表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「そうだ、王都へ行こう」
65/68

<幕間>兄貴の思い出

大和の兄貴が死んだと聞いたのは、昨日の夜だった。


あの特撮バカが死んだなんて信じられなかったが、実際に兄貴の遺影を見ると、一気に実感が湧いてきて25歳を過ぎてんのにワンワン泣いてしまった。


どんだけ俺は兄貴を慕ってたんだか…。


死因は事故。


それも、イキがったバカなヤツらが車のギアを入れ間違えて兄貴を轢いたんだと。

無免に飲酒、加えて未成年。


ホント…嫌な世の中だな…。

こんなヤツらのせいで兄貴は…。


気がつくと、俺は実家の車庫に居た。


このバイクも最近は乗ってなかったな。

そういやぁ兄貴のバイクを改造した時は楽しかったな。


俺は正直、そんなに特撮が好きなワケじゃなかったが、兄貴がめちゃくちゃ熱く語ってたのを思いだす。

確か、スッゲェスピードで動けるカブトムシモチーフの赤い特撮ヒーローがお気に入りだとかで、

兄貴のバイクも見た目をそのヒーローの乗ってたバイクみたいに改造したんだよな。


ツーリングはめっちゃ恥ずかしかったわ。

コンビニに止まると、「このバイク!あのキャラっすよね!」みたいな感じで高校生くらいの男子によく声をかけられたっけ。


兄貴も特撮バカだから、テンション上がってその男子たちとすぐ盛り上がるし。


あ…でもあの時は、さすがにヤバかったな…。


〜〜〜〜〜


「おい、おじさん、いい歳して特撮ゴッコかよ!」


ふと遠巻きに声をかけられ、振り向くと、道向かいにガラの悪い学生が4〜5人立っていた。


「兄貴、また変なヤツらっすよ」


「ま、こんなバイクに乗ってりゃねぇ」


「自覚あるんすか…」


「いや流石に27にもなれば自覚持つでしょ…。

それに好きでやってる事だし」


相変わらずこの人は…。


ヤンキー…でも無いな、単純にイキがってるだけのヤツらは、兄貴のバイクのモデルになったヒーローのマネをしてるが、明らかにディスってるのがわかった。

どっから絞り出してるか分からん変な声で「へ〜んし〜ん!」とか言ってバカ笑いしてるし。


ふと見ると、兄貴もそれを見てバカ笑いしてた。


…この人の好きな物に対する線引きが分からん。


「そろそろ行きましょうよ兄貴。

早くて夕方には小雨が降るかもって予報出てましたし」


「あはははは…あぁそうだな。

あはは、お前ら!面白かったぞ!また今度その変なモノマネ見せてくれあははは」


見るとイキがり男子生徒達は眉間にシワを寄せていた。

あぁ…兄貴、ワザとか知らないですけど、それただの挑発になってるんですよ。


「ヘラヘラしてんじゃねぇぞ、おっさん!!」


男子生徒の1人が何かを投げた。

それは、俺たちには当たらず、俺たちの後ろに位置するコンビニの窓にカツン!と当たった。


石だった。

直径2cmくらいの。


「おい…マジかよあのガキ…」


「おい、修兵(しゅうへい)…行くぞ」


「あ、はい」


兄貴に諭され、俺はバイクのハンドルを握った。


取り敢えずこの場から離れればいい。


そう思っていたんだが…。


カラン!

ギャ!ガガガガガガ!!!


俺の後ろで凄い音がなった。


流石に驚いてブレーキを握りしめ振り向くと、

俺のすぐ横を兄貴のバイクが横倒しになりながら滑っていった。

俺の後ろ数メートルの所には兄貴自身が転がっている。


「あ、兄貴!?」


向こうの方にいる男子生徒達も完全に顔が真っ青になっている。

あいつらか…あいつらが何かしたのか!!!


俺はすぐに男子生徒の方に向かおうとバイクから降りた瞬間、


兄貴がムクリと立ち上がった。


「俺は…出来た人間じゃねぇんだよ…。


あの作品はスゲェ好きだよ。

バイクを改造するくらい好きだよ…。


流石にそれをバカにされていい気分じゃ無いけど…正直、俺が勝手に好きなだけで、バカにされてる作品自体は誰にどう見られて様が知ったこっちゃない」


「あ、あにき…?」


「けどさ…あのバイクは俺も一緒に改造したんだから、怒るよねぇ!!!」


「あに…!!」


バイザー越しに見えた兄貴の目は…なんと言うか「怖かった」。

そんな兄貴の目に怯んでいるうちに、兄貴自身は踵を返して男子生徒達に殴りかかって行った。


後から来た警察にいろいろ聞かれたんだが、正直俺は何が起こってあんな喧嘩になったのか一連の流れを見てないんだよな。


とか思っていたら、ちょうどコンビニの入り口に設置された監視カメラが撮っていたらしく、特別に見せてもらえた。


男子生徒が何かを投げた、直後、兄貴のバイクの後輪から変な火花が一瞬出た。


多分…男子生徒が投げたのは小石だろう。

それが運悪く後輪のチェーンとか何かに巻き込まれた…と言った所か。


その事を話すと、警察は店員に話を聞きに行った。


店員も男子生徒が石を投げていたのは見てたらしい。

一度窓にも当たってたしな。


〜〜〜〜〜


あん時は警察の人も物分かりが良い人で、「こりゃあいつらが悪い!」とか言ってたしな。

地元警察様々でした…。


てか…今考えてみると、兄貴のこんな話って結構あるなぁ…。


あの人、自分や自分が直接関わってない事には結構ルーズな感じだけど、自分が直接関わった人とか物に対してはキレるんだよな…。


変な人…。


そんな事を考えてると、また涙が出てきた。

兄貴の家で枯らしたはずだったんだけどな…。


くそ…久々に走りたくなってきた。


そう思い、俺は久しぶりにバイクに跨った。

兄貴と笑いながら改造した「CBR1000RR」…見た目は完全に特撮ヒーローが乗ってたバイク。


けど…恥ずかしさは無いな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ