「アルキウス」の確認
はい、どーも。
結月 大和と言います。
現在僕はめちゃくちゃ豪華な屋敷の一室に居ります。
森の街道をとぼとぼ歩いていると、数名の馬に乗った騎士に続いて豪華な馬車が前からやって来たわけで。
「護衛を付けた商人とか貴族かな?」とか考えていました。
目的地の「キャメロット邸」の人でした。ビックリだね!
俺が転生したこの身体。
つまり「アルキウス・クロード・キャメロット」とやらは、ここの領主の次男なんだとか。
なんで俺はそこに気付いて居なかった…。
コイツ…てか俺?…貴族じゃん!!!
考えてもみろ?
あの街道だって「マップ」じゃ「キャメロット領:街道」だったじゃん!!
あそこで気付くべきだったんだよな…。
まぁその人たちに連行…と言うか保護されて、現在目的地だった「キャメロット邸」にいるわけです。
わーい、ミッション達成。
「アルキウスよ!!無事か!!」
扉を開けて入ってきたのは、なかなか厳ついガタイのいいおっさんだった。
その後ろに執事とメイド2名。
1〜2秒後に頭上にそれぞれ文字が表示された。
ガタイおっさんは「アザゼリアス・クロード・キャメロット」
執事は「サンドリアス・エルネス」
メイドは「カルーア」と「メルビリア」
あぁ…もしかしてこのガタイおっさんはオトウサマ的な?
「お前が帰ってこない事は幾度かあったが、今回ばかりは見過ごせない!
なぜこの時期に森になど入ったのだ!
「戦斧蜥蜴」の繁殖期である事に加え、それを主食とする地竜種が森に現れるのだぞ!?
サンドリアスから聞いたときは、生きた心地がしなかったわ!!」
アザゼリアスさんが心配を体現した様に早口で言葉を連ねる。
あぁ…案の定幾つか知らないワード来たぁ…。
取り敢えず、コイツ…アルキウスとやらは危険な時期に自ら森に入って死んだと。
結果俺の転生先になったと…。
バカだったわけか…。
「…申し訳ありません、父上…?」
取り敢えず謝っておくのがベターだろう。
と、思っていたのだが…間違っていたらしい。
「アルキウス様が…頭を…?!」
とかメイドが呟いとる。
「あ、アルキウスよ…あぁ、頭を上げなさい」
アザゼリアスさんもなんか戸惑っとる。
取り敢えず言うことを聞いて頭を上げる。
「どこか…特に頭とか…強く打ったのか?」
心底心配している様な顔だ。
あぁ…アルキウスよ…お前どんな人間だったんだよ…。
〜〜〜
部屋に来た人たちを何とか追い出し、1人思考を巡らせる。
アルキウスの人となりは、かなり底辺な感じだったのだろうか…。
謝辞を述べただけで周りが引いたとなると…
相当だぞ?
ちなみに今いるこの部屋は「アルキウスの自室」らしい。
1人で使うには大き過ぎだと思うベッドに、
まぁ成金趣味というか…金ピカな調度品がいろいろ置かれてる。
売ったら高そう…。
暫くすると部屋にメイドがやって来た。
「し、失礼します。
アルキウス様、お茶の用意など如何なさいましょう?」
「あ、お願いします」
あ、いかん。敬語になってしまった。
あぁ〜メイドさん変な顔になってる…。
首を傾げながら「リリーア」という名のメイドは部屋を後にした。
数分後に紅茶セットと言うのだろうか?
代車をカタカタと押しながらリリーアは戻ってきた。
そうだなぁ…ちょっと彼女に幾つか聞いてみるか。
「リリーアさん、ちょっと良いかな?」
「ふぇ!?な、何でしょう?!…というか名前を」
「あ、ああ、メイドさんの名前くらいはね」
怪しむと言うよりは驚きの方が強い様だ。
取り敢えず話を進める。
「怒らないから正直に言って欲しいんだけど…俺ってどんな人間だった?」
「あぁ〜えぇ〜っとぉ〜なんと〜言いますか…」
かなり意地悪な質問をしてるのは分かってます!
けど聞いとかないとマズイと思うんです!
リリーアさんも青い顔で冷や汗交じりに、必死で考えてくれてる様だ。
ごめんね?
「まず〜…伯爵家次男であるという事を…ほこり…そう!誇りにしておりますよね!」
誇り…プライド高いって事か?
あぁ…もしや、身分差別が酷かったとか?
「あと…そう!私達メイドや執事の方々にも…厳しく…えっと…指南を下さいます」
おぉ既にかなり言葉選んでるぞ!
厳しく指南…きつく当たってたのかな?
さっきの「誇り」もあるし…下の身分の人に対して態度悪かったとかか?
「それと…そう!
様々な女性に…好意を抱かれておりそれを…無下にしない、寛容さが…あります、よね?」
終わりに連れて小さくなる声…てか、俺に聞かれても…。
様々な女性を無下にしない…つまり女を取っ替え引っ替えって事か?
かなりの遊び人らしいな…。
あれ?結構なクズじゃね?
「それに弓矢がお得意です!」
それはマジらしい。
濁しがない。
「他には…」
「あぁ、もう良いよ大丈夫ありがとう。
言いにくい事を聞いてしまったね。俺が意地悪だった、ごめん」
「え!?あ、いやそんな事は!!あの!!」
リリーアさんの顔が一瞬にして更に青ざめ、必死になって土下座してしまった。
何事ですか!?
俺変な事言った!?
「も、申し訳ありませんでした!お願いいたします!!この仕事が無いと弟達の食い扶持が無くなってしまうのです!!
だからどうか!!」
え…?
「あ、あのリリーアさん?」
「どうか!!お暇だけは!!!」
「はいぃ!?いや、大丈夫だから!!」
やっとリリーアさんが顔を上げる。
「ふぇ…?」
アルキウスよ…お前マジでなんてヤツだったんだよ…。
失言のあったメイドをクビにするとか、結構な頻度であった感じのリアクションなんですけど?
てか、リリーアさんちょっと泣き顔可愛いな。
いやいやいやいや!!今はそうじゃない!!
「大丈夫だから。別にクビにはしないよ。
ただ興味本位で聞いただけだから、ね?
ああ、そうだコレ!
このお菓子、持って行ってメイドのみんなと食べてよ」
俺はリリーアさんが代車に乗せて持ってきたお菓子をそのまま渡した。
「あ、あの…え?ホントですか?」
「ホントだから、安心して」
信じてもらうのに数分かかった…。
なんとかリリーアさんをなだめ、お菓子を持たせて部屋から出す。
マジでこの「アルキウス」とやら…かなりなヤツだ。
俺が死んだ一因のDQNとそんな変わらないんじゃないか?
いやさすがに違うか…?
まぁなんとなくこの身体の人となりは分かってきた…。
さてと…ここからどう立ち回るか。
取り敢えず旅とかに出れる様にならなきゃ、異世界での物語は始まらない気がするわな。
貴族が旅か…絶対護衛がどうのこうのの話になりそうだが…ま、何とかなるか?