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響さんの日常  作者: ZEXAS
彼氏彼女になってから
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元男による男の為のスパイ作戦! 4



─明治家 響の部屋

視点 明治響



ローテーブルをみんなで囲んでの勉強会は特に問題なく進行し、数学の教科書の2割くらいを復習(京ちゃんにとっては復習じゃないけど)し終え、一息つくために俺はお菓子と飲み物を下の階から持ち出してきた。


「わー! 響ちゃんありがとう!」


「……か、かわいい」


お菓子にジュースに紙コップにと抱えて部屋に入ると須藤さんに歓迎された。

お菓子とかを置くのに邪魔にならないようにという配慮なのか、テーブルの上にあった勉強道具はみんな片づけられていた。


「チョコとクッキーとポテチしか無いけど、はいっどうぞ」


「ありがとうございますですよっ」


お菓子をテーブルの上に置いて、まずは右隣の京ちゃんの前に紙コップを置いた。反時計回りで、次に須藤さん、三島さん、藤矢さん、最後に俺のところに置いた。


「……手を伸ばして健気にコップを置く響ちゃん……凄い破壊力ね」


「……同感です」


流れで勉強会から一変して、場は女子会として整った。いい感じにトークが始まるだろうから、なんとかして恋愛話に持っていこう。


飲み物は紅茶とコーラしか持ってきてなかったけど、みんなお好みの飲み物をコップに注ぎ終わったみたいで、俺に一声掛けてお菓子に手をつけ始めた。


「薄塩味とは響先輩のセンスは素晴らしいですよっ」


「……チョコとクッキー……。響ちゃんのチョコクッキーまた食べたいなぁ」


「……あれは素晴らしい一品でしたね」


「えっ何それ!? 私初耳よ!?」


三島さんがポロッと零した呟きに藤矢さんが相槌を打つと、須藤さんが食い気味に反応した。


「バレンタインの時に作ったヤツだよ。また藤矢さん家を借りてEのみんなでチョコのお菓子を作ったんだ」


「わぁ~っ! そ、それって、噂の森長先輩にもあげたんですか?」


京ちゃんは身を乗り出し、目を輝かせながら俺にそう聞いてきた。


「う、うん。……そういえば前なんかね、唯斗には最後にあげようと思って先にみんなにあげてたら何か勘違いして拗ねちゃって……ふふふっ、唯斗って結構ヤキモチ焼きなんだ♪」


「……す、凄い意外。全然想像できないわ」


「須藤さんは同じクラスじゃないものね。同じクラスにいると分かるけど、森長くんっていつも響ちゃんを気にかけてる様に見えるわ」


「それで、響さんがふと唯斗さんの方を向いて目が合うと少しだけ嬉しそうな顔をするんですよね」


「へぇ、天下の森長くんでも彼女には首ったけなんだぁ~♪」


……し、知らなかった。他の人が唯斗の表情の微々たる変化を読みとれるようになっているとは……。いや、もしかしたら簡単に分かるくらいには唯斗がクールブレイクしているだけかも。……だとすると、聞くとおりに唯斗は俺を気にかけてくれているって事に……。


突然、俺の全身が熱くなった。

と同時に、無性に恥ずかしくなって目を細めて唇を結んだ。


「「「……っ!!?!??」」」


「ひ、響ちゃんがこんな顔を見せるなんて」


「……びゅ、ビューティフォー……」


亜理彩アリサちゃんがネイティブにっ……。でも確かに、可愛いだけで括るには威力がデカすぎるわ……これは、一つの芸術よ」


「三島先輩がヤバいですよ。でも確かにこの響先輩は人をおかしくする何かを放っているですよ」


くそう、俺ばかりが恋バナで辱めを受けるなんて認められないからな!

みんなにも沢山思いっ切り搾るように語ってもらわないと割に合わん!


というわけで、まずは京ちゃんに標的になってもらう事にした。


「京ちゃん!」


「は、ははい!? 何ですよ!?」


「京ちゃんの好きな人を語りなさい!」


「ええっ!??」


京ちゃんは実は心はとっても乙女ってキャラしてそうだからという根拠のない理由で期待を掛けてみた。


「さぁ、よーく考えて」


「えぇ……うぅ……んぅ~」


ほら、先輩の皆様もなんか期待してそうな顔してるよ! 頑張れ隠れ乙女! 君は誰よりも乙女の可能性を秘めている!


「……よーく考えましたが、私には好きな男の人なんてサッパリ居ないですよっ♪」


柔らかスマイルで爽やかに言われてしまった。


「へぇ~意外ね。何か京ちゃんって男子テニス部の先輩とかにこっそり恋心を抱いちゃったりしそうな感じがすると思ってたのに」


須藤さんが俺が思ってた事をまんま言うと、京ちゃんはキョトンとした後で笑った。


「あははっ、そういう高嶺の花のような男の先輩なんて同じ土俵の女の先輩にとっくに食われてるに決まってるですよっ」


……京ちゃん、意外とドライだなぁ。まぁ、振る舞い関係なしに波頼に来るような子だし、現実的な考え方をしてもおかしくないか……。


「京ちゃんって意外にクールな考え方をする子なんですね……」


藤矢さんが俺が考えてる事とだいたい同じ事を言った。……今日は何かこういうの多いな。もしかして俺の思考は女子に紛れてもおかしくないレベルへと到達しているのか……?


「……あっ、でも、私と大体同じ能力の持ち主で、お互いに励まし合ったりして頑張っていけそうな人とかだったら良いなぁって思ったりもするのですよ」


……あぁ、京ちゃんが乙女だって目利きは間違って無かったみたいだ。きっと俺の男としての本能は腐っちゃいないんだろう。……京ちゃんは、真なる乙女だ。


「いいわねぇ。私は京ちゃんの考え方、凄く素敵だと思うわ」


「ありがとうですよ。……あれ、もしかして三島先輩って同級生に好きな人でもいたりするのですよ?」


三島さんは何故か固まった。

みんな何となく察したような顔をした。


「…………い、いない! いないからね!?」


今日はホント新事実がポンポン出てくるな。……三島さんの好きな同級生って誰だろう。三島さんが男と絡むというと、俺の中では幼なじみの高橋とか、あとは俺の周りの男連中の唯斗と藤崎と陸手くらいか?


……うわー、分かんない。あのメンツで一番常識人っぽくてマトモそうなのが高橋くらいで、それでも三島さんとは本当に仲の良い友達っていう風にしか見えないし。マジで誰だ?


「響ちゃんは心当たりある? Eの男子が濃厚だけど私Eじゃないし。藤矢さんも何か知ってる?」


「……うーん」


「すみません。私もE組としてはニューフェイス側なのでちょっと……」


須藤さんの質問に対し唸る俺と申し訳無さそうにする藤矢さん。まぁ無理もない。本当に分からないっていうか想像し辛いんだもの。……でも間違いなくいるんだよね、三島さんの好きな人。


「……うーん、高橋なら三島さんの幼なじみだし何か知ってるかなぁ。でもあいつ色恋沙汰にとことん鈍そうだしダメかも」


「そうなのよ! ホント宏樹って鈍感なんだから! …………はっ!?」


同級生、高橋、鈍感、宏樹、鈍感…………。


「えぇーっ!? 三島さんって高橋のこtむぐぅっ!?」


あまりにもの衝撃に頭と口がリンクするや否や、身を乗り出した三島さんに口を押さえられた。


「……み、みんなにはナイショ。おねがいね」


声を出せない俺を含め、みんな揃えて頷いた。


「……ぷぁっ。ご、ごめんね、三島さん」


「いいのよ、気にしないで。響ちゃんは悪気があった訳じゃないし、響ちゃんが言うまでもなくみんな気づくくらいに仄めかしてた私が悪いの」


慌てて謝る俺を、三島さんは身を乗り出したまま俺の頭を撫でつつ、どこか吹っ切れたような表情を浮かべながらそう言った。


「……それにね、自分の気持ちを知ってる人が自分だけじゃなくなるって……ちょっとだけ気が楽になったような気がするから……。みんなに私の思いを知って貰えて、今はちょっと嬉しいかも……」


…………っ!!

こ、こんな乙女を……高橋の奴!! 鈍いってだけでこんな乙女をいっぱいいっぱい苦しめて……!!


いやまぁ俺から見ても2人は恋人になる関係ってより親友で平行線って感じだったから、三島さんに非が無い訳でもないだろうけど、それでも女の子にこんな悲恋のヒロインっぽい顔させちゃっていいの!?

ほら、みんなも三島さんの乙女力の高さに心を打たれたのか言葉を失っちゃってるし。


俺も何か手助け出来ればいいんだけど……俺自身が直接動くのは三島さんも良い思いはしないだろうし……この件はこっそり唯斗に相談しようかな。


「……って、せっかく響ちゃんの家まで来てこんな湿っぽい空気続けるなんてナシよ! はい、亜理彩ちゃん! 次はあなたの番よ!」


「や、やっぱり来るんですか!?」


顔を赤くしながら気丈に振る舞う三島さんはもう何とも可愛くて格好良くて凄かった。……高橋って本当に恵まれてるなぁ。


それにしても藤矢さんの恋バナ……。お嬢様で帰国子女の恋バナ……。全然全く想像できない。


「……すみません。私には好きな人とかそういうのって想像できなくて……。どういう人だったら私は恋をするんでしょうね……」


何となく藤矢さんが箱入り気味娘だったのは想像できる。多分、女の子しかいないお嬢様学校に通って、外へでも家に帰っても綺麗なものしか写らない優雅な生活を送ってたんだろうなぁ。


「……あっ、でも響さんみたいな愛らしくて見ていて幸せになれる人とかがもし男性だったら……好きになってたかもしれませんね」


……な、なんだと!?


「あー亜理彩ちゃんそれはずるいよ~。私だってクラスは違えど響ちゃん大好きだし!」


「響ちゃんからのポイント上げようったってそうはいかないわよ。ねっ、響ちゃん?」


「あー、えー……。お、俺は凄く嬉しいな。……えへへ♪」


背丈と髪の長さとか色々違うけど、もし俺が男のままだったらもしかしたのかもって思うと……そりゃ嬉しくもなるよね。

そんなこと考える事自体、唯斗に浮気してるってことになっちゃいそうだけど、俺が男だったらほら、唯斗とは恋人になってないし!


「わぁー! 私森長くんとは面識あまり無いけど響ちゃんが浮気したって言っちゃおー!」


「須藤先輩……流石に女の子同士の好きはライク止まりだと思うですよ……」


「ふふ、冗談冗談♪ ……でも、響ちゃんが浮気したって森長くんに言ったらどんな反応するのかは面白そうよね」


「そんな真っ黒なイタズラしたらダメじゃない」


「そうですよ須藤さん。私の見立てでは、森長さんはきっと話を聞いた途端に失神してそのままお亡くなりになってしまうかもしれませんよ」


冗談の言い合いで談笑する女の子達。そして珍しくお話のオモチャにされる唯斗。恋バナの力って凄いな……。

さっきから高橋と唯斗しか男子勢の名が挙がらないけど、たまには女子のみなさんにも藤崎や陸手の話をしてやってほしい。内容は何であれ奴らは女の子達に自分の話をされてたと聞くと喜ぶだろうから……。





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