第11話 窮地
「うふっ、うふふふ、ローズマリー姫様は今、無力感に苛まれていらっしゃいますね、その悔しい、情けない、悲しい、それらが入り交じった、得も言われぬお顔をされていらっしゃいます。ああっ格別なるかな、その幼女の屈辱に満ちたお顔」
「されど幼女のさらなる屈辱、いえ汚辱にまみれたお顔が、これから、この私の目の前に、燦然と輝くでしょう、うふふふふっ、じゅるりっ!」
うわっ、この変態痴女、涎を拭ってやがる。とんでもねえやつだ。
「さあ、コリーン、アイリーン、ジェシカ、マシロ、ローズマリー姫様の四肢を拘束し大の字に貼り付けなさいな」
「わーてめえ何てことを言いやがる、何が危害は加えないだ!それは十分危害に該当するだろうが」
「心外な、私自身は危害など加えていませんよ」
「お前は教唆と云う言葉を知っているか!」
「それは犯罪ですよ、ローズマリー姫様」
「だからお前のやっていることが犯罪だと言っているんだ!」
「私は姫様に仕える侍女ですよ、その私が犯罪などする訳が無いではありませんか」
駄目だ、会話になってない。どうすりゃいいんだ。
そんな実りの無い遣り取りをしてる間に………あれ?何も起きない?
「どうした?何も起きないぞ」
嫌みったらしく言ってやる。
「そんな、何故なのですか?」
マユリは混乱している様だ。今の内にどうにか出来ないだろうか、さっき命令を受けていたネムさんはどうだ?
体を起こそうと動いてみるが、ネムさんにそっと押さえられた、優しく扱ってくれるのは感謝したいけど、行動そのものに感謝することが出来ない。でも操られているんだから仕方ないか。ん?操る?そうか。
「お前馬鹿だろ、操る時には曖昧な命令を出したら駄目なんだよ、4人を指定して、その対象を四肢なんて指定の仕方をすると誰がどの手足か確定できなくて、命令が実行されない。よくある話じゃないか、そんな事も解らないのか?ああっ」
ふふんっと、どや顔で言ってやる。
「成る程、そう云う事だったのですね、ローズマリー姫様は大変お利口さんですこと、それではご忠告通りにそう致しましょうね、うふふふっ」
嘲り顔で返された。わー馬鹿は俺の方だった~
「しかもローズマリー姫様はお口の躾けが甚だ宜しく無いご様子で、これは是非ともこの私手ずから泣いて謝るまで容赦せずに躾けさせて頂くとしましょう、更に楽しみが増えました」
お前を楽しませるつもりは毛頭無い!が、泣いて謝るまでと言うなら、ここは一つ泣いて謝ってみるのも一つの手かもしれない。そうだ俺は男だ。泣いて謝ることも出来ずに男は語れねえっ。
「ぐすっ、ふええええん、マユリおねえちゃんごめんなさいぃ、ひっく、ローズマリーがわるかったのぉあやまるからお姉ちゃんをたすけてぇ。うえーーん」
くそう、恥ずかしい真似をさせやがって。すっげえ恥ずい。
「ちっ、そうですか、ローズマリー姫様には反省をして頂けたのですね、仕方ありませんお口の躾けに関しては、お許し致しましょう」
やりい、恥ずかしかったが、男を張って見るもんだぜ。こう云う時に男を張らずに何時張るって云うんだ。舌打ちしてても、頬が垂み涎が垂れてるぞ。
「ですが、お許し出来るのは其処までで御座います」
くそっ、まだ何かあるのかよ、じゃあもうちょっと芝居を、
「じゃあ、お許し出来ないのは何処までなのぉ、ローズマリーに教えてよぅ」
「私は申し上げた筈ですよ、『後悔は先に立たないのですよ』と」
げー断頭台の恨み相当しつけえな。さらっと流せないのかよ、さらっと。
「これはもう、いかような手段を用いても晴らされる事はないでしょう。ただ一つ、ただ一つの事を除いては」
「それって……」
「勿論、汚辱にまみれた幼女姫様の御尊顔を拝し奉る事で御座います。正にこれこそがこの上ない至上の喜びなれば、万難を排して望む所存に御座います」
もの凄く真っ当な言葉の様に聞こえても、冒頭の部分で既に全てが台無しだ。しかも幼女姫様ってなんだよ、って云うか勿体付けて言っても、結局は其れに尽きるのか。
「なにをしているのまゆりろーずまりーをはなさなきゃだめよ」
お姉ちゃんが口を開いた。ネムさんとかは全然口を開かないのに、でも虚ろで抑揚のない話し方をしている。
『操り人形[マリオネット]』は他人に命令をして行動を操る魔法みたいだけど、『悪魔の囁き[セデュース]』の効果は何なんだろう、でもマユリが使った魔法だ、名前からしてもきっと碌でもない魔法に違いない。
「申し訳御座いません姫様、ローズマリー姫様を直ちにお放し致しますので、姫様はお先にお体を洗いましょうね、さあ此方へどうぞ」
「うんわかったわ」
マユリに手招きされたお姉ちゃんは、俺の足下から少し離れた場所にぺたんと女の子座りをした。やっぱり命令して人を操る魔法なのか?でも口が利けて、答えを返せるならば、
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、判る?ローズマリーの声が聞こえる?お姉ちゃん!」
「無駄ですよ幼女姫様、姫様にお声は届きませんよ、姫様に聞こえるのは、この私の声だけなのですよ」
そうかい、認識するのは術者の声のみって事か、情報をありがとよ、でも役にはたたねー。遂にローズマリー=幼女変換かよ。滅茶苦茶悔しい、覚えてろ何時か報復してやる。あ、いかんいかん友達が言っていたっけ、こう云うのは負け犬フラグだって。フラグって何だ?
「さて、折角頂きましたご忠告に従うと致しましょう」
その後マユリはそれぞれに命令して、結局大の字に拘束された。序でに俺の頭を支えていたネムさんはタオルの束と交代して今はお姉ちゃんの体を洗って、泡を塗りたくっている。
「さあ皆様、それでは待ちに待った宴を始めましょう」
仰々しく両手を広げ、やや上を仰ぎ見て宣う。お前は何処の悪役だ。皆様ってお前だけだろうが。酔ってるのか。
「まずは、見目麗しきローズマリー幼女姫様の艶姿を、じっくり、たっぷり、ねっとりと鑑賞させて頂くと致しましょう。うふふふっ」
そう言うと、マユリは突然、四つん這いに伏せた。胸が床石との間に挟まって拉げる程に伏せている。うげっそのまま俺の周囲を回るように移動し始めた。気持ち悪い、ホラー映画の1シーンを見ている様だ。しゃかしゃかと云う幻聴は本当に気のせいか。
「大変お美しゅう御座いますよ幼女姫様、この角度から見る幼女の体は僅かな起伏が誇張され、幼女姫様、今私が見えますね、私もこの位置から見る幼女姫様はまた格別のものがあります、眼福眼福、だらーじゅるるっ」
其処から見ても何も無いぞ、何が楽しいんだ、なんで涎を垂らす。気持ち悪いよ。
「ふう堪能させて頂きました、では本日の山場と参りましょう、姫様、お体は泡一杯になられましたか」
マユリがお姉ちゃんにそう言うと、お姉ちゃんは自分の体を見回して「うん」と答える。
「姫様はローズマリー姫様の姉君なれば、妹御のお体を流すのは当然の事ではありませんか?」
何を言い出すかと思えば、何てことを言い……あれ?それは普通な事だろ、姉が妹の背中を流す。別段特に変わった事じゃ無いよな。なんでこんな事言い出すんだ。
「そうねおねえちゃんだものろーずまりーのからだをあらうのはとうぜんのことよね」
でもお姉ちゃんの抑揚の無い言葉を聞くと不安になる。
「それではローズマリー姫様のお体を洗って差し上げましょうね、折角ですから姫様のお体に付いている泡泡を使いましょう、そうそう、洗うならば自らのお体とお手を使われるのが宜しいですよ、その方がローズマリー姫様もお喜びになられますよ」
やっぱり普通じゃ無い所に来た!でもいくら何でもこれは変だろう。
「ろーずまりーがよろこぶのならわたしもはりきってろーずまりーのからだをあらってあげるのぎゅうってだきしめてからだのすみずみまであらってあげなきゃねおねえちゃんだものね」
血の気が引いて行く、これが『悪魔の囁き[セデュース]』の効果か。
今お姉ちゃんはマユリが口にした以上の事を言った、ただ操るのでは無く、思考を許して唆し自らの意思で行動いていると思わせる、えげつない魔法だ。
その割にはちょっと出来が悪いような気もするけど。今はそんな事はどうでも良い、何か打開策は無いのか。
「おや、幼女姫様はお口が利けなくなられたご様子、ですがご安心下さいませ、間もなく姉妹の饗宴の響きを奏でるために口を開く事になるのですから、うふふっあはははっ、さあ姫様」
笑い声が変わった、間違いなく酔い始めている、舞い上がり始めている。
「うんろーずまりーいまおねえちゃんがからだをあらってあげるね」
お姉ちゃんが抱きついてきた、俺は磔状態なんだが、そんな事には頓着してないみたいだ。まあそうだろうね。
お姉ちゃんは泡まみれで、ぬるぬるしている。わーめったやたらと体をなでないで、くすぐったい。ちょっとっ体を動かさないで、肋骨が当たって痛い。ああっ、肘も痛いってば。
「あっ(びくっときたぁ)・・おねえちゃん・・だめ(だよ)・・そこは(くすぐったい)・・だめ(肘痛いってば)」
くすぐったくてつい声が漏れた。その声を聞きつけたのかマユリが寄ってくる。
頭の中に閃きが走った。変態痴女にはこれならば・・でもお姉ちゃん達は大丈夫か・・・他には手がないか。
「幼女姫様は随分と悩ましげなお顔をされておいでの様ですね、ああっ、頬を赤く染められたお顔が大変お美しゅう御座いますよ、さあ姫様、ローズマリー姫様はお喜びの様です、もっともっと洗って差し上げて下さいませ」
くすぐったいのを我慢してるんだよ、序でに言うと風呂場だからな、結構暖かいんだよ。
「うんおねえちゃんがんばるよもっともっとろーずまりーをあらってあげるのだいすきよろーずまりー」
うーん魔法の効果だけではなさそうな所が何とも言いがたい。待っててくれお姉ちゃん、今助ける。くそっ見せてやる、男国枝一輝、一世一代の艶姿。
と、思ったらお姉ちゃんが俺の上でくるりと体の向きを反対に向けた、石けんでぬるぬるしてるからって、器用な。
しかしこの姿勢は色々な意味で大変に拙い。さっさと勝負しなければ。
「ぬるぬるしてるよぅお姉ちゃん、ねえローズマリーのからだがなんだか熱いよぅ、お姉ちゃんそんなとこさわっちゃらめぇ、なんかローズマリーおかしくなっちゃうぅ、ねえマユリお姉ちゃんローズマリーの手を握ってぇ、おねがいぃ、もうらめぇ」
「うふふふ、幼女姫様は、はしたない姫様ですね、今お手を握って差し上げますから、はぁはぁはぁ」
マユリが俺の手を取った瞬間、
『操り人形』
マユリの動きが止まった。よっしゃ、ざまあ見ろ。
我が友よ感謝する、お前から借りて読んだライトノベルとやらのおかげだ、無理矢理押しつけられた時はなんでこんな物をと思ったが、今役に立ったよ。
あの本の中に出てきた女性の服を溶かすスライムと云う不届きな物が登場するシーンをちょっと使わせてもらったよ、お前が『だからお前は阿保なのだ。頭の中が小学生のお前には解らんだろうが、俺達のような変態性を持つ奴らにはこれが燃えるシチュなのだ』と言ってた時はよく解らなかったが、うまく獲物が釣れた。違う世界からだが、礼を言うありがとう。お前はもう永遠の我が友だ。
「きゃああ、もうっローズマリーったら、なんて所に頭を入れてるの!恥ずかしいっ、もうっお姉ちゃん怒るわよ」
「よく見てお姉ちゃん、それはこっちの台詞だよ」
「え、あら私もなのね、ご免なさい直ぐ退くから、ってわきゃあっ」
お姉ちゃん、ぬるぬるで動けば滑り落ちるでしょうに、さっきはよく180度ターン出来たね。
「あら~姫様方をはしたないお姿にしてしまいました~」
「姫様方申し訳御座いません、マユリが大変な事をしてしまいまして」
ネムさんとマシロさんが謝りながら、泡まみれの俺とお姉ちゃんに湯を掛けて流してくれている。
「ああっ、くそっ、姫様大丈夫ですか。マユリ、君は何て事を…」
「ジェシカさん待って、待って、落ち着いて。皆は魔法が掛かっていた間の事覚えてるの?」
「はい、屈辱です、魔法を掛けられていたとはいえ姫様にこの様な不埒な真似を行ってしまい、誠に申し訳御座いません。自分が何をしているのかが判っていただけに逆らう事の出来ない自分が余計に悔しくて」
「うん、いいよアイリーンさん、気にしなくて、悪いのは全てマユリなんだから。それで、どう云った状態だっだの?魔法の効果が知りたいな」
「はい、マユリに命令された時以外は視線を動かす事は適いませんでしたが視界に映る物は判りました、音は全て聞こえていました、触覚、嗅覚も正常だったと思います」
「ふーん、と云う事は会話は全部聞こえていたんだ」
「そうですよ~姫様の艶めかしいお声はばっちりと聞かせて頂きました~」
「あれは忘れて、お願い。元々は本に書いて在った物をちょっと変えて言っただけだから」
「駄目なのです~私達は委細漏らさずに~国王陛下と王妃殿下にご報告申し上げなくては成らないのです~ミランダ様もおられないので私達が特に頑張らねばならにのです~」
「え、もしかして監視してたの」
「違います~国王陛下と王妃殿下は御心配されておられるのです~」
過保護だなあ、でもローズマリーはそれだけ心配されていたんだね。
「そういえばお姉ちゃんは何か覚えてないの?」
お姉ちゃんだけ違う魔法だから、確認して置かなきゃ、結局実践あるのみ何だよな。
「全部覚えているわよ、ローズマリーの体を洗ってあげなきゃってずっと思っていたわ」
つまり覚えているのはマユリに言われてそう思い込んでいた部分だけって事か?。
「マユリが言っていることを変だとは思わなかったの?」
「マユリは何か言っていたの?」
成る程ね術者の唆しの言葉は記憶に残らない訳か。
「じゃあどうしてお姉ちゃんは俺の体を洗ってあげようと思ったの」
「んー何となく?」
あーこの魔法は拙い、暗殺にでも使われたら証拠が残らないし、魔法を掛けられた人は、ほぼ確実に罪になる。正に悪魔が囁くだな、御禁制にしなきゃ駄目だろう。しかしそんな魔法をこんな下らない事に使うとはね。
全員魔法が解けて良かったよ。忍者物とかで傀儡の術で他人を操る展開ってさあ、大抵術者が死んだり戦闘不能になると、術が解ける事が多いから、もしかしたらと思って、危険な掛けだったけど成功して良かった。
駄目だったらネムさん以外全員『操り人形[マリオネット]』の重ね掛けなんて事に成り兼ねなかったもんな。重ね掛けになっていないって事は、既にこの手合いの魔法が掛かっていると、後からの魔法は効かないのだろうな。精神魔法とでも言うのかね?
「まあ兎に角もう一度お体を流して~今度はまったりとお風呂に入りましょうか姫様~」
「そうですね、そうしましょう」
今度は皆でゆっくりとお風呂に入った。勿論マユリは放置だよ。
タイトルを泡姉妹にしようかと思ったのですが、えっちいので止めました。




