そわる季節の前に
月が本当に経ってしまった……
そして今回は短め……
なので! 次回は結構早めに投稿しますよぉぉ~!
ーコピビル(藤矢の家)
さて、月日の流れというのは早いものでもう2月。男子共がウズウズしてしまい、結果として挫折の念をコンビニやスーパーから美味スティック(チョコ味以外)を買い占め消し去る暴挙に出る日も残すところ後数日となった。
我が家の一番の良心である父さんは先週カナダへ戻った。逃げ道を失う事に涙を流しながら父さんを見送り、どうやって2人の包囲網をかいくぐり唯斗の家まで逃げ切るかを捕まった後で考えていたらチョコの事なんて忘れていた。結斗の分以外は。
この前学校へ行った時に色んな人からチョコをくれくれ言われ、あれよあれよとしている内にクラスの女子全員で藤矢さんちの無駄に広いであろうキッチンでチョコを作る事になった。
「材料なら沢山ありますから、失敗を恐れずに大胆で素敵なチョコを作りましょうね」
「「はーい」」
乙女だねぇ皆さん。キャイキャイとチョコ作りに熱中しちゃって~。
「響ちゃんのチョコ、変に気合い入ってるねぇ」
三島さんは限りなく球体に近い俺のチョコを見てそう言った。
「えへへ、すごいでしょ~」
あぁ~、チョコ作り楽しいなぁ♪
「でもそれ、ちょっとカバンには入んないんじゃない?」
「ん、いいのいいの。これは自己満の為のチョコなんだもん」
「え? じゃあ森長君へあげるやつは?」
「唯斗の? それならもう作ったよ?」
「うそ!? はや!?」
「……去年はあげられなかったからね。今年はちゃんとあげようと気合い入れちゃったんだ」
備えあれば嬉しいなってね。
「じゃあ友チョコは?」
あっ。美しく丸いチョコを作るのに夢中になってたら忘れてた。
「こ、これ食べる?」
「流石に大きいわよ……」
「ごめん……」
「いいのいいの。今度はハート型とか星形のとかを作ってみたらどう?」
「おお~、小さく作ってそれを沢山作ってみるのもいいかも!」
「いいわねぇ。いっそチョコクッキーにしてみたら?」
「なるほど、それなら袋詰めにして学校に沢山持ってっても大丈夫だね」
流石は三島さん! 発想が女の子というか、良い案考えるね!
「ありがとう三島さん! ちょっと頑張って作ってみるよ」
「うん。もし作り方が分からなかったら教えるから気兼ねなく呼んでね」
「はーい」
おお? なんか狙ってないのにガールズトーク出来たぞ。お菓子づくりで盛り上がれるだなんて、なんか俺も成長したなぁ。
……ちょっとフクザツ。
~1時間くらいして~
「……こ、これは……っ!?」
三島さんに俺作の出来たてのチョコクッキーを食べてもらうと、予想通り驚いた表情をした。
「気づいた?」
「す、凄いわ響ちゃん! 程よく甘くて程よくしょっぱい。それでいてパサパサしないなんて!」
「美味しいでしょ~」
自分で食べるときにどんなのが良いか想像して作ったんだから外れることはない。……まぁ味覚にも寄るだろうけど。
「ただ甘いだけじゃすぐ飽きちゃうもん。塩は少し多めに入れても大丈夫」
うんうん、こういう時は男だった時の記憶が役立つね。甘いだけじゃだめ。これ鉄則。
ついでにパサパサしないのは山芋をちょっと入れたからだ。ホント便利だよね山芋って。
「なるほど、流石は彼氏持ち……。料理に関しては人一倍の知識を持ってるわね……」
「響ちゃ~ん! 私も食べた~い」
「あ、私にもっ」
「私も私も~」
恐らく意中の人の為にチョコを作っていたであろう他の女の子達も俺の所へわっとやってきた。
「ちょ、ちょっとまって。みんなの分は学校で渡すからっ」
「今がいい~! それ、いただき~!」
ああ~、せっかく作ったのにぃ。まだ味見してないのにぃ……。
「皆さんダメですよ! こういうのは等価交換、自分の力作と交換しないと!」
目の前で消えていく俺のクッキーを眺めていると藤矢さんがガツンと言ってくれた。
「「……た、確かに」」
「それに、こうやって食べさせあいっこも出きるんですよ? はい、響ちゃん、あーん」
「へ? あ、あーん……」
恥ずかしい、けど嬉しい! そんでもって美味しい!
「どうですか?」
……あまくて口の中でとろけて……あぁ~いい~♪
「「(こ、これは!?)」」
「この幸せそうな顔をみれば分かるわ。相当おいしかったのよ。つまり、自分で作れば響ちゃんに食べさせられる上にあわよくば素敵な表情を見ることが出来る。そうよね藤矢さん?」
「はいっ、その通りです」
「「こうしちゃいられねぇ!」」
「す、凄いよ藤矢さん、このチョコ凄く美味しい! ……ってあれ? みんなどうしたの?」
「さぁて、どうしたんでしょう? あっ、まだまだありますから食べさせてあげますね」
「ホント!? じゃ、じゃあ……」
美味しいのだから仕方がない。俺は藤矢さんの好意に甘えて口を開けるのだった。
☆ディザーリィの悩み☆
「……ひヒビキィ~!」
「わっ!? どうしたのディザーリィ?」
「……お、オレっ、こんなに悲しいのは久しぶりなんだ……!」
「お~よしよし。で、どうしたの?」
「食べたいのにっ! 食べられないんだっ! ヒビキのチョコレート!」
「え?」
「オレは見ての通りヒビキの中に住んでる思念体のようなもの。でも食べ物の味は分かるし食べた事だってある。だから分かるんだ、ヒビキのチョコレートがめちゃくちゃ美味しいって事が。なのにっなのにっ……!」
「あー、こればっかりはなぁ……。……ん? 待てよ? つまりディザーリィは俺がご馳走を食べてる夢とか甘いものを食べてる夢を見てる時って……」
「………………ひっく……」
「ああああっ、ごめん! ごめんよ! 辛い事聞いちゃって!」




