友達申請の承認
「友達…ですか?」
「はい…私は…全然外に…出ないので…お友達が…いないのです…。
ヤマトくんは…ユキカゼの様…な…安心感が…あります。
だから…お友達に…なって下さい」
あぁ…ユキカゼと似てるって…それは同じ転生者だからとかじゃないのかなぁ…。
でも、こんなハッキリと「友達になりたい」とか言われるのも…多分幼稚園の時以降なんじゃね?
そう思うと、なんか感慨深い。
それに、俺は友達申請は取り敢えず承認するたちだ。
ソシャゲはいつもそうだったし。
「あぁ…それじゃぁ、よろしくお願いします」
「良かったですね、お嬢様。
いささかやり方が斬新でしたけど」
「うぉあ!?」
ビックリした!!
いつの間にか戻ってきたメイドのルーシーさんが居た。
音もなく後ろに立たれるのは本当に慣れない。
「危機感知」スキルは自分か仲間に対する「危機」とか「敵意」を感知するスキルだから、こーゆーのは感知しないんだよなぁ…。
ただ人の気配を探るスキルとか無いのかね?
取り敢えず目をつぶって、今いる部屋の構造を意識してみた。
…ダメか。
・「空間把握」10
そっちかぁぁぁぁあああ!
「どうしたん…ですか?
ヤマトくん…?」
「そんなに驚いて頂けるとは恐縮です。
タイムラグを感じましたが」
2人が不思議そうに俺を見ていた。
〜〜〜〜〜
「あのさ…兄さん…何があったらそうなるわけ?」
「主殿…何をしたんだ?」
「亜人じゃ無いだけマシ…ですが、さすがに短時間に何があったかの説明くらいは頂きたいですね」
「ご主人様…」
四者四様の反応だが、指摘してるものは同じである。
「あぁ…正直俺もわからん…」
白髪の先輩転生者は、俺の右腕にがっしりと抱き付いているのだ。
何がどうしてこうなったのか?
と言う問いはごもっともだ。
…なんと言うか。
一言で言えば「ヒビキさんの「友達」の定義がズレてる」って感じか…な?
ルーシーさんは、夕食の時間になるという事で俺とヒビキさんを呼びに来ていた。
そして、応接室を出る時、急にヒビキさんが抱きついてきたのだ。
「お友達なら…一緒に…行きましょう」
そんな理屈を鵜呑みに出来るはずもなく、最初は断ろうとしたんだけども…
いや、今にも大声上げて泣き出しそうな顔されたら…そりゃ…拒否できないっす。
レイラさえも変な誤解をしているのか、涙目でこっちを見てる。
やめてくれ。
なんか俺が悪い事してるみたいじゃねぇか!
何とかみんなを宥めて、俺は空いている席に座った。
…と言うかその空いてる席と言うのも、ルーシーさんが何か気を使ったのかヒビキさんのすぐ隣の席という状態だし。
〜〜〜
食事の後は、長旅の疲れを癒す目的もあり早めに眠る事にした。
ちなみに俺は個室なのだが、レイラを始めとする旅の仲間達は大きな1つの部屋に寝る事になっている。
とは言っても隣の部屋だけどね。
マリシテンとランが問題を起こさない事だけを願うばかりだ…。
さすがに「一緒に…寝ましょう…」と言うヒビキさんの申し出は必死に辞退させてもらった。
ただ…あまりの押しの強さに「もっと親しくなってから寝ましょう」という約束をしてしまったのは、後から考えたら大変まずい事だったのでは無いかと、現在反省している次第だ…。
…反省した所でどうにもならないわけだが。
まぁ明日明後日の話では無いからな。
先延ばしにしてる問題が他にもあった気がするが…ま、いいか。
そんな事を考えていると、いつの間にか夢の中にどっぷりと浸かっていた。
〜〜〜〜〜
翌朝。
顔を出した朝日とちょうど鉢合わせた。
なんとまぁ早起きだ事。
寝たのも早かったしそりゃそうか。
それにしても、なんだかんだ言ってかなり俺も疲労が溜まっていたのかな?
久々のフカフカベッドは素晴らしい寝心地だったし、肩が軽くなった気がする。
気がするだけで特に何も変わって無いのかも知れないけど、そんな気がするだけでも良い事だわ。
…とか考えてたけど、
朝食の際にまたヒビキさんがくっついて来た時には、何処かに行っていたはずの「何か」がまた戻ってきて、俺の肩を重くした様だった。
この先輩転生者…どうしようかしら…。
〜〜〜
カルナさんとの待ち合わせがある為、俺はアニスを連れて王都にある「バルバトス商会」の本店にやってきていた。
フォルグスとミーアは、ここに併設された宿舎で寝たらしい。
「お、今日は他の子たちは連れて無いのかい?」
「さすがに目立ち過ぎますからね…ギルドカードも持っているアニスだけ連れてきました」
マリシテンは亜人では無いので連れてきても良かったのだが、レイラとの訓練があるとかで留守番だ。
ちなみにランは、メイドのルーシーさんに気に入られたのか、仕事の手伝いをお願いされてたな。
「んじゃ取り敢えず「騎士団詰所」に行こうか。
今日行く事は言ってあるからね」
移動はカルナさんが用意した馬車だ。
馭者はフォルグスさん。
俺は「アイテムボックス」から大樽と中樽を取り出し荷台に積み込み、同時に俺らも荷台に乗った。
「んじゃしゅっぱーつ!」
カルナさんがやたら元気にそう言ったあと、馬車は騎士団詰所に向けて進みだした。




