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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「そうだ、王都へ行こう」
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守衛団の実力

「一応改めて説明するぞ。


1つ!

致命的な攻撃は厳禁。


1つ!

相手の戦意喪失、または気絶で勝敗を決する。


1つ!

魔法、真剣、好きに使え。


1つ!

正々堂々と戦って下さい」


俺の対戦相手は30代のおっちゃんで、頭鎧(ヘルム)以外フル装備だ。

肩に巨大なハンマーを担いでおり、身長も高いしガタイも良い。


その対戦相手と俺の間に立つアルトリウスが高らかに今回の手合わせのルールを告げた。


とは言え、

要するに「殺さなきゃなんでもあり」って事だろ…。


因みに俺が手にしているのは「竜甲虫(ドラグーンスカラベ)」の素材で作った大剣「スカラベバスター」だ。

付与されている効果も「耐性:物理」だけだし、「剣」と言うより、ほとんど「ハンマー」と似たような質量に物を言わせた武器だな。


「よぉヤマト君。おじさん、あんまり強く無いから、手加減してくれよ?」


バカ言うな。

お前、レベル45だろ。

一般的には猛者の部類だよ。


「それじゃ…始め!!」


アルトリウスの掛け声と共に、おっちゃんは一気に距離を詰めてきた。

まぁハンマー使いだし遠距離じゃた戦えないってか。


「一発で終了とかやめてくれよぉぉ!!」


そう言いながらかなり大きな動作でハンマーを振り下ろしてきた。


野球のフルスイングよろしく、俺も大剣の大振りでハンマーを受け止めた。


闘技場全体がざわつくのを感じた。


あんま本気出し過ぎると、それはそれで面倒なんだよなぁ…。


「ち、ちょぉっとそれは予想外かなぁ…」


おっちゃんも苦笑いだ。


何せ…スカラベバスターの刃が、ハンマーに10cm程食い込んでいるからだ。

正直ハンマーをそのまま切ってしまおうかとも思ったんだが…流石にやり過ぎだと思い、途中で力を抜いてしまった。


「おじさんのハンマーを傷付けるって…凄い武器だね?」


「無駄口叩いてて良いんですか、おじさん?」


俺は大剣に改めて力込め、一気に振り払う。


「おぉ!??」


反動で体勢を崩したおっちゃんのガラ空きの腹部に向かって、強烈な蹴りをお見舞いしてやると、

おっちゃんは一気に後方へ吹っ飛ばされた。


おっちゃんは地面に叩きつけられ苦悶の表情を見せる。


「ぐぁは!!」


ピクリとも動かない。

…あれ、殺っちゃった?


救護班らしき白服の人達が数名おっちゃんに駆け付け、暫く確認した後に「気絶」判定が出た。


「い、一撃だったぞ!」

「なんだあの少年!」

「団長の弟分らしいぞ!」

「強すぎだろ!」


闘技場に来ていた騎士団の人達はかなりザワザワしている。

あぁ…変に目立ったかな…。


因みに俺について来た連中は当然のものを見た、みたいな雰囲気だしーーーいや、カルナさん一行はビックリしてるっぽいな…。


「あっはー!少年強くない?初めて見たけど、強いねぇ!」


「ネェさん…あの子には粗相とか止めてよ…商会を潰されかねないから…」


いや、妹さん。

そんな事はしないから…。


「アル…お前マジで強いな?てか…強くなったな?」


「あ、あははは」


愛想笑いをかましつつ「ポーカーフェイス」スキルも発動だ…。


さて、一度振り回しただけの「スカラベバスター」だが、思ったよりも扱いにくいな。

なんと言うか…持ち手部分に素材である「竜甲虫(ドラグーンスカラベ)」を意識した装飾が有るのだが…それが邪魔だ…。

あと、切れ味は良いように思えるが、よく見ると刃こぼれがある。

んんん…鋼鉄のように硬いとは言え「虫の殻」だしな…。

いや、俺が「ハンマーを斬る」なんて変な事しようとしたせいかもしれないが…。

まぁ良いか。

今度王都の鍛冶屋に見てもらおう。


〜〜〜


「よ、よろしくお願いしまっす!」


次は16歳の少年だった。

つっても、俺も見た目15程度だしな。


さっきのおっちゃんと違って完全フル装備で顔は見えない。

武器は何の飾り気もない両刃の直刀。

二刀流とかではない様だが、両腰に2本づつ…計4本、同型の剣を下げている…何だ?


「それじゃ…始め!」


さて、俺の方は「スカラベバスター」を持ってはいない。


虎撃(とらうち)」剣

・「加速:大」「縮地」「空間把握」


以前キャメリアで購入した「虎断(とらたち)」を、ここ、王都の鍛冶屋に打ち直して貰った物だ。

竜甲虫(ドラグーンスカラベ)」と戦った時に少し話は戻るのだが、

どうやら「鍛冶」スキルとかが無いと分からないレベルで刀身に歪みが出ていたとかで、それを直しがてら改良して貰ったのだ。


結果的に「威力増加:居合」が無くなってしまった代わりに「縮地」と言うスキルが増えていた。


「キース・クロイツ!行きます!!」


少年は大声で自己紹介しながら切り込んできた。

俺は「虎撃」の「縮地」スキルを発動して、その攻撃を避ける。


この「縮地」だが、言うなれば「ちょっとした魔法」らしい。

自分の立つ場所からある一定の範囲の空間を縮める物で、特定の武器に稀に発現するスキル何だとか。

故に、頑張って生身で習得しようとしても出来ないらしい。


ある一定範囲の空間を縮める、という事は、俺の一歩が、相手の数本分になり、戦闘での間合い取りにかなり役立つ。


「あ、あれ?」


少年…キース君もかなり困惑している。

「縮地」に関してはそこまで珍しい能力では無いため、さっきほど観客はざわついていない。


まぁ「へぇ〜」「ほぉ〜」という様な声はめっちゃ聞こえる。


「ごめんね、コレは「縮地」って言って、この武器だから出来る動きなんだ」


「な、なるほどっす!勉強になりまっす!」


素直な良い人だ。


「では、改めて…行きまっす!」


本当に真っ直ぐな人らしい。

さっきから移動が直線的で予想がし易い。

「縮地」を使わずとも、身体を軽くズラすだけで全然避けれる。


「く…!まだまだぁ!」


「直進だけじゃダメだと思うよ?」


「な…なら!」


なら?どうするんだろ?

数回の攻撃を見た上で、この人が搦め手を使えるとは思えないし…。


「右!…と見せかけて左ぃ!!」


言っちゃダメだよ!!

そうゆうフェイント!!


動き自体は良いと思う。

良いと思うけど言っちゃダメ!!


軽くキース君の剣を弾き飛ばした。

綺麗な放物線を描き、彼の剣が向こうの方に落ちる。


「何故!?」


「いや、口に出てたし…」


「まさか!そんな!?」


自覚無しかよ…。

彼越しにこの後の対戦相手さん達が見えるが、皆それぞれに苦笑いしたり頭を抱えてる…。


なるほど…いつもこんな感じなのか。


「なら次っす!」


「うぇ!?」


いつの間にか剣を握り直した彼が切り掛かってきた。

油断してたため、ギリギリの所で「縮地」を発動する。


あっぶね…取りに戻るの早く…あ、違う。


俺が弾いた剣はまだ向こうに転がってる。

てことは…腰に下げた剣は…予備?!


「剣を4本も下げて、重く無いの…?」


「重いけど大丈夫でっす!」


重いのかよ…。


はぁ…んじゃそろそろ締めますか。

この後にも対戦相手が控えているんだから、キース君だけに時間は取れない。


…なんか面白いから、もうちょっと戦ってみたいけど。


俺は息を整え、真っ直ぐとキース君を見据える。


そして、「縮地」スキルに「加速」スキルを重ねて一瞬の内に彼の背後に回り込む。

そして「虎撃」を縦に一振り。


ガシャアン!


と言う音が鳴る。

俺が斬ったのは、キース君が腰に下げる剣、それが付いたベルトだ。

自重で地面に落ちた剣がキース君の足元に軽い土煙をあげた。


慌てて振り向いたキース君の持つ剣も一気に弾き飛ばす。


「足元の剣を拾おうとしたら、もう一撃加えるよ」


「ま…参りましたっす…」


冷や汗を垂らしながら、キース君は両手を挙げた。


ふぅ…。


俺が納刀すると同時に、観客席から拍手が聞こえてきた。


さっきおっちゃんを蹴り飛ばした時は爆笑だったんだけどな。


〜〜〜〜〜


戦い始めて1時間くらいしただろうか…。


ほとんどの相手が1撃か、良くて2撃でKOだったため、残る対戦相手は最初に絡んできた全身鎧(フルプレート)の女性副団長=ナスカさんだ。


弱冠17歳の副団長。それも女性。

全く…ファンタジーだな…。


「さっきぶりだな、弟分」


「アンタに弟分って呼ばれるのはなんかなぁ…」


「ふん。ヘラヘラした所がアルトリウスに似ているな。

本当に弟なんじゃ無いのか…?」


「ソンナワケナイジャン」


はい。「ポーカーフェイス」スキル全力発動。


「まぁいい…先に言っておくが、私は今までの者と同じ様に数手で倒せると思うなよ…?」


「はいはい…」


そのセリフ、あんたから2人前に戦ったおじさんも言ってたよ。

ワンパンだったけど…。


「最初から手加減無しだ」


彼女は自身の身長と同じくらいの大きさを誇る大剣を、軽々と片手で構えた。


「ナスカちゃんも程々にねぇ」


「うっさい死ね」


「ナスカちゃん、手厳しいな…」


団長に対して「死ね」とか言ってるよ、この副団長…。


「それじゃコレが今日最後の対戦ね…始め!!」


彼女は大剣を構えているのだが、またそれとは別に…レイピア?の様なものを腰に装備している。

どっちが得意なのかは知らんが…


保持スキル

・「大剣」8

・「細剣」8

・「ナイフ」8

・「反射」7

・「タフネス」7

・「空間把握」6

・「筋力増加」8

・「加速」4

・「耐性:火」4

・「危機感知」6

・「礼儀作法」6

・「料理」8

・「騎乗」5

・「裁縫」5


このステータスを見る限り、どっちが得意とかは無さそうだ…。

レイピア…は多分「細剣」だろう。

「大剣」も「細剣」もどちらもスキルレベルは8。


「来ないなら…こちらから行くぞ!」


なんと言うか…彼女の大剣は凄くシンプルな形状だ。

形状はただの長方形の厚い鉄板。

その片側に刃が付いているのだが、その角度はかなり鋭利で、俺の「スカラベバスター」とは違ってしっかりと「斬る」事を考えられている様だ。


彼女がその大剣をしっかりと握りしめた。


対して俺も「スカラベバスター」を握りなおす。

相手が「大剣」ならこちらも、と考えて「スカラベバスター」を選んだんだが…ちょっと不安だ。


なのでいつでも武器を交換できる様に、腰には「虎撃」を下げている。


「はぁぁ!!」


ナスカさんの全力の振り下ろし攻撃。

「大剣」と言う重さと、彼女のスキル「筋力増加」を活かすなら、やはり振り下ろしが良いのだろう。


俺は迫り来る刃を、「スカラベバスター」を振り上げて迎えた。


が…。


「ん、ぐぅ!?」


俺の想定を遥かに上回る衝撃が全身を襲った。


それによく見ると、「スカラベバスター」に彼女の持つ大剣が沈んでいく。

現在進行形で、彼女の大剣は俺の大剣を断ち切ろうとしているのだ。


「くっ…そぁ!!」


予期せぬ威力の攻撃に一瞬戸惑ってしまい、少し本気で「スカラベバスター」を押し返してしまった。


結果…俺の持つ大剣は、その刀身を見事2つに分断された。

く…むしろ力を加えた所為で、助力になったか。


切られた刃先の方は少し離れた所まで飛んでいき、地面に刺さった。

それと共に、遮るものの無くなったナスカさんの大剣は勢いそのままに地面に突き刺さり、土煙を上げた。


そりゃ周りもざわつくよ…俺もそっちの立場なら同じ様な反応だったろうよ…。


「で…次はその腰の剣を使うか?」


ナスカさんは地面から大剣を抜きつつ、ヘルムで見えないその目をこちらに向けて来た。

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