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響さんの日常  作者: ZEXAS
彼氏彼女になってから
46/91

アキタ、襲来




タイトル詐欺にご注意を

(アキタはわりと空気です)


ちなみに今回から後書きに謎のとても短いトーク回を設けたいと思います


いわゆるプチ後談ってやつです






―モーメントエデン




バイトを始めて早数週間、そろそろ仕事にも馴れてきたという時にそいつは襲来した





「響ちゃん、お出迎えよろしく」


「はーい」


この店の外の入り口付近にはセンサーか何かが付いているらしく、人が来たら解るようになっていて客が来た時もすぐに対応出来るようになっているらしい


科学の力って凄いね


入り口に一番近かった俺は店長に言われて客を出迎えに行った


カランカラン


店長は人差し指だけを立ててたしどうやら1人のようだな


「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」


「ああうん、お一人様だ」


…おうお?

なんだか特徴的な人だなぁ


「お一人様なんだが…。まぁとりあえずテーブル席で」


「わかりました。少々お待ち下さい」


本来なら1人の客は1人専用の場所へ送った方がいいんだろうけど、新人の俺に出来る仕事ではない


馴れてきたとはいえ余計な事をして迷惑を掛けるといけないからな。仕事をモノにするまでは惜しみ無く聞いていこう


「店長、あのお客さん、テーブル席がいいって」


「ん、そうなの?まぁいいんじゃない?」


「え?」


「今日はそこまで繁盛しない気がするんだ。これ長年経営歴を積んだ俺の勘」


…まぁ店長が言うなら大丈夫かな


「TB2ね」


「はーい」


TB2というのはBの2という番号のテーブルの事だ


容量の方ではない


「…お待たせしました。着いてきて下さいね」


さっきの客の所まで戻って俺はそう言い、TBの2まで向かった


…というか『着いてきて下さいね』って要らなかったな。ファミレスでもそうは言わないと思う…


「ご注文が決まりましたらそこのボタンを押して下さいね。ではごゆっくり…」


ボタンを見る度にここってホントに喫茶店なのかな?ってなるよ…

まぁ焼肉屋にもあるくらいだし喫茶店にボタンがあってもいい…のかな?

なにはともあれ今の俺、なかなか様になってたよね?


今の俺は研修生的な感じで、1つの仕事を終える毎に店長の所へ戻るように言われている


だから俺は店長に評価やらアドバイスやらを貰う為に店長のいる所まで行った



「店長、さっきの客をTBの2に誘導し終えました」


「ご苦労様。問題は無かった?」


「はい、ありませんでした」


「よし、今日で二回目の客の対応をしてもらった訳だけど。なかな良かったよ。偉い偉い(そろそろ研修生も終わりかな)」


…ん?二回目の対応?

そういえば確かに二回目だな。いつもは他の人に対応させてるし


う〜ん、やっぱり誉められるのって気持ち良いなぁ♪


「うんうん、今みたいな可愛い笑顔を常に頼むよ」


「…出てました?」


「ああ、響ちゃんは顔に出やすいもんねぇ」


「そ、そんなんですか?」


だとしたら、いつも唯斗に恥ずかしい事を言われてる時って…


(※恥ずかしい事というのは恋愛初心者である唯斗氏が頑張ってひねり出したキザな台詞集です。それ以外に深い意味はありません。ありません)


「なかなか良い顔だね。でもその顔はさっきの顔とは違う。なんというか…プライベートな顔だ」


はっ!?また出てた?

…ううぅ


「うん、良い顔だ(響ちゃんは見ていて和むなぁ)」


「て、店長…。は、恥ずかしいから人の表情を読むのは…」


「そうかい?以後気をつけるよ(…といっても長年鍛えてきた表情で嘘偽りを見抜けるこの観察眼をどうにかしろと言われても無理なんだがなぁ。そもそも響ちゃんは表情を読むの簡単で楽しいし)」


ピピピッ


「「お?」」


どうやら呼び出しボタンが押されたようだ


場所は…TB2。さっきの人だ


「響ちゃん」


「わかりました。任せて下さい!」


俺はドドン!と無い胸を張った


「頑張ってね」


「はい♪」



まぁそんなこんなでTB2に行った訳だが…


「お待たせs…あ…れ?」


そこにはさっきの人が居て、唯斗がいた


「ん?おお響〜!俺の所に来るとは偶然だなぁ(こうして嫁が働いている所をみるのもなかなか良いものだなぁ)」


「え?え?」


俺が混乱していると今度は『さっきの人』が話してきた


「おおお!君が響ちゃんか!やっぱり生は良いなぁ(声も容姿も身長も神レベル。これが天使か…)」


「だ、誰ですか…?」


「響、こいつはアキタだぞ」


えええ!?アキタ!?

でもアキタって北海道に住んでるんじゃなかったの?


「言うのを忘れてた…というかネ友にいちいち住所なんて教える意味が無いから言わなかったんだけど、最近こっちに越してきたんだ。そんでドタバタしてたから最近サインインしてなかっただろ?」


なん…だと…!?

確かに最近のアキタは全くといっていい程サインインしてなかったけど…


「…北海道からこっちへ越してくるメリットは?」


俺がそう聞くと唯斗もアキタ(仮)は急にドヤ顔寸前の顔になった


何故に唯斗まで?


「編入試験、受かっちゃったのさ」


な、なにぃ!?


「そういうことだ。俺が嫉妬しない程度にほんの少しだけ仲良くしてやれよ?」


「なんだよそれ」


「「AHAHAHAHAHAHA☆」」


あははじゃねーよ!と言いたいところだがここはスルーして仕事に取り掛かる事にした


…まぁ知り合いが来たからと言って仕事をほったらかして喋っていい筈がないもんな。

事情は後で聞けるし


「ご注文は何でしょうか?」


ニッコリ笑顔も忘れずに


(左だ!)ピロロローン!

(右だ!)ピロロローン!


「「…………!」」


(被弾した!)

(損傷!)


あれ?


「「…………(理性が損傷。軽く果てそうになりました。一体なんなんですか、あの可愛い生き物は)」」


…よくわからないがもう一度


「ご注文はお決まりでしょうか?」


タダの笑顔もサービス


ピロロローン!


「「コーヒーで!」」


…な、なんだこの反応速度は!?お前らまさか!?

…ふ、ふはは!しかし我の勝利のようだな!


選択を誤ったようだな。この店のコーヒーは500円もするのだ!ふははは!学生風情がこんな店に来るからいけないのだざまーみろ


「コーヒーお2つですね♪少々お待ちください♪」


そのまま俺は足早に立ち去った


「「(かわええええええ!…ってしまった!)」」


後悔してる様が目に浮かぶがもう遅い。会計までの命だ。せいぜい大切にするんだな




数分後




「お待たせしました。コーヒーになります」


俺はガラスに入った冷たいコーヒーをちょっぴり危なげに置いた


「すみません。ミルク、持ってきてくれませんか?」


唯斗がそんな事を言った

せめてもの情けだ。そのくらいはして……!?


ち、近い近い!!


「出来れば30個くらい。いいですか?」


「は、はいぃ…」


混乱した俺は思わず承諾してしまった


…で、でも得るものがあった…かも…えへへ…



更に数分後




何だか気分の良くなった俺は30個につい足して更に10個、つまり40個のミルクを持ってきた


「持ってきました」


「うん、ありがとう」


撫で撫で


「………♪」


何を思ったのか唯斗は頭を撫でてくれた


「…(ああ、癒される…)」「…(いいなぁ…)」


はっ!?俺は何を!?

…とてつもなく勿体ないが今はシフト中だ

離れなきゃ…


「え、えっと…以上でよろしいでしょうか…?」


「うん、ありがとう」


「…う、うん…///」


逃げろ!!流されるぞ!!


すたたた


俺は2、3歩後退り、後はそのまま早歩きで走り去るのではなく歩き去った



「どうだった?」


「店長〜」


俺は店長の所まで行くとそのままへなへなぁ〜っと崩れた


「(彼氏さんに骨抜きにされたって感じかな?)」


嬉し恥ずかしで体中からマグマが吹き出そうなくらいに熱いよ

ああ、これがマグマダイブってやつか…


使い方は違うが要はこんくらい熱いよって話だ…


「響ちゃん、後は任せて上がっていいよ」


「え?でも…」


「そんな状態ではまともに出来ないだろう?」


「…うう」


確かにそうかも…


「うんうん、彼氏さんが来て悶々としちゃった?ムラムラしちゃった?うずいちゃった?」


「…???」


「…ごめんなさい(この子は純粋だったぁぁぁぁ!!……流石は竹中、外見だけでなく中身まで完璧だ)」


「…?」


よく分からないけど謝られた


「それでだな、響ちゃんには軽めの病気だから早引きしたと伝えとくよ」


「病気ですか?」


「うん、恋の病気ってね」


「…………///」


「…………」


「…………」


「…ごめんなさい」


はっ!よくわからないけど恥ずかしくて意識がシャットダウンしてたみたいだ


「…響ちゃん?(まずったなぁ…。さっきからセクハラの嵐じゃないか…)」


「…?なんでしょう?」


「上がっていいよ…。ほんとごめんね」


またまたまた謝られた

どうしたんだ店長?


「わかりました。お疲れ様です」



まぁそんなこんなで病気でもないのに上がる事になったのだが、せっかくだから唯斗達を見るためにTB2へ行った



「…………!!」


「…………!!」


な、なんだあいつら

念話でもしてるのか?


「おーい唯斗〜」


シュバッ!


こっち向くの早っ!?

軽くホラーだよ


「あ、唯斗氏よそ見するなし!」


『どわぁぁ!…デデーン』


「やぁ響、上がりかい?」


俺なんかよりそこで唸ってるアキタと名乗る人物を構ってやれよ…


「ん?響はアキタの事が気になるのか?まぁ気にすんな。コイツは単なる重度のゲーム病だ」


「そ、そうなんだ。そういえばそのコーヒーだったもの…まだ残ってるんだね」


真っ黒がデフォルトだったのに今では白くカスタムされたコーヒーだったものを俺は指差した


「凄いだろ?響の持ってきたミルクとストロー戦法でここまで持たせたんだ(あ、なんだか響のミルクって響きよくね?おふふ)」


(※ストロー戦法とは、ストローで飲む事でそのままコップに口を付けて飲むより少し減りが遅く感じるという、学生や貧乏な人が考えし神業です)


「な、なんて奴だ…」


ほぼ牛乳味にしてまで1つのコーヒーに時間を掛けるってなんだ?

店からすればかなり迷惑な行為だぞ?


「おいアキタ、響も上がることだし俺達もとっととこのコーヒー兼牛乳を飲んじまおうぜ」


「…そもそも防具無し縛りによそ見とか有り得ないわけでぶつぶつ…」


「わかったわかった。コーヒー代は俺が払うから」


「…ううむ、唯斗氏がそこまで反省してるなら…」


なんか申し訳ないことをしたなぁ


「じゃあ俺は先に出てるね。…早く来てね?待ってるから…」


どばぎゅばーん!!


「「(おひょおおお!?)」」


ガダッガダッガダッ

ガダガダガダガダガダッ


な、なんだ!?

みんなこっちを見てる…?

あっ!

お、俺…なかなか恥ずかしい台詞を言ったかもしれない…


「(流石は響だ…。店中の空気が一瞬で変わった。が、残念だったなおまいら。こいつは俺の嫁だ)」


なんだか物凄く恥ずかしくなった俺は足早にモーメントエデンから出た





・・・・・・・・・・・・





―電車内



「そういえばお前、本当にあのアキタなのか?」


電車に入るなり俺はアキタへ尋問を始めた


「俺は声と容姿で君が響ちゃんだとすぐ分かったのに、酷いなぁ」


それが本当だとするとアキタは俺の声を覚えている事になるわけだな


「あの殺伐としたゲームでそんな加工無しの可愛い声を出してるのは響くらいだろう?誰だって脳裏に焼き付くさ」


そういうもんかなぁ?


「しかし、声だけに飽き足らず、まさか容姿まで可愛いとはおもわなんだ」


「声だけなら男でも作れるもんな。まぁ響はもはや男じゃ作れない域だが…」


…そうなんだよなぁ。そこら辺で前とは違うと認識させられるんだよなぁ…


「しかしだな?やはり本当の姿は見るに耐えない無惨なものである事が多いんだよ。それが怖くて最初は響ちゃんと会うのを躊躇った」


なるほどねぇ…

ネットの普及が進む中での深い闇(ネカマネナベやらの色々なアレの総称)ってやつか…


「そんで俺はどうだった?」


「……ふふ、ふふふふ…」


な、なんでそこで不適な笑みなの?


「…ふふふふ」


唯斗もやるな!


「け、結果は?」


「何を言うか響ちゃん。男が不適な笑みを浮かべる時ってのは、ふふ…。ふふふふ…」


「アキタが妄想冥利に尽きたところで俺が説め…ふふ、ふふふふ…!」


なにこれこわい


「…っと危ない危ない。俺は妄想せずともいつかは実行出来るんだからな♪」


「…?」


「まぁ言うまでもないが、アキタの代わりに俺が言っておこう。…か、可愛い、最高。大好きだ…」


「…!!」


あわわ、あわわわわ…


だ、だだだだだ…大好きだって!?


「ば、バカ言うなよ…」


「ッ!!?」


車内は一気に温暖化


「ふぇ?」


手の早い唯斗は当然のように俺を膝の上に乗せた


「唯…斗?」


俺は唯斗を見るために上を見た

自然と上目遣いになる


「ッ!!?(辛抱ならん!)」


唯斗はそのまま俺の腹やら胸やらに腕を回して抱き締めてきた


「恥ずかしいよ…」


「俺は構わん」


「俺は構わないよ」


「だが断る」


「みんな見てるよ?」


「一向に構わん」


「アキタも隣に居るよ?」


「モブとして扱え」


「…うううー」


返す言葉が見つからない

まぁ俺もなんだか気持ちが良いしいっか…


…あれ?気持ちが良い?


「〜♪」


「んぁ…って唯斗何やってんの!?」


「〜♪」


「無視しないでよぉ〜。あぅぅ…」


「〜♪」


「さ、流石に…構わなくないよ…。だいじょばないよ…。みゃっ?」


「〜♪」


「お、おにゃがい…だから、応答して…よぉ〜。んっ…」



この無謀な戦いは俺達の目的の駅に着くまでアキタに見られながら続いた








「すまんな〜響」


「ううう…なんだか不完全燃焼というか、終わってないような変な感じ…」


「ま、まさかお乳様で寸前まできたのか!?」


「…?よく分かんないけどそんな感じ…」


「(こりゃあ大物だ…)」




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