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疾風迅雷の魔術師  作者: ヘデメ
『朱』編
19/26

【金策】

 腹ごしらえを終えた白斗たち2名はその後、サブストリートにある比較的安価な宿に泊まり、次の日を迎えていた。


 昨日は1日中晴れていたので、気温も元に戻っていて高い。そろそろ秋の時期だと思うのだが気温がさして下がっていないのは、やはりこの国には四季というのがないせいなのだろうか。1年を通して気温の変動が小さいというのは住みやすくていい。もちろん、このくらいの過ごしやすい気温で一定であるからこそ言えることなのだが。


 さて、現在2人は宿を出てから話し合いながら街中を歩いていた。


「どうしようか、桜庭さん」


 隣を歩く澪に問いかける。


「かなり切迫した問題よね……」


 うーんうーんと唸りながら頭を捻る。


 今2人を悩ませている問題。それは金策についてだ。


 何故それについて悩んでいるかなど言うまでもないことだが、お金がないのだ。いくら安い宿を探してから泊まったとはいえそれなりの値段はするし、初日から串焼きを4本も買ったのは失敗だった。


 お金がない。しかし、生きるためには何かを食べたり飲んだりしなければならないわけで、否が応にもお金を使うことは避けられない。節約はできても、それを0にすることは不可能なのだ。


 それなのにお金を得る手段がない。正直なところ、現時点ですでに明日からの食事をどうするか困っているところなのだ。


 取りあえず朝食だけは宿の料金に含まれていたので心配はないが、今まで1日3食が当たり前の生活をしていたのだ。急に1日1食、それも歯が折れそうなほど硬いパンと塩辛いスープだけなのだ。このままでは長いこと生きてはいけない。


 それに、日本人は食へのこだわりがかなり強いのだ。美味しさを追求してしまってお金が尽きるなんてことがありえなくもない。実際、初日からお金のこともよく考えずに高級品の串焼きに容易く手を出してしまった。


 金策を見つけることは、今最大の問題なのだ。


「土下座して頼めばお金くれるかな」


「無理でしょう。真面目に考えなさいよ月無くん」


「いや、だって考えて思い付くもんでもないだろ……ん?」


「どうしたの?」


「いや、何となく武器を持ってる人が……」


 言われて、澪が周囲を見回す。


「確かに増えてきたわね。この先に何かあるのかしら?」


「もしかして冒険者ギルドとかあるんじゃないかっ!?」


 急に瞳をキラキラさせて言ってくる。異世界に来たはいいが明確に地球と違うものがいままでなかったので、それらしいものがある可能性に興奮しているらしい。それらしいといってもあくまで白斗の中での話だが。


 余談ではあるが、地球には魔物討伐のためのギルドのようなものはない。基本的に魔物と戦うのは自衛隊や猟師の仕事なのだ。だからといって一般人に戦闘能力がないということではない。しかし、学校の学生や生徒でない限りは、基本的にその力をふるうことはない。


 しばらく道なりに歩いていくと、他の建物よりも1回りか2回り程大きい建造物が視界に入って来た。


 その入り口からは武装した人々が出入りしている。ここがそうなのだろう。


「ギルドだ……」


 感慨深そうに呟く白斗。


 恐らくギルドで間違いはないのだろうが、建物上部についている看板には2人の知らない文字が書いてある。


「あれ? ……読める?」


 読める。見たこともなければ聞いたこともない文字のはずなのに、幼い頃から慣れ親しんだ母国語のように意味が分かる。手に取るように理解できる。この世界の文字も言葉も、2人は理解できるようになっているようだ。


「ご都合主義ね……」


 言いながら、ちらりと白斗を見やる。


「……」


「月無くん?」


「え? ……あ、うん。そうだな」


「どうかした?」


「いや、何でもない。とりあえず中に入ってみないか?」


「え、ええ」


 何となく引っ掛かりを覚えながらも、白斗の後を追ってギルドへと向かっていく。


 そんな中、先頭を行く白斗は、何となく違和感を覚えていた。


 文字を見たとき、見たこともなければ聞いたこともないはずなのに、ずっと前から知っているような……そんな気がしていた。


「……ま、そんなはずないよな」


 しかし、地球生まれ地球育ち、生粋の地球人である白斗が異世界の文字など知るはずもない。思考を打ち切り、初めてのギルドへと勇み足で進んでいくのだった。







 冒険者ギルド。


 世界に蔓延る魔の者たちを武力によって駆逐するために設立された組織。


 国には属さず、その権力は国境を超える。


 世界各国にこの組織は存在し、現在最も人口の多い職業である。


 冒険者ギルドに所属する者――通称冒険者は、一般人から出された依頼をこなすことを生業としている。


 依頼は、清掃や子守りなどの雑用から始まり、魔物や魔獣の討伐、要人の護衛などと多岐にわたる。


 しかしそのどれもが受注できるわけではない。それは、清掃や子守りならまだしも魔物の討伐や要人の護衛になるとそれ相応の実力が冒険者に求められるようになるからだ。


 そこで実力の目安として設定されているものがクラスだ。


 クラスの段階は全部で7つ。


 上から順に1・2・3・4・5・6・7となっている。


 Class7(セブン)~5(ファイブ)は駆け出し冒険者。


 Class4(フォー)になれば一人前。


 Class3(スリー)は一流。


 Class2(ツー)は超一流。


 Class1(ワン)になれば英雄と呼ばれる。


 ちなみに、Bランク辺りからは自然と名前が売れ始め、二つ名がつくようになる。ロウエンの‘‘飛翔’’もこれにあたる。


 登録直後は当然Class7からで、いくつもの依頼を達成していくことでその階級を上げていくことになるのだ。


 また、受けられる依頼にはある程度の規則があり、階級を上げるための条件などもあるのだが……今回はここまでにしよう。……これよりも詳細な説明はギルドの受付で。

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