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第三話-5

 本気と淫子は入口のすぐ近くに立っていたので、そちらの方を向くとのっそりと人影が入ってくる。

「あのー、すいませーん。ウチのお嬢さんがお世話になってないでしょうかぁ」

 と言って入ってきたのは、アリアと同じ白装束を来た二メートル近い大男だった。

 筋骨隆々なのが服の上からでも分かるのだが、妙に紳士的な雰囲気と柔らかい声、間延びした口調のせいで威圧感は無い。

 不思議な事にアリアと同じ服装なのに、アリアほど違和感というより異物感が無い。

 が、デメキンは興味を持ったのか、アリアの方ではなく本気や大男の方に向きを変えていた。

「たぶん、アソコに」

「あー、お嬢さん、新しいお友達と新しい遊びの最中でしたかぁ。随分とマニアックな遊びが好みなんですねぇ。お友達さんも、お手柔らかにお願いしますぅ」

 ニコニコして話す紳士な大男は、本当にそう思っているらしく、言葉に嫌味な感じが無い。

 まあ、それはそれで問題はありそうである。

「メッサー!見て分からないの?助けを待ってるんだからね!」

「お嬢さん、遊んでいる時にそんな事言うと友情にヒビが入りますよぉ?ちゃんと空気を読んで、役割を演じないとぉ。ところで、どんな遊びですかぁ?」

「遊んでないんだからね!捕まって拉致されて、根掘り葉掘り尋問されてるんだからね!」

「それは大変ですねぇ」

 メッサーと呼ばれた紳士は、それでもニコニコしている。

 アリアの言葉をまったく信じていないのか、本当に遊んでいると思っているかは判らないがアリアを助ける気は無いらしい。

「ところでお嬢さん、悪魔は見つかりましたかぁ?」

「メッサー!目の前にいるんだからね!アレかアレのどちらかが召喚された悪魔なんだからね!言動的にはこっちのヤツなんだけど、見た目で言えばそっちのピンクが怪しいんだからね!」

 アリアが視線で示したのは、かすみと淫子の二人だった。

 正確に分かっていた訳じゃないって事か。だとすると本格的にデメキンはターゲットにされていないと言う事だな。でも、デメキンはインコちゃんは魔力の流れがダダ漏れだから、ちょっとでも読めればすぐ分かるとか言ってなかったか?

「おやぁ?随分と可愛らしいですねぇ。サキュバスって事でしたけど、これは困りましたねぇ」

 とても困っている様な口調では無い。最初からここで足を止めて話していた事を考えても、メッサーには淫子がサキュバスである事は分かっていたようだ。その上でアリアに確認していたのは、単純にアリアを試しているという事だ。

「せめて山羊頭の悪魔とかじゃないと、祓うのに良心が痛みますねぇ」

「祓うって、具体的にどうやるんです?」

 本気がメッサーに尋ねる。

「そうですねぇ、直接的にはおおよそのイメージ通りだと思いますよぉ。結論から言えば、悪魔を消滅させると言う事ですからねぇ」

「でも、悪魔は何故祓う必要があるんです?迷惑を掛けていないのなら、必ずしも祓う必要は無いんじゃないですか?」

「んー、良い質問ですねぇ」

 メッサーはニコニコしながら、本気の方を見て答える。

「例えばですが、ココに十人分の食料があるとしますよねぇ」

「はあ?」

「いぃえぇ、例えばの話ですぅ。十人分の食料がある時、十一人目に悪魔が召喚されたとした場合、悪魔は迷惑をかけていないですが、祓おうとしませんかぁ?そういう事なのですよぉ」

「まったく意味がわかりませんが」

「そぉですかぁ。では、悪魔が維持されるのに必要な力と言うものが何か、ですが、これが生命力だった場合にはどうでしょうかぁ。生命力を吸収された人は、迷惑は被ってはいませんかねぇ」

 メッサーは本当に説得しようとしているようだ。

 生命力だった場合、生命力を吸収された人は迷惑を被っていないか、だと?

 本気はそこに引っかかりがあった。

 先日、神楽はまったく元気だったはずなのに、金曜には前触れも無く発熱していた。それがサキュバスである淫子が原因、と言う事を指しているのではないか、という疑念が湧いたのだ。

 今すぐデメキンに確認したいところだが、それをやると明らかに事態は悪化するのが分かっているので、本気は我慢する。

「そ、それじゃ、私がいる事で誰かに迷惑を掛けていると言う事なんですか?」

「証明出来なければ、ただの仮説だよ」

 不安がる淫子に、本気が言う。

「おやぁ、そちらのお嬢さんがサキュバスでしたかぁ。考えてみるとピンクの髪の時点で疑うべきでしたかねぇ」

 メッサーはまったく気付いていなかった様に、ニコニコしながら淫子と本気を見て言う。

 この人と殴り合いでは勝負にならないな。どうしよう。

 怖がる淫子をかばいながら、本気はそう考えていた。

「でも、今は悪魔祓いの道具がありませんから、手は出せませんねぇ。そんなに怖がらないでも大丈夫ですよぉ。悪魔祓いのお仕事はまた今度ということでぇ」

「メッサー、それは仕事放棄なんだからね!」

 す巻き状態のアリアが怒鳴る。

「んー、そうかも知れませんけど、お嬢さんも新しいお友達と新しい遊びをしているわけじゃないですかぁ。そのお友達が召喚された悪魔だからと言って、その場で無条件に悪魔祓いというのは、いくらなんでも暴力的ですよぉ。ちゃんと理解を得ないと、何の為の悪魔祓いか判らないじゃないですかぁ」

 メッサーは笑いながら言う。

 アリアと違って本物感のあふれるメッサーだが、アリアのように攻撃的ではなく雰囲気の通りに紳士のようだ。

「それはわかった。理解した事にする。でも私は遊んでるんじゃないんだからね」

「それじゃ、お嬢さん。晩御飯までには帰って来て下さいねぇ。皆さんもお嬢さんと仲良くして下さいねぇ。それじゃぁ、おじゃましましたぁ」

 メッサーはそう言うと、のっそりと出て行く。

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