雪の僕。
雪が降る日には、君のことを思い出す。
もう忘れてしまいたい君のことを。
こんな僕に好意を向けてくれた。
こんな僕が大切だと言ってくれた。
僕にとっても大事な存在だった。
雪のように消えてしまった君を、
忘れてしまいたいと願っていたのに。
何故か、ふと、
『想ってしまった』
忘れたはずのこの気持ちを、
失ったはずのこの気持ちを。
雪のように溶けてしまいそうな、
甘くてほろ苦いこの気持ちを。
『思い出してしまった』
思い出したくなんて、無かったはずなのに。
君の長い髪が、揺れたような気がした。
僕が褒めた綺麗な君の黒髪。
嬉しそうに笑う君の姿は今も網膜に焼き付いている。
君から目をそらして、
君の想いを忘れ去って。
なのに、思い出してしまった。
だから、僕は君に連絡をしたんだ。
僕は君がいなくても、全然大丈夫だって。
新しい恋も始めたんだって、
君に気づかれないように、君が諦めるように。
君に嘘の僕を見せつけるために。
君を傷つけると分かっていても、素直になれなかった。
見えない雪が舞う中で、忘れられない君を想う。
そっと、雪を忘れるように目を閉じる。
『君にこの気持ちが届いて欲しかった。』
今回も読んでくださってありがとうございます。
この「雪の僕。」は、ぜひ前話の「雪の君。」と一緒に読んでもらいたい作品です。
よければ続けて読んでみてください。
では、またいつかどこかで。