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響さんの日常  作者: ZEXAS
彼氏彼女になってから
65/91

一家団欒?


お久しぶりです……

まだまだこの世界は年越しすらしてませんよー……

もう三学期開始まで飛ばしちゃおうかな……でも前の冬休み分のエピソードもかなり短くやっちゃったし……


-明治家

-視点 明治響



「……む~」


俺は今、父さんとゲームで対戦しながらなんとも言えない声を漏らした。


「ははは、これはなかなか楽しいね」


最初、俺が父さんをゲームに誘い、見た目はまだまだ若いけど40過ぎの父さんでも出来るようなスポーツ系のゲームにしたんだ。

でもこれが全くもって父さんに合わないのかダメダメで、何でも良いからやらせて得意なヤツを見つけて父さんの顔を立ててやろうと思ったんだけど……。


『MOAB stand by!』


ヤバいよ父さん……。18禁ゲーだと超強い……。

これ、2人でやってるから画面分割なんだけど、そんなんで物凄い成績を叩き出してる。

それもマイナーマイナーって周囲から言われてるあまり強くない武器で。例えばARアサルトライフルのM16A4とかLMGライトマシンガンのMG36とかSRスナイパーライフルのDragunovしぇんしぇとか……。

唯斗はこれらの武器を使う事で多少は張り合いのあるマッチになるって言ってたけど父さんは違う。これで無双する正真正銘のバケモノだ。


……というか父さんが凄すぎて俺のスコアがしょぼい。画面分割の1Pなんて言い訳にならないくらいにしょぼい。


「父さんはなんでさっきまでダメダメだったのに今はこんななの?」


「ん? さぁ、なんでだろうね。カナダにいた時はみんな張り合いがあったんだけどねぇ」


な、なんと……アジア圏はカスだらけと申すか……。

というかこっち見ながら平然と敵を殺ってのけてるし……。一体父さんの目はどこにあるんだ?


「ね、ねぇ父さん。1Pになってくんない?」


もうね、ここでガッツリスコアやらキル数やら勝利数やらを稼いでもらわんといかんでしょ!


「んー。だめ」


な、なしてそんだら良い笑顔でいいますかねアナタは!?


「ふふ、不思議そうな顔するね。でもダメなものはダメ。実績は自分で積み上げないと」


「ぐぬぬぅ、このカナダの社畜めぇぇぇ……」


「そんな愛らしい顔で言われてもまったく効かないよ。いやちょっと効くかもだけど、それだけじゃまだ足りない」


ほぅ、つまり足りればやってくれるという訳だな?

よしよし、不本意だが女の子全開でねだるぞっ!


まずは指先で床をなぞりながら愛らしい話し方! ……をすりゃ良いのかな?


「ねぇ父さん?」


「…………」


次に顎を引いて上目遣い! ……だっけ? 我ながら恥ずかしくて顔が赤くなりそうだ。


「お願いがあるんだけどぉ~♪」


「…………ぐぬ」


よしよし効いてる……のかな?


「聞いてくれないかなぁ~?」


「…………ぐぐぐぅ」


まだ足りんか堅物め!

よーし、こうなりゃヤケクソだ!


「ねぇパパぁ~」


わぁぁぁぁぁ! 恥ずかしいっ! 我ながら超恥ずかしいっ!


「よ、よし……パパが聞いてあげよう」


心の中でグッとガッツポーズ。

やったよ、やりましたよ勝ちましたよ俺!


それ褒美じゃ父さん。愛息子否愛娘のダイビング攻撃をしかと受け取るが良い。とぅっ!


「わ~い! パパ大好きっ!」


「あっははは。響は甘えん坊だなぁ」


父さん笑顔。そして抱きつく俺の表面は笑顔。心は涙。

うぅっ、自分でやっといてアレだけど、これじゃあホントに女の子みたいじゃあないかぁ……。

この女の子限定おねだり攻撃は強いっちゃ強いが、俺の男としてのプライドはゴリゴリ減ってくよ……。ついでにやってて気持ち悪いよ……。


「……頑張ったね。響」


……ッ!?

ま、まさか父さん。わざとやらせたな!?


「ふふ、じゃあ僕も響が差し出したプライド分頑張んなきゃね」


こ、この社会人がああああああ!!




『MOAB。有効に使え』




★ ★ ★




「ねぇ父さん」


「今はパパって呼んでほしいな」


「……ぐぬぅ」


さて、ゲームをしていた俺と父さんだったが、七海や博樹、それに母さんまで来たので5人仲良くボードゲームをしていた。

ゲームは『ライフゲーム』。コマを回して車型の駒を進めて金やら家族やらを増やして家を買ってたまに破産して……と日本ではわりと有名なアナログボードゲームだ。


せっかく5人も居るんだからここはトランプだろう! と思うところだが、トランプだと何故か父さんが俺を膝の上に座らせて離さない為出来なくなった。


ちなみにさっきのは『降りてもいいかな』って言いたかったんだけど、まぁ阻止された。


「よし、次は響の番だぞ」


俺の番になると流石に離してくれる。

そしてコマを回して駒を進めて止まったマスの通りにすると父さんの膝の上に戻った。

なんだかんだ言って嫌いじゃないのかもしれない。父さんに甘えるの。

まぁ母さんと違って父さんだと安心だもんね。仕方ない仕方ない。


こうして膝に座って時々頭を撫でられて……。なんだか子供の時みたいで凄く良い気分だ。


「ハンバーグが真っ黒こげ。1万没収!? なんじゃこりゃあ!?」


「あ~あ、博樹お兄ちゃんったら可哀想。それじゃあ私の番ねっ♪」


うんうん、平和だなぁ。


「……とんとんとんっと。……ええええっ!? 滑って転んで財布を川に落として全財産没収~!? 10万近くもの大金を財布に入れとくなんておかしいよぉ~っ!」


た、確かに七海の年代だとそんな大金は持ち歩けないな……。というか持ってないな……。


「ふふふ、現実じゃないだけいいじゃない♪ …………っと。他プレイヤーから1万ずつ集金よぉ~♪ はい七海借金ライフ突入~♪ これ約束手形ねぇ~♪」


「そんなぁ……」


あらら、可哀想な七海。

しかしライフゲームは運との勝負。誰もが誰もを恨めない。


「次は僕かな。…………ほうほう、指定したプレイヤーから4万入手か。ふふふ、どうしようかなぁ。ねぇ響?」


な、なんで名指ししながら頭をぽんぽんってしてくるんですか!?


「し、集金したての母さんが食べ頃だよ父さん」


「パパって言ってない。響から4万。はい、約束手形」


ああああああっ! 俺の築き上げた財産がぁぁぁ~!!

運なんて嘘だ! 人生ライフってのは人為的な何かで動かされているんだ! 金とか金とか金とか。


……くっ、次は俺の番だ。目にもの見せてやるぞ!


……ふむふむ、8か。なかなか良い出目だな。えーっとなになに?  


「下流で財布を拾う。8万入手。おぉ!」


というか下流ってことは財布はずぶ濡れじゃないか? 大丈夫なの?


「はい父さん、これで借金終わりね」


ライフゲームも後半を迎え、収支がもりもり上がってきた。

俺達はそんな事も気にせず雑談をしながらゲームを進めた。

案外緩いんだよね、俺の家族って。まぁゲームだからってのもあるだろうけどさ。


「響、響はその姿をどう思う」


なにかと思いきや父さんがいきなりぶっ込んできた。


「この姿かぁ~。最初は色々と大変だったし今も大変だけど、なんとかなってるんだよね。それに目の保養には事欠かないから結構気に入ってるよ」


俺は偽りなく答えた。これが今の素直な気持ち。

この体が嫌だった時も多分僅かながらはあったかもしれないけれど今となってはその時の気持ちなんて忘れてしまった。きっとその程度の気持ちだったんだろう。

今はとってもとっても楽しい。紛れもなく本当に……


「そうなのよぉ。響ったらこんな可愛いを独占してるのよぉ? 本当にズルいわぁ~」


「そうだよ~。お姉ちゃんってズルい!」


よく言うよ。2人ともおもっきし愛玩道具にするくせに。しかもグルで。


「なるほど、案外馴染んでるんだね」


父さんは『あ、僕もか』と言ってはははと笑った。

うん、確かに馴染んじゃってるよね……俺もみんなも……


「……うーん、僕はどうしてかまだ兄さんって呼んじゃうんだよね……」


「いいんだ博樹……。そのままで……そのままの呼び方で頼む……」


今となっては俺の事を男の時とあまり変わらずに接してくれるのは竹中さんと博樹だけなんだ……たぶん……

その残された希少な2人に扱いを変えろだなんて言うわけがないし言わない。


「……でね、……を……して……して……」


「おおおお、流石お母さん天才っ」


ありゃ、女性陣(俺を除く)が固まって話し出した。

学校でもそうだけど女の人ってああなるともう止まらないんだよなぁ。

俺は話の内容が全くわかんないからマシンガンの的というか聞き手だし……。


「「にやぁ」」


「ひっ……」


な、なぜにこっち見るんですか!?


「兄さんの番だよ」


「……う、あぁ、ごめんごめん」


うん、やっぱり男性陣は集まってもそこまで話さない。いや、これはゲームに集中し始めたからか? でも緩いのも相まってすぐ切れるんだよね、集中力。


うん、父さんも博樹も俺の様子を伺ってる。相手の行動を見て読んでるんだ。

……まぁライフゲームは運と人為的なアレだし読むもクソもないんだけど……


「(なんだか、見てるだけで癒されるなぁ兄さんは……)」

「(下から見上げてくる響。なかなか鋭い攻撃だった……)」




★ ★ ★





時間は過ぎてもう夕方。

母さんは夕飯の支度を始め、俺は手伝う事にした。

なんたって今日はハンバーグ! 是非とも母さんの熟練の技を吸収して自分でも作れるようにしたい。


「響、まずはこのスペシャルブレンドされた挽き肉をよーく混ぜなさい」


挽き肉やら卵やら牛乳やらパン粉やらタマネギやら塩コショウやら、他にも何か入っているであろうボールに入ってあるそれを俺はレンゲで混ぜ始めた。


ふふふ、今回でハンバーグ作りの手伝いをするのは二回目。以前より多少は心得がある。


「……えい! ……えい!」


「ふふふ、なかなかやるわねぇ♪ でもそんな弱い力で混ぜてたら日が沈んじゃうわよぉ?」


母さんは俺からレンゲをサッと取ると、パパパーっとガガガーっと素早く丁寧に混ぜた。


くそぅ……やっぱり母さんには適わないや……


「これが年の功ってヤツよぉ♪ 主婦を何年もやってれば誰だってこうなるわぁ♪」


恐るべし母さん……


「はい響、次はよく手でこねてねぇ。響の小さい手じゃちょっと大変かもだけど頑張りなさぁい」


……そう、この作業は意外と難関だ。元の俺なら……いや、元の俺でも少し厳しいかもしれない。


よーし!


……ぬぅ、最初のこのぬちゃぬちゃはやっぱり馴れないな。


「……んしょ。……んしょ」


「あっお姉ちゃんズルい~! 私も手伝う~!」


「んにゃ!?」


俺は突然現れた七海に背後からわき腹を鷲掴みされた。


「ふにふにぃ~♪ こねこねぇ~♪」


「あ、あははははっ! や、やめてぇ~!」


くすぐったい! ま、マジでやめて!? あぅぅぅ、力がぁぁぁ……


「ひゅ、ひゅふぅっあいっへ~!」


「……うーん、やっぱり直接かなぁ」


あっ!? ち、直接触るのは…………ッ!?


「はぅっ……」


あわわわ、な、七海の手……や、柔ら暖かい……


「むにむに~♪」


「あぅ…ぁ…あっ…うぅ……」


「こらぁ七海ぃ~!」


か、母さん……。たすかっ


「響を苛めるのはキッチン以外でなさい?」


なにぃーーー!?


「はーい♪ 邪魔してごめんなさいお姉ちゃん。後でねっ♪」


俺は驚愕しているであろう顔を母さんへ訴えかけるかのように向けた。

しかし母さんから帰ってきたのは笑顔だった。


「ほらほら響、手が止まってるわよぉ?」


「…………」


うぐぅ、今は大丈夫だろうけど後が怖い……。イヤな予感しかしない……




★ ★ ★




「「ごちそうさまでした」」


時刻はもう7時過ぎ。

俺達家族は夕食を食べ終え、ゆっくりダラダラと過ごしていた。


それにしても食べた食べたぁ~。


「響ぃ~、食休みが済んだらお風呂入っちゃいなさぁい?」


「はーい」


ちなみに俺は今ソファーに座っている父さんの膝の上。

……なんだか気に入っちゃった、膝の上。唯斗に頼んだら乗せてくれるかな?


……にしても食後しかもガッツリとハンバーグの人に乗っかられてるのに苦しくないのかな父さんは。


「響、早くお風呂に入らないと美代に怒られるよ?」


「……もう少しこのまま」


「…………。…………。……じゃあお風呂でこうしよう」


「うんっ」


……はっ! 俺は何を!?

いや色々あれでこれでこうこうだけど……それよりやっぱり1つだけ言える事がある!


『うんっ』じゃねぇぇぇぇぇ!!


あわわわ、どうすんだよ。何気に異性との入浴を同意しちゃったよ!

まぁ相手は身内だし? 俺は元男だし? ……ぬぬぬぬ。どうしよう……。


「よしよし、じゃあいこうか」


「わっ?」


父さんは俺の頭を優しく撫でるとひょいと抱っこしてきた。

俺は浮遊感に少し焦りながらそのまま風呂場まで運ばれていった。



脱衣場に着くと、ドア越しに誰かが立てた水音が聞こえた。

置いてある着替え用のパジャマを見る限り七海が入っているんだと思う。


「ちょっと僕は博樹と美代を呼んでくるから先に入ってて」


「え、あっ……」


父さんは俺が返答する間もなく脱衣場から出て行った。


博樹と母さんを呼んでくる?

みんなで入るのかな?


俺はあまり深く考えずに、少しは慣れた動きで転びそうになりながら着ているものを脱ぎ去り、風呂場のドアを開けた。


「……? あ、お姉ちゃん!」


目の前に広がる白い靄。その奥にぼやけて見える妹の晒地せなか


あわわわ、もはや七海や母さんを含めた女の子の背中なんて散々見ている筈なのに。


ああああ! 身体こっち向けないで! なんか脳が焼け死ぬ!

服の向こうの世界なんてラッキーじゃ済まされない頻度でいつも見てる筈なのに……。


「……ご、ごめん七海っ。わ、わざとじゃないんだっ。これはたまたま……」


自分で言ってて何がたまたまなのかわかんねぇ!


「もぅ、お姉ちゃん寒い~」


「っ、ごめん……」


俺は慌てて風呂場のドアを閉めた。

結果として俺は風呂場に入ってしまった。


「お姉ちゃん、そのままいると風邪ひいちゃうよ? 早くお湯に浸かってね」


ああ、兄に裸を見られていると言うのになんという心遣い……。やっぱり七海は天使だなぁ……。


「あづっ!?」


こ、このお湯超アツい!!

あっ、七海も母さんと同じで熱湯派だったのか!


俺は一旦浴槽から出て、洗面器に浴槽の熱湯を汲んで頭からかぶった。


「……ぅ!」


ああぅぅ……。


俺はすぐに赤くなり始めた敏感な肌を優しくさすりながら浴槽のフチに腰掛けた。


……これで耐熱はバッチリ……のはず。


「お姉ちゃん、私が身体洗ってあげるよ」


「……え? ああ、ありがとう」


敏感な肌を持つこの身体をまたあの熱湯に投げるのはちょっと止めておきたいしちょうどいいかな。

家族のスキンシップは大事だし、なにより妹に洗われるってのは大きなステータスになる。


俺は風呂場の端から風呂場用の椅子を持ってきて、七海に背を向けるようにそれに座った。

すると七海は俺に近づき、俺の長い髪をどかして柔らかいスポンジで背中を洗い始めた。


……ちょっとくすぐったい。


「……うーん、やっぱり綺麗だなぁ~」


はふぅ~、なんだかスポンジで洗われているだけなのに心地良い~……。

俺の洗い方と違って凄く優しくて丁寧で……なんだかぽわぽわする……。やっぱりモノホンの女の子は仕方が違うね……。


「~~♪ お姉ちゃん可愛過ぎぃ!」


「ひゃあっ?」


七海は後ろから俺に抱き付いてきた。

背中に当たる小学生にしては発育のいい胸が俺の鼓動を加速させたのは言うまでもない。


……というかヤバい! 七海柔らかい!

泡のくしゅって音とか身体をスポンジとして使うかのように揺すってくるのとか……凄く不思議な感覚だぁ……。

あはぁ~っ! これがエデンなのかぁ~っ!


「母さん達を呼んでき……た…よ…?」


「えっ? ……あっ」


七海以外の声が聞こえてきたから後ろを振り返った俺は声を失った。


「(……うわぁ~! お父さん! 誘ってくれておりがとう! というかずるいよ七海!)」


「……七海ぃ? それはちょっとズルいんじゃないかしらぁ?」


七海は気にせず俺にくっついていたが、俺の心の高まりはもうなくなっていた。

……だって2人きりで仲良しこよしの方が良かったんだもん! きっと分かってくれる人なら分かる筈だよこの気持ち。


俺のそんな複雑な心境などお構いなし。父さん達は軽くお湯を浴びると浴槽へと入っていった。


……うん、浴室を六畳なんて無駄な大きさにしたのは間違いではなかったんだね父さん……。

俺が産まれた時は誤算。博樹が産まれた時も誤算。七海が産まれた時は天の恵み。そして俺がこんなになっちゃったのは嬉しい誤算といったところか?

そんで博樹を除いても3人の異性と浴室を共にすることが出来る……。羨ましいぜ全く。……まぁ俺も博樹もそのおこぼれを貰ってるんだが。


「七海ぃ? 後ろばっかりじゃ可哀想じゃなぁい? ちゃんと前も洗ってあげないとぉ」


「はーい。じゃあお姉ちゃん、前も洗うからこっち向いてね♪」


……なんと! 前も身体を使って洗ってくれるの!?


……じゃない! この流れはマズいぞ! 母さんが作り出した流れってだけで嫌な予感しかしない!


「だ、大丈夫だよ。前くらい自分であひゃあっ!?」


「もう遠慮しないのー! こっち向かないと今みたいに何処に当たるか分からないよ~?」


……ぐぬぅ。


「ふふふ~♪ 七海も扱いが分かってきたじゃなぁい♪」


七海は母さんに煽られるまでもなく俺の身体を洗ってきた。


父さん達に見られてる恥ずかしさからかそれとも言葉では言い表せられない変な感覚のせいか俺の身体はみるみる熱くなっていった。


「……も、もう……ひゃっ!? やめ……あふぅっ! あつ、……あついよぉ……んん!」


ああああ、な、七海さん……目が……目がヤバいですよ……!?


もう、見てないでだれか止めてぇ~!


ざばぁ


「こら、七海。響がのぼせちゃうから抑えて」


「……うーん、それは可哀想だね。じゃあ普通に洗うね」


「……はぁ……はぁ……ありがとう父さん……」


ああ、神様仏様アカトシュ様ぁ……我が家に救いの遣いを与えて下さりありがとうございます……。


……でも悲しきかな。唯一行動力のある良心(父さん)は来月いっぱいでカナダに戻っちゃうんだよね……。



あれから七海が俺の身体を隅々まで洗い終わったら、今度は父さんが俺の髪を洗った。

やはり父さんは偉大なのか、背中を見せたままでも七海や母さんから感じる恐怖感というかそういう感覚は感じず、むしろ安心して頭を預けることができた。


そして俺と七海と父さんは博樹と母さんと入れ替わりで湯船に入った。

その時俺は父さんに軽々と持ち上げられ、ライフゲームをやっていた時のように膝の上に乗せられた。


父さんの身体はそこそこ細身の外見に合った無駄の肉ない少し硬めのお腹やら胸板やらがあるのを背中で感じた。俺はお腹や胸元を触って小さな溜め息をついた。


「……ん? 響はやっぱり男の時の方が良かったのかい?」


「……うーん、今はもうそんな事はないんだけどね。体力とかそういうのが落ちてると感じる時はやっぱり……ね」


この身体だといよいよ唯斗に勝てる要素が無くなっちゃうんだよなぁ……。


「大丈夫だよ響。生きていく上で何かに優れている必要なんてないんだから。何かに特化しているとより器用貧乏なくらいの方がのらりくらりと生きていけるからね。よく憶えておくんだよ」


「……ぬぅ、俺にはちょっと難しいや」


「うん、社会人の言うことなんて流すのが一番さ。誰の話も鵜呑みにせず、自分で考えて動けるようになればつまらない人生を送らず済むよきっと」


父さんはそう言いながら俺の頭をぽんぽんと撫でた。

俺はなんともむずかゆい気持ちよさに身を任せることにした。


程なくして、さっきの身体が熱くなったのとか後ろにいる大きな安心感とかのおかげか心地よさは眠気に換算された。……ねたい。


「どうしたんだい? 眠くなったのかい?」


「……うん、ヤバいかも……」


お願いだからもう頭を撫でるのやめてほしい。眠くてかなわない……。


「お母さん、お姉ちゃんが眠そうにしてるよ~」


「あらぁ? 響ったらもうおねむなのぉ? しょうがないわねぇ。いー君、響は私がなんとかしておくから2人をよろしくねぇ~」


(※ いー君=維伶さん=パパさん)


俺の頭がぽーっとしていく中、母さんは父さんから俺をさっと離し、さっと抱っこしてきた。

……なんだか柔らかいのが当たってますよ、母さん。


「……むぅ、僕だって響のお世話くらい出来るよ。美代こそ2人を頼むよ」


「あらぁ? いー君は女の子が如何にデリケートか知らないみたいねぇ。私の髪の手入れをしたことがあるくらいで響のお世話は出来ないわよぉ?」


「……それなら仕方ないね。美代に任せるしかないようだ」


母さんは俺を抱えたまま浴室を出た。

水蒸気の無い脱衣場に入ったせいか

、あんなにぽかぽかしていた身体……というより背中は急に冷えてしまった。

でも眠気のほうが強いみたいで母さんの体温もあってか眠気はどんどん迫ってきた。


「…………母さん、寝ていい……?」


薄れゆく意識の中で精一杯集中して一言だけ話すと俺の意識はいよいよ沈んだ。


見上げた先にあったのは母さんの策士的な、何かよろしくない事を企んでる笑みだった。




そしてその夜、俺は女性2人に身体中弄られる夢を見た……。



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