0.2
自殺しない理由を聞かれれば、俺はきっと呆れる。だって、死んだら終わりじゃないか。ここまで来て、生きているかどうかなんて、すごく曖昧だけども。でも、呼吸はしているし。目は見えないけど。心臓どくどく言ってるし。体は動かないけど。
ここまで頑丈に固定したって、俺は逃げるつもりもない。
あーぁ。捕まっちゃったか。残念。俺の人生、ここで終わりだ。
『ロリヴァ。家族は?』
なんだか馴れ馴れしいしく話しかけて来るおっさん。きっとここの監獄のお偉いさんなんだろう。スピーカーで声を流して、俺と距離を取ってるって事は俺が怖いんだろうなぁ。
可愛い可愛い。体をがちがちに固定されてちゃあ、人なんて殺せないのに。殺せたら固定している意味がないか。
「姉が」
そこまで行って、言葉を詰まらせる、俺。
喉が渇いたなぁ。なんか飲み物くれないかなぁ。
俺には姉がいた。優秀だけど、あんまり顔は良くない姉。いや、周りからは美人だって言われてたけど、俺には理解できなかった。俺には嘘くさい笑みを張り付けているようにしか見えない、ただのお面だった。その顔が嫌いだった。心底。
俺の言葉が続かないことを悟って、おっさんが続ける。
『では、最後だ』
え、最後で良いの。俺にもっと聞くべきことあるでしょ。拍子抜けだ。たくさん質問されると思っていたのに。何だかつまらないな。
『殺人は、楽しかったか?』
最後の質問は、たくさんの人に聞かれて来た質問だった。
なんで、そんなに知りたがるのかな。俺がロリヴァだと知ると、みんなこれを聞く。人を殺して楽しいかって。それに何時も俺はこう答えてきた。
お決まりの質問と、お決まりの答え。
「いーや、全然」