表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
響さんの日常  作者: ZEXAS
彼氏彼女になってから
72/91

北の大地へ 4



ホントは前回に報告するハズだったのですが、素で忘れてしまったので今回報告します……。


響さんの身長ですが、イメージイラストを描いているうちに身長と頭身が合ってない! となってしまったのでここにきて調整することにしました。(作者の脳内の響さん→身長140未満頭身4.5。唯斗氏と並べて描いた際に異変に気付きました)


響さんの身長は今回より125cm前後またみ未満となります。

もちろん、この物語は漫画でもアニメでもなく小説なので登場人物の見た目は読者の皆さん次第なのでさほど気にしないで下さい。扱いも恐らくほぼ変わらないので違和感は無いかと……。


ではでは……







「……ん? この体は……?」


「……も、もしかして戻ってる?」


「や、やった! なんかしらんけど戻ってるぞ!」


「「おーい響ちゃ~ん」」


「……あれは藤崎を含めた校内の男共……? なんかこっち来るけど……」


「おおお! 元に戻ったんだね! おめでとう!」


「ありがとう藤崎。見ての通りさ」


「しかしまぁ男になっても可愛いね響ちゃんは」

「うんうん。髪をそのまま伸ばせば完璧に女の子だよ」

「……あ、あの……俺とお付き合いを……」


「……え?」


「「男に戻っても大好きだ響ちゃん! 俺と結婚しよう!!」」


「えええええ!? ちょ、ちょっと待て! お、おかしいぞお前ら!?」


「「お祝いのチュー!!」」


「ま、待て待て待てこっち来るな来ないでお願い俺は男色じゃなうにゃああああ!!?」





ーホテル(響のルーム)

視点 明治響



「……わぁぁぁぁっ!!?」


嫌だ嫌だ嫌だ! 唯斗以外は嫌だ!


「……あれ?」


……ん……ゆ、夢か……。はぁ~良かったぁ~……。


……さて、おぞましい夢で目が覚めて辺りを見回すと、そこはだだっ広くて派手すぎない豪華な部屋が広がっていた。

今身体をあずけているこのベッドもそういうブランド的な物に関心の無い俺でも多分恐らく良いものだと思わせるくらいに多分恐らく良いベッドだ。


……そう、いつの日かの母さんの無茶ぶりでまた『ロシアから来たロシアのなんか凄い会社の深い関係者または社長令嬢のアリス』という大変な役をやることになったんだよね……。


おぞましい夢から覚めても現実が夢のような話の最中だったというアレですよ……。


「ふぁ~……」


起きようかな。とりあえずベッドを降りよう。


そんな訳で俺はベッドから足を床に降ろし……


「あふっ……」


足に何か当たった。なんか声がした。


「…………?」


恐る恐る下を見てみると……。なんと唯斗がいた……。


「……な、なんで唯斗がここに……?」


俺の足は唯斗のお腹を踏みつけていた。少し力を入れると『おふっ……』と声がした。

この状況がちょっぴり異常だと感じた俺は唯斗を起こすことにした。


「唯斗っ、唯斗~っ」


俺は唯斗を揺さぶりながら声を掛けた。

しかし唯斗は目を覚まさなかった。


「……むぅ~。唯斗がねぼすけさんだったなんて知らなかったよ」


その後も揺さぶってみたが全く起きる気配が無かった。


「どうすれば……。……そうだっ!」


どうしたものかと無い脳を活動させていると、ある事を思いついた。


以前、唯斗の頼みで『目覚ましボイス』なるものを録音したことがあった。本当なら恥ずかしくてそんなことやりたくなかったのだが、色々とエサをつるされてまぁ……。

……と、そんな訳でもし唯斗がその目覚ましボイスを使っていた場合、俺が再現してやればもしかしたら……といった作戦だ。


下らないかもしれないが、もしかしたら起きてくれるかもしれない。そ、それに唯斗が起きなくてもその……これは俺がやりたいだけだし……。


「……よし」


俺は息を整えて唯斗の耳元に口を近づけた。


「……お、起きて唯斗……。響ね、早く唯斗とおはようのチューがしたいな……」


「……!!!」


も、もうダメ! 恥ずかしくてひっくり返っちゃいそうだ。


「おはよう響! アイラヴユー響! チューするね響!」


「えっ?」


突然唯斗の声がして俺は驚いた。

そして唯斗の方を向くと、唯斗は空気を思いっきり抱きしめていた。

寝ぼけてるみたい。


「……あれ? あぁそうか、今は修学旅行中だからアレ(抱き枕)がないのか。……ん!? なんか凄く良いにおいが……」


半目開きでごにょごにょ言っている唯斗の近くに枕を置いてあげると唯斗はそれを思いっきりホールドした。

ちょっとだけ可愛いかも…………って、俺は何を考えてるんだ!


俺自身も寝ぼけてるんじゃと考えて首を振って頬を軽く叩いて脳を覚醒させると、この状況がおかしい事にまた気づいた。


「……唯斗~、起きてる~?」


俺は再び唯斗まで近寄った。


がばっ


どん


「……っ?」


一瞬の出来事だった。


唯斗は近づく俺の方を向いたかと思うと飛びついてきた。

そして、俺はそのまま抱き押し倒されてしまった。


「良いにおいだ……」


「ーーーーーー!!」


唯斗に思いっきり包まれている。それだけで俺の思考は滅茶苦茶になってしまった。

もう細かい事を考えるなんて出来ない。


「まるで響みたいな匂いだ」


「……っ」


唯斗は俺の胸のあたりで顔をグリグリと擦り付けてきた。

変な感覚と恥ずかしさのせいなのか、目頭が熱くなってきた気がした。


ただ抱かれるだけで時間が経っていき、抵抗する気力もなくなるくらいの嬉しい気持ち? が俺を包む。

唯斗の下にいる為少し苦しいが、何故か平気だった。


「……唯斗」


「(……あ、あれ?)」


唯斗の背中に手を回すと、唯斗の身体が震えた気がした。


「……響か?」


ようやく覚ましたみたい。


俺は口では答えず、唯斗の背中に回した両手をキュッとした。


「……す、すまん。寝ぼけてて……」


「……ううん、俺もまだ寝ぼけてるみたいだから……おあいこ……♪」


「……そっか」


何も話さなくてもお互いの気持ちがわかる。そんな気がする沈黙。


……は良いんだけど、そろそろ唯斗が重い。

本来は逆だよね? 位置。本来は男が下で女の子が上だよね?


「唯斗……ちょっと重い……」


「ん? おおわっ!? お、俺はなんて事を……っ! すまん響! ホントすまん!」


唯斗は俺から離れるとすぐさま土下座して謝ってきた。


「いいよ。でもそのかわり……」


許すも何も始めから唯斗は俺に謝るような事なんてしてない。

でも……た、たまにはね、唯斗の上に立ちたい。


「……?」


「今日は2人で、その……回りたいな」


「……ッ! あ、ああ! もちろんOKだ! 寧ろ俺から頼みたいくらいだよ」


「えへへ、ありがと」


「……(あぁ、なんかすっげー乙女……)」


唯斗は無言で優しい笑みを作った。

そんな唯斗を見ただけで何でも許せるような気がした。


俺、こんなチョロい奴だったかなぁ。……ま、いっか。




★ ★ ★





「「「いってらっしゃいませアリスお嬢様! どうかお気をつけて!」」」


「……あ、アリガトウ いてきます です……」


部屋を出て大食堂へ向かう際にも、朝食をとる際にも、荷物を持ちに部屋へ戻る際にも、そしてエントランスへ行って今このホテルを出る際にも……。……オーバー過ぎる待遇だった。


仕事とは言えこんな馬鹿馬鹿しい事をさせちゃって従業員の人達には頭が上がらない。

それもこれもあの時の母さんのムチャクチャのせいだ。帰ったらありのままの事を話して少しは責任を感じさせないと。


……ま、それはそうと。


「唯斗、どこ行く?」


「カタコトで」


うっ……


「行き先 どこ?」


「……そうだなぁ、最寄りのバス停からバスに乗ってちょっと札幌を離れようと思う」


「ほわぃ?」


「札幌を離れるとすぐ自然が広がるだろ? そんで近くに大きな自然公園があるらしくてな。久々に身体を動かす遊びでもしようかなと思ってな」


「おぉ~!」


この身体になってからはいわゆる『お外で遊ぶ』といったことを全くしていなかった。だってみんな揃って外は危ない外は危ないと言って家に缶詰め状態にされていたんだもん。


学校、買い物の付き添い、バイト、そんな感じのちゃんとした理由がないと快く家から出してもらえなかった。

別に気にせず外へ出ても良かったんだけど、あからさまに嫌そうな、心底心配そうな母さん達を見ていたら出るに出れなかった……まぁそんな訳で……。


まぁともかく、中学の頃は唯斗と俺と中学の頃の友達とであっちこっち汚れながら遊んだりなんか探検みたいなことしたりってやってたけど、最近はホントそういうの無くなってちょっと寂しかったんだ。


「随分と嬉しそうだな」


「久しぶり♪」


「なるほど」





……まぁそんな訳でとっても広くて綺麗でアスレチック系の遊具も沢山ある素晴らし過ぎる公園へやってきた。


うーん……この風、なんというか言葉に表し辛いけど良いなぁ。


「……ふふふ、アリス、良いものを持ってきたぞ」


「……?」


「見よ、フリスビーだ」


唯斗はなんだか嬉しそうにフリスビーを取り出した。


「……良いもの? わっつ」


「なぜこれが良いものかだって? それはな、こいつでアリスと遊ぶからだ」


ますますWatts!


「それ、犬の遊び……」


「ああ、なんかアリスも小動物っぽいからな」


ひどい!


で、でもちょっと楽しそう。


「少しだけなら……」


「よーし、それじゃあ少し離れてくれ」


唯斗の指示通り俺は今の位置から10歩ちょい唯斗と離れるように移動した。


「いいよー、投げてー」


「よーし投げるぞー。それっ」


「…………っ」


俺はフリスビーを落とさないように神経を集中させてフリスビーの弾道を読んで飛んでくる位置へ移動した。


「とぉ~っ」


ちょっと高めに飛んできたからジャンプしてなんとかキャッチ。……ふぅ、やったね。


「流石はひびk……アリスだ。運動させたらやっぱり凄いな」


「そう? よーし、投げるよ唯斗~」




年甲斐もなくフリスビーやらアスレチックやらでキャイキャイと遊んでいるとあっという間にお昼になった。


「おっと、もう昼か。お腹空かないかアリス」


「ん~、すもーる!」


「……あー、それ単語間違ってるぞ(どんだけ英語からっきしなんだよ! 可愛い!)」


な、なんてこった!


「はっ、えーと……ジョークジョーク! アメリカンジョーク!」


「アリスってロシア人じゃなかったっけ? 無理に英語使わなくたっていいんだぞ(こりゃすぐボロが出そうで怖いなぁ)」


「うぅ……」


「よし、じゃあ何か買ってきてやるから良い子で待ってるんだぞ」


唯斗はしゅんとなった俺の頭を優しく撫でて慰めてくれた。

そして売店の方へ向かっていった。


急に静かになってなんとも言えない気持ちになり、取りあえず後ろの木の幹に背中を預けて座り込んだ。


目を閉じて何も考えずぼーっとしたままでいると、小学生くらいに聞こえる少年少女の声が俺の方へ近づいてきた。


「お、おいあの白い子、多分……と言うか間違いなく外人さんだよな……?」

「寝てるみたい。なんだかお人形さんみたいだね」

「ちょっと触ってもいいかな……」

「お人形さんだったら私欲しいなぁ~」


目を瞑っていても分かる。子供達は確実に俺の方へ来ている。

そして何を思ったのか俺は目を開けなかった。


するとほっぺをプニプニと触られたり、間近ですんすんとにおいを嗅がれた。


「この柔らかさ……人形じゃないみたい」

「やわらかーい」


「…………」


男の子と女の子のどっちが触ってるか分かんないけど、ちょっと太ももをスリスリするのやめてくれませんかね……。

仮にも俺は女の子だってのにそんなにベタベタするもんじゃありません。


……寝たふりはやめよう。


「……わっつ いず いとぅ」


俺が目を開けると群がっていた子供達はみんな驚いて少し離れた。

ふふ、ちょっと面白い。


「お、起きちゃったよ?」

「ど、どうしよう」

「……ほわぁ」

「と、取りあえず謝ろうよ。外人さんだって少しは通じるかもしれないし」


子供達は男の子3人女の子1人の集団だった。

見た感じだと悲しき事に俺の身長はこの子達と同じかそれ以下だった。……ぐすん。


「え、えっと……ごめんなさい! ソーリー!」


ここは黙ってからかってやろう。

えへへ、たまには優位に立ちたいもんね。


「通じてるのかなぁ……」


「レッドコメット ホワイトデビル」


「……な、なんて言ったんだ?」


「私なんとなく分かった。デビルって私達の事だよ。きっとこの子怒ってる」


「……やっちゃったなぁ」


「どうかして許して貰わないと!」


なんかどこぞの称号を適当に言ったら誤訳して慌て始めたぞ。

なんか面白い♪ ……でもそろそろおふざけも終わりにしないと。


「私 少しすぴーく ニホン語。私 のっと 怒る」


俺がそう滅茶苦茶な言葉を話すと子供達は安心したような顔をした。


……イマドキの小学生って簡単でも一応英単語の意味も分かるんだね……。なんだか泣けてくるよ……。


「ねぇ、あなたの名前は?」


女の子がそう聞いてきた。


「私 アリス」


名字までは言わない。というかこのアリスって言う架空の子の名字の設定なんて知らないし……。


「へぇ~なんだかお似合いな名前だねっ」


偽名を使ったり一人称を『私』にしたりしている内に俺の頭の中ではある決意みたいなのが生まれていた。


……そう、このアリスと言う子を自分で作り上げてなりきろうと。


アリスといえば不思議ななんたらだからミステリアスな感じ……うん、まぁ途切れ途切れのカタコトでそれっぽく表現できる。

あとは半目。……まぁこれは授業の時に無意識になってるらしいからその時の感覚を思い出せば……。

……よし! この修学旅行の間、俺は不思議な女の子アリスだ!


「ねぇアリスちゃん。僕達と遊ばない?」


「人 待ってる」


男の子の1人が俺を誘ってきたが、一応今は唯斗を待っているので断った。

当然ながら子供達は残念そうな表情をした。


どうにも俺を遊びに連れ出したい感じの子供達に『そろそろお昼だけど家に帰らなくて大丈夫?』的なことを伝えると、みんな慌てて帰っていった。


それから少しして唯斗が戻ってきた。


「おまたせ」


アリスモードだとこういう時どう言葉を掛ければいいか思いつかなかったので無言で手を振って出迎えた。


唯斗は優しい笑みを浮かべたまま俺の隣に座った。


「どうしたんだ? 寂しかったのか? ほら、海老カツサンドだぞ~」


唯斗は俺に買ってきた海老カツサンドを渡してきた。

これ、ちょっと高いから嬉しいな。


「ん」


俺は唯斗から海老カツサンドを受け取ってはむはむと食べ始めた。


「……ホントにどうしたんだ? なんだか口数が少ないぞ? 元気もなさげだし」


唯斗は心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

ふふ、上手くアリスっぽくなれてるみたい。


「アリス 演じてる」


「……なるほど、響とアリスの差別化か。なかなか面白いこと考えたな」


一瞬で理解されちゃった。早いよ。


「ちょっと別人みたいで変な感じだなぁ」


「やめる?」


「……んーそうだなぁ。今は響でいてほしいな」


「わかった」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………?」


「ありがとっ唯斗っ」


俺はいつもの感じに戻して唯斗に微笑みかけた。


「お、やっぱ響が一番だな」


唯斗に新鮮味を味合わせてやろうと思ってたけどどうやら間違っていたみたいだ。

唯斗は素の俺を好きでいてくれている。唯斗の一言はそう再認識させてくれた。

俺は嬉しくて仕方がなかった。



「よしよし」


昼ご飯を食べた後、身を寄せた俺の頭を唯斗は優しく撫でてくれた。


天気の良い日に木陰で大好きな誰かさんと昼ご飯。そしてただ2人で景色を眺めてちょっと喋って……。修学旅行に来たはずなのにデートみたいだ。


「ねぇ唯斗」


「ん?」


「やっぱりなんでもない」


「そっか」


意味はないけどただ話し掛けたかった。


「…………」


「…………」


「響」


「なに?」


「ははは、なんでもない」


「…………ふふっ」


考えてる事は同じみたい。

唯斗は頭は俺よりずっとずっとよくても、恋愛経験は俺と同じで多分あんまり無いもんね。


「このあとどこ行く?」


「そうだなぁ……。ここいらの名所と言ったら……札幌ドーム?」


「そんなとこ行って何すんのさ」


「だよなぁ。俺も響も野球はあんまり詳しくないから行っても分かんないよなぁ。……んー、じゃあやっぱりそこいらをブラブラ?」


「だね」


目的が無いと行動って起こせないもんなんだなぁ。結局ふらふら。

でも唯斗と一緒なら全然良いや。





アリスモードだけど、みんなにやったら物凄く好評だった。

でも俺からするとカタコトモードよりずっとコミュニケーションが取り辛いのでやっぱり今日で終わりにする事にした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ