世界版ハローワーク的な組織である。


ギルドは世界各国に支部を設置しており、国を渡った先でも仕事をする事ができ、

拠点を構えて依頼を受けるもの、旅をした先で小遣い稼ぎ程度に依頼を受けるものなど、かなり自由度が高い。

それにギルドで発行される身分証…通称「ギルドカード」はある種のパスポート的立ち位置でもある為、

別の国に入る際にもギルドカードの提示と入国税を払うのみですんなりと入国出来るのだとか。


まぁここまで聞くと、かなり特典たっぷりに聞こえるが、

一定期間依頼を受けなかったり、問題行為や犯罪行為、依頼の失敗数によっても資格を失い、

一度資格を失うと再登録が出来ないなど、ペナルティもなかなか厳しい。


「失敗数が響くのは痛いですね…」


「魔獣の討伐程度なら良いんだけど、届け物の依頼とか採取依頼とかになると、依頼主が失敗と言えば失敗になることもあるらしくて、


ここで酔っ払う冒険者の愚痴はだいたいがそーいった類のものよ。


ま、その辺も加味した上でギルドで詳しく聞いてから、登録は決めた方が良いわよ」


「確かにその様ですね…」


そこまで話した辺りで、食堂を利用するお客さんがチラホラと増えてきたので、俺はカトリーンさんに礼を言い部屋に戻った。


取り敢えず…この世界に転生させられた理由として、邪神の影響で増え始めた魔獣の討伐もあったよなぁ。

ここはやはりギルドに登録した方が良さそうだな。


明日にでも橋向こうに行ってみるか。

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