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第一話-4

 そして放課後。

「本気くん!どういう事よ!インコちゃんいないじゃないの!」

「先輩、早過ぎです」

 部室に来た本気を迎えたのは、かすみの怒声だった。

「まだ掃除とかしてるんじゃないんですか?もしくは級友との友情を深めているとか。良い事じゃないですか。部活メンバーだけより同級生の友達も必要でしょう」

「何、その常識的見解。本気くん、ホントに高校生?無駄に大人な反応よ?」

そっちは本当に大学生ですか?

 思わずそう言いそうになるが、下手につつくと面倒なので黙っておく。

「でも、先輩。昨日のインコちゃんの怯え方を見ると、もう部活に来ないかも知れないですよ?」

「そんな馬鹿な!じゃ、何で私はココにいるのよ!」

「先輩、何しに来てるんですか?」

「今日はインコちゃんのおっぱい揉みに来たのよ」

「帰って下さい。それより大学で同士を募って本格的にUMA研究したらどうですか?高校の部活とは比べられない研究ができるでしょ?メキシコでチュパカブラの研究も出来るんじゃないんですか?」

「何を夢のない事言ってるのよ。私はそう言うUMAを日本で見つけたいの!もしくは新種の日本産UMAね」

「竹取さんには海外のUMAが日本にいるわけないとか言ってませんでしたか?」

 主成分が夢と希望と非常識で出来ていそうなかすみではあるが、魔法の存在に取り乱したりするところを見ると、完全無欠の非常識人間というわけでは無いらしい。

「でもここに居れば正真正銘UMA間違いなしの召喚悪魔、インコちゃんの研究ができるって訳よね?詳細なデータや召喚技術とかそういうのを研究して学会に発表したら、世界中の物理学者が目を回すわね」

「先輩、それ実行するつもりなんですか?」

 本気が警戒して尋ねると、かすみはきょとんとする。

「そんな事するわけないじゃん。私のインコちゃんが世界中の変態の目にさらされるなんて、絶対許せない!」

「まあ、先輩のインコちゃんではないと思いますが、先輩が売名行為の為に手段を選ばない様な人じゃなくて良かったです」

「私は手段を選んでも有名になれるからね。わざわざ可愛い後輩をダシしてまでやるような事じゃないって」

「大した自信ですね」

 まあ、今からでも一般常識を身につければ色んな分野で活躍出来そうな人である。

「で、私のインコちゃんはまだ来ないの?」

「先生と一緒に来るんじゃないんですか?ほら、先生がマスターな訳ですから先生と基本的には行動を共にしているはずですよ」

「眼鏡エルのどこがイイんだろう?」

「いや、良い悪いの話じゃないと思いますよ?俺も魔法の事はさっぱり分からないけど、何となくそんな感じじゃないですか?」

「まあ、私もよくは知らないけど、召喚している間はMPを消費していくとか、そんな感じかな?」

「さあ?そんな感じじゃないんですか?」

 ゲームやなにやらで召喚魔法やその類は時々目にする事はあるが、いくらなんでも実在した事例は無い。なので正確な情報は知りようがない。

 だが、昨日の矢追の話ではそこまで便利では無さそうな印象はあった。

「あれ?そんなトコに立ってないで、中に入ったら?」

 部室の外で神楽の声が聞こえてくる。

「あ、マスターが来るまで待っていようかと思って」

 神楽の声に対し、柔らかい声で遠慮がちに答える誰かが部室の前にいるらしい。

「私のインコちゃん?」

「先輩、後輩怖がらせちゃダメですよ」

 部室から飛び出しそうなかすみを、本気が止める。

 これ以上怖い思いをさせると、部活はもちろん、本当に登校拒否になりかねない。

 悪魔が登校拒否になって何か不都合があるかは分からないが、その原因を作ったとなってはちょっと気が引ける。

「そんな怖がらなくても」

 そう言いながら部室に入ってきた神楽は、かすみと本気を見て一度言葉を切る。

「ああ、怖がるのもわかるかも」

「本気くん、怖がられてるわよ。だってハーレムだもんね。先輩、後輩、同級生ときたもんだよ、おい」

「先輩、おっさんですか?」

 本気は呆れて言う。

 隼人などもうらやましいと言っていたが、男子が少ないとそれはそれで気まずいものである。特にガールズトークを始められると、気まずいどころか居づらくなってしまうので、それほど良いものではない。

 神楽の後ろからついてきた淫子もかすみを見つけると、ビクッと肩を震わせカバンを胸に抱いて警戒している。

 まあ、初対面でアレだったから、そりゃ警戒もされるだろうな。

「昨日はアレだったから自己紹介がまだだったわね。私が部長の竹取神楽。あの人は卒業生で、普段は学校にいないはずだから安心して良いわよ」

 さっそく神楽が部長で上級生の優しいお姉さんを演じている。

「あ、昨日はアレだったから、ちょっと驚いただけです」

 精一杯笑顔を浮かべようとして顔を引きつらせている淫子が、本気も目を奪われるほどに可愛らしい。

「あー、もう!食べちゃいたい!」

 より直撃だったらしいかすみが、今にも飛び掛らんばかりに叫ぶので、淫子はより警戒し、本気と神楽の二年生コンビでかすみをブロックする。

「頭からぺロリとイッちゃいたい!」

「先輩の頭がイッてますって!」

 本気が取り押さえ、神楽は怯える下級生をなだめている。

「猛獣ですか、あんたは」

「だって、超可愛いじゃないの。ちょーだぞ?」

「わかりましたから、ここは年上の威厳を保って下さい。って言うか、せめて自己紹介くらいして、本人の許可を得てからスキンシップして下さい」

 本気に諭され、かすみは不満そうだがそれに従う。

「私は鴨音かすみ、元部長よ。困ったことがあったら、ありとあらゆる相談に乗るから、いつでも気軽に相談してね!」

 男なら目を奪われるとびっきりの笑顔でかすみはアピールするが、これまでの行動のマズさが先に立っているため、淫子の警戒は解かれない。

「今のところ唯一の男子部員のマジくん。マジ先輩って言えば喜ぶから」

「喜ばねえーよ。何だよ、マジ先輩って」

「だってマジくんはマジくんだから、他に言い様がないんだけど」

「何でだよ。明日唐で良いだろ」

「あ、マジくんってそんな名前だったっけ」

 一般的には幼馴染みである本気と神楽ではあるが、まさか神楽が本気のフルネームを覚えていなかったとは思っていなかったので、少なからず本気はショックを受けた。

「竹取さん、それは無いわ」

 さすがのかすみも苦笑いしている。

「え?先輩、何でですか?」

「私は本気くんって呼んでるし、先生は明日唐君って呼んでるでしょ?付き合いが短くても分かりそうなモノよ?」

「ああ、そう言えば。なんか脳内でマジくんって変換されてましたから」

 まあ、神楽だから仕方がないか。

 なんだかんだ言っても、非常識な少女である。他のメンツと比べてマシというレベルではあるが、他のメンバーがあまりにも強力過ぎる。

「ほら、本気くんも照れてないで自己紹介しなさいって」

 ニヤニヤと笑うかすみは言うが、そういう事を言われるとかえってやりづらいものである。かすみのことだから恐らくはわかってやっているのだろう。

「明日唐、先輩?」

 本気が自己紹介する前に、淫子の方が可愛く首を傾げて呟く。

「ん?どうしたの?あんまりにも珍しい名前に驚いた?」

 かすみが淫子の反応を見て尋ねる。

 あんたに言われたくない、と言いたいところではあるが、かすみと本気の名前を比べると確かに本気の方が珍しい名前なので何も言えなくなる。

「あ、いえ、そんな事じゃなくて」

 何かを考えているような表情だが、何を考えているのかは本気達にはわからない。

「え?もしかして、生き別れの妹とか?」

「どうしたらそうなるんですか」

 表情を輝かせるかすみに、本気が呆れて言う。

「先輩、マジくんに妹いないですよ?仮に生き別れの妹が居たとしたら、先生のところに行くのはおかしいでしょう」

「ウチに悪魔の親族はいないですからね」

「わからないわよ?ちょっとご両親に確認してみなさい」

 かすみは相変わらずニヤニヤしている。

「何なら私が独自のルートで調べてみようか?」

「止めてください。むしろ辞めて下さい」

「もー、いつまで考え込んでんの?」

 と言ってかすみが淫子に抱きつく。

「きゃあ!」

「しまった、油断した!マジくん、先輩引き剥がすの手伝って!」

「うへへへへ、良いではないか良いではないか」

「なんか楽しそうだね、君達」

 部室に顔を出した矢追がその状況を見て、満面の笑顔でそう言った。

 次から第二話です。

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