旅の仲間
はい。
ついにチートキャラになってしまいました。
散々異世界ファンタジーなら云々と申しておりましたが…実際問題、面倒な事に直面しております。
何が起こっているかと言うと…
「ヤマト様…その、このギルドカードは不具合が生じている様です。
スキルレベルもありえない数字が表示されていますし…一度カードの再発行を橋向こうの本部で行ってきて頂けませんでしょうか?」
仕事が全然できないのだ。
ギルドカードの提示時点で「カードが壊れてる」と思われるわけですよ…。
それも無理はない。
この世界で記録が残っている最高レベルは72だし、
スキルレベルも9までが常識なのだ。
なのにカードの表示は3桁のレベルとオール10のスキルレベル。
驚く前に「カードがイカれてる」と考えるのは至極当然だろうなぁ…。
〜〜〜
「だから言ったでしょ、今の兄さんはこの世界の常識じゃ異常過ぎて話にならないって」
宿屋「カトレア」で取っている自室にて、アニスが焼き菓子を食べながら呆れた様に言い放つ。
ちなみに、部屋は3階の端っこから2階の端っこにある2人部屋に変更してある。
俺が昏睡していた時に、アニスが宿泊代を肩代わりしてくれたのだが、
看病を兼ねてアニスも宿を取っていたんだと。
部屋は別だったのだが、アニスの「不便」とゆう一言から部屋を2人部屋にしてもらった次第だ。
いや、カトリーンさんにはガチでなんかご馳走せねば…。
「一定期間依頼を受け無かったら登録資格が消えるんだよな?」
「言っても1年は猶予があるから大丈夫でしょ」
アニスが焼き菓子をレイラの口に運んぶ。
ちびちびと自分の持つ焼き菓子を食べていたレイラは困惑しつつ差し出された焼き菓子もちびちびと食べ始める。
可愛いな。
猫耳娘と竜娘。
「ちょっと考えたらギルドカードが壊れる要因なんてほとんどないのにね。
それこそ、かなり強力な…禁忌レベルの闇魔法でも使わなきゃ干渉出来ない様になってるのに」
「なんでそこまでセキュリティ高いんだよ…?」
「せきゅ…?」
あ、こっちに無い言葉か?
「あぁ…なんでそんなに守りが固いんだ?たかがカードだろ?」
「そりゃ兄さん、世界各国で身分証明書として使える上に、ギルドで預けてるお金の引き出しも出来るんだよ?
万が一に情報改竄とかあったらどうすんのよ?」
つまりパスポートと銀行カードが一緒になってる様なもんだから、必然的にかなり高いセキュリティをかけるのは道理…と。
ま、そーだよね…。
「しかも魔法系の耐性もエンチャントされてるし、そんな簡単に壊れないわよ」
アニスから差し出されていた焼き菓子を食べ終え、改めて自分の持つ焼き菓子をレイラは食べようとしたが、
間髪入れずに再度アニスがレイラの口に焼き菓子を運んでいた。
レイラはさっきより困惑しつつも、またアニスが差し出す焼き菓子を食べ始めた。
やっぱ可愛い。
「そもそも兄さんさ、別にギルドで仕事しなくてもいいくらいにお金持ちじゃん。
「経験値薬」とかレイラちゃんを即金購入するくらいだし。
あの日だけで使った金額で、ウチなら一生生活に困らないよ」
薬とレイラで55金額。
日本円でだいたい5500万。
さすがに盛りすぎだろ…と言いたくなったが、ここは異世界だ。
そもそも俺のいた世界の尺度で考えるのは野暮かもしれない…。
「金はある程度持ってるし、なんならギルドにも預けているけどな、俺は旅をしてるんだ。
出来るだけ資金源は持っていたいさ。
どの国でも稼げる手段なんて商人かギルド冒険者くらいだろ?
前者はまず才能が無いから無理だ」
「600レベルで世界を旅って…なに、世界を滅ぼす気?」
「違うわ!
…むしろ逆だ」
ここまできたら、ある程度アニスには話していいかもな…。
「今からする話は嘘だと笑ってくれていいが…
俺はある神様に「邪神」をどうにかしてほしいって頼まれたんだよ。
けど、その神様が結構適当でな…どこに「邪神」が居るとか、どうすればいいとか、具体的な指示は無かったから、
今こうして旅に出てるんだよ」
ま…神は神でも死神ですけど。
アニスは口を開けたままこちらを見ていた。
ちなみにレイラは、アニスが差し出す焼き菓子を咥えたままでこちらを見ている。
この表情を見るのは2人目と3人目だな。
そう。
レイラを連れて来た時のカトリーンさんと同じ「ポカン」顔だ。
「神様とか邪神とか…また突拍子も無いね…」
アニスの意見はもっともだ。
「神託なんてこの国じゃ「聖女様」しか聞けないはずなんだけど。
でも…ちょっと納得できるわ。
ここ数年の魔獣被害は異常とも言われているし、文献に残っている…と言っても伝説とかおとぎ話レベルの文献だけど…そこに書かれる邪神誕生の前触れは魔獣の異常発生だともあるし…」
アニスは急に饒舌になるよな。
それにやたらと知識量が豊富だ。
まぁ物知りは便利だけどさ。
不意にアニスが思い立った様にこちらに顔を向けた。
「その旅って…ウチも着いて行って良いかな?」




