文化祭 前編
やったー!
作者が一般ピーポーから駆け出し廃人に進化したぞ!
……あっちへフラフラこっちへフラフラ
ゲームしたりボーっとしたり妄想したり小説書いたり
実質なーんもしてないのに忙しい毎日です
迷ったら書く! 暇なら書く! それくらいの気力が欲しいですね……
ところでスマホ版なろうで前書きタブが開かないんですけど……なんなんでしょうね?
もしかして自分だけなのでしょうか?
ー波頼高校(2年E組教室)
視点 明治響
今日は文化祭。
学校へ来て早々に準備を始めたせいか開始の時間を多く残した状態で終わってしまい、その開始の時間まで俺達2年E組のクラスメートはただひたすらダラダラしていた。
「へいDJ! 今日は祭りよ何するよ!?」
「決まってるYO! 響ちゃんをひたすら眺めるYO!」
「馬鹿だねDJ、響ちゃんのシフトは今日も明日も大体夕方辺り。ずっと眺めるのは無理だよDJ」
「馬鹿はキミだYO陸手リア! ずっと眺めるのは確かに無理だが実は希望者多数でお昼時もシフトが入ることになったんだYO!」
「なんだってDJ、それは本当かい?」
「本当だYO! 全部俺と三島華菜って奴の仕業だYO!」
「なんてこったい! 素晴らしいネ!」
このダラダラしている時間、ガヤだけで既にワクワクが止まらない。
そんな中、早速お祭りパワーにやられた藤崎とアキタがアホと化した。
アホの2人が話した通り、我がクラスの喫茶店『ヒーリングエデン』の当日の俺のシフトは夕方の4時から5時までだった。
しかしまぁ、成り行きというかいつもの『当然のような流れ』というか藤崎が俺の名を指して余計なことを言い出してクラスがヒートアップした結果、いわゆるお昼時の12時から13時までの時間帯もメイドさんとして活動する事になってしまった。
「ふふふ、響ちゃんには悪いけど私も健気に頑張るメイド響ちゃんを少しでも長く見たくてね。思わず藤崎君に賛同しちゃったのよね~♪」
「へいDJ、あんた最高に馬鹿だぜ!」
「そうだろベイビー! エンジェルなメイドな響ちゃんとか最高だもんYO! 響ちゃんには悪いけどこの期を逃すのは許されざる事だと悟ったんだYO!」
全く酷い話だ。……でもまぁ、必要とされてるのはやっぱり悪い気はしない。
唯斗も一緒にやってくれるって言ってたし精一杯頑張ろうと思ってる。
でもまぁ……
「唯斗、本当に良かったの?」
「何が?」
「いやまぁ……俺の巻き添えみたいにシフト増えちゃって」
「ああ、そのことか。俺が進んで志願したんだ。良いに決まってる」
なんだろう……。やっぱり申し訳ないなぁ……。
「まずな、響が居ないのに他のところ見て回ったってしょうがないだろ?」
「そっか……。ありがとな……♪」
こいつはホントにもう……。人を照れさせる事が大得意なんだな……。
「分かれば良いんだ。よしよし」
唯斗の手は俺の頭を優しく撫でた。
「…………♪」
「……あ、でもさ唯斗。一緒にいるならここで俺が働いてる間は客として待ってるだけでも良かったんじゃない?」
「……はっ……!? そ、その手が……あああ失敗した! そうすりゃよかった! そうしてればメイドの響がじっくり見れたのに!」
俺が指摘した途端、唯斗はこの世の終わりのような表情でうなだれ始めた。
「そ、そうですね」
俺は苦笑いしかできなかった。
「そんな敬語引きされると困るぞ」
「いや、だってまぁ……はい。すみません」
しょうがないというか……。
ほら、朝っぱらからそんなハイテンションになれないよ俺は。
ー波頼高校(二階廊下)
遂に文化祭も始まり、あちらこちらから賑やかな音が聞こえてきた。
俺と唯斗は昼までの間あちこちを回ることにした。
「どこ行こっか」
「響はどこに行きたい?」
「うーん、決めてないや。なんか良さげな所ある?」
「そうだなぁ……どこも良さそうだったからなぁ」
波頼高校の文化祭は中学の頃の文化祭とはレベルがまるで違った。
実は波頼高校にある各クラスの隣には10畳はある準備室が設けられていて、そこにはなんと台所もあったりする。
家庭科室もちゃんとあるのになんでそんな意味不明な設計なのかというと、今まさに行われている文化祭の為なんだとか。
『エリート高校の生徒たるもの文化祭などのイベントでいらっしゃった来客の方には出来立ての料理を提供するべし』との事。
……一理あるし流石といえば流石なんだけど、こればかりは学校側もアホなんじゃないかなぁ……なんて思ったりもする。
でもまぁそのお陰でどのクラスでも喫茶店からレストランまで飲食系は容易に出来るんだよね。俺のクラス以外でも飲食店みたいなことするクラスもいくつかあるみたいだし。
ちなみに『エリートたるもの万全に備え得意料理を5つは持っていること』という教訓もあるもんだからみんな料理が上手いみたいで味に文句はつけられないくらいに美味しいと思う。
気に入った料理があったら作り方とか教えて貰ったりしたいなぁ。
あっそうか! 飲食系の出し物をしてるクラスに行こう!
流石にこの時間帯にガッツリ食べるのは無理があるからお菓子とかありそうな喫茶店タイプのクラスがいいかな。
「唯斗、なんかお菓子とか飲み物が出る良いとこない?」
「おお、響もだんだん甘党になってきたなぁ。実に女の子らしい」
こ、このアホは急に何を言い出すんだ!
「ティータイムだ。紳士の嗜みだ」
まだ朝と言える時間帯にティータイムってのもおかしな話だけどこの際気にしない。
紳士はティータイムに時を選ばないのだ! ということにしよう。
「よしよしそれじゃあ喫茶店を虱潰しだ。流石に響の口に一番合うお菓子なんて分からないしな」
「だとしたら色んな所でちょっとずつティータイムか。いいねそれ」
何故だか分からないけどスッゴくオシャレだ。
「決まりだな。Bも喫茶店をやるみたいみたいだし、そこ行ってみるか?」
「へぇ~、良いね」
「決まりだな」
B組ってイマイチ陰が薄い印象があるけど、俺の中では2学年で一番能力の平均値の高いクラスってイメージがある。特に女子が。
彼女達がどんなお菓子を作るのかちょっと楽しみだ。
「「いらっしゃいま…………」」
俺達がB組のクラスに入った途端、空気が固まった。
「「(あ、あの健気な容姿とクールな容姿は……!!)」」
「「(響ちゃッ!?)」」
「「(唯斗様ッ!?)」」
「(ああ神様!! 朝番ちょっと辛いなぁなんて弱音吐いてごめんなさい!!)」
「(天使がお越しになられた……)」
「(あなたは僕を心をどこまでも掻き乱す。まさに嵐のようなお方だ)」
「(これは何かの間違いかしら……)」
「(唯斗様今日もステキ!)」
「(いつものクールな感じと違ってどこか柔らかい。これは響ちゃんがいるからかしら? ちょっと微妙な気分だわ)」
「(響ちゃんファンとして悔しいが女の子ってのは男あって魅力が倍増しになるものなんだな……。なんというか森長といる響ちゃんの顔って凄く可愛い)」
ううーん? この固まった空気は何だ?
「唯斗?」
「ああ……こりゃあ7割方響のせいだな。響の巻き起こす謎の可愛い波動がみんなの思考を狂わせたんだ」
「なにその無茶苦茶……」
「響を中心として巻き起こる魅了の台風。俺はこいつを響ストリームと呼ぶことにする」
おかしい。まるでこの状況が俺のせいみたいに進んでるぞ? しかも変な技名まで付けられた!
「響ストリームを食らった者は一時的に思考が止まるが、直る頃には気力溢れる活発な状態になる。その状態では例え3日間飲まず食わずでもちゃっちゃか活発にいられるだろう」
「そんなに!? って、いつまで冷静に解説してるんだよ。クールなのかなんなのか分からなくなってきてるぞ」
「「(……こ、これが夫婦漫才!! 痺れる!! 痺れますぞーーー!!!)」」
「ほら響、そろそろみんな覚醒するぞ」
「……え?」
次の瞬間、俺は物凄いものを見た。
「「いrrrぁっすゃいませぇぇぇぇ!! 本日はブライトスマートスペースへお越し頂き誠にありがとう御座いまぁーーす!!」」
「は、はひっ!?」
2年B組といったら個人的には2年の中でも一番の頭脳派が集中しているイメージがあった。
そんなイメージが今まさに目の前でバラバラに砕け散ったというか、思いも寄らなかったテンションにギャップを感じたというか、とにかく驚いた俺は尻餅をついた。
「(およ? 響が尻餅をつくなんて。この反応は俺も予想外だな)」
「明治さん! 大丈夫ですか!?」
「あ……えっと……はい」
そう言って優しく起こしてくれたのは、いつの日か女子バレーにて俺達のクラスに勝ったバレーメンバーのリーダー役の幹代さんだった。
「すみません。ウチのクラスのみんなの大半って明治さんのファンというかなんというかって感じで……。驚かせちゃったよね」
「幹代さぁ~ん。あなたは普通みたいでよかった~……」
流石は頭脳派! ぶれない人がこんなに素晴らしいなんて!
「(うっ理性が……。流石にこの至近距離はマズい……。森長君はどうしてあんなに保つべきものを保っていられるの……? それが明治さんの彼氏足り得る想像を絶する程の理性力なのっ?)」
「響、席に座るぞ。何か頼もう」
「あ、うんっ。幹代さん、今このクラスでみんなを引っ張れるのは幹代さんだけだよ。頑張って」
「ええ、ありがとう(……いっそ……私もはっちゃけたい……理性飛びそう……)」
俺と唯斗は席に着いてメニューを見た。
文化祭でしかも高校の催しもので学生の営む喫茶店だっていうのにこの本格仕様。しっかり喫茶店っぽいテーブルに椅子に10種類以上もあるメニュー。こりゃ凄い。
もともとこの高校の内装はお洒落ではあったけどここまで喫茶店に近づけられるなんて……。
「ねぇ唯斗。俺、この塩バニラクッキーってのが気になるな」
「おっ、奇遇だな。俺もちょっと気になってたんだ」
うーん、甘いものばかりじゃ飽きちゃうもんね。甘さとしょっぱさを同時に楽しめるものはどうしても気になっちゃうよ。
そういう意味ではこのクラスには中盤辺りに来たかったかも。
「飲み物は決まったか響」
「アイスココア……かな」
「んじゃ俺はコーヒーにするか。砂糖もミルクも入れないヤツで」
こ、こいつ、さり気なく『俺苦いの飲めるぜー大人だぜー』してやがるぞ。
「あ、じゃあ俺も唯斗と同じヤツに……」
「やめとけ響。後悔するぞ」
「な、なんだ? 俺が苦いコーヒーが苦手だとでも言いたいのか?」
「まぁな」
ぐぬぬぅ……図星当てよってぇ……!
「飲めるもんそれくらいっ」
「よし、じゃあ頼むか」
ふ、ふふ……こんなナリしててももう17歳。確実にオトナになってる俺の味覚が苦みを美味しく感じさせるのは当たり前の事だ。……まだ甘くないコーヒーなんて飲んだこと無いけど。
チリリーンチリリーン
呼び鈴を鳴らすとすぐにオーダー取りの人がやってきた。……って幹代さんだ。
「ご注文は?」
「あー、塩バニラクッキーとコーヒー、俺はアイスココアでお願いします」
「え? あ、はい。かしこまりました」
「あ、すいません。ちょっといいですか」
唯斗は注文を受け去ろうとした幹代さんを呼び止めた。
「(小声)響のコーヒーだけ少し甘めにしてくれないかな。多分あいつ苦いの駄目だからさ。その癖強がっちゃって」
「(小声)やっぱり。そういう事ならお任せを。……可愛いですね。悶えそうです」
「(小声)だろ?」
なにやらお二方こそこそと話してらっしゃる。……ま、いっか。
というか唯斗。アイスココアとは情けないぞ!
程なくして注文したものはやってきた。
まずはクッキーを手に取り食べてみた。
「……おお、普通に美味い!」
「ああ、学生のレベルじゃないな」
グルメリポーターじゃないから上手く表現できないけど、なんというか甘いのとしょっぱいのが一緒にきて……うん、美味い!
さて、クッキーによって乾いた喉を潤そうか。紳士らしくオサレにね。
「…………むぐ……?」
手に取ったカップを口元で傾け、少しのコーヒーが口に入ってきたところでカップを持ってる手が動きを止めた。
「どうした響?」
なぜこれ以上コーヒーが口の中に入ってこないのかはすぐに分かった。
に、苦い……。
「辛そうだな。大丈夫か?(想像以上に響の舌はお子様だったようだ……)」
まずい。
このままじゃさっきまで粋がってたのが全部帰ってくるぞ……。辱めを受けるのはゴメンだ。
と、とりあえず今口の中にあるコーヒーだけでも……
「……ん……っ」
「(コーヒーを、コーヒーを飲んでるだけなのに……エロい! なんつーエロさだ!)」
とりあえず制覇したがカップの中にはまだ沢山のコーヒーが……。
うわーん! 俺のバカー!
こんなの無理だよぉっ!
「砂糖とミルクでも持ってきてもらおうか?」
くそ! こいつ察してやがる!
だが引き下がるものか! お、俺は断じて臆してなどいないぞ! 断じて!
「……ナ、何を言ってるの唯斗? コーヒーの冒涜者にでもなりたいの?」
あぁ~ギブしたいっ……。全て取り消して無かったことにしたいっ……。
こんな時に限って思ってもないことが……誰か助けてぇ……。
「(変なスイッチ入ってるな。理不尽ヒロイン一歩手前な雰囲気の響は初めてだ。……良い!!)」
……くそぅ、こんな事になるなんて半分くらいしか思ってなかった。
だがしかし! 最近影を潜めている気がしてならない男らしいトコロをフルで発動するチャンスじゃないかこれは?
そう! 有言実行! 男はやっぱり有言実行型じゃないと!
一度コーヒーを飲むと言ったら苦かろうと辛かろうと飲むのが男ってもんでしょ!
「……ふふふ、唯斗。コーヒーは美味しいのですよ」
「(あちゃー、こりゃ頭の中滅茶苦茶になってるな)」
大丈夫、平気さ。コーヒーは美味しいんだもの。
カップを握る手が震えているのは武者震いさ。大和魂さ。
そして俺はカップを口につけてコーヒーを口の中へ注ぎ始めた。
「……ぅ……ぐ…………」
「…………~~……」
「………………っ……」
本当はすぐにでも砂糖どばどば投入して甘くしたいところだったが、なんとか飲み干した。
「……ふぅ」
「響」
カップを置いて唯斗の方を向くと何故かハンカチを渡された。
「紳士が涙目だなんてみっともないぞ」
涙目になってたのか……。
「……そうだな」
唯斗は始めから察していた。俺もそれは解っていた。
今となっては下らない事に意地を張っていたことに恥ずかしさを感じながら俺は素直にハンカチを受け取った
次の瞬間、クラス中から拍手喝采が起こった。
「な、なんだ!? なんなんだ!?」
「おめでとう」とか「感動をありがとう」とか、あちらこちらから賞賛の声が上がっていた。
流石に唯斗も少し驚いているみたいだった。
その騒ぎの中、幹代さんが俺達のところへやってきた。
「驚かせちゃったわね。ごめんなさい」
「い、いえっ大丈夫です」
「明治さんがその……あまりにも……なんというか……(本人の前で眉を八字にして非常に色っぽかったなんて言えないわよねぇ……)」
「あー……スミマセン。俺も少し見栄張っちゃってました」
「お詫びと言っちゃなんだけど料金は取らないから、ね? 許してね」
「と、とんでもない! 払いますよちゃんと!」
「いいのいいの」
「……あ……ぅ……はい。すみません……ありがとうございます」
あまりにも優しい笑みで言われてしまい断るに断れなくなってしまった。
「それじゃ、ごゆっくりどうぞ~(学校のアイドル2人が座った席。これは非常に使えるわ!)」
なんとも言えない気持ちになり唯斗に目線を送るも、唯斗は何も言わずただにやけているだけだった。
仕方がないのでクッキーを口に運んでいると喉が乾いてきた。
「…………むぅ」
コーヒーは既に飲み干してしまっている。代金は払わないでいいなんて言われたもんだから飲み物の追加注文なんてしたくない。
ここにきてまたコーヒーの呪いが……。
「どうした響」
「ちょっと喉が乾いちゃって……」
「なるほどな……。それなら俺のアイスココアを飲めば良いじゃないか」
唯斗はそう言って唯斗のアイスココアを指差した。
「そ、それって……。こ、こんな人前でそんな恥ずかしい事が出来るかっ……!」
「恥ずかしい? どこが?」
「どこがって……。その……そのカップは唯斗が一度口を付けた……」
俺から発せられる言葉はどんどん尻すぼみになっていっていた。
「昔は間接キスくらい気にしてなかったくせに何を今更……」
……はっ! 確かに言われてみれば……。
そ、そうだよな! 何意識してるんだ俺!
「じゃ、じゃあ少し貰う……ね?」
「ああ」
唯斗から渡されたカップを両手で受け取り、少し唯斗の様子が気になってチラリと見ながら飲み始めた。
「「「(おおおおお!!)」」」
「…………!!」
……な、なんだこれは!?
俺は慌ててカップをテーブルに置いた。
「……響? どうしたんだ?」
唯斗が何か言ってるのはわかるが、今はそれどころじゃなくて聞いていなかった。
「……お、おいしい」
そう、美味しかった。めちゃくちゃ美味しかった。このアイスココアが。驚くほどに。
「え?」
何故かはわからないけど俺の精神をとろけさせそうな感覚がして、そんでもって喉を潤す為だけに飲むのは凄まじくもったいない気がして慌ててカップを置いたんだった。
「こんな凄いの初めてかもしれない……。唯斗もそう思わなかった?」
「……? さぁ? ……あぁ、苦いもの飲んだ後だからそう感じるのかもな」
「……なるほど」
「それか間接キスの味……みたいな?」
……!!
「ば、馬鹿じゃないのか!? そんな乙女チックな事あってたまるか!」
「ははは、冗談だ」
「あ、当たり前だ」
でもそんな事言われた後だから飲むのは遠慮することにした。
だって恥ずかしいんだもん。




