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[中止中]伯爵の次男に転生したけど旅に出ます。  作者: 椎茸 霞
「長いチュートリアルは面倒だと思う」
22/68

夕飯の途中

「あの2人を置いていてよかったのですか?」


大衆食堂でロコモコに似た料理を食べる俺。そしてカルボナーラに近い麺料理を食べる目の前のマリシテン。


不意に質問されて、回答に困ってしまった。


「よかったって…?」


「あの猫と龍は戦闘向きじゃない上に護身術も身につけていませんよね」


「まぁ…そうだな。

てかよくわかったな?」


「体格を見ればそれなりに分かります」


「それって、何かのスキルか?」


「いえ…経験則です」


58だもんな、レベル…。


「この町は治安が悪いわけではないですが、良いわけでもない町です。

龍の方は杞憂でしょうが、猫の方は分かりませんよ」


「何が言いたいんだ?」


「この町は良い空気じゃないですね」


…全くわからん。

ただ不安を煽ってきてるだけか?

そんな事して得は無いだろうに。


あ…。


「俺と食事するのは嫌だったか?」


「…何故そんな応えが来るのですか?」


あれ?違ったか?

てっきり俺をこの場から離そうとしてるんだと思ったんだけど…。


「ヤマトさんは私より高レベルだと思っていたので話したのですが…違うんですか?」


「…レベルについては想像に任せるよ。

ただ、正直なところ俺は最近まで引きこもってたから、常識には疎いんだ。

何かあるならちゃんと説明してくれ」


微妙に来歴をでっち上げたのは愛嬌だ。


「…常識とはまた別の話なんですが。

まぁ良いです」


瞬間、今まで光の無い死んだ目をしていた無表情の顔が、仮面を外すかの如く一瞬にして狂気に染まった満面の笑みに変わった。


「魔獣が来ますよ」


その屈託の無い笑みと裏腹に、殺意しか感じられない声色と視線に、背筋が凍った様な気がした。


「それ…ホントか?」


「この町の周囲にある「聖輝石」は137本。その内、宿屋が集まる区画の「聖輝石」46本は4年前に交換されています。

この町の様子から、「聖輝石」に裂けそうな資金を計算しても、粗悪品しか揃えられないであろう事は火を見るよりも明らかです」


こいつ、そんなこと考えてたのか…。


「てことは…そろそろ魔獣除けの効果が切れる!?」


「もしくはもう切れています」


「ヴオオオオオオオオオオオ!!!」


俺たちの会話はけたたましく上げられた獣の声で強制的に打ち消された。


「なんだ!?」


「この声は…確かぁ…」


マリシテンは焦る様子もなく、聞こえてきた魔獣の怒号から、その正体を割り出そうとしていた。


「マップ」でレイラとアニスを検索した。

どうやら馬車の中に居るみたいだ。


くっそ。

「聖輝石」の話をしてる時にこうもタイミング良く来るかね?!

フラグってやつか?


「マリシテン戻るぞ」


「まだ食べている途中です」


食ってんじゃねぇよ!!


割と近くで叫び声が聞こえてきた。

どうやら魔獣から逃げてきた人達がこちらに向かってきているらしい。


取り敢えず馬車のある方とは逆から叫び声は近づいてくる為、「馬車の近くに魔獣が居ます」とかは無さそうだ。


「後で何か食べ物買ってやるから、行くぞ!」


「…仕方ないですね。

ですが私は走れません。猫に止められています」


そうだったぁ…。

くっそ。

こうなったら…。


割と近くで何かの破壊音が聞こえてきた。

岩を砕く様な音と、木をへし折る様な音だ。

…まさかと思うけど、家屋がやられた?

結構デカイ魔獣が来てたりするのか?!


「あぁ、もう!!

怒るなよ!!」


「え?おぅッ!!??」


俺はマリシテンを肩に担ぎ、急いで食堂を出た。

前に武器屋で大剣を軽々と持てた筋力の為か、マリシテンの体はかなり軽く感じた。


「ちょ、ちょっと!ヤマトさん!

神に仕える身である私をこんな辱める様な持ち方をして!!刈り取りますよ!!!」


「怒るなって言ったろ!今はそんな事も言ってられねぇ!!」


「あ、アレは…確か「竜甲虫(ドラグーンスカラベ)」?」


現状、マリシテンは俺の後ろを向いている形で担がれている。

どうやら、魔獣が分かったみたいだ。


「なにそれ?虫?」


「虫です。地竜に似た見た目で、捕食してくる外敵を欺くんです」


地竜に擬態する虫ね…。


「強いのか?」


「昨日の犬よりは本能的な動きしかしませんが、その体躯故に一撃一撃が重いですし、甲殻もなかなか堅牢です」


「・・・どんだけデカイの?」


俺は取り敢えず逃げる民衆を避けつつ走っている為、まだ魔獣を見ていない。


「大きさ…個体差もありますが、アレは大きい方ですね。

家の倍くらいあります」


デカイわ!!!

10m超えか!?


一瞬だけ後ろを見てみた。


見た目で似ているとすれば…コーカサスオオカブトだろうか。

3本の角が雄々しく伸びる巨大なカブトムシだ。

ただ、カブトムシと違うのは「尻尾」がある。

いや、尻尾の様な物が付いているのだろうか?

正直土煙で全体が捉えづらい。


にしても人が多い!!

飲食店区画と宿屋区間の間辺りにある食堂で俺たちは食事をしていたのだが、

宿屋区間に入ってから人が渋滞している。


あぁ、もう!邪魔!!


「ヤマトさん。あそこ」


マリシテンが指差す方を見ると、ちょっとした裏道の様だった。


「なんで?!近道かなにかなの?」


「いえ、あそこから屋根に登った方が早いかと」


「…俺、お前担いでるんだけど?」


「…できないんですか?」


「できると思ってるのかよ?!」


「さっきの食堂からここまでそれなりに距離がありました。

ですがヤマトさんは私の事も担いで、更に人を避けつつ走っているのに、息切れもしてないじゃないですか」


…確かに。

全然息切れはない。

てか、考えてみるとここ最近息切れした記憶もない。

それこそ、昨日の戦闘の後も、だ。


ただ、ため息は増えた気がするが。


「あぁ〜もぅ分かったよ!

やってみるけど、失敗しても怒るなよ!!」


俺は裏道の方に入り、その突き当たりにの比較的低い屋根目掛けて全力でジャンプした。


筋力のおかげだろう。

良いとこまではジャンプできた。


「できそうですね」


「…できそうだな」


少し道を戻り、改めて助走をつけてジャンプしてみた。


その瞬間、目の前の1番低い屋根どころか右側に位置していた1番高い建物も超えるスーパージャンプが出来てしまった。


「う、うぇあ!!??なにこれ!?」


「私が聞きたいです。ちゃんと着地できるんでしょうね」


「が、頑張ります!!!」


空中でこんな会話が出来る程には滞空時間も余裕があった。

見下ろすと、例のカブトムシも見えた。

サビの様な赤褐色のマッドな色合いの巨大カブトムシは、未だに後方で頭を振り建物を破壊していた。

怪獣映画みたいだな…。


取り敢えず、落下地点をしっかりと見定め数秒後には何とか着地した。

さすがに着地した建物の屋根瓦は割れたが、突き抜けることは無かった。


てか何でこんなにジャンプ出来て…


ふと、昨日のマリシテンと彼女のスキルを思い出し、

自分のスキルを確認した。


・「跳躍」10


…またスキル増えたわ。

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