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魔剣姫  作者: 天蓬元帥
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第23話 パイルドライバー

大変遅くなりまして、相済みませんです<(_ _)>

ボリューム増でお送り致します。

「ローズマリー姫のアレを剣技と言っていいのかどうかは私には判りませんが、それにしても見事な動きでしたねぇ、とても八歳の幼女の動きとは思えません。魔法の刃も素晴らしい、陛下の刃とは段違いですねぇ。自分の身を自分で守れる様になる事は私達としても歓迎する所でしてねぇ」

 両手を大仰に広げ、顔に笑みを浮かべ、感銘を受けたかの様な素振りしながら、伯爵が賛辞の声を上げる。明るくなったばかりの国王の表情は再び曇ってしまった。


「幼女にしてはだよな、そうだよな……あんなもの、剣技と言う程の物じゃない……死ぬ前に比べたら、全然遠く及びはしない……そうだよ幼女なんだよ、こんなの子供のお遊戯もいい所じゃ無いか……魔法があったとしても生身相手でなければ通用なんてしないじゃないか……何より相手は藁人形じゃないんだ()る前にこっちが()られてしまうじゃないか……」

 俺は伯爵の言葉で舞い上がっていた気持ちにはっと気付き、俯いて、拳を握り締めながら呟いた。地面を凝視する視界が涙で歪み始める。


「……ぐすっ……父さん……ごめん……ひぐっ……涙が止まらない……ひぐっ……」

 嗚咽が漏れる。涙の雫が地面に吸い込まれて行く。


「ゼラニウム! 貴様、よくもローズマリーを泣かせてくれたものだな!」

 呆気に取られ、ローザマリーが涙を流す光景に見入っていた国王は、自分が呼ばれたと思い、我に返り伯爵に食ってかかる。


「いやですねぇ、陛下。私にそんなつもりは全くありませんよぉ」

 ローズマリーの涙声を聞き付けて詰め寄る国王を、両手を使って諫める伯爵。しかし、笑みを絶やさぬその姿に説得力はまるでない。


「貴様が、ローズマリーを幼女と呼んだ所為ではないのか、ローズマリーは幼女と呼ばれるのを嫌がっていたであろうが」


「それぐらいの事で泣かれるような姫では無いでしょう、私が口にする度に睨まれていた位なのですよ」

 少々ばつが悪かったのか、幾分丁寧な口調で反論する伯爵。


「では、何故(なにゆえ)ローズマリーが泣いているのだ。貴様はあの様に弱々しく泣きじゃくるローズマリーのあの姿を見て何とも思わぬのか! 見ろ! 号泣し始めてしまったではないか、責任を取らぬか、ゼラニウム!」

 諫める伯爵の手を振り払い、ローズマリーを指さし、更に詰め寄る国王。その背後から、王妃とフローラル王女の咎めるような援護の視線が伯爵へと突き刺さる。


「いえいえいえいえ! 私としましても大変心を痛めているのですよ。幼き姿をしてあの様な冴え渡る剣技を拝見し、賛辞を送った迄の事。なのにローズマリー姫はあの様に涙を流されてしまい、私も大変驚きを隠せないのです。勘弁して下さい、陛下!」

 国王、王妃、フローラル王女と三人に責められて、慌てて表情を引き締め真摯な態度で答える伯爵。最後は悲鳴のようになっていた。

 号泣しているローズマリーをミランダを除く女性陣が総勢で宥めに掛かる。


「ローズマリーよ泣いている所を済まないが、何故(なにゆえ)泣いているのかを説明してはもらえまいか」

 あれ程にあっさりと魔法を会得してしまい、尚且つ『気流の刃[エアナイフ]』の長さを望む長さに伸ばし、鮮やかに藁人形を切断してのけたローズマリーの技を目にしている国王達は、何故ローズマリーが涙したのか判らず、落ち着き始めた、ローズマリーを宥めながら問い掛けた。


「ぐすっ……マユリに魔法を使われて体を押さえ付けられた時、悔しかったけど大人の腕力と子供の腕力なのだから身動き一つ出来ないのは仕方がないと思っていたんです……ぐすっ……でもさっき藁人形を斬った時、予想以上にこの体を動かす事が出来て、『気流の刃[エアナイフ]』も使える魔法だと思ったんです……でも伯爵が幼女にしてはと言ったときに気が付いたんです……過去の自分と比べれば、全然お話にもならないレベルに、子供のお遊戯に過ぎないと。俺の家、國枝家の一族は誰も彼もが、戦うことに関して図抜けた才を持っていて、父は剣の達人であり、祖父や母は格闘の達人で、全員がそんな感じの一族でした。一族総出で五歳の頃から、鍛えられて来た俺は、今まで一族相手に勝てた事は無いけれど、他に敵はなく自分の腕にはそれなりの自信を持っていたんです」


「ううむ、我が国でも騎士を目指す者たちなどは若くして己を鍛え始める者がいるが、精々が十歳程度と云う所であろう、しかしそれ程幼少の時分より達人達に囲まれて育って来たと言うのであれば、先程のローズマリーの動きには我々から見れば目を見張るものがあるのだが、自分では到底納得の出来るものではないのであろうな」

 そう言いながらも、やはり切っ掛けは貴様だったではないかと伯爵を睨み付ける国王。


「余りの力のなさ加減を自覚した途端、自分が持っていた物が消えてしまっていた事を理解した途端に涙が溢れてきて、泣いてはいけないと教えられて来たのに全然涙が止まらなくて……」


「その様な環境で育って来たのだ、男子足るものがおいそれと泣くような事があってはならぬと教えられて来たのであろう」


「あ、そうではないんです。修練を始めてすぐの頃、父の竹刀での打ち込みを受けた痛みで泣いてしまって、その時に父が言ったんです」

『一輝、泣くな、涙を流して泣いていても、襲ってくる敵が躊躇する事は決してない。そんな事には委細構わず攻撃を仕掛けてくる。更に涙で視界が遮られれば躱す事も出来ずに命取りになる。故に痛みにも耐えなくてはならない、何より痛みにより怯んだその隙を突いて敵は攻撃を仕掛けてくるもの。どんな時でも常に敵を見据え、身構える事を忘れてはいけない。判ったな』

「そう言い終わった父は、即座に俺に打込んで来てずっと泣き通しの毎日でした。でも痛くて涙を流していては、避けることもままならないので、その内に俺は涙を我慢するようになってましたし、痛みにも耐えるようになってました。そうこうしている内に、躱す事で痛みを覚えることが減り、それが出来るようになると反撃をする事によって攻撃を受ける回数も減り、更に痛みを覚えることは無くなりました。それでも結局は避けられはしなかったんですけどね」

 俺は苦笑いを浮かべる。


「すると、『父さんごめん』と口にしたのは、私の事では無く、誠の父への言葉であったのか、たかが下着一つの事で死ぬような目に遭ったと聞いてはいたが、何とも凄まじい一族だな」

 うんうんと国王は頷いた。『たかが下着』を聞き付けて女性陣が目くじらを立て、突き刺すような視線を送るが、国王はとんと気付かなかった。


「あれは悪かったのは俺だったから、仕方がないんです。順応するのは早かったから、別にそれを辛いと思った事もなかったです。けど、それを守って生きて来たのに、何故かさっきは涙を止めることが出来きなくなってしまい、お父さんや伯爵に迷惑をかけてしまって、本当に免なさい」

 俺はぺこりと頭を下げる。


「いえいえ、やはり引き金が私の言葉だったようですから謝罪するのは此方の方ですよローズマリー姫。私が思うに、涙が流れてしまったのも、それを止める事が出来なかったのも、恐らくはローズマリー姫の体の所為ではないでしょうか。魂は國枝一輝君、体はローズマリー姫。記憶は大体が一輝君で姫が少々、もしかすると感情も同じ感じなのかも知れませんね。勿論これは推測でしかありませんが」

 少し軽口ではあるが、伯爵は真摯な表情でそこに笑みは無かった。

 確かに方向音痴や甘い物が好きな所とか俺とは違う所があるから、それは解らない話ではないかもしれない。


「ふむ、だとしても、ローズマリーが涙を流した覚えは私にはないぞ」

 国王は王妃やフローラルを見やるが、両方共が頷いていた。


「そうかも知れませんが、ローズマリー姫とてまだ八歳の幼き身だった訳ですから。人知れず涙されていていたのかも知れませんよ」

 全員の間に沈黙が流れる。それぞれが思案げな表情になっていた。以前のローズマリーを思っているのだろう。


「まあ、こうしていても何かが判る訳でもありませんし、ローズマリー姫の肉体的に足りない部分を補うには魔法があるでしょう、ねえミランダ殿」


「ええ、姫様の魔法の才には私達の常識が覆され驚くことばかりで、本当に目眩がして来そうね。そういえば、姫様はゴルディア隊長が使用していた身体強化系の魔法に興味を示していたのも、身体能力が足りない事を気にしていたのね」


「あの凄い勢いで走って行った時は吃驚しました。俺が生きてた世界で一番速く走る人よりも更に速かったと思う。出来ることなら使いたいけど、あの魔法は覚えてなくて」

 俺は飛びつくように勢い込んで答えた。


「あの時は話を後回しにしてしまってご免なさい。あの時ゴルディア隊長は体の反応速度を上げる『加速[アクセル]』と筋力を上昇させる『剛力[ストロング]』と身体の頑健さを上昇させる『頑健[タフネス]』の三つを同時に使用していたわ。この三つを一緒に使わないとゴルディア隊長のように速く走る事は出来ないの。継続属性の魔法の特徴は同時に使えることで、それ以外の魔法は同時に使う事は出来ない、継続属性以外の魔法を使用した時点で継続魔法は自動的に解除されてしまうわ。私も取得だけはしているから、陛下からの許可を頂ければ、教えてあげられると思うの。姫様なら魔法を取得するのに問題はないでしょう」

 その言葉を聞いた俺は、『ぶんっ』と音が鳴るくらい激しくお父さんの方に顔を向け、ねだるような必死の眼差しを送る。


「うむ、そうだな。本来は一国の姫、この様なことはせずに姫として生きて欲しかったのだが、その魂は十六歳の少年、しかも前世の話しからすると姫として生きよと言われるのは酷であろう事も判った。駄目だと言って、黙って飛び出されてしまったりしても困る。更には非凡なる魔法の才、ゼラニウムの言った通り、ローズマリーが自信の身を守る力を得る事は、神託の事もある以上好ましい事ではある。だが、ローズマリーはまだ八歳の女の子である事を忘れないで欲しい、あまり無茶な修練とやらはせぬようにな」

 俺の視線を受けたお父さんは苦笑いをしながら俺の頭に手をぽんっと置き、許可を出してくれた。ストレッチだけで我慢してたけど、本格的にやってもいいみたいだ。お父さんが言ったように女の子の体だから、この体に傷が付く事だけはしないように気を付けなくちゃいけないな。


「有難う御座いますお父さん」

 俺は嬉しさ120パーセントの笑顔を湛え、両腕をぴっちりと体の脇に付けお辞儀をした。それを見るお父さんの頬が満足げに緩んだ。


「あと姫様の魔法力が問題だと考えていた時に、魔法力に影響されないだろうと考えていた魔法が一つあって、この魔法の私の師はラウリサール・グランと云う人物なのだけど、この人の魔法力は825。つまり私の10倍以上の魔法力を持っていたの。でも私と魔法の威力に違いがなかったから、姫様の魔法力でも大丈夫じゃないかと考えた訳なの」


「それは、どんな魔法なんですか」


「『鐵杭創成射[パイルドライバー]』と云う攻城戦の時に城壁や城門を突破する為の魔法で、対魔法障壁と対物理障壁とを諸共に貫通する程の最上級魔法よ」


「なんか大げさなようで、その実あんまり使えなさそうな魔法ですね」

 どこにカチコミをかけろと云うのだろうか。

 大体、最上級魔法なんて、奥義みたいな物じゃないのかな。いくらなんでもそう簡単には覚えられないとも思うんだが、俺は魔法陣を目にすると魔法を取得してるからなあ、ミランダさんはいけると踏んでいるのだろうな。


「じゃあ教えなくてもいいのかしら」

 ミランダさんは意地の悪そうな顔で聞いてきた。


「いえ、戦いになればどこで何が役に立つかわかりませんからね、お願いします、教えて下さい」

 ぶんぶんと音が鳴るくらい首を左右に振る。


「戦う事ばかり考えているようだけど、もしかして、好戦的な性格なのかしら」

 そんなに訝しむような顔つきで俺を見ないで欲しい。


「俺は『人生は戦いだ、死ぬまで戦い抜け』と云う國枝家の家訓の通りに生きて来てたから、すぐ戦いに使えるかどうかを考えてしまうんだ。そりゃあ、族や組を潰したこともあるけれど、降りかかる火の粉を払った迄の事で自分から人に危害を加えた事はないよ。それに俺はこの体で生きて行く事になって、家族にはもう会えない。俺に取ってのこの新しい家族を大事にしたいんだ、守りたいんだお姉ちゃんを。そりゃあこんな小さい体で何が出来るんだとか、お父さん達を守る人は他に沢山いるだろうとか、自分の体の命を守る方が大事だろうとか言われるかも知れないけど、守りたいんだ」

 俺はミランダさんの眼を見つめ、素直な気持ちを口にする。族や組の辺りでちょっと首を傾げて、山賊の事や秘密組織の事かしらなんて、当たらずとも遠からじな事を呟いていた。

 今まで守りたい人なんて考えた事はなかった。俺が守る必要なんてない程に周りが強かった。でもお姉ちゃんと云う守りたい人が出来たんだ。あの笑顔を守りたい。死後の世界と云うのも変だけど、一族の居ない自分一人になったこの世界で出来た新しい家族を守りたいんだ。だから守る為に俺は強くなりたいんだ。そう云う決意を、今改めて誓う。

 ふと見ると、お父さん、お母さんの顔には笑みが浮かび、お姉ちゃんは満面の笑みをし、瞳には涙が浮かんでいた。うん、そうだ俺は間違っちゃいない。


「そうですか、姫様のお気持ちは良く判りました。好戦的な性格とかではなくて安心しました。現状姫様の魔法力は私達にとって大変な脅威なんです。最悪の場合には魔封石を使わなくてはならないかも知れない、と考えていたんですよ」

 穏やかな表情になったミランダさんは話を続ける。


「魔封石?」


「ええ、魔法を封じるこれぐらいの大きさの石。その石を身に着けていると魔法を使うことが出来なくなるから。その石で姫様の魔法を封じようかとも思っていたのよ」

 ミランダさんが示した大きさは小指の爪ぐらいの大きさだった。そんなに小さい石で魔法が使えなくなるのか。


「つまり、もし俺が放置しておけない様な人間だったら、ローズマリーの部屋で幽閉されていたかも知れなかったんだ」

 やばかった。もしそんな石を使われていたら、本当に単なる八歳児になる所だった。先に備えてストレッチに励むだけにして置いて正解だった。魔封石を使われてしまったら大人になるまで修練に励むだけになっていた所だった。あれ?結局修練することには変わらないじゃないか。いやいや、待て待て、今すぐ俺は力を取り戻したいんじゃないか。でなければお姉ちゃんを守れない。


「そうならなくて良かったわ。突然違う世界の……幼い王女になってしまっても、大して取り乱したりもせず、黙々と体を動かす事にのみ執心していたでしょう。魔法が必要と感じたら、今度は魔法を覚える事にも執心する。私達の知らない地球という所の十六歳の少年だと云うのにこの世界には無頓着。いい子だとは思っていたけど、考えていることが今一つ判らなかったの、でも今の話しを聞いて判ったわ」


「過ぎた事には余り拘らない方だから、くよくよしたりはしなかったけど、内心ではそれなりに落ち込んでもいたんですよ……幼女だと。けど、もう幼女って呼ばれても気にしない事にしました。だからもう気を遣わなくてもいいです。実際にそうだと自分でも実感しましたから。その代わり、やる気が出てきました」

 ちょっと苦笑いしながら、ガッツポーズ。多分様にはなっていないんだろうな。いかんいかん、自虐的になったら駄目だ。


「あら、過ぎた事にはあまり拘らないのに、男口調を変えないとかは拘っている内に入らないの」


「お、いやあ、拘るとか、拘らないとかではなく、自分は自分だから、振りぐらいなら兎も角、普段となるとやっぱり、ほら、ね、つい……」

 ミランダさんの言葉にうろたえ、どもりながらも答えを返す。流石に普段から女言葉は心が女になっていきそうでとても恐い。


「そうね、ごめんなさい、意地悪だったわね。では魔法の話しを続けましょう。先程、姫様は無音発動で魔法を使用していましたね。その時に、魔法陣を呪文詠唱をなしで魔法を使用してませんでしたか」

 ミランダさんは俺をからかっていた雰囲気を消し去って、師としての顔に戻り解説を続ける。


「えっと、魔法が暴発した時に、コリーンさんから魔法に意識を向けてその発動キーを頭の中で思い浮かべるだけでも魔法は発動すると聞いたから、それでも魔法は使えるんだろうと思って……」

 何だろう、何か間違った魔法の使い方をしていたんだろうか。俺がそう答えたら、ミランダさん達から溜息が漏れた。皆一様に呆れたような顔をしている。


「どうも魔法の発動が速すぎる感じがしていたのですが、やはりそうでしたか。魔法の正式手順は魔法陣を描き、呪文を詠唱し、発動キーを詠唱する事によって発動します。そして手順を簡素化をして、短い時間で魔法を発動する無音発動と言う方法もある。これはいいですね」

 表情を改め、説明口調でミランダさんが説明を始めた。それに俺はこくりと頷く。


「では何故、無音発動があるのでしょうか、それは魔法を発動する為に掛かる時間を短縮する為にあります。自覚は無いでしょうが、姫様が思っている以上に魔法の発動には時間が掛かるのですよ。しかし時間短縮と云う利点の代わりに、魔法の発動失敗と消費魔力の増大と云う二つの欠点があるのです」


「魔法が失敗したら、時間短縮の意味は無いんじゃ……」


「その通りです、まずは魔法の発動失敗について説明しましょう。熟練者より初心者の方が失敗しやすい理屈は理解出来ますね。正式手順でも初心者は魔法を失敗する事が稀にあるんですよ。そして手順省略の方法として、発動キー無詠唱、呪文無詠唱、魔法陣無描画、呪文破棄、魔法陣破棄の順で失敗する確率が高くなっています。これらは重複しますので、魔法陣破棄、呪文破棄、発動キー無詠唱の組み合わせが最も魔法を失敗する確率が高くなるのです。つまり姫様が行われた無音発動は最も失敗率が高くなる方法なのです。初心者はまず失敗するんですよ。一度魔法を見ただけで会得をしてしまい、無音発動まで熟してしまうなんて、全く持って驚異的です」

 成る程ね、溜息が漏れたのはその所為だったのか、他の人を見てはいないから判らないけれど、普通の人はどうなんだろう。コリーンさんは何気なく魔法を無音発動してから、かなり腕がいいんだろうな。するとゴルディア隊長もか? そうだよなあれ程速く走れる魔法を無音発動で3つ同時だもんな。

 しかし、驚異的と言われても、別段嬉しくはならない。魔法を覚えたい、使えるようになりたいとは思ったけれど、こんな苦労も何も無い方法は俺は好かない。今まで修練を積んで戦う力を得て来たんだ当然だろう。けど自分の手からこぼれ落ちた力の代わりが欲しい。うーん、悩ましい。


「あの、無詠唱と無描画と云うのは何ですか」


「両方とも脳裏にて魔法陣の展開や呪文の詠唱を行うことです。魔法陣魔力展開や呪文の詠唱よりは時間が短縮できます。魔法発動の失敗と、発動時間の短縮とを天秤に掛けて丁度折り合いがつく所ですね。無詠唱と無描画で行われる魔法も無音発動と呼ばれています。人によって組み合わせは様々ですが、大抵はこの組み合わせが多いです。そして魔法単位でも熟練度が上がる程、魔法が失敗する確率は下がって行きます。つまり沢山練習すれば、それだけ無音発動を行えるようになって行く訳です」


「と云うことは、コリーンさんが『暖かい空気[ウォームエアー]』を無音発動してたのは、もしかして完全ではない方なのかな……」


「私のは完全な無音発動ですよ~毎日何回も使っていますので~無音発動はお手の物なのです~」

 疑問に思って呟くと、コリーンさんが自慢げに微笑んで答えて来る。聞こえてたのか。目だけが笑っていない様に見える。そうだね、毎日コリーンさんが髪を乾かしてくれてたんだもんな。失礼しました。


「そしてもう一つの欠点、消費魔力の増大ですが、場合によっては此方の方が問題になって来ます。魔法陣破棄の場合、消費魔力が2乗に跳ね上がってしまい、呪文破棄の場合には消費魔力が2倍になります。消費魔力の増大も重複します。民生魔法程度ならば兎も角、それ以上の魔法になると完全な無音発動は消費魔力の点で難しくなって来ます。こちらの理由からも無詠唱、無描画がよく使われる理由になります。私が教える魔法は消費魔力が4万も必要なので、姫様程の魔力を持ち合わせていても、これから教える魔法の完全な無音発動は出来ないでしょう」

 えっと、4万の2乗で16億のさらに2倍で32億か。俺の魔力は1億だから、全然足りないじゃないか。考えてみれば。必要であるはずの魔法陣と呪文をすっ飛ばすんだ、それなりのペナルティがあるってのが道理ってものだな。


「魔力が足りない場合はどうなるんですか」


「その場合には魔法は発動しませんし、魔力も消費しませから、無理はしないようにして下さい。それと魔法陣魔力展開をしている場合、最大で10の魔力が魔法陣に注ぎ込まれています。魔法が発動すれば魔法陣の魔力は消費魔力として補填されます、失敗すれば魔法陣の魔力は無駄になります」


「つまり魔力展開をしていると魔法が失敗した時だけ最大で10の魔力が無駄になるんですね」


「有り体に言えばそうなりますね。微々たるものですが、魔力を消費することだけ覚えて置いて下さい。今から私が『鐵杭創成射[パイルドライバー]』の魔法陣を魔力展開しますので見て下さい」

 ミランダさんが魔法陣を魔力展開し始めた。赤く淡い光が地面を疾走(はし)る。円形の中に図形や文字が描かれてゆく。円が三重で円が一つの初級の魔術師用とは比べ物にならない程に複雑だ。

 魔法陣が描き終わったかなと思ったら、更に別の魔法陣を隣接した場所に描き始めた。また、次も。更に次も。最初の魔法陣を中心にして六角形の頂点に一つずつ、合計七つの魔法陣が描かれた。最後にそれぞれの魔法陣を繋げるような線が疾走る。

 かなり時間が掛かったな、十秒以上か。最上級魔法だとこんなに掛かるのか。道理で無音発動とかがある訳だ。さらに呪文もあるんだからな、そんなに敵は待っちゃくれない。時間短縮は命題と言ってもいいんだろう。

 ん? 呪文? あれ、呪文が浮いてこないぞ。


「あの師匠、呪文が頭に浮いてこないんですけど」


「ええっ! そうなの? 確かに左の瞳には光を帯びていなかったけれど、じゃあ、発動キーは?」

 狼狽して聞いてきたミランダさんに俺は顔を左右に振る。


「変ね、魔法陣を見れば呪文と発動キーが脳裏に浮かぶと聞いていたのに、じゃあ呪文を読んでみて、呪文はこれよ」

 魔法陣を描いた時と同じ赤い光で呪文が地面に記されて行く。ふーん、こんな事も出来るのか。

 んっと、「我放つは、虚無より創成せし、全てを穿つ鐵の杭。射かけし杭を阻むは何人も敵わず。全てを貫き粉砕せよ」か、魔法陣が複雑だと呪文も長いんだ。

 そう思った時、脳裏に『鐵杭創成射[パイルドライバー]』の発動キーが浮かび上がる。


「あ、呪文を読んだら発動キーが浮かびました」


「取得出来たのね、よかったわ、普通に取得する事が出来ただけだけど、最上級魔法を取得出来たのだから、これだって凄いことなのよ。でも不思議ね、何故瞳が光を帯びなかったのかしら」

 ミランダさんは首を傾げる。

 何で魔法陣を見ても呪文が浮かばなかったのかなんて、俺だって不思議だよ。


「さあ、魔法も取得したのだから、お手本を見せたいのだけれど、その前にもう一ついいかしら、事前に張って置いた対物理・対魔法の障壁は、もし姫様が魔法を制御出来なかった時の為に張って置いた障壁なの。この際ですから障壁の魔法も覚えて貰います。そして『鐵杭創成射[パイルドライバー]』の為に更に障壁を張って貰います」

 覚えて貰いますって、なんかやけくそ気味に言われている様な気がするな。

 教えた貰ったのは同系列の三つの魔法だ。

 

『対魔法障壁[マジックウォール]』:対魔法障壁を構築する。消費魔力:120。属性:持続。効果範囲:任意位置。

『対物理障壁[フィジカルウォール]』:対物理障壁を構築する。消費魔力:80。属性:持続。効果範囲:任意位置。

『防御障壁[プロテクトウォール]』:対魔法・対物理障壁を構築する。消費魔力:250。属性:持続。効果範囲:任意位置。

 対魔法障壁には魔法を阻み。対物理障壁には物理攻撃、武器による攻撃などの物理衝撃に耐える障壁だそうだ。

 持続時間は約12時間。俺がやると何時間になるんだろう。時間と云えばマユリに掛けた魔法はまだ解けてない。


 問題なくと言うのも変だけど、これらの魔法は魔法陣を見ただけで取得する事が出来た。やはり左目が光っていたそうだ。ミランダさん『凄いわ、やっぱり左の瞳が光を帯びるのね、でも……』と言ってしきりに首を傾げていたけど、さっき駄目だったのは多分最上級の魔法だった所為なんじゃないかと俺は思うんだけど。

 魔法のランクは威力や消費魔力ではなく、取得率で決まるらしく、最上級は取得者がとても少ない魔法なんだそうだ。障壁の魔法は中級だとミランダさんは言っていた。

 両方を同時に張る魔法は消費魔力が高くつく、その代わりに一回で済む。これも時間を取るか消費魔力を取るかの問題なんだろう。

 魔法訓練場に事前に張ってあった障壁は魔法を仕掛けた係員の術者が出入り口を開ける事で出入りが出来る。一度障壁を張ると、仕掛けた術者の思う形に変形出来るんだそうだ。魔力は消費するが、ごく微量なので気にするほどの物ではないと言う。成る程ねえ、前に来た時はそんな事には全然気が付かなかったよ。

 そして俺とミランダさん以外は開けた出入り口から、障壁の外へ念の為に待避した。試しに障壁があると言われた場所を手の甲で軽く叩くと、硬い物を叩く高めな音が帰ってきた。

 城の門をぶち破る様な魔法を使おうと云うんだ。万が一を考えて安全な所にいて欲しい。コリーンさん達も護衛役で一緒にいる。


「では、すでに張ってある障壁の内側に更に障壁を張ります、私の正面を向いて二歩程下がった位置に立って下さい」

 言われた位置に立ってミランダさんの顔を見上げる。なんでこんな位置に立つんだろうか。

 地面に魔法陣が魔力展開される。魔法陣は円が一つだ。ランクと円の数に関連性はない様だな。その代わりに中の図形は『鐵杭創成射[パイルドライバー]』並に複雑な紋様が描かれている。


『防御障壁』(プロテクトウォール)

 呪文詠唱の後、発動キーを唱えた。ミランダさんの頭上から、半透過で乳白色の厚さの感じられない平面の膜が上昇しながら広がって行く。途中から既に張ってある障壁にぶつかったのだろう、湾曲しながらも上昇を続け、上昇が終わると天辺は球面状になっていた。

 逆に膜の端は、下方へと湾曲して伸びて行く。地面まで下がり終えると停止した。練習場は四角に区切られている。最後にはそれを取り囲むドーム型の障壁が出来上がった。

 高さはかなりあるな30m位か、練習場のこの区画は50m四方って所だろう。障壁の広がりが終わると同時に透明になり見えなくなった。俺がそれを確認した時、俺を見つめていたミランダさんは何故か柔らかい笑みを浮かべた。

 障壁同士は干渉し合い、障壁を張るときに既に別の障壁が張ってあると、対魔法・対物理に拘わらず、そこから先へは障壁を広げられないとミランダさんは言った。すると、元々張ってあった障壁はあの形だった訳だ。

 ここで一つ疑問が湧いてきた。


「ねえ師匠、俺が今此処で障壁を張ると師匠の体に障壁が当たってしまうと思うんだけど」

 小さいこの体は、手を上げてもミランダさんの頭の天辺には届かない。対物理属性を持っているんだから、障壁で切断されたりはしないんだろうか。もしそうなら防御用だけでなく攻撃手段としても使えるよな。


「それは大丈夫よ、障壁を張り終わると、最後に透明に変化するの、それまでは障壁としての効果は発揮されないわ、それにもし人や物が障壁の膜に巻き込まれてもそこには障壁は出来ないわ」


「だとすると、逆に人を巻き込んで『対物理障壁[フィジカルウォール]』を張れば、その人は動けなくなったりはしないのかな」

 切断できないのなら、胴体と両腕とか、首辺りに硬い障壁を張れば、枷が嵌まったようなって一時的な拘束用に使えるんじゃないだろうか。


「もしかして、拘束用に使うつもりなの。確かにそうだけど、相手が魔法を使える可能性を忘れてはだめよ。その場合には『防御障壁[プロテクトウォール]』で完全に包み込むのが一般的ね。姫様の外見だとそうは感じられないけれど、すぐにそう云う事を考えるなんて、やっぱり言った通りの性分なのね」

 両手でおまんじゅうの型を示す、ミランダさんは楽しそうに笑う。しまったな、これからは魔法がある事を前提に物を考えないといけないな。


「そう性分だからね、俺も障壁を張ればいいんですよね。行きます」

 恥ずかしいから、ぶっきらぼうに答えた。なんかほっぺたが熱いな。


『防御障壁』(プロテクトウォール)

 魔法陣魔力展開、呪文詠唱をかっちりやって。右手を挙げて、発動キーを唱えた。障壁の形は判っている。要はあれに合わせて障壁を作ればいいわけだからあれに重なる様に広げるイメージで魔法を発動する。掌から一気にドーム型の障壁を広げる。既に設置してある障壁に重なるように広がった所で設置。乳白色の障壁が透明に変わり、目では見えなくなった。

 しかし、設置してある見えない障壁が俺には認識できた。変な事を言っているけど、そこに自分が設置した見えない障壁が見えているんだ。これは不思議な感覚だった。今まで使った魔法で起きたのは、変な出来事だけれど目に見える理解の範疇の出来事だった。しかしこの魔法の感覚は始めて魔法と云う摩訶不思議な物に接した事が実感できる新鮮な感覚だった。


「全く呆れてしまうわね。私が見せた手本以上に上手にぴたりと障壁を貼り付けてしまうなんて。この魔法はね、初めて使うと自分の前に平面の障壁を作ってしまうの。掌を上に向けて広げたのも意識を上に向ける為だけなのよ。効果範囲が任意位置になっているでしょ、本当は術者は張りたいと思う所に、どんな形でも障壁は張れるの。勿論その為には何度も魔法を使って修練しなければならないのよ。でも手本を見せればちゃんと魔法を制御することが出来る事も確認出来て、左の瞳も光を帯びていたのも確認したから、一度見た魔法なら使ってもいいわよ」

 朗らかに笑い、フランクな口調で愚痴っぽい事を口にする。でもね愚痴っぽく言われても、出きるんだから仕方ないじゃないか。けど、どうにも後ろめたい気持ちを拭うことが出来ないよな。

 俺を目の前に立たせたのは左目が光る様子を確認する為だったんだ。そうだな、ミランダさんは見ていないから、疑いを払拭出来ないのも判らない話ではない。それよりもミランダさんに許可をもらえたのが嬉しい。


 さあ、次はお手本だな! と、思ったら、もう一枚障壁を張ってくれとミランダさんに言われて、がくっと来る。仕方ないので同じ障壁をもう一つ張る事になった。これも念の為なんだろうが、意気込んだ所で透かすのは辞めて欲しい。

 二枚目の障壁を張った時に気が付いた事があったので、俺も念の為ひとつ手を打っておく事にした。許可は貰ったんだ、多分大丈夫だろう。後で魔封石を使うなんて言わないでくれよ。


「これで『鐵杭創成射[パイルドライバー]』の手本を……と行きたいのだれけど、この魔法の消費魔力は4万、私の魔力は最大で3万5千、その上今さっきの障壁や、朝からもいくらかの魔法を使っているから、もっと残りは少ないの。そこで姫様の魔力を分けて欲しいのだけど」


「別に構わないけど、魔力は人に分けられるんですか」

 魔力は沢山あるし、教えて貰ってんだ、喜んでミランダさんに魔力を分けて上げたい。けど、意気込んだ所に待ったを掛けられたので、少々不機嫌で答える俺。


「正確には違うわ。魔法陣を魔力展開した時に使用した魔力が消費魔力として補填されるでしょ。あれと同じ感じで、接触している人に消費魔力を補填して貰うの。大規模な魔法程、消費魔力が大きくなって行くから、多人数でないと効率よく魔法が掛けられないのよ」

 そう言ったミランダさんは俺の手を取り自分の手と繋いだ。ひんやりとした完食が俺の手に伝わってきた。


「魔力の負担分は私と姫様の二人で掛ける場合は、私が三分の二、姫様が三分の一になるわ。三人の場合は私が四分の二、残り二人がそれぞれ四分の一になるわね」

 つまり、消費魔力を術師プラス一人で割った分が負担分になる訳で、魔法を実行する術者が二倍の負担をする事になるのか。そうするとミランダさんの消費魔力は2万7千弱で済む計算になるな。って事は、消費魔力が多い魔法でも、人数さえ揃えば使える事になる、と。まあ、皆で魔法を唱えましょうと云う事だな。


「魔法陣から杭が射出される魔法だから、魔法陣の位置には気を付けて使うようにね。今回は真上に向けて射出します。障壁を一枚貫通して真っ直ぐに落ちてくると思うから、落下してくる杭から注意を逸らさないで置いて」

 そう言うと、ミランダさんは魔法陣の魔力展開を始めた。

 やっぱりこの魔法陣は時間が掛かる。呪文もだ。この間の攻撃に対する備えはしてあるのだろうか。なんて、つい考えてしまう。

 『鐵杭創成射[パイルドライバー]』の発動キーを唱えると。魔法陣が青白い輝きを放ち、その中より丸太程もある漆黒の鋭く尖った鐵の杭が湧き出して来た。強烈な勢いでそそり立った長大な鐵の杭は、その勢いのまま空を切り裂き、天に向けて上昇する。が、天井までの距離はほんの僅かで、直ぐ様とてつもない轟音を辺りにまき散らし、障壁へと激突した。

 が、障壁はびくともせず杭の先端が激突した場所周辺が白濁化しただけに留まった。障壁に弾き返された杭は方向を変え、俺達の方向を目掛けて倒れ込んできた。


「うそ、そんな筈は……」

 障壁に鐵の杭が弾かれた所を見たミランダはあり得ない筈の物を見てしまった事で、唖然とした顔をして呟く。


「馬鹿野郎!惚けてんじゃねえっ!弾かれた杭が軌道を変えてこっちに倒れ込んで来てんだぞっ!」

 小さいこの体じゃミランダさんを押し倒して避けるのは出来ないと悟った俺は即座にミランダさんの足元に張り付き、繋いでいた腕を下に引っ張りしゃがませた。惚けていたミランダさんはかくんと頽れる。あらかじめ張っておいたもう一枚の障壁を即座に展開して俺達二人を包み込む。ミランダさんを引きずり倒したのは、コンパクトになればそれだけ速く展開が出来る計算の為だ。

 そこに唸りをを上げて鐵の杭が倒れ込んで来る。展開した障壁に激突すると、轟音と地響きが轟き、土煙が巻き上がった。鐵の杭は障壁の上に乗ったままで丁度停止していた。

 ふう、念の為に張って置いた障壁が役に立ったぜ。くわばらくわばら。


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『鐵杭創成射[パイルドライバー]』:鐵の杭を生み出し射出する。消費魔力40000。属性;単。効果範囲:魔法陣。


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