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響さんの日常  作者: ZEXAS
彼氏彼女になってから
61/91

イジワルなあの人

AKEMASITEOMEDETOU!

作者は元気です


さて、クリスマスどころか正月さえ過ぎているとういのにこの世界では今からクリスマスなわけで・・・




「…………」


なんだここは?

白い。白くて、白い。それがどこまでも続いているかと思って歩き続けてみたらちゃんと端がある。崖っぷち。最初はそう思っていたが、足を伸ばせばその崖の側面に立てた。どうやら界○星や星の王○様の星みたいな小さな惑星的な所らしい

その側面を歩いて気づいた事がある

最初にいた所は平面だったのに、こっちはでこぼことしている。形あるものを……例えば綺麗な丸い石を2つか3つに割った時にできるあれみたいな……


なんだここは?


「やあ、久しぶりだね」


不意に掛けられた声の方向を向くと、そこには響の姿をした誰かがいた


「君は……?」


聞いておいてなんだが、俺はこの子を知っている。……いや、憶えている

確か結構前に夢の中で色々な質問をしてきた子だ


「流石は響が誉めちぎる自慢の彼氏さんだね。忘れやすい夢の内容を覚えられる程に記憶力抜群だ」


夢の続き……なのかな?


「ところで、君は?」


「ああ、ごめんごめん。オレはディザーリィ……って呼ばれている何かだよ」


ディザーリィ……か

英単語の掛け合わせでできた名前だとすると『置き去りにされた何か』って感じかな? まぁ何かが解らないからなんとも言えないんだが


「よろしくな、ディザーリィ」


「うん、よろしく」


不思議とディザーリィに対する拒絶反応は出なかった。恐らく姿が響に似ていて一人称も『オレ』だからだろう。それかこれが夢だからかもしれない


「ところでディザーリィはなんでまた俺のところへ来たんだ?」


「うーん、今の響にしてあげるべき事を教える為かな。だから今回は質問は無しね」


質問……確か前にこの子の現れた夢の時にされたっけな

思い出す事は出来ないが物凄く恥ずかしい質問だったような気がする


「……すまんかった。ほんと申し訳ない……」


やっぱりヤバい質問だったのか……


「ま、まぁそんな事より今から唯斗がすべき事を言うよ」


俺が質問の内容を捻りだそうとしているとディザーリィは説明を始めた





―森長家

―唯斗の部屋

視点 明治響




目が覚めた

気付いたら俺は唯斗を抱き枕にして寝ていた

居心地が良いのでそのままの状態で頭の整理をした


……確か昨日、俺は何年か振りに目の前現れた父さんに堂々と甘えられる博樹と七海、それを受け止める父さんに勝手な疎外感というかなんというか、『俺はやっぱり違う存在なんだ』的な自分でもよく解らない事を考えて、逃げ出した

そんで唯斗の家に行って、事情を聞かれたから話して、話してたら堪えていたものが弾けて、唯斗の腕の中でぐずぐずと泣いた


このままじゃどうにもならないのは分かっている

昨日は咄嗟に唯斗の家に押し掛けちゃったけど2日も3日も泊めてもらう訳にはいかない

出来るだけ早く、できれば今日には踏ん切りをつけなきゃいけない。でも家に戻る勇気が無い


「響……起きてるか……」


不意に唯斗の声がして俺は慌てて離れようとした

だけど唯斗は逆に俺を抱き寄せて離さなかった


「寒いんだ……ちょっとでもいいから俺にくっついててくれ……」


俺は黙って頷いた

なんだか頭部に血が昇ってきているような気がした。恥ずかしくてたまらない


「良い子だ」


仮にも自分の彼女を子供扱いしやがって……

ま、まぁ撫でられる事自体は嫌いじゃないし許してやろう




「「いただきます」」


唯斗の家に泊まると最高の夕食と朝食が用意される

だから俺は中学の時は月イチの間隔で唯斗の家に泊まっていた


う~ん、朝からオムライスとはなんてオシャレでゴージャスなんだろう♪

というか俺なんかより唯斗の方が女子力高くないか?



朝食を食べ終えると俺達は唯斗の部屋へ戻った

俺はベットでまだ温もりのある毛布にくるまり、唯斗は何やらガサゴソとしていた。たぶん学校の支度だ


「そういえば今日も親御さんいないの?」


「ん、まぁな」


唯斗のお母さんとお父さんは共働きでどういう訳かたまにしか家に帰ってこないらしい

だからこの家は唯斗の楽園なんだけど、これがまた埃1つ無い綺麗な家なんだよね


「響」


「ん?」


「今日、学校休んじゃおっか」


……ワイシャツ、昨日のヤツなんだよね

だから休んじゃおっかなんて言ったんだろうけど、そう言う訳にもいかない


「ワイシャツなら消臭剤掛けてけば大丈夫」


「え、勿体な……げふんげふん」


「ん? それに一回でも授業を受けてなかったら後が大変だしね」


「寝てる奴が何を言うか」


「うぐ……」


ド正論だけれども、ド正論だけれども!


「と、とにかく学校には行かなきゃ、ね?」


「……まぁそれもそうだな。よし、じゃあワイシャツは俺のを使え」


「え? 解るとは思うけど唯斗のワイシャツは俺だとかなりブカブカじゃない?」


それに先生がうるさいよ?


「それがいいんじゃないか。それにワイシャツは中にしっかりしまっていればサイズなんてわかりゃしないさ。ほれっ」


唯斗は俺にワイシャツを投げてきた

そのワイシャツはフワフワと俺の頭上に降りた


「まぁ確かに唯斗の言う通りかもね。ありがとう、使うね」


……ぬ、唯斗のワイシャツか……


俺は毛布から出て上着を脱ごうとした


「ああああ、待て!」


「え? なんで?」


「常識的に考えてみろ! 男の前で服を脱ぐ女なんて普通いないぞ!」


あ、そっか。いかんいかん、俺の女子力がダダ下がりだ

…………ん? でも俺、昨日唯斗と一緒にお風呂に入っ――――


バタン


「ひ、響がフリーズした! ……だ、大丈夫か響?」


ゆさゆさ


「おーい響ー」


ちゅーちゅー


「おお、我がオムライスの味だ。感動した……」


むにむに


「うーん、柔らかい。ナイス頬っぺた」


むくり


「……はっ! 俺は一体……?」


「おお、死んでしまうとは情けない響よ」


「いやぁ、手持ちがみんなゴキプリンになっちゃってさぁ」


「それ、ゲームが違うぞ。王子様が冒険するヤツだぞ」


同じ会社だからいーじゃん






あれから結局学校へは行くことになった

唯斗も俺を気遣ってかクールなんてお構い無しに授業中だろうがなんだろうが話し掛けたりしてくれた

挙げ句の果てには女子トイレにまで着いて来ようとしたので押し返そうとしたら力負けして放尿スィーンをまじまじしみじみじっくりねっとり見られる羽目にあった。唯斗なりに俺を心配してくれているのかもしれないし抵抗はしなかった。そして恥ずかしさのあまりボーッとしている内に拭かれた……


唯斗がよく構ってくれている以外は学校も普通に終わり、唯斗の家の前まで来ていた


「響、今日も泊まっていくか?」


唯斗のお誘いはとてもありがたい。でも俺は断ることにした


「ありがとう唯斗。でも俺は帰るよ」


「……そうか、残念だが響が決めた事だ。頑張ってこいよ」


そう言って唯斗は俺の背中を精神的にも物理的にも押してくれた


「ありがとっ! 頑張るよ!」


「おう、じゃあな!」


……なんだか、唯斗に沢山気遣ってもらっちゃったな


今度何か奢ってあげよう



ドン!

今、俺の目の前に建っている家の背景に付けるに相応しい文字といったらこんな感じだ。いや、ゴゴゴゴゴ! かな? 地面に煙も付け足すと。デンッ! も捨てがたい。ドゥ~ン、もいいなあ……

……現実逃避は辞めよう


……くぅ、ドアノブまでの道のりがこんなに長いだなんて……。よし、やっと掴んだぞ

……今度は回せねぇっ!

くそう、俺がこんなにヘタレだったなんて……


ガチャ


「えっ?」


俺が玄関の前でもたもたとしていると、玄関のドアが開けられた


「やぁ、アリスちゃん。こんにちは」


ドアを開けたのはお父さんだった


「こ、こんにちゎ……」


文末に行くほど俺の声は小さくなっていった


「どうしたのかな、こんな時間に」


た、確かに今は5時になるかならないかの微妙な時間。小学生ならもうとっくにオウチに帰っている時間帯だ。そして俺は七海(小学生)のお友達のアリスという設定。……ぐぬぬ

だが俺は引き返さない!


「な、七海ちゃんに用事があって……」


……引き返してはいないが結局逃げている気が


「ごめんね、七海なら今はいないよ」


七海のお友達戦法が使えなくなった


「あっ、博樹さんにも用事があって……」


「博樹ならまだ部活だよ」


あちゃー……


「あの、七海ちゃんのお母さんに用事があって……」


「お母さんなら今買い物に行ってるよ」


「あ…………」


どうしよう、もう泣きそうだ……


待て、俺は何しにここへ戻ってきた? 自分でやらかしたバカを正す為だろ?

それなのにさっきから嘘ばっかしじゃないか!


「どうしたのかな?」


話そう、ちゃんと


「とうさん!」


「…………」


「…………」


おわった……。むこうからしたら『何言ってんのコイツ』だよ……

たいさんしよう……


「と、とぅぜんごめんあざぃ……。ぃをあらあめてお、うかがいひま……」

(訳 突然ごめんなさい。日を改めてお伺いしま)


「どうしたんだい、響?」


「……えっ?」


ど、どういうこと……?


「寒かったろう? 家の中は暖かいから、さぁ入りなさい」


「……で、でも……ひっく……ひっく……」


俺は遂に半泣きよりも本泣きに近い泣きになった

そんな俺を父さんはグッと抱き寄せ、持ち上げた。いわゆる抱っこだ


「とうさん……なんで……」


「親というのは子供の事ならなんでも知ってるものだよ」


俺はまだ現実味が湧かなくてただ目からポロポロと涙を溢しながら父さんに抱っこされているだけだった

そして父さんは俺を抱えたまま玄関を閉め、リビングへ向かって歩いていった


「お帰りなさぁいひび……あ、あれ? なんで響が泣いてるのかしらぁ?」


「ごめん美代。僕がからかい過ぎてしまったようなんだ」


「あらまぁ……。もうダメじゃなぁい、可愛い娘を泣かすなんてぇ!」


「ごめんよ美代」


「もう、謝るなら響にしてあげなさぁい?」


「……響、すまなかったな。父さん、ここ数年でちょっとイジワルになってしまったんだ」


……何? どういうこと?

も、もしかして父さんは俺がこんな姿になっちゃったのを知ってたの


「……かぁ、さ……とぅさん、しってるの……?」


ダメだ、泣き声が直ってないせいでまともに話せないよ……


「ん~? 何をぉ?」


「おれが……こんなになって……ひっく……るの……」


ダメだ、変化したことに少しでも気が向かうと涙腺がゆるゆるになっちゃう


「知ってるに決まってるじゃない~。それに響だってその可愛くなった声でパパと話してたじゃない~」


「……え?」


…………。

………………あっ!

あーーーー!


そ、そうだった! この姿になってあんまり経ってない頃に一度父さんと電話で話した事があったんだった! それに去年の夏には父さんのおかげでバカ広い部屋に泊めてもらったし


「もしかして忘れてた?」


……ごめん父さん。何しろここ1年とちょいの中で色々あったものだから……


「……うん」


しかしまぁ、単なる俺の勘違いだったとはなぁ……

自分のバカさ加減の酷さでこんな辛い目に合うだなんて……


俺は自然と父さんの首に腕を回し、ずっと前、何年か前の時みたいに甘えた


「あらまぁ♪」


「ははは、七海よりは小さいが一応お年頃の娘にこうもされるとはなぁ」


要するにまだまだ子供だなって言いたいんだろうけど俺は気にしない

だって今はせいいっぱい甘えたいもん


「でもこれは響だからかもしれないわよぉ? 七海も高校へ行く頃には……」


「……それは寂しいなぁ。でも今は響がこうして甘えてくれるから僕は満足さ」


『お母さんは暖かい』って話を聞いたことがある

でも父さんも暖かい

父さんの頬から伝わる体温も俺の体を支えてくれている手もみんな暖かい


唯斗が相手だといつもは恥ずかしいのが結構くるんだけど父さんだと全然こない。むしろもっと甘えろと叫んでくる

これがバパパワーか……


「響、それ以上くっついてると流石にママも変なもの妬いちゃって何するか解らないわよぉ?」


「……ごめんな響。美代って結構自分に自信が無い人種なんだ。だから不安になりやすくてなぁ(しかしまぁ、自分の子供に嫉妬だなんて。まぁそれが可愛いところの1つなんだけど)」


そう言って父さんは俺をゆっくり降ろし、頭を撫でた


しかしまぁ、自分の子供に嫉妬だなんて。母さんにも可愛いところがあるもんだなぁ


「ふふふ、とぉーうっ!」


「……? のわっ!?」


俺が涙を拭っていると母さんが俺に向かって飛んできた


がしっ


「響響響ぃ~♪」


俺は母さんに捕まり、これでもかというくらいに頬擦りされた


「か、母さん……?」


「ああ~響ぃ~♪ 私はね、私はね、夜の響の寝顔と朝の眠たそうな響の顔が見れなくてもう限界だったのよぉ♪ でもこれで足りない響分を補充出来るわぁ♪」


「ちょ、ちょっと……」


そして母さんは俺の限り無くウォールな胸に頭を押し付けてきた

俺は何故か恥ずかしくなって顔中が赤くなった


「は~くんかくんか……ん~素敵だわぁ~♪」


「~~~~~~ッ!」


「まったく美代は……。僕も混ぜてほしいものだ」


そう言って父さんは俺の頭をよしよしと撫でてきた


「と、父さん……?」


「今はこうさせてくれないかな。僕も美代も響が大好きなんだから」


もう、唯斗もそうだけどみんな俺を子供扱いし過ぎだよぉ……

しかも面と向かって大好きって言われると恥ずかしいよぉ……




しばらくは2人にギュッとされてあちこち触られて少し息苦しかった。でも不思議と悪い気はせず、俺はただ2人に身を委ねているだけだった


自然と涙は止まっていた




☆着メロ☆



「それでね、宏樹がね……」


『にゃんにゃんしようぜ』


「「え?」」

「おっ」


『にゃんにゃんしようぜ。にゃんにゃピッ』


「おみや何がいいって? もちろんたこ焼きっと。そーしんっ♪」


「森長さんは旅行か何かですか?」


「ううん、学校の所の駅。あそこのたこ焼きって凄く美味しいんだよね~」


「響ちゃん……。今の着メロってもしかして……」


「うん、唯斗だよ。唯斗には着信音にしろって言われてたんだけど無駄に良い声だし折角だからしょっちゅう鳴るメール音にしたんだ」


「凄いラヴって感じですね」


「えへへ~、そう思う?」


「森長君ファンの人が聴いたら悶絶死しそうね……」




~一方唯斗は~




『だ、大好きな唯斗へ連絡のお知らせだぞっ』


「ファッ!?」

「癒しだ……」

「かわE!!」

「おっ、返ってきた」


「なになに? おお、響も欲しかったのか」


「時に唯斗氏?」


「なんだ藤崎。聞かずとも分かるが言ってみろ」


「ぬ、今の素敵ヴォイスはなんぞ?」


「無能は聞かないと解らんか。俺の嫁ヴォイスだ」


「なんと……」


「高く売れそうだな」


「誰にもやらんし売らん。アキタ、お前には特にだ」


「独占欲高過ぎィ。マジビビるわぁ」


「森長氏よ。俺は何か変なものを感じるんだ。プロトタイプというか何というか。その着メロには第一形態があったんじゃないか?」


「流石高橋は鋭いな。第一形態とかそう言うのじゃあないが、他に『響の○○○○飲んで欲しいのぉっ』ってのを頼んだ」


「「まじか!?」」


「あ、いや……頼んだっちゃ頼んだんだが丁重にお断りされた」


「そりゃそうだろ」

「バカだ」

「ざ、ま、あ」


「but、だが、しかし! 俺は決して諦めんぞぉ!」


「「(響ちゃん(明治)が哀れで仕方ない……)」」





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