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第五話-4

「悪い事してるみたいだな」

「そんな事はありませんわ!」

 隼人の言葉に、思いのほか近くに反応する物がいた。

 アリア?そう言えばいたな。すっかり忘れてた。

「あれは歴とした悪魔!情けは無用ですわ!」

 なんか、言葉遣い違わねえか?

 アリアは尊敬の眼差しを隼人に向けている。

「悪魔?UMA研究部、いつからオカルト研究部になったんだ?」

「先生が三十歳の誕生日を迎えた辺りからだと思うけど、俺にも知らされてなかったから」

「畜生、面白そうじゃねえか。何で俺、サッカー部になんか入ったんだろう」

 隼人は本当に後悔しているようだ。

 やめておけ、隼人。こういうのは時々だから楽しいんで、毎日だったら意外とうんざりするもんだ。

「私にお任せ下さい。私が祓いますわ」

 すっかり言葉遣いが変わったアリアがサキュバスに手を向ける。

「なあ、本気。この子も仲間?」

「違う。仲間じゃない。どっちかと言うと、あのネーさんより敵だな」

「失礼な!この私が力を貸してあげるんだからね!心の底から感謝するべき事なんだからね!」

 戻ったな。

 本気はアリアを見ながら思う。

「悪魔祓いモドキに何ができるのかしら?」

「話の流れはよくわからないけど、俺の役割は守ることらしいな」

 サキュバスはアリアを狙おうとするが、そこに隼人の箒が割って入る。

「滅せよ、悪魔!この浄化の力を受けよ!」

 てっきり英語か何かで技名叫ぶと思ったら、決めセリフも日本語か。

 しょうもない事というのは分かっているのだが、本気はついつい期待してしまった。

 アリアの手から放たれたのは、ほんのり輝くシャボン玉の様なモノだった。

 その光るシャボン玉はフヨフヨと漂う様に、ゆっくりと進む。

 当たんのかよ、アレ。

「なあ、本気。アレって当たるのか?」

 まったく同じ事を考えていたようで、隼人が本気に尋ねてくる。

 当然の事ながら本気にも分からないので首を傾げたが、サキュバスもコレに当たるほどの間抜けでは無い。

「アレに当てれば、悪魔は祓えるのか?お嬢さん」

「ええ、その通りですわ」

 隼人に対しては言葉遣いが変わるのか。

「それなら方法は無くはないな」

 そう言うと、隼人が動く。

 今日は朝から西校との練習試合があり、その時にも大活躍だった隼人も疲労でいえばかなりのモノのはずだが、まったく疲れた様子も無く、驚異的な早さでサキュバスの前に立つ。

 サキュバスも慌てて右手の蠢く闇を振るが、隼人はそれより早く後ろに回り込む。

 サキュバスはそれに合わせて闇を振るが、隼人は広く振られた闇を箒に絡ませる。

「何?」

 隼人は箒に闇を絡ませると、そのままサキュバスに箒を突き出す。

 隼人は箒の柄をサキュバスの脇の下に突き入れると、そのままサキュバスを持ち上げる。

「え?嘘?」

「そぅりゃぁ!」

 そのまま隼人は光るシャボン玉の方にサキュバスを放り投げる。

 おいおい、力技にもほどがあるだろう。

 本気は隼人がスピード差を活かして上手くシャボン玉の方に誘導すると思っていたのだが、まさかここまで力技で押していくとは思わなかった。

 それでも翼を持つサキュバスは空中で体勢を立て直そうとしていたが、上から隼人に荷重をかけられてはいつまでも空中に浮かんでいられなかった。

 サキュバスはそのままシャボン玉の上に落ち、さらに屋上の床に叩きつけられる。

「ぐはっ」

 サキュバスは苦しげに呻いたが、受けているのはあくまでも物理的なダメージのみで、あのシャボン玉によるダメージやそれに何かの効果があったかも見ては取れない。

 ただ、アリアは何故か得意気な表情で隼人の隣りに立ち、サキュバスを見下ろしている。

「観念したか、悪魔め。私が祓ってあげるんだからね」

「待って下さい」

 文字通り這いながら、淫子がアリアの足元へ来る。

「何よ、同類を哀れんでるの?見苦しいんだからね!」

「見苦しいのは、お前だ」

 膝を立てて本気が立ち上がろうとしながら、アリアに言う。

「元を正せば、お前が原因だ。淫子ちゃんには殺されても文句も言えないだろう」

「ハッ、悪魔を祓う事に貴方の許可は要らないんだからね」

「そっちが素の状態か。メッキどころじゃない剥がれ方だな」

 隼人が苦笑いしながらアリアに言う。

「惑わされないで下さい、アレは悪魔の囁きですわ。正義は私にありますわ」

 アリアは隼人に言うと、新たに光るシャボン玉を作り出してサキュバスに向けて飛ばす。

 背中を強打したサキュバスは呼吸困難になっているらしく、すぐには動けないため、ゆっくりと飛ぶシャボン玉すらよける事は出来ない。

 が、隼人はサキュバスを上から抑えていた箒で、シャボン玉を打ち払う。

「何をなさるのですか?ソレは悪魔です。祓わないと、災いを招きますわ!」

「今じゃないだろ?話くらい聞こうよ」

「悪魔の囁きには耳を傾けてはなりません!」

「だってよ、本気。どうする?」

「悪魔の言葉に耳を傾けるつもりはない。俺は後輩の願いを聞くだけだ」

「了解。そういう事だ」

 隼人はサキュバスのみぞおちを箒の柄で押さえ、その上でアリアの方を見る。

「俺は、本気の味方なんだ。悪いね」

 隼人が牽制していてはアリアも手が出せず、上から体の中心を貫かれてはサキュバスもまともに動くことも出来ない。

「先輩、ありがとうございます」

「俺より隼人に礼を言ってくれ。俺は役に立ててないからね」

「何の、つもりよ」

 サキュバスは弱々しくもがきながら、淫子を睨む。

「命乞いでもするつもり?私に恩でも売るつもり?ははははは、ふざけたことを言うな、欠陥品!」

 サキュバスは箒の柄を払いのけようとするが、隼人の押さえる箒はビクともしない。

 それでいてサキュバスを必要以上に苦しめていないのだから、その事の方が魔法じみていると本気は思っていた。

「彼女は悪くないの、だから助けてあげて、か?欠陥品の分際で上から見てるのか!」

 サキュバスは呪いの言葉を淫子にぶつける。

「人間でも無ければ、もはや悪魔にもなれない、完成された欠陥品!せめて私が協力していれば、悪魔にはなれたものを!ははははは、あんたには何一つ残さない。この先、あんたは蔑みの中でのみ生きる事を許されたのよ!」

 サキュバスはヒステリックに笑いながら、叫ぶ様に淫子に言う。

 淫子は何か言いかけるが、唇を噛んで堪える。

「ははははは、言葉も無いか、欠陥品!」

「随分、大人な事やってるのね」

 モップを肩に担いだかすみが、やって来る。

「私なら今すぐにでも黙らせるけど」

「いえ、私のための言葉です。私はそれを受け止めないと」

 淫子は立ち上がることも出来ないが、それでも目には強い光を宿している。

「言ってくれるじゃないの、欠陥品!認めるわよ、私はもうじき消える。入れ物が無いんだから、消える事は認める。でもね、それは私があえて未完成にされたから。そうよ、あんたを救うために、私は未完成にされた!私が消えるのは全部あんたのせいよ!」

「だとすると恨むべきは淫子ちゃんじゃなく、僕であるべきじゃないか」

 矢追が倒れるサキュバスを見下ろして言う。

「恨むなら僕を恨め。僕は『彼女』を生かすために、君を消す。そのために君をあえて未完成に、自然消滅するように召喚したのだから」

 本気も見た事のないほど冷たい目で、矢追はサキュバスを見下ろす。

「桂城君、ソレはもう必要無い」

 矢追はサキュバスを押さえる箒をそらす。

「先生、いいんですか?」

「僕の問題だからね。ケリは僕がつけないといけない」

 矢追はそう言うと、倒れているサキュバスの首を掴む。

「恨んでくれて構わない。呪ってくれて構わない。僕はそれを背負う覚悟を持って『彼女』を形にしたのだから」

「では、私がお手伝いしましょう」

 メッサーが矢追の肩に手を置く。

「貴方の覚悟は見事ですが、悪魔の呪いは一人では荷が重いです」

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