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第五話-5

「なあ、本気。具体的に何がどうなってるんだ?急にシリアスになったんで、俺的にはついていけてないんだけど」

「隼人君だけじゃないよ。私なんか最初から参加してるのに十分ついていけてないから」

 発光しているデメキン風船(擬態)を持って、神楽が胸を張って言う。

 アレ、光るんだ。意外と便利だな。

「インコちゃんだけど、俺は子供の頃に合ってるはずなんだ」

「はあ?後輩だろ?」

 隼人は首を傾げる。

「信じられない話だろうが、インコちゃんはあのサキュバスと同じように先生に召喚された悪魔らしいんだ」

「本気、お前までそっちに行っちゃうのか?」

「俺だって信じたくはないんだけど、目の前で色んなもの見たし、否定できないようなものも身をもって体験してしまったから認めるしかないんだよ」

 正直に言うと、かすみが最初に淫子を悪魔と疑っていた時には信じていなかった。バハムートを名乗るデメキンが現れても、どんなに状況証拠がそろっても、それとは別だと思い込んだ。アリアが淫子に腕輪を付け、目の前で淫子から翼が生えた時には目を疑った。ドレイン効果を受けてもまだ信じたくなかった。

 だが、同時に淫子の姿形は『色欲淫子』という召喚された『何か』だったが、そのモデルになった人物がいた事を思い出した。

「私も知ってる気がする。正確には思い出せないけど、先生と一緒にいた人だったはず。でもそれが誰だったかまでは思い出せないけど」

 神楽が必死に思い出そうとして呟く。

「眼鏡の彼女?そんなのいたんだ」

 かすみが驚いている。

 多分、そういう存在だった。記憶の中では確かに笑顔を思い出せる。とても楽しそうで、幸せそうで、二度と戻ってこない笑顔。

「思い出せないのは、思い出さない方が良いからだよ」

 淫子を背負った矢追が、本気達に言う。

「でも先生」

「良いんだよ、昔の事は。今は君達がいるし、淫子ちゃんもいる。君達が楽しく学生生活を送ってくれる事こそが、僕の最優先の望みなんだから。ついでに言えば鴨音君も卒業してくれると有難いんだけど」

「それを聞くと、なおの事ちょっかい出したくなるわね」

 かすみはニヤリと笑う。

「ていうか先生、改めて見るとインコちゃん制服の破れ方、超エロくない?うへへへへ」

「君もう、卒業云々以前に色々見つめ直した方が良いよ」

「魔法使いに言われたくないわね」

 本気は隼人の肩を借りて立ち上がり、口論するかすみと矢追を見て苦笑していた。

「待て待てーい!その悪魔を祓うのが残ってるんだからね!」

「お嬢さん、いい加減空気を読みましょうよぉ。イタいっていうか、ウザいですよぉ?」

 メッサーは丁寧だが相当キツイ事を言っている。

「なんでよ、メッサー!アレが残っている限り、問題は解決しないんだからね!」

 メッサーに後ろから羽交い絞めにされているが、それでもアリアが暴れながら文句を言っている。

 ものの見事に役に立たない奴だな。最初から最後までいない方がイイ奴だ。

「隼人、お前がなだめてくれれば解決すると思うんだが」

「俺が?俺、あの金髪さんとほとんど接点無いんだけど」

「だからだよ」

 この中でそれなりに接点のあるメンバーは、メッサーを除くと全員がアリアに対してマイナス印象しか持っていない上に、それなりに態度でも示していた。ほとんど接点の無い隼人だからこそ、穏便に済ませられるのだ。

「金髪さん、ここは俺に免じて許してもらえないか?」

 隼人が爽やかスマイルでアリアに言うと、アリアは面白いほどに赤面してうつむく。

「ま、まあ、貴方様がそうおっしゃるのであれば、か、考えて差し上げますわ」

「おいおい、キャラ変わってんぞ」

 かすみの言葉に、アリアは睨みつけてくる。

「そ、そんな事無いんだからね!」

「考えてくれるって事は、今日は見逃してくれるって事で良いのかな?」

 隼人はあくまでも爽やかスマイルで言う。

「え、ええ、まあ、仕方ありませんわね」

 アリアは大人しくなる。

「先輩、今日は帰りましょう。キリが無いです」

 本気の言葉に従ったのか、いい加減飽きてきたのか、かすみも溜息をついただけで何も言わずに屋上から去っていく。

「なあ、本気。何であの金髪さんは俺の時には言葉遣いが違うんだ?」

 隼人は本気に対して尋ねる。

「それがわからないのは、お前の良いところだよ」

「でも、守る事に専念したお前に守れないものがあるなんて、俺には信じられないな。やっぱりこの世のモノじゃないからなのかな?」

 隼人は本気に言うが、本気は大きく溜息をつく。

「守れる事に専念したくらいで、俺に守れるものなんかないさ」

「この者も中々に高潔な、純粋な魂の持ち主である。困った事があれば我に申すが良い。主の許可さえもらえれば、我もヌシの力になろう」

 デメキンも隼人を認めたらしいが、隼人からするとこのダンディボイスの正体が分からないので、いきなり声をかけられたようなものだった。

「え、誰?」

「バーちゃんだよ。バハムートのバーちゃん」

 神楽が持っているデメキン風船を引っぱりながら言う。

「へえ、そいつバハムートなんだ。よろしく頼むよ」

 隼人が笑顔でデメキンに言うのを見て、かすみは眉を寄せる。

「本気くん、この子達は色々大丈夫なの?なんか世の中に不満とかありすぎて、ちょっと現実が見えなくなったりしてるの?」

「先輩もそうじゃないかと疑いたいですけど、多分コレができるからあのデメキンに認められてるんですよ。俺とか先輩は認められてないでしょ?」

「ああ、そういう事ね。それなら私はこっち側でも仕方ないか」

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