明治家の日常
……一年ぶりの更新。先月辺りから書き出してなんとか搾りきりました。
スパッと3年生最後まで行くにはまだ3年生としてのエピソードが足りません……ぐぬぬ。
ー明治家 響の部屋
視点 明治響
シャーッ
「…………」
ぼやけた意識の中で、カーテンを開ける音を認識した俺は静かに目を開けた。
途端に眩しい光が目に刺さり、思わず片目開きになった。
「…………んぅっ」
「起きちゃった?」
「ぁー、うん……おはよ」
「おはよう、お姉ちゃん♪」
答えた後で、カーテンを開けて俺に話しかけたのが七海だと気付いた。……うーん、今日は土曜の筈だけど。
「なんで……今日、土曜……」
「お母さんが起こしてきてって言ったの」
「……へぇー」
母さんが? なんで?
「お姉ちゃんって部屋が暗いとなかなか起きないんだよ? 可哀想だけどこういう起こし方しちゃった」
「ねぇ、今日って何かあったっけ……?」
「さぁ? 私は何も無かったけど。お姉ちゃんが忘れてるだけじゃない?」
「……うーん?」
ダメだ、さっぱり何のことだか一つとして思い出せない。……もう、土日はだらけたいのに。母さんに聞くだけ聞いて文句言わなきゃ。
ー明治家 リビング
歯を磨いて顔を洗った後でリビングに行くと、そこには素敵な朝ご飯の香りが漂っていた。焼けたパンとコーヒーの匂いだなこれは。
匂いのする方を見ると、母さんと博樹がテーブルを挟んで対面して座っていた。
リビングのドアを開ける音に気付いたのか、母さん達はこっちを向いて、自然と目が合った。
「あらぁ、おはよう響♪ 七海もありがとねぇ~」
「どういたしましてー」
「おはよう、兄さん」
「おはよう……って、どうしたの土曜の朝から揃っちゃって」
話しながら俺は博樹の隣に、七海は母さんの隣のイスに座った。
俺は母さんに出されたコーヒーに角砂糖と牛乳を入れ、ふーふー冷ましてからと口をつけ始めた。……この控えめな甘さと芳しい香りがお洒落感あって良い感じですなぁ。
「たまにはゆったりできる休日に家族揃って朝ご飯というのも乙なものでしょう?」
「まぁ……そうだね」
「僕も最初は何か特別な日なのかなって思ったんだけど、本当にただの母さんの気まぐれみたい」
特に理由は無いのか……。
「俺は九時くらいまで寝てたかったよ……」
「唯斗さんとデートが無い限り休日朝のお姉ちゃんはレアだもんねー。私的には得した気分♪」
「ふふふ、まぁそういう事だから、朝ご飯いただきましょう? はい、頂きます」
「「いただきます」」
何がそういう事なのかは分からないけど、お腹は空いてたから遠慮なく食べ始める事にした。
トーストだけじゃなくて、卵焼きとベーコンとサラダまであった。別に上流階級の朝ご飯って訳でもないんだろうけど、凄く上品に見えるせいか気持ちも高まっちゃう。
みんなで素敵な朝食の一時を過ごす為だけにこの上品セットを揃えてる母さんを想像したら、なんだか可愛くて文句も言えなくなっちゃった。
★ ★ ★
朝食を食べ終わったあと、みんなそれぞれ自室に戻ることもなくリビングでテレビを見たり雑誌を読んだりゲームをしたりしていた。
ゲーム組は俺と博樹だ。女性陣は女性陣の趣味に没頭しているので干渉はできない。
「……兄さん、僕達いつまでたんと掘り続ければいいんだろう。最近ずっと狩りに行ってないよ……」
「仕方ないでしょ。全ては快適なぴょんぴょんゲーの為だ」
「ぴょんぴょんゲー……腕が鈍るよ、兄さん」
「うるさーい。抜刀会心納刀の素早い流れを見ちゃったら真似したくなるだろう!」
シリーズ化してるこのゲームを買った時に唯斗や藤崎達と協力プレイしたんだけど、なんか凄いプレイを見せられたんだね。そりゃもうこれまでの常識を覆すようなのを。
なんでもみんな同じ事をしてるらしくて、特定のスキルさえ揃えれば下手でも輝けるって聞いたものだから、躍起になってスキルを身につける装備を掘り当てるマラソンをしているんだけど……全然出る気配がない。
「もう、早く出してよっ。これで何度目なの!?」
「兄さん、まだ5回くらいしかしてないよ。まだまだだよ」
「ぐぬぬぁぁ……気が滅入っちゃうよ……。早く狩りをしたいのじゃ~」
たった一つのアイテムの為だけのマラソンは午前十時になるまで続いたが、結局何の成果も得られなかった。……いや、金だけ無駄に溜まった。
★ ★ ★
「なんで……こんな……なんで……っ!」
「2時間も粘ったのにね……」
俺は博樹の言葉で時間を確認した。
もう10時……ゲームを始めたのが8時過ぎだったから確かに2時間近く同じ作業をしていた事になる。
「途中から兄さん、まさに無心って顔してたよ。もしかしたら気付かない内に目当ての物も売っちゃってたかもね」
「………………」
気付いてないだけで、もしかしたら目標の物は手に入れていたのかもしれない。あまりにも出ないものだからいつもの流れ作業でーーなんてこと、考えたくもない。費やした時間に申し訳がたたなくなるじゃないか……。
あぁぁぁっ……聞きたくなかったそんなこと!
「……今日はお開き。やめた」
俺はパタンとゲームの蓋を閉じてそのまま寝そべった。博樹は俺とは対照的に立ち上がっていた。
「お疲れ様、兄さん。何か飲み物でも持ってくるよ」
「ありがとう博樹ぃ」
博樹は気が利いてほんと良い子だなぁ。……うーん? なんか博樹のがお兄さんしてない?
「…………」
これはまずいと思った俺は、立ち上がった博樹の後に着いていった。
「どうしたの兄さん?」
「あぁいや、やっぱり自分でやろうかなと思って」
「僕がやるよ、兄さんは座ってて」
「で、でも」
「コーラでいいよね」
「う、うん」
無理を通すのも変だからここは博樹に従う事にして、七海の座っているソファに腰掛けた。
今朝は母さんと七海2人が座ってたんだけど、母さんは買い物に行っていて七海1人だ。
「あっお姉ちゃん」
ソファーの前のローテーブルには漫画やファッション誌……女の子向けの雑誌がいくつか積まれていた。
「これ借りるね」
「どうぞ」
俺はその中から漫画本を拝借して読むことにした。
「…………」
ページをめくればキラキラキラキラ……。おめめキラキラ背景キラキラ男の効果キラキラ……。なんだか住む世界が違うのは一瞬で理解した。
「七海さん……、世の女の子はみんなこれを嗜んでいるのですか……?」
「……? そうだけど……ああ、もしかしてお姉ちゃん女の子向けの本はまだ苦手?」
「いやまぁその……」
「ダメだよー、女の子の会話に着いていく為にもちゃんと読まなきゃー」
「でも俺高校生だよ? 同級生の子はそういうのは読まないんじゃないな」
「そうかなぁ……お姉ちゃんが小学生のネタで話を振ってきたらみんな喜ぶと思うんだけど……」
「あ、あのねぇっ! 俺は見た目相応のキャラじゃないんだからさぁ」
確かに小さな同級生の子が見た目通り可愛い趣味してたら周りの人は微笑ましく思うかもしれないけど、別に俺はそういうの目指してないから……。
「冗談だよっ♪ でも何事も経験だよお姉ちゃん。まずはこういうのから読んで、徐々に年相応の本へと進めばいいんじゃないかなって言えばよかったね。ごめんなさい」
なるほど、本当は俺の事を考えていてくれてたんだ。……そこまで思われて無碍には出来ないな。
「そうだね、これも違和感の無い女の子になる為だ。見事に女の子向けの本にハマってみせるよ!」
……なんか他にすべき事がある気もするけど。
「流石お姉ちゃん! 私も持ってる本貸すから頑張ってね!」
「ありがとう七海っ……」
我が妹ながらお兄ちゃん思いの優しい子だなぁ……ちょっとだけ目がうるっときちゃった。
「兄さん、はいコーラ」
「ありがとう」
我が弟ながら気が利く博樹からコーラの入ったコップを受け取って、少し飲んでからさっきの漫画を読み始める。
舞台は中世かファンタジーの中世みたいな所。頭がお花畑でお花自体も大好きな幸せガールな女の子が、色とりどりの可愛いお花が咲き乱れる文句無しのお花畑にお出かけに出る。
するとそこには、摘んだお花を儚げに見つめる美しい男の人がいて、女の子はハートを見事に鷲掴みに………………。
…………なんで?
「ねぇ七海」
「なぁに?」
「この主人公ちゃんはいわゆる一目惚れってヤツをしたの?」
「そうだけど?」
「小さい花を指先でちょんと持って見つめてる男を好きになりますか普通」
「お姉ちゃん、それは男の人の感性だよ。この有り得ない得体の知れなさに女の子は弱いの」
…………。そっかぁ。
「ありがとう七海」
「大丈夫、今は分からなくてもそのうち分かるようになるから」
「うっ……うん……」
俺が理解するのを諦めたのをあっさり見抜かれた。
……だってしょうがないじゃん! 一目惚れなんてしたことないもん!
「……んくっんくっ……ーーーーーッ♪」
コーラを一度に沢山飲んだ事で起こる炭酸の暴力を楽しんで気を取り直し、俺は再び読み始めた。
……女の子は花の王子様(主人公ちゃん曰く)に迷うことなく声を掛け、2人の恋の歯車は動き始める……。女の子がお花畑へ行けば花の王子様はそこに居て、気付けばそこは2人の居場所になっていた……。
「……め、目が痛い」
お面ライダーを見ようとしてテレビを付けたら既に終わってて、次の枠のリズキュアを不可抗力で見ちゃった時の気持ちによく似てる。せっかくだからと興味本位で見てたら滅茶苦茶キツかったあの感じに。……いやちょっと違うかな。やっぱり未知の感覚かも。
「…………」
でも慣れる。俺は今や女の子なのだからきっと慣れるさ。……と、ちょっとヤケクソ気味に続きを読み始めた。
★ ★ ★
「ぁーー……ぁぁぁぁーーー……」
「博樹お兄ちゃん! お姉ちゃんが大変な事に!!」
「う、うわぁ! とてつもないカルチャーショックを受けてフリーズしてる!」
わたし、まおう、あなた、ゆうしゃ。おはなばたけはこうやになったの。わたしわかりません。なにもわかりません。
「兄さんが読んだお話はよくジャンピオンで描いてた人のものなんだ。恋愛だと思ってたのが突然バイオレンスバトル漫画になったせいでこんなことに……」
「さかなぁーーー……」
「そうそう、こんな不意打ちしてくる人といったら魚さかな先生しか……じゃなくて、ああもぅどうしよう博樹お兄ちゃん!」
「精神のケアが必要かな……今は待つしかないかも。母さんが居てくれれば無理矢理にでも戻せそうなんだけど……」
「お母さん……。あっ……ふ、ふふふ♪ 良いこと思いついちゃった♪」
「兄さんに酷いことするのは駄目だよ」
「違うよー。ちょっとお母さんみたいな事しようと思っただけだよぉ。今なら好きな事出来そうだしー♪」
「やぁ~……」
「七海の邪気で怯えてるじゃないか! あぁもう、やっぱり兄さんは僕が寝かしつけるよ」
「あっお姉ちゃんを膝枕するなんてずるい!」
「僕は七海や母さんみたいに疚しい事しないからいいの。ほら兄さん、良い子良い子してあげるからゆっくりお休み」
「…………♪ …………、………………。……ーーーー」
「まばたき数回で寝ちゃった……」
「わぁ~……♪」
★ ★ ★
「…………んむぅ?」
……いつの間にか寝てたみたい。それに誰か……一緒にいる。
「…………んっ、ふぁ~……」
あくびをしながら目を開けて、身体を起こそうとしたけど動けなかった。そこでようやく誰かが俺の身体に巻き付いているのに気付いた。あと布団を掛けられてるのにも。
「……すぅ……すぅ」
その可愛い寝息で、俺にしっかり腕を巻き付けているのは七海だと分かった。俺は静かに七海の手を俺からはがして起き上がった。
どうやら俺は……俺たち3兄妹はリビングで仲良く寝ていたみたいだ。割と年の差はある筈なんたけど……一緒に寝るくらいには仲良しっぽい。
「あら響、起きたのぉ?」
食卓の方から母さんの声がした。そっちを見れば母さんがいた。
「おはよう母さん、見ててくれてたの?」
「ええ、和ませて貰ったわぁ♪」
「……うう、もう高校3年生なのに……こんなんで良いのか俺」
「ギスギスしてるより良いじゃない。博樹も七海もあなたが大好きだから、こんな平和なのかもねぇ」
「面と向かって言われると恥ずかしいなぁ。俺も博樹と七海のこと大好きだよ。恥ずかしくて2人には言えないけど」
「響! 私、私!」
「……変な事さえしなけりゃね」
「あらぁ、変な事ってどんな事ぉ?」
いつもにこやかな母さんだが、急にいつも以上の眩しい笑顔を向けながら立ち上がったものだから、俺は反射的に小さな悲鳴を上げた。
「あらあら、小さくなっちゃってぇ♪」
母さんは高身長(170超えかも)なので、間近まで迫られるととても大きい。当然俺が見上げて母さんが見下げるんだけど……その、顔に掛かる影と笑顔のコラボがとても効いてきます。
咄嗟に俺は母さんに抱きついた。
「ええっ!? ひ、響!?」
「お母さん、あのね。わたし、お母さんの事だーいすきっ!」
「……な、ななななな……っ!?」
こういうプライドは捨て去った。女の子として振る舞うのはまだ無理だが、小さい子として振る舞うのはそんなにダメージ無い。ママって言ってないし。
使い時を考えないと逆効果な時もあるけど……今は割と最適な筈だ。
「わひゃっ!?」
即効で効いたようだ。母さんは顔を赤らめながら俺の両脇を持って、高い高いをするように持ち上げた。……かと思うと、俺を引き寄せて頬ずりしてきた。
「響のデレは本当に効くわぁ~♪ 作ってるところが凄いそそるわぁ~っ♪」
「あはは、お母さんくすぐったい~」
……あ、やっぱり見抜いてる上でこの対応なのね。
「ふふふ、響、そろそろ崩れてもいいのよぉ?」
「あははっ、なんのことっ?」
この発言をきっかけに、母さんが満足するか俺が折れて元の態度に戻るかの持久戦が始まった。
★ ★ ★
「……ふぅ、たっぷり響成分を摂取できたわぁ♪」
「……え、えへへ……お母さんが喜んでくれて……わたし嬉しい……♪」
昼食を作る時間だからなのか満足したからなのか、とにかく母さんが俺を解放するということで(なんかの)持久戦は俺の勝利となったが……その代償は重く、俺の精神はだいぶ削られていた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
母さんが俺から離れて昼食を作りに掛かると、いつの間にか起きていた七海がやってきた。
「……あ、七海……起きてたんだ。大丈夫、わたしは平気だよっ……」
「かなり駄目っぽそうだけど……」
七海の指摘で口調が引きずられている事に気付いた。
「……あー、あー。わた……おれ、オレ、俺……よし!」
「もぉ~、お母さんと張り合って勝てる訳ないでしょ~?」
「……か、勝ったしっ……! 負けてないしっ……!」
反射で反論しちゃったけど、七海の言ってる事はよく分かる。俺の中では一応勝ってはいるが……俺は大きなダメージを受けていて、母さんはただ満足しただけ。勝った筈なのに負けている……。
「……うぅ~、勝ちたい……っ! 母さんに勝ちたい……っ!」
ほぼ負けを認めた俺の頭を、七海は優しく撫でてくれた。
七海は小学生だが背が高い。150cmはあった筈。こうされていると、何だか七海の方がお姉ちゃんみたいだ。
兄が妹に泣きつく……なんとも情けない姿だ。
でも、無謀な戦いで疲れ果てた俺の心にただ甘やかしてくれる妹はかなり効くみたいで、兄の尊厳を頭に浮かべてもその快感から逃れることはできなかった。
……やはり母さん、強し。
「ヒビキ! 退屈すぎて死にそうだったよ!」
「ん? どうしたのディザーリィ」
「ここ、平和すぎ!」
「事件とか起きても困るし平和でいいじゃん……」
「もっとこう何かしてよ! 彼氏ともチューくらいしかしたことないんでしょ!?」
「は、恥ずかしいからそういう話はダメ!」
「いーや、オレは情事話大好きなの! 知ってる上でとぼけてヒビキに聞くのが楽しいの!」
「……ディザーリィは女の子なんだからさぁ、そういうのはよくないと思う」
「ヒビキ、何も集まったらエロ話を始めるのは男だけじゃないんだよ。むしろ女の子の方がそういう話大好きなんだから」
「それはいいとして、俺っ娘はエロい話しないって唯斗は言ってたけど……」
「人それぞれ過ぎること言われてもなぁ……。とにかくエロトークしよっ、ねっ?」
「……じゃあ、ちょっとだけね……」
「やたっ♪ ではズバリ、彼氏とエッチはしましたか?」
「あ、あのねぇっ! キ、キスくらいしかしたこと無いって知ってる癖になんでそんな事聞くのさ!」
「知ってるからこそ本人の口から聞きたい事ってあるじゃん?」
「……んー、まぁ……無くはないかな……」
「それで、しました?」
「……してないよ。俺がそういう事に疎いから唯斗が遠慮してるのもあるんだろうけど、何よりお互いに怖がってるのかもしれない」
「関係が変わっちゃう気がして?」
「……うん」
「2人ともお互いを好きすぎて色々慎重だもんね。恋人同士というより親友同士寄りみたい」
「現状維持ってダメな事なのかな……」
「ふふふ、変わりたくなるまでそれでいいじゃないか。2人が幸せなら。オレなら分かるよ、2人共同じ考えだって」
「……そっか、そうだよね。なんだか嬉しいな……。……って、そもそも高校生同士でそんな進んだ関係とか良くないんじゃない?」
「……はぁ~」
「……な、なにさ?」
「ヒビキもユイトも……揃いも揃って……いや、お互い考えが一致してるから問題は無いけどさ……。そりゃあ情事も起きないよなぁって」
「そんな事言われても……」
「オレは早くヒビキの膨らだお腹をみたいなぁ」
「お、俺がお母さんに……? ダメだ全く想像できない」
「だからこそヒビキがどんな風に変わってるか見たいなぁって」
「……なんか今日のディザーリィはぐいぐい来るね」
「ふふふーっ♪ 一度やってみたかったんだ、ヒビキ弄り♪」
「なっ……!?」
「ヒビキのお母さんが病みつきになるのも分かるなぁ。なんかヒビキって弄ってこそって感じだと初めて分かったよ」
「ひ、ひどい……」
「ああっ、ごめんねヒビキっ。ちょっと……ちょっと魔が指しただけなんだ。悪気はなかったんだ。許して、ねっ、お願い?」
「……しらないっ」




