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第三話-3

「せ、先輩?」

 淫子は驚いて声を上げたが、それよりも驚いたのは校門でコソコソを様子を伺っていた金髪コスプレ女である。

 本人は気付かれていないと信じていたらしく、完全に不意打ちを食らっていた。しかも走ってくるのは昨年、北高全女子生徒の中でも一、二を争う瞬足のかすみと、やる気は見せないが実は運動神経抜群の本気である。

 ただでさえ走り回るのに向いている様に見えないコスプレの少女は、文字通り飛び上がって驚いて一心不乱に全力で逃げ出す。

 足遅いな。これなら追いつきそうだけど、どうしよう。

 金髪で、真っ白な服装なので、見逃しようもない。しかしココで捕まえるのも人目がありそうなので、かすみの計画通りに動く事にする。

 逃げる金髪コスプレ女は時々道を曲がろうとする素振りを見せるが、その都度驚いているので、おそらくかすみの姿を見ているのだろう。

 もう少し行ったら、空家があったな。先輩が誘導しているのはそこか。

 数年前まで何かの店をやっていたはずだが、ある時店を休んで、そのまま店が無くなり建物だけが残ってる。少し前までテナント募集の張り紙もあった気がするが、最近それも無くなり、いつ取り壊されるかという建物である。

 都合が良いと言えば良い場所だが、かすみは本当に二度と消えないトラウマをこの金髪コスプレ女に与えるつもりのようだ。

 場合によってはコスプレ女を守らないといけないかもな。

 逃げる金髪コスプレ女は泣きそうな顔で振り返ったり、周囲を見回したりしている。

 本当に足遅いな。疲れてきたか?

「先輩、あの人追いかけてるんですか?」

「うおう!インコちゃん、いつの間に?」

 いつの間にか隣りに立っていた淫子に、今度は本気が飛び上がる程に驚く。

 男子高校生の持久力などを考えても、本気は隼人ほどではないにしてもかなり足が早い方である。前を走る金髪コスプレ女に合わせた走りなので、全力疾走とはいかないまでも何時追いつかれたかも分からないくらい足音もなく、淫子は本気の横を走っていた。

 まったく息を切らせた様子も無く、悠々とついて来ている辺りは淫子も並みの女子高生の身体能力では無いようだ。

「友達とかは?」

「先輩達が急に走り出したんで、急いで追いかけてきたんです」

 それにしては足音もしなかったし、余裕を持って走ってるな。

 学校から急いできたと言っても、本気は少なくとも最初の方は全力で走っていたし、そこそこの距離を走っているはずだが、淫子は汗一つかかず息の乱れもまったくない。

「で、あの時の悪魔祓いですか?」

「同じ様なヤツがたくさんいなければ、あの時の悪魔祓いだと思うよ」

「でも、何で追いかけてるんですか?」

「一言で言えば、落ち着いて話せる所まで移動中って事かな?」

「話すために追いかけてる、という事ですか」

 それで納得出来たのか、淫子は軽く頷いて質問するのをやめた。

 もう少し行くと目的地の空家という所だが、ここで道が二手に分かれる。向かって右手に行けばその空家や本気の家があるのだが、左手に行ったら繁華街に行ってしまう。そうなるとここまで目立つ少女を拉致るなど、出来るわけがない。

 だが、その危険性は既にかすみの予想の範囲だった。

 左手側の道からかすみが走ってきたので、金髪コスプレ女は右手に逃げるしか無かった。

「今だ、来おったぞ!」

「待ってました!」

 右手に曲がった直後に異様なダンディボイスが聞こえると、右手に曲がった所にあった電柱の陰から布団が飛び出してきて、金髪コスプレ女に覆いかぶさる。

「ぎょわっ」

「確保!」

 布団を被せられた金髪コスプレ女を、さらに上から覆いかぶさる人物がいた。

 緑のジャージ姿の神楽が、金髪コスプレ女を捕まえた。

 それに合わせて、空から特大デメキンが降りてくる。

「先輩!確保しました!」

 どちらかと言えば確保と言うより捕獲、むしろ拉致そのものである。

「よくやった、竹取さん。基地に連れて行くわよ」

「了解です」

 妙に手馴れた手付きで、神楽がビニール紐で金髪コスプレ女を布団ごと縛り上げる。

「先輩、捕虜の輸送準備完了です」

「ご苦労、お布団マン。思いのほか似合ってるよね?」

「はい?布団の柄的なモノですか?」

「いや、す巻き状態がって事。この状態になったら逃げられないだろうけど、基地まで連れて行きましょう」

 かすみと神楽に捕らえられ、しかも布団を被せられて縛られては抵抗も出来ないのだろう。金髪コスプレ女は暴れようとしたが、これでは超人的身体能力を誇るかすみはもちろん、一般的な女子高生である神楽からも逃げられない。まして今となっては監視衛星バハムート一号までいては、逃げたところですぐに追いつかれる。

「竹取さん、体調の方は大丈夫なのか?」

「全然大丈夫よ。私って薬が超効きやすい体質だから、病院の薬とか飲んだら熱なんて簡単に下がるのよ」

 自信満々に神楽が言う。

 まあ、騙されやすい性格と言うより疑う事を知らない事もよく知っているので、薬の効果も疑わないためプラシーボ効果も込みで効き目があるのだろう。

 しかし、この緑のジャージ姿を見る限り、神楽は寝ている所を呼び出されたようだ。

 竹取さんも、イベント大好きだからな。

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