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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「長いチュートリアルは面倒だと思う」
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二人の手合わせ…2

「れ、レイラちゃん…あれ見える?」


「いえ…殴っているか蹴っているかは分かりますが…さすがに挙動の全ては見えないです…」


「兄さんはレベルが化け物じみてるから分かるけど…戦闘狂シスターも化け物だね…。

あれで人間だなんて…亜人ですって言われた方がまだ納得出来るよ…」


「そう…ですね…」


〜〜〜


視界の端に唖然とした顔のまま、こちらを眺めるアニスとレイラが見えたが、正直そんな事は今どうでもいい。


レベル差があるにしても、やはり実際の経験は大事らしい。


「格闘」スキルはまだ得ていない。

反撃しようにもその余裕…と言うか隙が見当たらない。


蹴り、蹴り、蹴り、パンチ、蹴り、パンチ。


主に蹴り主体でマリシテンは攻撃してくるのだが、

まるでカポエイラの様に遠心力をうまく使って、流れる様に次の動きへ移行する為、攻撃と攻撃のラグが見つけられない。


「反射」と「千里眼」で動きは見えてはいる。

だから攻撃自体は避けられるし防げる。

でもいざ攻撃に転じようとしても、先に「危機感知」が反応する。


どうやら「危機感知」と「反射」のスキルによって、ほぼ自動で身体が回避行動を取るのだが、

そうなるとまたマリシテンのラッシュが始まる。


これじゃ一向に戦況は動かない。

ずっと避けるだけの相手に辟易して、手合わせを中断してくれるかとも思ったのだが…。


「こんなに…こんなに本気で、殺意を込めてまで攻撃しているのに!!

ヤマトさんに攻撃が当たるビジョンが一切見えない!!

すごい…!!すごいです!!

素晴らしいです!!ヤマトさん!!

もっと!もっと避けて、躱して、防いで!!

さぁさぁ!さぁさぁさぁさぁ!!!

アハハハハハハハハハッッッ!!!!」


避け続けたら逆に固執された…。

ホントに執着心がやべぇ…。


次の瞬間、俺の体勢が突如崩れた。

少し大きめ…と言っても子供の頭くらいの大きさの石が約3分の1ほど地面から垣間見えており、俺はちょうどそこに足を踏みしめたらしい。

運が悪いことに、朝露で滑りやすくなっていたわけだ。

くっそ。

朝靄もかかってたし、マジで不運だ。


そう冷静に考えていた俺の視界には側頭部に激突する直前の右脚。


いくら「反射」スキルがあっても、無理だった。

何せすでにこめかみの毛先はマリシテンの足に当たっていたからだ。


これは…肉体が危機を感じて周りがスローに見えているのか?

それとも「反射」とかスキルのせいか?


何はともあれ、これは防げないし避けられない。


唯一救いがあるとしたら、

マリシテンの履いているパンツが黒の際どいーー


ドゴァッッッ!!!


〜〜〜


「あ!!??」


「ご主人様!!!???」


兄さんが体勢を崩した瞬間、あの戦闘狂シスターは躊躇いもせずに兄さんの頭を蹴った。

ちょうどシスターが死角になって、兄さんの状況は正確に見えないけど…この音は…さすがにかなりの手応えがあったんじゃないかな…。


いや、でも…650超えのレベルだよ…?

さすがに…。

いやでも…今までもレベル60超えの騎士が、通り魔にあったり、

レベル55の冒険者が盗賊に殺されたりって事件もあったし…。

ちなみにそのどちらの犯人もレベルは20とか30。


原因はどれも「被害者の油断」だ。

レベル差があろうとも、それは一種の判断材料なわけであって、あくまでも「人間」なのだから、

首が飛んだり、心臓を貫かれたり、血を流しすぎたりすれば死ぬ。


レベルが上がるってことは、脳の経験と知識を反映する為に肉体がそれに準じた成長をするという事だけど…。


さすがに3桁のレベルなんて分からないからまだ希望はある…けど…。


そこまで思考を巡らせた瞬間、目の前を何かが通り過ぎた。


「え?」


見ると、その何かが通り過ぎた先にいたのは、よろよろと身体を起こす笑顔のシスター。

ただ、笑顔ではあるが…若干不機嫌そうにもみえる…。

第一、目は笑っていないどころか明らかに敵意を込めてジッと何かを睨んでいる。


その視線の先には、わりと余裕そうな顔で右手をプラプラさせている…兄さんが立っていた。


〜〜〜


・・・あれ?


あんまり痛くないんじゃね?


「どういう…ことです?」


マリシテンの足はしっかりと俺の側頭部に当たっている。

なんならそこもジンジンするが、それだけだ。


笑顔…というか、苦笑に近い顔のマリシテンと目が合う。


「まぁ…その…なんだ。


その黒い下着は俺的にはストライクです」


一瞬頭にハテナマークが浮かんだマリシテンだったが、理解すると同時にさっきとは全く違う…というかそれを超える勢いで顔を真っ赤にした。

表情さえも今までで1番「女の子」らしい恥じらいの顔だ。


お。

戦闘狂だけど、思ったよりそこは普通の反応なんだね。


瞬時に足を引っ込めてスカートを抑える修道女姿の少女。

まぁ俺の感覚じゃ少女だけど、

周りからしたらマリシテンの方が年上なんだよねぇ…。


俺は軽くシスターの頭にチョップを繰り出す。

ハッとしたマリシテンは、寸前でそれを躱したわけだが。


・「格闘」10

・「陵辱」10


やっとお目当の「格闘」スキルが…ってなんだよ、「陵辱」っておい!!!

酷すぎるだろ!パンツ見ちゃっただけじゃん!!


あぁもう!!

スキル取得のハードル低すぎる!!


ちょっと待て。

「性技能」と「陵辱」のスキルって…このスキルを持ってるだけで捕まりそうなんだけど…。


えぇいっ!!

もぅいいよ!!


俺は改めて右手を突き出しマリシテンを攻撃する。

拳はさすがにアレなので平手だ。

つまり「ツッパリ」とか「掌底」に近い。

正直見よう見まねだけどね。


ただ、しっかりと「格闘」スキルは反映され、なんとなく技のようにキレよくシスターに攻撃が当たる。


マリシテンは咄嗟に腕をクロスして俺の攻撃を防いだのだが、思った以上に威力があったのか凄い勢いで後方に飛んで行った。


てか、あの腕をクロスする防御技ってさ、交差したところとか痛くないのかな?


て、むしろ俺の方が右手痛いわ。

慣れない事するもんじゃないね。


俺は右手をプラプラ振りつつその場に立ち上がる。


数メートル先には、今までとまた違った表情で俺を睨む戦闘狂シスターがよろよろと立ち上がっていた。

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