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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「長いチュートリアルは面倒だと思う」
34/68

チート能力の懸念

「トリヴィア・リリィ 24歳 Lv34 人間」


持ってる罪状は「強姦/殺人」


保持スキル

・「レイピア」6

・「鞭」8

・「隠密」7

・「危機感知」6

・「鑑定:種族」7

・「加速」5

・「罵倒」6

・「性技能」8


うわぁ…俺以外に「性技能」スキル持ち始めて見た…。

しかも8レベルって…基本的にスキルレベルの最大は「9」だと考えられているこの世界じゃかなりやばいぞ?

かく言う俺は「性技能」10なんだけどさ…。


気になるとすれば「鑑定:種族」だろう。

俺自身も「鑑定」はある。

けど、これって実は細分化される物なんだろうか?

あとでアニスかマリシテンにでも聞いてみよう。


とりあえず、目の前の「スレイブキリング」の女=トリヴィアは今レイピアを構えて俺の動向を思索している。

が、スキルから見るにコイツの本来の主武器は「鞭」だろう。

状況や俺の武器から「レイピア」を選んだのか…。

はたまたただの様子見か…。


「アンタ、シガーを殺したくらいだからねぇ…アイツバカだけど、それなりには強かったはずよ?」


確かにそうなんだろうな。


昨日来た「シガー」は、レベル31。

この世界における「レベル」の数値だが、ある程度理解してきた。


アニスから聞いたように、文献に残る最高レベルは「72」であり、それは基準のような物にもなる。

他にも、アニスの話やギルドでの話からおおよそ以下の様な指標が俺の中で確立しつつある。


平均的に20〜25レベルは高い方。

30を超えてくると一目置かれる。また、専門職の者もこれくらいだったりする。

40レベル以上は戦闘職の人が多い。

50レベル以上は魔法の専門職。

60以上はかなり稀。


魔法の専門職については、その筋の人にあったわけでは無いがギルドで話題になっていた魔法使いは大抵「50」以上だった。


と考えると…マリシテンってマジでバケモノだよな…。

いや、俺も650越えてるけど。


40レベル超えは戦闘職と言ったが、コレは数々の死線を潜ってきた「英雄」とも呼ばれる様な兵士・騎士がほとんどで、

それ以外だど「ギルドランク」が7以上の者にちらほらいるくらいなのだとか。


そーいえば、俺のギルドランクってまだ1だよな…。

てか、手紙届けに来ただけなのに、イベント多すぎだろ…。

せっかくギルドとかに入ってるんだから、もっとこう…良い感じの魔獣討伐とかさぁ…。


どーでも良い事を考え過ぎた。


ハッとすると、すぐそこまでレイピアの切っ先が俺の脚を狙って直進していた。

半歩後退しつつ「スカラベナイフ」でレイピアを弾く。

たかが虫の甲殻と侮るなかれ。

その強度はレベル657の俺が力任せに振るった剣に対し、擦り傷で終わった程だ。


それに加え、加冶屋のおっちゃんの技量で成型された刃は恐ろしく切れ味が良い。

「加速」と「ナイフ」スキルの併用で繰り出す的確で高速の一閃は、レイピアの切っ先をどうやら弾くのでは無く、綺麗に切断していた様だ。


「あら、やられちゃったわね。隙を突いたつもりだったんだけど」


特に驚く素振りもなく切っ先の無くなったレイピアをプラプラと振るトリヴィア。

まぁ実際はちゃんと隙をつけてたよ。

「反射」スキル様々です。


「ま、いいわ」


トリヴィアはレイピアの持ち手の先…柄頭、グリップエンドの部分を軽く捻った。

すると、レイピアの先から鍔の根元部分まで、つまりその刀身がポロっと地面に落ちたのだ。


もしかして…。


流れる様な手慣れた作業で、トリヴィアはその持ち手だけになったレイピアの先を、自身のブーツの側面にある銀の装飾の様な物に接続し、そして引き抜いた。


やっぱりそうだ。

トリヴィアはレイピアの刀身を「リロード」したのだ。

ブーツの装飾に見えていた部分は替えの刀身だ。


「替え刃のレイピアかよ。良いもの持ってるんだな」


「でしょう?前に仕留めたエルフの亜人奴隷が持ってたのよ。

まぁ戦闘奴隷だったから手こずったんだけど、それにしても継戦能力の高い良い武器よね」


刀身を新しくしたレイピアを指揮棒の様に軽やかに振りながらトリヴィアは答えた。


「何と言ってもこの殺傷能力の低さが良いわ!」


…は?


「大事な臓器を避けて刺し続ければ、上手に刺せた分だけ長く楽しめるもの」


うわぁ…。

嗜虐的な趣味をお持ちですね…。


それに「仕留めた」って…ことは。

やっぱ「亜人奴隷解放集団」なんて大義名分みたいに掲げた言葉は、全く心に無さそうだな。


なおさらレイラを取られて堪るか。


改めて俺がナイフを構え直すと、トリヴィアはニヤリと意地悪く口角を吊り上げて、レイピアによる刺突を繰り返してきた。

コイツのニヤリ顔は、何処かマリシテンと通ずるもんがあるなこのやろう。


十数回の攻防。

周囲には夜中にも関わらず金属同士のぶつかる甲高い音が響いた。


さぁてと、そろそろ…


「そろそろ誰かに気付かれちゃいそうね?」


俺の思考を読んだかの様にトリヴィアは呟いた。

夜中にやって来たり、黒いマントを羽織ってたり、やっぱ人目に着くのはアレなのかな。


「仕方ないわねぇ…やっぱりメインディッシュを摘み食いして帰ろうかしら」


この数分で最も彼女の嗜虐嗜好を反映した様な眼差しに、俺の心臓は一拍だけ強く打ち鳴らされた。


トリヴィアと俺の動きだしはほぼ同時だった。

先に考えに至った分だけトリヴィアの方が早かったのだが。


俺は先ほどからトリヴィアの刺突をナイフでいなしつつ、徐々に彼女を追い詰めていた為…


レイラと数メートルの差が出来ていた。


レイラが狙われている。

たかが、数メートル。

「加速」と「疾走」を使えば1秒前後の距離。

しかしそんな全力でスキルレベル最大の2つを使った場合…レイラは安全か?


以前のマリシテンとの手合わせ。

アレですらスキルを使っていない全速力と寸止めでマリシテンは気絶した。

理由は分かっていないが、アニスの予想では「風圧」が可能性としてあると言われた。

俺も科学が得意ではないから言及していないが…可能性としてあるのなら、


スキルを使って全速力でレイラに接近すると「マズイ」のではないか?


そんな思考が俺の動きを更に鈍くさせた。

相手は34レベル。

俺は657レベル。

その差、実に623レベル。


にも関わらず、俺の躊躇か重力級の枷となり、トリヴィアと拮抗する程の速度に落ちていた。


レイラには「耐性:物理」や「耐性:風」が種族スキルとしてあるので、考えれば「風圧」が問題であったとしても幾分かマリシテンよりマシだとも思える。

だが、レイラは俺の隣で同時にこの数メートルを走り出しているトリヴィアよりもレベルが低い。

レベル差がそこでも問題になる。


このチート能力は便利だと思い始めていたが、

今現在、これ程までに大それた力を疎ましいと感じている。


たった数メートルが長い。

トリヴィアのニヤリとした黒い笑み。

レイラの唖然と驚きを混ぜた様な顔。

しっかりとそのどちらも確認できる。


くっそ…。


こうなったら…賭けるか!!


「レイラ!!耐えろッッッ!!!」


俺は目一杯に叫んだ後、「疾走」スキルのみを発動した。

「耐えろ」と言う指示の具体性の無さは、後から気付いたが、そんな事はどうでも良い。

レイラ自身もしっかりは理解できていないだろう。

だが、それでも「主人」である俺の「命令」にレイラの体は自然と動き、

身を強張らせ目を固く、ギュッと閉じていた。


そして、そんならレイラの体を抱きしめた刹那、俺の左肩に激痛が走った。


「ぅぐあ!!」


「あらぁ…かなり速いのね?」


俺の左肩には深々とレイピアが刺さっている。

意地の悪いことに、その状況を理解したトリヴィアはレイピアをグリグリと動かしてきた。


半ば自動的に発動した「耐性:物理」によって貫通こそしていないが、故に激痛が増している気もする。


「ご主人様!!!」


腕の中で涙目の黒龍人が叫ぶ様に声を上げた。

いや別に致命傷じゃないから大丈夫なんだけど…。

耳元で叫ばないでください。

左肩に加えて耳も痛いとかヤダよ。


あ、てかレイラは無事だった。

良かった…。

まさかとは思うが…ふと自分のスキル。それも、この肉体「アルキウス・クロード・キャメロット」が元から持っていたスキル「賭博」。

俺は1粒の希望に「賭けた」からスキルが発動したのか…?


と思ったものの、左肩の痛みはかなりのもので、それが否応なく思考回路を無理に停止させてくる。

わざとグリグリと動かされているのも助力し、マジでやばい。


「いってぇなぁ!!!」


体を反転させトリヴィアに斬りかかったが、ナイフの射程でもない上、軽やかに躱されてしまった。


「アッハハハ!まぁ一撃でも負ってくれた分儲けかしら?」


くっそ…左肩が熱い。

痛いと言うより熱いと感じる。

同時に腕の中のレイラの震えが、先ほどの比じゃない。

ぶつぶつと何か呟いているが、今は正直それどころじゃないんだよね…。


「アンタ達良いわねぇ。

片方を狙えば片方が歪むなんて面白いわ!

どっちも連れて行っちゃおうかしら。

その方が普段の倍は楽しめるもの!」


トリヴィアが腰にレイピアを納めると、続いて外套の下から鞭を取り出した。


全体的に黒光りしているが、光の加減によっては暗い真紅の様にも見える異様な色あいだ。


「さて…それじゃ「ご主人様」の言うことを聞いてもらおうかしら!!


ーーーッッ!??」


トリヴィアが大きな動作で鞭を振りかぶった瞬間、頭を狙った様な軌道でナイフが飛んできた。


その方向を見ると、いつもの死んだ目とも、魔獣と対峙した時の狂気の目とも違う怒りにも似た形相のシスターが立っていた。


「慣れないスキルに起こされて来てみれば…何をやっているんですか?」


「あらぁ…シスターって本当にいたのねぇ」


対峙する二人に視線が釘付けになっていたところ、右肩をトントンと叩かれた。


振り向くと赤い布で顔を巻いたアニスが居た。


「アニス、これはー」


「あの戦闘狂シスターが「危機感知」が五月蝿いって言って起きててさ、そしたらレイラちゃんの声が聞こえたから慌てて来たんだよ」


「危機感知」?

確か…マリシテンにはそんなスキルなかった様な。

改めて確認すると確かに「危機感知」スキルがレベル3で加わっていた。

アルマナにいた時はまだ無かったよな…?


「来てみたらコレだもん、全く。

ウチは「薬屋」であって「医者」じゃないんだからね!」


アニスは文句を言っていたが、手際よく俺の左肩を診始める。

アニスに任せれば大丈夫だろう。


問題はマリシテンだ。


俺は視線を改めて睨み合うトリヴィアとマリシテンに戻し、事の成り行きを静観することにした。

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