異世界への出発
「デリオールぅ。連れてきたよぉ〜」
真っ白な部屋の真っ白な扉を開けた自称死神だったが、
隣の部屋(?)は相反して、真っ黒な部屋だった。
正確には置いてある椅子やらテーブルやらは白いのだが、全体的には黒い。
「ちょっとサハラ!何人寄越すつもりよ!?」
「コレで最後だよお」
自称死神…サハラと言うのか。
「はぁ…分かったわ。
でももぅストックが無いから「新生」は出来ないわよ…?」
「しんせい?」
俺の呟きに部屋にいた女性はこちらに視線を向ける。
確か…デリオールって呼ばれてたっけ?
サハラの様な白いワンピース風の服に羽衣なのだが、
髪も目も真っ黒である。
少し猫目の、気の強そうな美人という感じ。
「あぁ…新生ってのはアレよ。赤ん坊からのスタート。
つまりアナタの魂専用の身体は用意できないのよ。
んんん…死にたてホヤホヤの人間の身体を再利用するしか無いわ」
ゾンビかよ。
「だってそうしないと、もともと生まれる予定だった魂が浮くじゃない」
まぁそうだよな…。
言うなれば順番待ちしている所を優先して通してもらったような感じなのだろう。
正直死神さん達の事情など知らないので何とも言えない。
「そぉねぇ・・・1番新鮮な物だとコレね。
アルキウス・クロード・キャメロット。
15歳。
崖から落ちてさっき死んだわ。
馬に乗ってて、地竜に追いかけられてたみたいね」
崖か…俺も崖だったけど、頭がパッカーンだったらしいからな…。
「これでもいい?」とデリオールさんは紙を見せてきた。
どうやらその「アルキウス」とかいう少年の様だ。
おい、そこそこカッコいいんじゃねぇか?
明るい茶髪に濃紺の瞳。
まるでファンタジーだな…いやさっき「地竜」とか言ってたしマジにファンタジーなのか。
「まぁ生き返らせて貰えるなら…。
あ、記憶とかは?」
「消しちゃったら、あたし達との話も消えちゃうからねぇ〜」
なるほど保持して行けるようだ。
〜〜〜
さて。
転生先も決まった事で、取り敢えず椅子に座らされた。
デリオールさんの部屋の椅子だ。
「はい、じゃちゃっちゃと行ってきて貰えるかしら」
言葉選べよ…。
デリオールさんが俺の頭に手を置く。
体全体を温かい膜に包まれた様な不思議な感覚…。
自然に瞼が重くなってくる。
自分の体が溶けている様な何とも形容し辛い感覚が不意にやってきた時には視界は光に包まれており、何が起こっているかは分からない。
ふと意識に直接響く様にデリオールさんの声が聞こえた。
「あ、そうそう。起きたら私からの贈り物置いとくから」
デリオールさんは現物でくれるのか。
スタンダードなとこだとチート武器とかって事かな?
まぁそんな事を考えたんだが、いつの間にか意識は途切れていた。