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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「そうだ、王都へ行こう」
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兄弟の会食

王都に来て1週間程経った。


正直言って現状やる事がない。


クリサリス・ファニーの情報やスレイブキリング自体の情報は、微々たるものが集まっているのだが、決め手に欠けると言うか…


「○○で○○らしき人物を見た」

「○○で○○が○○してたらしい」


とか、そんな目撃情報だ。

一応情報が入ればそれを確認に行ったりしているのだが、生憎ほとんどが勘違いだったりするのが現実である。


かく言うその目撃情報も、昨日の時点で集まっている物は確認し終えてしまったので、本当に今日は予定がない。

マリシテンは美術館に行っているし、アニスはヒビキさんと図書館に行っている。


ヒビキさんに聞いたのだが、今この世界は時期的に秋の半ばといった状況らしい。

四季は有るにはあるが、2年で1周…つまり元の世界の倍はあるんだとか。

ただ、これから冬に向け徐々に寒くなっていくらしく、それに備えて冬用の薪をルーシーさんがせっせと用意している。

レイラとランは薪割りを手伝っている状況だ。


そんな時、思わぬ訪問者がやって来た。


「よ!今暇か?」


「なにかご用事でしょうか、守衛団団長サマ…」


「そう硬くなるなって、もっと砕けた感じで良いぞ!」


「そうか。じゃ何しに来たアルトリウス」


「砕けるの早いね…。

ま、元々のアルはそれより酷かったし、別に良いか」


なんか…「アルキウス」という男が逆に気になってきた。

取り敢えず…肉体的には「兄」なわけだし、本人も気にしていないようなので、接し方は楽な方を取ろう。


「で?昼間から守衛団団長さんが何の用で?」


「うん、ちょっとね、久々に会った事だし食事にでも誘おうかと思って。

フォルデンスタイン邸宅に居るって事はバルバトス商会の人に伺ったから、こうしてやって来たのさ。


ちなみに今日は非番だ」


さて、運が良いのか悪いのか…現状早急にやる事も無い…。


…この際だからいろいろ情報収集も兼ねて、話に乗っておくか。


〜〜〜〜〜


王都最大の繁華街=23大通り。

中央の公園を過ぎ歩いて数分の所にある食事処「バイキング」。


食堂なのかなんなのか分からない店名だが、店内は賑やかな「大衆食堂」という感じだ。

居酒屋ほど喧騒にまみれては居ないが、レストランほど静かでも無いと言う雰囲気だ。


「いやぁ〜アルと2人で食事なんて何年ぶりだ?」


「記憶がアレなんで」


「だよねぇ〜」


席に座ってから数分。

ウェイトレスの女の子が注文を取りに来た。

席にメニュー表は置いておらず、奥の方に見えるメニューから料理を選ぶ。

料理の名前だけしか書かれていないんだけど…結構分からん。


ウェイトレスの子は、アルトリウスの顔を見ると「守衛団団長」…少なくとも「守衛団」の人間と理解してかお辞儀していた。

と言うとの、アルトリウスは私服なのだが、左腕に「守衛団」のワッペンを付けていたからだ。


本人曰く、非番でも付けなきゃ行けないルールらしい。


「んじゃぁ…「闘鶏炒飯(バトルチキンライス)」の「水髪スープ」セットで。

アルは?」


「あぁ…同じので」


こんなすぐに「闘鶏(バトルチキン)」を味わえるとは…。

よくよく考えたら、ギルドでもポピュラーな食材なら大衆食堂でもポピュラーか。

にしても「水髪」ってなんだ…。


料理自体が出てくるのは割と早かった。

だいたい3分くらい?


闘鶏炒飯(バトルチキンライス)」は、絶妙に期待を裏切り、ただの大盛り炒飯だった。

まぁ、俺の知ってる炒飯よりは入っている肉が大きめってくらいだ。

だいたい4〜5cm四方?

それと「水髪スープ」だが、これは髪の毛のように見える「海藻」だった。

味としては「もずく」に近い。

だが「もずく」よりもかなり細く、色も黒々としている。

しかもこのスープ、普通に美味い。


何よりも驚いたのが、アルトリウスはそのスープを炒飯に掛けていた事だ。


「お前もやってみろ!思ってるより美味いから!!」


と、豪語されてはやらないわけには行かない…。


若干引きつつ兄上に倣いスープを闘鶏炒飯に掛けて食べた。


思った以上だった。


思った以上にただの「あんかけ炒飯」だった。


〜〜〜


「そう言えば兄上…聞いて良いのかアレだけど、イザナイグサはどうなってる?」


砕けた喋りで良いと言われても、流石に呼び捨ては気が引けたので、取り敢えず「兄上」と呼ぶ事にしている。


「あぁアレか。

まぁ…そこまで大きな成果を上げているわけではないな。

やらかしてるわけでもないけど。


ただ気になるのが、北西の森林…あぁあの草原を超えたとこな?

あの近くに植えたイザナイグサは、どうも枯れるのが早いんだよなぁ…。

土壌の問題か?」


俺はその話を聞きつつ、視界の端に「マップ」を展開して確認した。


…ちょうど俺たちが来た方向。


多分…と言うか十中八九「亜人」達が何かしてるんだろうな…。


かと言ってチクるわけにもいかないし…。

コレは一回カルナさん辺りにも聞いてみるか。


「…そう言えば兄上は「スレイブキリング」について、何か知ってる?」


「スレイブキリング?…あぁあの亜人奴隷だけを狙ってるヤツらか?

またどうして?」


「いや…ちょっとギルドからスレイブキリング関連の依頼が有って。

それで些細な事も含めて調べてるって感じ」


ちょっと怪訝な顔をしている…コレは微妙に疑ってるか?


まぁココで嘘言っても仕方ないし。

守衛団団長ならそれなりに情報を持ってそうだし…。


俺は持っていた鞄から1つの羊皮紙を取り出した。

まぁ…正確には鞄から取り出すフリをして「アイテムボックス」から出したんだが…些末な事だ。


その羊皮紙を受け取ったアルトリウスは黙読する。


「…お前コレ…本物か?」


「え?」


いや本物じゃなきゃなんだっての?!


「…お前…今レベルいくつだ?」


アルトリウスが急に真剣な目で俺を射抜いた。

さすがは「団長」と言うべきか…なかなかの覇気を感じる。

ただ…正直ここ最近、こう言った視線でよく見つめられる事があった為か、不思議と緊張したりはしない。


さて…だいたい何レベルって言うのが良いのか…。


「人にレベル聞くのって失礼じゃない?」


「うっさい、兄弟で関係あるかよ。


にしてもこの依頼書。

フォルデンスタイン氏直筆じゃねぇか。公式、私用、どちらの認印もされてるなんて…。

大体俺のレベルくらいでもこんな依頼があるかどうか…」


てことは…アルトリウスは49レベルだから、

それより高いレベルが普通なのか…。

…さてと、変に怪しまれなきゃ良いけど。


「で、レベル何だ?」


「…57デス」


「…50超えてるのか、お前」


いえ、本当は657です。

100の位を切り捨てただけです。


「そっか!!お前もう60レベル近いのか!!

すげぇな!!

一体何やったんだ?戦闘…じゃないよな?!

もしかしてアレか!魔法か!!そうだろ!


いやぁ〜!さすがは俺の弟!抜け目がないなぁ!」


あ、あれ?

疑ってないのか?


「なぁアル!今度さ、守衛団に遊びに来いよ!

ウチの守衛団でも50超えてるヤツはいないからさぁ!

なんか色々見せてくれよ!な!」


うっはぁー!!!

そう来たかぁ!!!


「い、いやいや、本職の騎士様に見せるものなんて…」


「軽く手合わせするだけだから、な!」


この世界の人間はこう、何かにつけて「手合わせ」「手合わせ」って!!!

この脳筋たちが!!


…結局数十分の問答の末、俺は後日守衛団に出向く事となった。


だって…兄上は押しが強い上に、声も大きく、周りの客たちがこちらに注目し始め、何人かはアルトリウスのワッペンに気付いてザワザワし始めたのだ。

こうなると逆に俺への注目が集まったわけで…。


「守衛団の人間…それも団長の頼みを断ろうとしてるあの少年は何だ?!」


と客が話し始めた事により、俺はすっかり折れてしまった。


〜〜〜〜〜


いやぁ〜それにしてもアルのやつ、いつの間にかちゃんと成長してたんだなぁ〜!

兄さんは嬉しいぞ!


さてと…日程的には…うん。この日がいいな。

後から伝えに行こう。


57レベルか…俺も精進しなくてはな!


…そういえば…アルは何故「スレイブキリング」についての依頼を受けてたんだ?


あの、人の上下関係をやたら気にするあいつが…。


あいつのせいで何人のメイドがウチから出て行った事か…あ、いや、依頼書には「ヤマト・クロード」名義だったし…あいつが人格変わってから何かあったのか?


ふむ…。

スレイブキリング。

それなりに世間を騒がせている「亜人奴隷」のみを狙う集団。


王都でもその被害はある。


「亜人奴隷」自体、貴族がよく所有しているからな。


まぁそのほとんどは人間の奴隷と違って「自衛」のための「戦闘奴隷」だが。


王都、「内壁」の奥。

貴族や高官が住まう区域になっている上に、その「内壁」自体、王城を護る砦でもある為、警備は国中のどの街とも比べ物にならない程だ。


だが、「スレイブキリング」の連中はそれを難なく越えて「亜人奴隷」を殺害する。

まぁ被害者が「亜人」と言うこともあり持ち主達は「損をした」程度にしか思って居ないが…俺たち「騎士団」からすれば、「難なく壁を超えた」という事が重大な問題だ…。


はぁ…まったく。


あ、そう言えば。

アルにスレイブキリングの話をしてやるのを忘れてた。


ま、今度でいいだろう。


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