表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/101

シーン8

「だー、あたまいたいー」


 結局、翌日に集合場所に向かうのは半刻程遅れた。

 スリーピーの背中に跨ったルリーナはべったりとその背中に張り付いている。


「すみませんねー、遅刻してしまいまして~」

「いやいや、うちも出るのが遅れてすまないねぇ」


 隊商長はそれを見て苦笑を返した。

 街に近い間は、それほど危険も多くは無い。

 護衛に雇うならず者たちが遅れてくるのも、酔っぱらっているのも慣れっこだった。

 隊商の馬車に乗り込んだのはカメと訓練長に任命した手練れの男――ルリーナは彼をチョーと呼んでいた――だった。

 残りの者は徒歩で馬車の周りを護衛しているわけだが、死人の行列もかくや、と言わんばかりにその歩みは頼りなかった。

 ある意味、迫力はある。

 目の下のクマに陰鬱な表情、背中を曲げて歩く姿は地獄の軍勢のようである。


「着いてから四半刻ばかしかかっていましたものねぇ、何かあったんですか?」

「いやぁ、それがねぇ、ギルド長のお孫さんのボンがねぇ」

「ほうほう?」

「素っ裸で往来のど真ん中に倒れてたってんだよ」

「……ん?」

「前後不覚になるほど酔っぱらってた上に、その、なんだ」


 不道徳な行いの跡が見られた、と商人は語った。


「ぶっふ!」


 ルリーナは堪えきれずに吹き出した。

 覚えが有りすぎる。


「いやぁ、すまないね、傭兵隊長さんとはいえ、お嬢さんに話すことじゃなかったかね」

「いえっ……いえいえ……くっ……お気遣いなく」


 笑いを堪えてまなじりから涙がこぼれてきた。

 まさかあの男がギルド長の孫だったとは。


「これであのちゃらんぽらんなボンは御終いだろうねぇ」

「どういうことです?」

「元から評判が悪くてね、これを期に勘当だ! なんてギルド長が言ってて」

「それは穏やかではありませんねぇ」

「まぁでもこれでヘルマン坊が養子に入って継ぐとかなんとか」


 ヘルマンという名前には覚えがあった。ギルド本部で話した、青年の名前だ。


「ああ、ヘルマンさんですか。なかなかやり手のようでしたけれど」

「おや、ヘルマン坊を知っているのかい?」

「仕事をもらう時に」

「そりゃギルド長に気に入られてるねぇ」

「そうなんです?」

「ああ、彼はギルド長の秘蔵っ子だからね」

「ほう」

「意外と今回の下手人にも感謝しているかも知れないね」


 そう言って商人は片目を瞑ってみせた。


「はは、そうですか」


 ルリーナは顔を上げて前を見た。

 道は長く長く続いている。

 朝の光を浴びて、そよぐ風に草が波を作っていた。

 小さな花は首を伸ばし、気持ちよさそうに微笑んでいる。

 背伸びをしてうんと息を吸い込む。

 新しい風が、胸を満たした。


 旅はまだ、始まったばかりだ。

セクハラ男に死を! 編終り。


ルリーナ傭兵隊(仮)

総員:13名+1頭

隊長:ルリーナ・ベンゼル(元貴族/無冠)

訓練長:カメ(歩兵担当)、チョー(弩兵担当)

交渉係:ショー(元商人)

料理係:リョー(元宿屋従業員)

馬:スリーピー(ポニー/荷馬)

他:歩兵4名、弩兵3名。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ