二人目の「スレイブキリング」
「二日連チャンってのは辞めてくれないっすか…?」
「そんな事言われても、アタシ達、別に誰かに指示されてるわけじゃないし。単純に目標がみんな「亜人の奴隷」ってだけの集団だもの」
まさかな、とは思いつつ今晩は馬車にてレイラと過ごしていたところ、まぁ〜普通に来た。
何がって?
「スレイブキリング」とか言う輩だよ…。
「危機感知」に反応があり、馬車から降りたところ、
ちょうど女が現れたのだ。
「で、アンタがシガーを殺ったって言う「ご主人様」?
結構若いのね」
昨日の今日でもう情報を持ってるって事は…相当な速度でやり取りができる情報網を確立しているのか…
または…この町に拠点ないし何人かが集まっている…って感じか?
いや、実際に「来た」って事は後者かな…。
「そうかな?」
「いや、そうでしょぅ?
見た感じ…15歳くらいかしら?そんな年齢で奴隷を連れてるなんて…アンタもなかなか歪んだ性癖よね?」
「いや違うから!」
「あら?違うの?
ますます分からないわね?」
確かに…奴隷商人のナリキーンも「性奴隷」とか「戦闘奴隷」とか言ってたな…。
大概奴隷の女は性奴隷が普通なんだとか…。
だとしたら、差別対象の亜人の奴隷を持ってるって事はつまり…そういう性癖だと思われても仕方ないわな…。
「まぁいいわ。
それにしても…その子「黒龍人」かしら…?」
レイラを何とも艶かしい眼で、それも値踏みするかの如く、舐め回すかのように見つめる目の前の女に若干ゾクッとした。
「黒龍人…いいわよねぇ〜…種族スキルが優秀だから、どんなに虐めても簡単に壊れないもの。
それに種族自体が希少だし…」
コイツは…まさかとは思うが…。
「それにその子…食べ盛りの良い身体をしてるじゃない」
両手を頬に当て、身体をもどかしそうにクネらせている。
既にこの女の頭の中はピンク一色なのだろう。
虐めてもとか食べ盛りの良い身体とか…
おそらく…てか、今の見た目からして確実にコイツ…
完全に「そういう趣味嗜好」なんだろう。
困惑しつつ引き気味のレイラは、先ほどからいろんな意味で怯えているようで、俺の服の裾をギュッと握っている。
そこから伝わる震えを感じつつ、俺は静かに「アイテムボックス」から武器を取り出した。
「スカラベナイフ」ナイフ
・「耐性:物理」「反射」
昼間、ギルドに行く前に「加冶屋」が有ったのでそこに「竜甲虫」の素材を幾つか渡し武器を作って貰ったのだが、
即日で渡せるのが「ナイフ」のみだと言われた。
まぁサイズ的な問題がネックだったみたいで、さすがにそこら辺はゲームのようにその場ですぐに出来るわけではないという事だった。
ちなみに、このナイフについているスキルだが、
これは素材と「ナイフ」という特性から自然と発現した物らしい。
後天的に魔術で効果を付与する「エンチャント」と違って、強力な効果は発現しない上、単純な物しか無いのだと言う。
まぁ、正直「耐性:物理」も「反射」も既に持ってるからアレだけどさ。
ギルドの帰りに受け取り、その他作って貰っている武器は早くても明後日になるとの事だった。
例によって、受け取ったナイフを軽く振るってみたところ、
・「ナイフ」10
と、新たなスキルが追加されていたわけで、さすがにもう驚かない。
というか、「まだ持ってなかったんだ」と思ってしまった。
慣れとは怖いね。
加冶屋のおっちゃんが「スカラベナイフ」について「表面の塗り薬との反応によって変色した」と言っていた。
その刀身は、甲虫独特の茶色とも黒とも言えない暗い色から、淡いクリーム色になっている。
光を反射する具合からシャンパンゴールドとカッコつけても遜色無いかも知れない。
閑話休題。
目の前の女は、俺がナイフを構えた事でその表情を一段真剣なものに変えた。
「あら…やる気まんまんね」
「そりゃ大事な仲間が狙われてりゃね」
すると、俺の顔を見つめ女は一瞬固まった。
直後、我慢ならないとでも言うように盛大に吹き出し大笑いし始める。
「あははははははははは!!
アンタ、本当に面白いね!プッ…ハハハハハ!」
「なんだよ」
「ハハハハ!
あぁ〜お腹痛い。
アンタの感覚が何となく分かったよ。
つまり、アンタはその奴隷を奴隷なんて思って無いって事ねハハ!
いやぁ〜珍しい人間がいるもんね」
あぁ…ま、確かにこっちの常識からみたらそーなるわけか。
とは言え、俺にはそんな事どうでも良い。
「まぁ…男の子より女の子の方がいたぶるのは楽しいんだけど…
メインは取っておくって事で」
女は腰に下げた刺突武器…レイピアを抜き、構えた。
「アタシはトリヴィア・リリィ。
アンタを可愛がってあげる「ご主人様」なんだから、ちゃぁんと覚えておきなさい」




