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魔剣姫  作者: 天蓬元帥
10/26

第8話 フローラルの侍女は・・・

 部屋の扉がノックされた。

「どうやら帰ってきた様ね」


「ミランダ様、マヤです。ただいま戻りました」

 メイドのマヤさんだ、確かフレグランス伯爵家に手紙を届けに行っていたはず。


「マヤ、入っていいわよ」


 扉を開けてマヤさんが入ってくる。

「失礼致します。あ、ご来客中でしたか、申し訳御座いません」


「平気よ、それでフレグランス伯爵家からは?」


「はい、こちらの書簡をお預かりして参りました」


 ミランダさんは封書を受け取り、

「ご苦労様、マヤは下がっていて頂戴」


「はい、それでは失礼致します」

 マヤさんが出て行く時に床に座っている俺と、それに抱きついて背中を見せているフローラルお…お姉ちゃんをチラと見て僅かに眉根を寄せていた。国お…お父さんはこっち向きでソファに座っているので判らないようだ。


 ミランダさんは封書を開けて中を確認すると、

「陛下、ご覧下さい」

 そう言って封書の中身を国お…お父さんに手渡した。書面を読み終わったお…お父さんは、

「時間が立って落ち着いてからと思っていたが、下手に落ち着いて環境に慣れてからよりも今の内の方が良いかもしれんな、執務に戻る、ミランダ供を」


「はい、陛下。さっきの話の続きは後でしましょう王女殿下」


「判りました、ミランダ様」

 お…お姉ちゃんはそう言うと、俺を指で小突いた。え、あ、俺もか?

「判りました、ミランダ様」

 同じ様に答えておく。しかし、ミランダさんとしようとしていた話が段々積もってゆくな。


「フローラル、ローズマリーを連れて部屋に戻っていなさい、ローズマリーの部屋については後ほどにする」

 こっちの話も待機か。

「はい、お父様」

「はい、お…お父さん」


 全員部屋を出て、お…お父さんとミランダさんとは別れ、俺たちはお…お姉ちゃんの部屋へ向かった、腕を組むようにして引っ張られながら。

 そのときふと思った、女の子と腕を組むなんて始めてだ、手を握った事も無いのに、まあ自分の手も女の子の手になったんだけど、考えてみれば散々抱きつかれてはいたっけな。


「さあ、ローズマリー入って入って、此処が私の部屋よ」

 扉をばぁんと豪快に開けて部屋に入って行く。意外と大味なんだな、あ、もしかしたら凱旋気分か?


「「「姫様!」」」

 部屋の中にいた3人の侍女が声を上げる。3人?少なくとも1人はローズマリーの部屋に張り付いているはずじゃあ?


「ほら見て見て、私が言った通りじゃない、ちゃんとローズマリーあいたっ」

 遅かった、口を塞ごうと飛びついたんだけど右手は繋がっていた事もあって、手が届かずに、顎の下辺りに手がぶつかってしまった。ううっ、体が小さい。

「もうっ、何するのよローズマリー、お姉ちゃんが何かした?」


「した」

 父親でさえも何をしでかすかわからないと言ったのは、この迂闊さか?


「何をしたの?」


「ローズマリーって呼んだ」


「呼んだらいけないの?」


「この3人は知らないはず、少なくとも確定情報は持っていないはず」


「あああ、ローズマリー姫様、よろしいのです。私達は既に聴かされておりますので」


「あ、なんだ、そうなんですか、3人居たから変だなとは思ったんだ」


「私の侍女は3人よ、居たら何か変なの?」

 なんで解らないんだ?ああそうか、この子は12歳だったっけ、お姉ちゃん言われるとつい認識がな。でもそれにしてもなあ。


「いいですかお姉ちゃん、よく聞いて下さい。ミランダさんの話では、ミランダさんの居室に1人、ローズマリーの居室に1人、そしてもう1人は恐らくはフレグランス伯爵家に、侍女を送った。違いますか?」


「そうよ、よく解ったわね」


「それで、ミランダさんの部屋に居るのが俺1人だった時に、お姉ちゃんは1人で来ました。と云う事は、ミランダさんの部屋担当の人はお姉ちゃんに報告に戻り、お姉ちゃんはその1人をこの部屋に置いて、ミランダさんの部屋に来た」


「うん、そうよ」


「その後、色々あって、フレグランス伯爵家に使いに行っていたマヤさんがミランダさんの部屋に帰ってきた。当然フレグランス伯爵家担当の人も報告の為に此処へ帰ってくる」


「ああ、成る程ね、そうなのネム」


「はい、ローズマリー姫様の仰る通りです」


「では、お姉ちゃんに質問です。3番目の人は今どこに居るはずでしょう?」


「ええと、ネムがフレグランス伯爵家、マシロが一番に帰ってきたから、後はマユリね、マユリはローズマリーの部屋番だったわよね、あれ?なんで、此処に居るの?あなた、私の指示を無視して帰ってきちゃったの?駄目よ、そんな事じゃあ」


「「「「はあー」」」」

 溜息の四重奏が部屋の空気を満たした。

 所で、侍女3人の配置は誰が考えたんだ?


「あの、すいません、貴方方の配置は誰が決めたんですか?」

 侍女3人に小声で聞くと


「え、姫様ですが、どうかされました?」

 小声が帰ってきた。


「そうなんですか?いえね、配置が出来るのに、なんで答えの出ている読み解きが出来ないのかなと思って」


「ああ、姫様は所謂諜報活動と云うものがお好きでして、何か気になる事があると直ぐに私達を派遣して調べようとなさいますので、調べることに関しては、上達が宜しくて」


「もしかして、調べて、とりあえず情報が入手出来たらそれで満足してしまう?」


「「「はい、お恥ずかしながら」」」


「それで、何も入手出来ないと、入手出来るまで絶対止めない?」


「「「はい、お恥ずかしながら」」」


「皆さんご苦労されているんですね」


「お判り頂けますか、ありがとう御座います」


「なによ皆してこそこそと、私だけ仲間外れなの?狡いわ」


「姫様はまだお小さいですから」


「私よりローズマリーの方が小さいわよ、小さいローズマリーは良くて、大きい私は駄目なの?やっぱり狡いわ」


「背は小さいけど、一番の年下はお姉ちゃんだよ、俺は16歳だからね」


「う、そうだったわ、すっかり忘れていたわ」

 やっぱり忘れていましたか、いえ、いいんですよ。なにせ、お姉ちゃんの中ではローズマリーしかいないんですから。


「あの姫様、ローズマリー姫様は確か8歳と伺っておりますが、16歳とは一体?」


「げ、あんた達、さっき『伺っております』と言っていなかったか?」


「はい、アロマ・フレグランスと名乗っていた幼女がローズマリー姫様だと、お伺いしただけで」

 しまった墓穴掘ったか、なんだかんだやってる内につい油断しちまったか、ドジ踏むのは別の誰かだと思っていたのに、俺がやっちまうとは。それは兎も角、今の俺にはもっと重大な事がある。そうこれは見過ごす訳には行かないんだ。

「あ、そうなんだ、所でさ、俺を幼女と呼ぶのは辞めてくれないかな、普通は少女でしょう?もう8歳なんだしさ」


「いいえ、ローズマリー姫様は立派に幼女で御座います、誰がなんと言おうとも。そもそも幾つからが少女、幾つまでが幼女等と云う境目があるわけでは御座いません。見た目が幼女であるならば、それ即ち幼女なので御座います。因みに境目の目安としては、町中を歩き『お嬢さん幾つ?』と聞かれれば少女、『おじょうちゃんいくつ?」と聞かれれば幼女と言えるでしょう。更に言えばつるぺた寸胴ぽっこりお腹、更に更に欲を言えば短い手足、特に手がぷくぷくなのが幼女の目安で御座います」

 この人はなにか幼女に並々ならぬ拘りがあるんだろうか、危なそうな人だ。俺は自分の手を見る、ぷくぷくは…してないよな、たぶん。

「もしお許し頂ければ不肖この(わたくし)めに鑑定をお任せ下さい。ささ、簡単です、痛くは有りませんよ、ちょっとだけ我慢して眼を瞑って、ワンピースの裾を掴んで胸の上にたくし上げるだけですから、ほーら簡単でしょう?じっとして天井に描かれたガンダール神の絵画を眺めている内にすぐに終わります。さあ、お早く今すぐに、他の誰かに気付かれる前に、そこの茂みの陰でお姉さんにつるぺたぽっこりお腹をげぶぅっ」

 俺の両肩を掴み迫ってくる侍女の頭頂部に脳天チョップが思いっきり入った。

「マシロぅ、痛いじゃないの」


「なに痴女ってるのよマユリ、ローズマリー姫様が思いっきり引いてるじゃないの、全く幼女嗜好趣味丸出しなんだから」


 これが幼女フェチの痴女か、こんなのに出会ったら、モノホンの幼女は泣くな。ええと幼女フェチの痴女がマユリさんっと、脳天チョップがマシロさんっと。マユリさんをお姉ちゃんの近くに置いて大丈夫なのか?一応確認して見るか。

「お姉ちゃん、こんな人が侍女で大丈夫なんですか?もしお姉ちゃんがつるぺた寸胴ぽっこりお腹だったら危険ですよ」


「なっ、な、な、なにぃってるのよ、お姉ちゃんがそんなつるぺたずんどうぽんぽこおなかの訳無いでしょう、私はもう12歳なのよ、これから女への階段を駆け上って行くんだから」

 おそらく女への階段の定義を勘違いしているんじゃないだろうか。


「それでしたら姫様、ローズマリー姫様と御一緒に御入浴でもされたら如何ですか?ローズマリー姫様とは長らく御一緒に御入浴されておられ無いのでしょう?」

 マユリさんが眼に怪しい光を灯して唆しに掛かってくる。


「そうね!それがいいわ、そうしましょう、誰かローズマリーの部屋に連絡して…」

 その時、部屋の扉がノックされて侍女が応対に出ると、来たのはコリーンさん達だった。


「姫様~いらっしゃいましたね~ここ暫くはお体を拭かれるだけでしたので~ここはひとつお風呂に参りましょう~支度もして有りますし~」


「ちょっとちょっとコリーン、ローズマリー姫様が16歳ってどういう事なの?」


「あら~姫様は話してしまわれたのですか~」


「すいません、どじを踏みました」


「仕方ないですね~でもマユリ達でしたら話しても大丈夫ですよ~」

 コリーンさんがそう言うので、俺は名前・年齢・男・死んでローズマリーの代わりに入った魂であることだけは話した。マユリさん達は随分と驚いていた、当然だな。結局、聴かされていたのはアロマがローズマリーであると云うことだけだった訳だ。失敗だな、早合点はしてはいけない、良い教訓だ。


「それでローズマリー姫様は、幼女に拘ってらしたのですね」


「ん、俺16の男だよ、いきなり幼女は嫌だなあと思ってさ、せめて少女と呼ばれるのならまだ仕様が無いかなとは思うけど、やっぱり幼女と言われるのはちょっとね」

 それに幼女は戦いに向いてないだろ、少女でも向いてるとは言えないけどさ。ま、俺はもっと小さい頃から修練させられてたけどね。


「でも幼女は幼女です。諦めて下さい、そしてそのつるぺた寸胴ぽっこりお腹を私にお見せ下さい」


「誰かこの人をどうにかしてくれ」


「大丈夫です、ご安心下さいローズマリー姫様、そのお体には一切触れませんので、ただひたすら見るだけですので、上から、下から、全方位で堪能させて頂きますので」


「だから、その行動が嫌なんだって」

 変質者って怖いよね。


「まあいいわ、ローズマリー、お姉ちゃんと一緒にお風呂へ行きましょう」


「やっぱり、俺も?」


「そうよ、ローズマリーはお姉ちゃんとお風呂に入るの嫌なの?」


「だって、俺、男だし」


「やだあ、ローズマリーは女の子なんだから別にいいじゃない」

 見た目がローズマリーだから男って認識は欠片もないか。


「さ、ローズマリー行きましょ、一緒に入るのお姉ちゃん、とっても楽しみよ」


すみません、再び、暴走ぎみのキャラが出てしまいました。


08/03:一部修正致しました。

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