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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「長いチュートリアルは面倒だと思う」
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今後の目標

「君の元にランを送ったのは僕だよ」


微笑みのままユキカゼさんはサラッと言った。

あぁ…っと待てよ。

回れ!俺の頭!!

思考を巡らせろ!


「…もぅ一回言ってもらっていいですか?」


何言ってんだ俺!!!


「君の元にランを送ったのは僕だよ」


ちゃんと言ってくれた。

どうもありがとう、コノヤロウ。


「ええっと…ランを送った?」


「あぁ。

事の成り行きとか説明した方がいいかな?」


無言で首を縦に振った。


「簡単な話さ。

ランのあの姿と大きさだ。

最初は魔獣と間違えられてね、僕の所に報告が来たんだよ。


それを取り敢えず保護して話を聞いたのさ。

僕としてはちょうど君と接点を持ちたい所だったからね。

姉の事など、ヤマトくんに頼むと良いと言ったんだ」


おぉ…なるほどぉ…。


「既にランにはラーナさんが生きている可能性について、まだ猶予がある可能性については言ってあるからね。


それと…さっき話した、僕が過去に出会った転生者。

1人目や5人目は結構…良い印象が無かったからね。

それを確認する為にもランにはいろいろ報告してもらっていたんだよ。


まぁ思ったより早く君がギルドに仕事を受けに来てくれて、いろいろと考えてた手間が省けたんだけどね」


よくよく考えてみると…確かにランは思ったより姉が行方不明になった現場について詳しかった。


首輪が外れてたとか、現場検証などした者じゃないと分からないはずだ。

すくなくともその報告資料とか見ない限り。


それにラン自体、余り俺を急かさなかった。

姉が行方不明で、下手すればもう死んでいる可能性もあるのに。


ユキカゼさんの話を知っていたから、そこから来る余裕だったのか。


それに、ユキカゼさんの持っていた俺の情報。

レイラやマリシテンは良いとして…アニスの事も知っていたとなると…ランから報告を受けてたと考えるのが自然か。


まったく…。


ユキカゼさんとやら…悪い人ではないみたいだけどさ…裏がありすぎだ。

正直まだ見えない部分も多過ぎる。


けど…。


「はぁ…大体わかったよ。

どうせまだいろいろ隠してるんだろ?」


「あぁ、いろいろとね」


微笑み。

こんなおおっぴらに「隠し事あります!」って言う人、初めて見たわ…。


だが、彼の持つ情報やその地位は…かなり有用だな。


現状まだパートナーとか仲間ってより「呉越同舟」って言葉の方が合う気がするけど…。


「あなたの話に乗るよ…。


「同郷」のよしみだしな」


「そう言ってくれると、ありがたいですね」


ユキカゼさんは右手を差し出してきた。

それを見て俺は1つ付け加える。


「ただ、訂正したい事がある。


さっきユキカゼさんは、俺に「スレイブキリングを叩くだけ」と言った。

あなたの情報を元に動くだけだと。


けど、俺はなんかその支持されて動いてる感じは嫌だ」


「…と言うと?」


「俺とあなたは、現状歩いてる道が隣り合っているだけだ。

だから…立場としては上下はない、対等なものとして考えて欲しい。

無理だと思えば聞かない頼みもあるって事だ」


ユキカゼさんは「なるほど」と言うように1つ頷いた。


「それは構いません。

先ほども言いましたが、冒険者には決断力と「諦め」を見定める能力も必要ですからね。


そこは問題ありませんよ。


その道が同じ方向を向く間は、しっかりと協力させて貰いましょう」


俺はそう言ったユキカゼさんの右手を、がっちりと握り返した。


〜〜〜〜〜


「改めて…

「魔王国ギルド」から派遣されて来た事になっている。

ラン・ラクネリオス=アラクネアだ。


状況が状況故に、ユキカゼ殿に便宜を図って貰っているため、幾つか主殿について見知った情報をギルドに報告していた。

密偵の様な行動をして申し訳ない…!」


数日前にも見せてもらった、ランの綺麗で器用な土下座。

その前には俺、そしてレイラ、アニス、マリシテンが座っていた。


「ヤマト様、こいつはやはり信用できません。刈り取りましょう」


「マリシテン、ナイフしまえよ…」


ギルドから帰宅する頃にはすっかり陽も沈んでしまい、レイラやアニスが何気に心配していた。


帰宅してすぐに俺はロディーナさんに頼んで部屋を1つ開けてもらい、そこに旅の仲間とランを呼んだ。


そして、俺はランにユキカゼさんからある程度聞いた事を伝えた。

んでもって結果がこのランの土下座であった。


「取り敢えず、今さっき話したのが、俺がギルドに言われた事だ。

なので、ギルドからの正式依頼で、レイラを狙った…そしてランの姉を誘拐した「スレイブキリング」を叩くことになった。

まずはランの姉を監禁しているヤツを1ヶ月以内に探すってのが当面の目標だな」


アニスが不意に手を挙げた。


「でもさ、依頼(クエスト)どうすんの?

明後日には王都に向けて出発するんだよ?」


「まぁそれもそうなんだが、王都には俺が話を聞いたユキカゼさんが保護してる人が居るから、まずはそっちに顔を出す事になってる。

そっちもそっちで「スレイブキリング」についての資料をまとめてるらしいからな。


それと、コレもユキカゼさんが言ってた事なんだが、

ランの姉を誘拐した「クリサリス」と言う男。

コイツは人目につく所に作品を飾る様に遺体を「展示」しててな、

過去に起こった12件の事件の内、7件が王都で遺体が発見されてる。


だから、王都にはそれなりに証拠や情報がある可能性は高いと思うから、現状そのまま明後日には王都に向けて出発する」


「なるほどねぇ〜」と呟いてアニスは腕を組んだ。


「何はともあれ、まずは王都に行く。

詳しくはそれからかな」


「はいよ〜」

「わかりました」

「はい」

「了解した」


俺の周りの4人はそれぞれ頷いた。


〜〜〜


「あの…ご主人様」


「ん?どした?」


孤児院のみんなに夕飯を作り、わいわいと賑やかにそれを食べ終わると、子供達は寝る時間。

そして、それからは大人の静かな時間である。


この孤児院は教会と建屋が繋がっている。

教会の方は正直いって何教とか聞いたわけじゃないし、もはや形として教会が残っているだけでほぼ孤児院のみの建物になっている。

その教会なんだが、さすがに形だけでも教会という事もあり夜通し明かりが灯っている。

なんか、この教会の元々の慣わしなんだとか…。


俺はユキカゼさんが手土産と言って持たせてくれた紅茶を飲みながら本を読んでいたところ、そこにレイラがやって来たのだ。


「あの…私が居るから…この様な事になっているのでしょうか?」


「…と言うと?」


「私が…ご主人様の奴隷で…私が「黒龍人」だから…ご主人様はギルドに呼ばれたり、「スレイブキリング」と言う集団に狙われたり…」


あぁ…そゆこと。


「まぁ…ぶっちゃけた話確かにレイラが亜人じゃなかったら、少なくともスレイブキリングは来なかったかなぁ…。


でも、別にそれだけの話だし、アイツらが勝手に来ただけだし。

そもそも、レイラだけじゃなくアニスだって亜人だよ?

なんならランも亜人だ。


そこでレイラにだけ何か迷惑に思うとかは全く無いから、安心して」


レイラはいつの間にか涙目になっていた。

何か言おうとしたのか、口元をピクリと動かしたが、結局何も言わなかった。


俺はレイラに手招きし、隣に座らせた。


「ユキカゼさんから貰ったんだけど、コレ美味しいからレイラも飲みな。

なんか「安眠効果」とかが有るとかで、結構良い感じだよ」


雑だが紅茶を勧めた。

まぁ「安眠効果」もそうだが、大きな意味で言えばリラックス効果があるのだ。


わざわざ静かな時間に話をしに来たんだ。

レイラもレイラで悩んでたんだろうな。


紅茶を一口飲むとホッと一息ついたレイラは、先ほどよりもどこか安らかな表情だった。


紅茶すげー。


それからレイラとは他愛ない話をいくつかした。

孤児院の子供達との話がほとんどだったが、レイラは楽しそうに話していたから、まぁ良いだろう。

あとは、意外な事だったがレイラとマリシテンは意外と上手くやっているそうだ。


トリヴィアの襲撃後、無理やりマリシテンを着替えさせたり風呂に入れさせたりと結構な任務をレイラに任せてしまったが、

それ以降、風呂はどうか知らんが、少なくとも服は2日に1回くらいのペースで洗濯しており、

その際には必ずレイラの元に来ているらしい。


レイラはよく馬車で1人本を読んでいるのだが、アニスが洗濯を始める頃にマリシテンはレイラの元に行きレイラの服を借りるのだとか。

脱いだ服はレイラがアニスの元に持って行き、洗濯が終わるまで、マリシテンはレイラの隣で膝を抱えて座っているらしい。


なんと言うか、ちょっと微笑ましいわ。

なんだかんだ言って、俺は意外とみんなと一緒にいる時間が少ないんだと思った。


まぁ大抵街の本屋に行ったり、ロディーナさんの手伝いをしていたからな。


そんな話をしている内に、お互い眠気がぼちぼちやって来たので、残りの紅茶を飲んで部屋に戻り、

ベッドに横になった。


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