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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「長いチュートリアルは面倒だと思う」
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孤児院の一時

翌朝。


子供たちに朝ごはんを作ってあげ、みんなでご飯を食べた。

うん。

なんか学校の先生になった気分だわ。


「ねぇー、昨日居たっけ?」

「蜘蛛のねーちゃんがいるー」

「蜘蛛のお姉さん…噛まない?」


「…噛みはしない」


子供は全く強靭なもので、最初こそランのその完全に人間より蜘蛛に近い見た目や、頭の高さ自体は2mくらいある大きさからかなりビックリしていたが、いざレイラやアニスと同じような存在だと理解すると、そこから打ち解けるのは早かった。


まぁランも子供への接し方は分からないようで、たどたどしい雰囲気のみをまとっていた。


てか、スーネルもそうだったが、

危険度の確認が「噛まないかどうか」なんだな…。


「ご主人様ぁぁ〜」


ご飯を食べ終えた子供達はすぐにレイラを連れて行ったのだが、数分もしない内にレイラから助けを求める声が聞こえてきた…。

人気者って大変なんだな…。


ま、見た感じ追い込まれては居ないので微笑んで無視する。


アニスはロディーナさんと教会の周りの薬草を確認に行っており、

マリシテンも昨日と同様長椅子に座っているのみだ。

昨日より数名周りに子供が増えてた。


「あの…主殿…これは今、何をしているのだ?」


「何を…って特に何も?」


「な!?

スレイブキリングに対して何か対策を練ったりだな!?

何か、そう!何かやる事があるのではないのか!?」


えぇ〜…なんでこの人怒ってるの?


「そう言われてもなぁ…あいつらは勝手に襲撃に来ただけだし、多分あいつらの情報とかはランの方が持ってると思うぞ?」


ランは何か言おうとして口を開いたが、すぐに口を閉じ何も言わなかった。


まぁ…ランが言う事も分かる。

正直何かしないといけないのかも知れないが…現状俺らは「ただ旅をしている」だけだ。

小金を稼ぐために一応ギルドには登録しているが…正直貯金もあるし、今現在は特に切羽詰まっているわけでもない。


うぅ〜ん。


あ、そうだ。


「なぁラン。戦闘は得意か?」


「…えぇ。これでもアシダカアラクネだしな。

双剣術くらいならいくらか腕に覚えはある」


だろうな。

「双剣」スキル7だったし。


「レイラにそれ、教えられるか?」


「…レイラ殿にか?」


少し離れたところで子供たちに群がられているレイラに、ランは顔を向けた。


「教えることは構わないが…正直言って自分は7〜8割は独学…と言うか父の戦い方を見て真似た程度の双剣術だ。

それに「アシダカアラクネ」としての戦闘法でもあるから…レイラ殿に合っているとも言えんぞ?」


「別に良いんだ。

ただ、レイラは戦闘スキルを持ってない。

なのにスレイブキリングはレイラを狙って来ている。


常に俺やマリシテンが守れれば良いが…「常に」なんてのは正直無理がある。

だから、護身術レベルでも、レイラ自身が武器を扱えるようになって欲しいんだよ」


ランは腕を組んで思考を巡らせた。


「ならば…主殿が教えれば良いのではないか?」


「あぁ…その…」


どーしよ。

レベル差がありすぎて、何か間違いが起こって怪我させました、最悪死なせましたとかが怖いなんて言えない。


「まぁ他種族の交流だと思って受けてくれないか?」


かなり苦しいが…なんとか誤魔化してみる。


「うむ…まぁそうだな。取り敢えず出来ることはやらせて貰おう。

ダメならその時は主殿に任せるとしよう」


数秒の思慮の後、ランはレイラへの双剣術教授を引き受けてくれた。


〜〜〜〜〜


俺は1人カダルファの街を歩いていた。

理由は1つ。


鍛冶屋に行くのだ。


竜甲虫(ドラグーンスカラベ)」の素材を用いて、武器を作ってもらっており、それが出来ているかどうかの確認だ。


「おう、兄ちゃんいらっしゃい!


一応言われた通りの物は一通り出来たぜ」


俺の倍…いや3倍くらいは有りそうな太い腕のおっちゃんが、しわの多い顔を更にしわくちゃにしながら笑った。


街中に数件ある鍛冶屋の中で、このおっちゃんが一番レベルが高かったので、まぁ腕は確かだろう。

なにせ、レベル41だからな。

聞けばずっと鍛冶屋の仕事をしていてこのレベルなのだと言う。


すげぇな…。


「まずこいつだな。

「スカラベファイター」だ」


「スカラベファイター」片手剣

・「耐性:物理」「耐性:土」「耐性:風」


この片手剣は、キャメリアで購入した「オールファイター」を「竜甲虫」の素材で強化してもらった物だ。

「竜甲虫」の素材を使ったことでスキルが発生している。

「耐性:土」「耐性:風」はまだ持ってないスキルだし使えるな。


「んで次が「スカラベシールド」だ。見た目通り、それなりに重いぞ」


「スカラベシールド」大盾

・「耐性:物理」「耐性:土」


武器ではないが、コレは特注だ。

正直言ってあの強度なら盾の方が有用そうだったからな。

重いという割に、対して重くないな…。


あ、でも前の大剣の事もあったからレベルの恩恵か?


「で、最後にこれだ。

「スカラベバスター」だ。兄ちゃんの注文通り、普通の大剣の半倍デカイ図体してるからな、重さに文句は言うなよ」


「スカラベバスター」大剣

・「耐性:物理」


刃渡り約1.5mくらいの巨大な剣。

斬れ味よりは、その大きさから来る打撃力が凄そうだな。


ちなみに、作ってもらった武器の何れもがシャンパンゴールドに輝いていた。

結構派手じゃないか?

ナイフはそのサイズ的に余り気にならなかったけどさ…。


俺は取り敢えず全ての武器を受け取り、持っていたカバンの中に武器をしまう振りをして「アイテムボックス」に収納した。


最初はおっちゃんも驚きの表情を見せたが、「良いもんもってるな」と言ってきた。


アニスに「そーゆー鞄がある」と聞いててよかった。


「あ、そうだおっちゃん。ちょっと聞きたい事が有るんだけど」


「ん?なんだァ?」


「俺って旅をしてるから、何度もココに来れるとは限らないんだよね。

それでもし良かったらで良いんだけど、旅をしたりしてる鍛冶屋、みたいなのって居ないかな?

出来れば紹介して欲しいんだけど…


あ、もちろん、この町に来た時はおっちゃんに鍛冶仕事は頼むよ?」


もし、旅に鍛冶屋が着いてきてくれれば、かなり楽だ。

その場で素材を加工できるし、俺も手軽に進捗を確認出来る。


「んんん…?

そうだなぁ…鍛冶屋ってのぁ何処も店を構えるのが普通だからな。

何せ鉄の加工には「炉」が必要だしよぉ。

それ以外にも、大きな素材を扱う時は大きな道具が要る。

それを適宜使い分けてこそってとこもあるからな、そんなデカイ器具を持ち運ぶなんてのぁ俺でも骨が折れるぜ」


やっぱそうなるかぁ…。

だとしたら、どうにかして自分で鍛冶スキルを取得した方が良いのか?

…でもそれだともっと専門的な知識が必要だしなぁ。


「そうですよね…すいません、ありがとうございます」


「おいおいおいおい。別に「居ない」とは言ってねぇだろうよ」


え?マジで?


「俺との知り合いってんなら1人居る。

イストって言う緑髪のヤツでな、元は俺のとこの弟子だったが…ありゃ天才ってヤツだったな。

そろそろ20歳くらいだが、もう俺なんかより腕は良いんじゃねぇかな?」


「え、そのイストさんってのは何処に?」


「いや、しらねぇ」


・・・え?


「あいつぁ放浪癖がある上にすぐ迷子になりやがるんだよ。

かれこれ2ヶ月は見てねぇな…まぁ腕は確かなんだがなぁ。


一応旅に鍛冶屋を連れて行きたいってんなら、イストのやつはオススメだな。

元弟子だし、むしろ旅に出て更にどんだけ成長するかを見てみてぇ」


「ええっと…今は何処にいるか分からないんですよね?」


「おう!だから見付けたら声かけてみな。

カダルファの「ゴブーニュ親方からの紹介」って言えば話くらいは聞いてくれるはずだぜ。

緑髪のくせっ毛の女だからな、見たらすぐ分かるはずだ」


ん?え、ちょっと待て。


「女?」


「おう。女だ」


鍛冶屋の…女性ですか…。

なんかリアルゴリラな女性しか想像できない…。

だって紹介者のおっちゃんがこのガタイだもん…。


「あぁ…見付けたら声かけてみます、はい」


そう言って俺はお礼を言い俺は鍛冶屋を後にした。


〜〜〜


「ただいまぁ〜」


「あ、兄さんおかえり」


孤児院に戻ると、アニスがいろいろと道具を広げて何かの実験をしている様だった。


「何してんだ?」


「あぁ、一応この孤児院の周りの薬草を、すぐに使える様に加工してあげてんの」


なるほど。

いくら使える薬草だからって、「傷にそのまま葉っぱを当てる」みたいな使い方はしないしな。

それなりに加工が必要なわけだし、実際薬草を使いたい時って加工の時間も惜しいだろうからな。


「他のみんなは?」


「あぁ、シスターはずっと座ってる。レイラちゃんとランさんは裏の方にいると思うよ。

なんか双剣の使い方がどーのこーの…もしかして兄さんのオーダー?」


「まぁな。レイラのスキルは割と戦闘向きだし、それに「スレイブキリング」に狙われてるのはレイラ自身だから、ある程度護身出来るようにね」


アニスにそう説明した後、俺は孤児院の裏手の方にある開けた場所に足を運んだ。


孤児院の裏手には確かに開けた場所になっているのだが、周りは木々に囲まれているため、亜人であるレイラやランが行動しても表の方からは見えない形になっている。


「・・・双剣を教えてたんじゃなかったのか?」


「あ、ご主人様」


「主殿っ!!」


「竜のねーちゃんキレー!」

「竜ねえちゃん、もっとキレイにしてあげるー」

「蜘蛛のお姉さんの上高ーい!」

「行けー!蜘蛛ねぇちゃん!!」


レイラは女の子に囲まれ、花の冠を飾られたり、花そのものを乗せられたりしており、

ランの方は男の子に囲まれ、その内3人ほどは下半身の蜘蛛の部分、その背中に乗っている。


「わー、こどもたちににんきだねー」


「棒読みではないか!」


ランの見た目はほとんど蜘蛛の要素が強いため、確かに初見だと驚いてしまう。

だが、それに慣れた男の子からして見たら、鋭い脚が8本に、艶のある外殻…シルエット的にはカッコいいと思う部分がある。


角や尻尾のあるレイラも「カッコいい」と言えなくもないが、ランと比べると…うん、俺もランのシルエットの方がかっこいいと思う。


「主殿に言われたように、レイラ殿に双剣術を教えようとしたところ、子供達に見つかったのだ。

コレだとさすがに指導どころではないぞ」


「うん、別に急いでないから暫く遊んであげなよ」


レイラの方は、活発な男の子が全てランの方に行っているため、女の子達と座りながら花の冠を作ったり飾られたりしているので、昨日ほど切迫してはいない様…と言うか、むしろ楽しそうだ。


「えぇい!こうなったらヤケだ!!

坊主達!振り落とされるなよ!!」


「わっはー!」

「はやーい!!」

「いぇーい!!」

「俺も乗りたーい!」

「蜘蛛のねぇちゃんはぇー!!」


ランは何か吹っ切れ様で、男の子を乗せながらそこら辺を無作為に走り始めた。

数名の男の子がそれを追いかけている。


…うん。

なんか楽しそうだからほっとこう。


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