白髪の転生者
「ヒビキ・ミナザワ・フォルデンスタイン」
「フォルデンスタイン」という事は、ユキカゼさんの親類にはなっているのか。
保護者かな。
マリシテンの銀髪とは違う真っ白な髪。
さっきのメイドさんよりは短い髪だが、メイドさん同様「姫カット」だ。
スラッとした身体に、端正なとても整った目鼻立ち。
なんか、CGを見てるみたい…。
ふと、気が付いたのだが…彼女の目の色が左右で違う。
右目は水色なのだが、左目の方が瞳がグレー…と言うか、ほとんど白に近い。
その上、よく見ると左目を覆うように火傷?みたいな痕がある。
「…気に…なります?」
「え?あ、ごめんなさい」
「いえ…大丈夫…です…。
慣れています。
左は…見えないん…です」
黒いシンプルなワンピースに黒いケープを肩にかけた女性は、小鳥がさえずる様なキレイな、それでいて今にも消えそうな声で言った。
ちょっとデリカシーに欠ける事をしてしまった…。
申し訳ないな…。
「お気に…なさらず。
スレイブキリングの…お話は…後ほど」
そう言ってヒビキさんは、俺以外の3人に目を向けた。
「確か…」
「あ、紹介します。
彼女がレイラで、こっちがアニス。で、それがマリシテンです」
「それってなんですか」
シスターがなんか言ってるが聞き流す。
「一応あと1人外にいるんですが、そっちがランです」
「存じて…います。
ユキカゼから…伺って…いますので」
あ、なるほどね。
ふと、ヒビキさんが何か思い出した様な顔をして言った。
「ところで…王都での…宿はお決まり…ですか?」
この人の話し方は…ゆっくりと言うより、言葉を絞り出してる感じに思えるな。
「いえ。これから探す所です」
「なら…ここを使って…下さい。
私と…ルーシーしか…居ませんから」
なるほど…だとしたらかなり楽だ。
それに、正直宿が見つかるとも思えなかったし。
「そうですか…なら、お言葉に甘えさせてもらいます」
「部屋は…ルーシーが…案内します。
あ…ヤマトくんは…お話がある…ので…残って下さい」
ヒビキさんがそう言うと同時に、扉が開いた。
「では、お部屋まで案内いたします」
ルーシーさんが見計らったように立っていた…すげぇなこのメイドさんは。
〜〜〜
部屋には俺とヒビキさんのみになった。
マリシテンとレイラは残ると言っていたが部屋に行くよう諭して、なんとか現状部屋に2人となっている。
「ユキカゼ以外…同郷の方は…初めて…見ました」
「俺もです」
「えっと…スレイブキリング…については…明日までに…纏めておきます」
「あ、ありがとうございます」
「…」
「・・・。」
会話続かねぇぇえ!!
どうしろっての?!
何か話があるとかじゃなかったのか?
まさか「話」ってこれだけ?!
そうじゃないなら何故俺は1人残された!?
刻一刻と時間は過ぎる。
特に会話もなく。
何気にキツイ…。
実際には30秒とか1分程度なんだろうが、体感時間はかなり長いもので、そろそろ俺から何かしらの話題を振ろうと思ったころ。
「あの…」
「はい、なんでしょう?!」
「ヤマトくん…「こちら」では何を…してます…か?」
「こちら」と言うのは、まぁこっちの世界の事だろうな。
ユキカゼさんからは、そこらへんの話は無かったのだろうか。
「一応、ギルドの冒険者…ですかね?
それでユキカゼさんとも知り合いましたし。
ヒビキさんは?」
「私…は…」
そこまで行って、ヒビキさんは停止した。
ちょっと待て。そこで止まられたらどうすれば良いのか全くわからん!!
「…引きこもり…でしょうかね?」
・・・返答に困る。
「へぇ〜引きこもりなんですねぇ!」…コレはそこでまた会話が止まる。
「なんで引きこもりなんですか?」…ユキカゼさんに聞いた理由があるから、そんなのわかりきっているし、聞く勇気はない!
「いいですねぇ!」…皮肉にしか聞こえん!!
何が正解だ!!
思考を止めるな!俺!
「冗談…です…」
「冗談かよッ!?マジで困ったわ!!
…はっ!!」
しまった!!
ついいつものノリでツッコんでしまった!!
初対面の、しかも見るからに人付き合いニガテそうな女性に!!
「あ、あの、すみません!」
「いえ…気に…しないで下さい。
同郷…ですし…。
それに…悪い気持ち…では…ないですし」
そう言って彼女は儚げに微笑んだ。
「何か…緊張して…いるようでした…から」
「あ…えっと、気を使わせてしまって、すみません」
「いえ…。
私は…基本的には…研究で…外に…出ませんから。
引きこもり…というのも…間違い…じゃありません」
そう言いながら、ヒビキさんが歩み寄ってきた。
端正な顔立ち…正直、キレイさと可愛さ、幼さと大人っぽさが同居する、奇跡的なまで美人女性に近付かれたら、心拍数は跳ね上がる。
「ヤマトくんは…ユキカゼに…似た様な気が…します。
けど…全く違う…気もします」
人を見ている…もしかして…?
保持スキル
・「危機感知」9
・「耐性:物理」4
・「性技能」6
・「精神力」7
・「鑑定:人間」10
・「索敵」9
・「聞き耳」10
・「棍棒」8
能力
・「全道具操作
・「記憶再生
やっぱり。
「鑑定:人間」のスキル持ちだ。
その上、カルナさんを超えてスキルレベルが10。
…それってもはやプロファイリングの域じゃね?
そうこうしている内に、ヒビキさんは俺のすぐ目の前に立っていた。
「あ、あの…」
「こういう…事は…恥ずかしい…ですけど…」
な、なに?!
恥ずかしい事ってなに!?
「ヤマトくん…」
「はい…なんで、しょう?」
「私と…お友達になって…下さい!」
ヒビキ さん からの 友達申請 が あります。




