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響さんの日常  作者: ZEXAS
彼氏彼女になるまで
37/91

響さんの唯斗



待っていて下さった皆さまお待たせしました

響さんの日常もこれでいよいよ1つの終点です


この長さは…まぁ頑張ったと思いますよ…






「響ちゃん…」


「母さん…。…ひくっ」


「(響の)大雨警報がなってるわ…」


「…うう、ひっひっ…」


「な、何があったのぉ?」


「う、えぐ…。実はね…」



・・・・・・・・・・・・



(回想)



同日午後6時30分過

一原市住宅街家庭居住区



「(はぁ、結局遅くなっちゃったなぁ〜)」


「(今日は金曜日…。唯斗に会うには月曜日まで待たないと…)」


「(ゲーム内でアキタと会うのも何かマズイ気がするし、しばらくはオフゲーだな…。そろそろエルダーなスクロールスのパッチも来てる頃だし久々にやるかな…)」


そのY字路では2つの方向から家へ向かう者が鉢合わせになろうとしていた


まず1人は明治響


「(よし、ロングポテトスチックにチキンカツサンド、プリンに桃ジュース。フルーツガム一式にプリペイドカード。戦いの準備は万全だ!)」


そしてもう1人は森長唯斗であった



てくてくてく…て


かっかっかっかっ…かか


「…およ?」

「…あ、あ」


2人は1週間振りの再開を果たしたのである


「ゆい…と?」


「(オーマイガーッ!!)」


そして響は唯斗に近づいた


「唯斗〜っ。久々だな〜」


「(うわわわわ!く、来るな!?俺の理性が!俺の理性がぁぁぁぁ!なんて厨2だぁぁぁ!)」


「唯斗?どうしたんだ?」


唯斗は咄嗟にロングポテトスチックを取りだし、響に渡した


「…ポテトスチック?」


「ーーーーー!!(今の俺にはその愛らしい声ですら毒だ!喋れない事を許してくれ…!)」


そして唯斗は走り去っていった


「…え?…意味わかんないよ…」


響は暗いY字路で走り去って行く唯斗をぽつーんと見守る事しかできなかった






・・・・・・・・・・・・




「ま、ママも意味わかんないわ…」


響は涙声で詳しく話した




「なるほど、すぐに電話を掛けたが出なくて、後からメールで『今日は無理だ!』って訳のわからないメールを送られたと」


「うん…」


「それ以降電話を掛けてもメールを送っても反応はなく、嫌われたと思ったと」


「うん…」


「…やっぱりママもわかんないわ」


「うん…」


「ところでさ」


「うん?」


「最初(1週間くらい前)からメールなり電話なりすれば良かったんじゃないのぉ…?」


ガーン


「…うん」


馬鹿の極みは藤崎ではなくこの俺だったようだ

悪いな藤崎、この俺がNo.1のようだ…


「う〜ん、だけど響にはまだチャンスはあると思うわぁ」


「逃げられたのに?」


「逃げられたわけじゃないわよ?」


「なんで?」


「だって唯斗君は言ったんでしょ?『今日は無理』って」


今日は無理?まさか!


「明日はちょうど土曜日よ。この際だから本陣へ強行しちゃいましょう♪」


「き、強行!?」


「そうよ、明日は戦争よ!響の恋の戦争」


「大袈裟だね…」


「忘れてない?響ほどではないけど唯斗君は超モテるんでしょ?」


…ああ、なるほどね


「…早くしないと唯斗が取られちゃう」


「そうよ!明日には突撃するわよ!」


「…わかった!…俺、やるよ!やってやるさ!」


で、でも…正直なところ突撃したところで何をすれば良いんだろう…?





一方唯斗は



「(う、うわー…。やっちゃったよ…。どう考えても久々に会った親友に対する対応じゃねえよ…)」


自分の行いを後悔していた


「(響のやつはどう思ったんだろう。俺の事を嫌いになってないだろうか…)」


「(いやぁそれにしても響のやつ、めちゃめちゃ可愛くなってたなぁ〜。1週間で何があったんだ?)」


「(可愛くなった理由は何でもいいや。それより俺の理性が…)」


唯斗は息を大きく吸ってゆっくり吐いた


「(今夜は長くなりそうだな…)」



響はたぶんまともな気合いを、唯斗は謎の気合いを出していた






・・・・・・・・・・・・




次の日




「さぁ、行ってらっしゃ〜い♪」


「い、行ってきます!」


「うん、気合い十分ね♪じゃあママは先に帰ってるわねぇ〜」


唯斗の家に直接来た

家は近いし後戻りは出来る。だが俺はそんなヘタレではない


とにかく今日で俺と唯斗の関係は良くも悪くもなるだろう


「よし…」


ピンポーン



ガチャ


「(誰だろう…。…!?)」


「よ、よぉ」


「響!?よく来たな(良かった!響はまだ俺を嫌ってない!…たぶん)」


俺も唯斗も何処か声が上擦っている気がするけど気にしない


「上がっていいか?」


「あ、ああ。もちろん」


「お邪魔しまーす」



本陣への突撃が今始まった




「き、昨日はすまなかったな響」


「昨日?」


「いや、何でもない。それにしても俺んちに来るなんて久々だな」


「ああ、確かにそうかもな」


ちょっと前は唯斗の家でゲームをするのがデフォルトだったな


唯斗の家に行くと基本的に機械音痴な俺なメディア機器の触り方を教えてくれたっけ


「唯斗が色々教えてくれなかったら俺、ずっと原始人のままだったよ」


「原始人?色々?(り、理性が…)」


「機械に弱いから原始人。そんな機械を唯斗は色々教えてくれた」


「今時パソコンくらい使えないと友達付き合いも大変だからな」


「ああ、助かってる」


母さんが言ってた



『出来る限り可愛く笑顔を作りなさい。乙女パワーをぶつけるの!こーやって』


『な、なんか恐くない?』


『そ、そうね。作り笑いには限度があるわ』


『じゃあどうすれば…』


『唯斗君にしてもらった事を思い出すの。そして感謝の気持ちを込めればきっと良い笑顔になるわ。さぁ、母さんにしてもらった事を思い出して笑ってみて』


『…。…こうかな?』


『ぐはぁ、頬を染めらがらの照れ笑い!?こんな笑顔があったとは…!』


『どうかな…?』


『…予想外な想像されて…。ふふ、ごちそうさま♪』



よし、ちゃんと出来てるかな?


「ありがとな…」


「はは、何だよそれ(オファー!?こいつぁとんでもねぇ強者だぁ!可愛い過ぎる!)」


「何だよそれって何だよ」


「礼には及ばないって事さ」


なでなで


「………ぁ」


「(お前に触れるだけで十分だ…。あぁ、癒される)」


「ま、入れよ」


「あ、ああ」


や、ヤバい!

唯斗に触られただけでこうも身体中から何かが湧き出て来る…

熱い熱い熱い…


落ち着け俺!

触れられたくらいでなんだこのザマは!

…あは、唯斗に触ってもらっちゃった♪


じゃなくてー!


…冷静になろう

日本人…ではなくなったかも知れないけど、こんな時こそ平常心

日本人ならばいつも心に平常心を掲げていないと…


「なんだ響、俺の部屋のドアの前で突っ立って」


「あ、ああ。綺麗な部屋だな〜ってさ」


「当たり前さ。優等生になるには形から入るのも大事だからな」


「週に3回、整理整頓…だろ?」


唯斗の部屋は本当に綺麗だ。

全体的に薄い肌色の壁に天上にカーペット

平凡な部屋をかっこよくする黒いカーテン

小物を置ける台付きのオサレでちょい大きめなシングルベッド


1人部屋には大きい気がする30インチくらいの液晶テレビ

以下省略

からの

…なんか可愛い女の子のポスター…?


「なんか増えてね?」


「ふ、俺は人を呼ぶより呼ばれる方だと気が付き、部屋に色々付ける事にしたのだよ」


「ま、まぁいいけど」



それからしばらく2人で過ごした


最初はぎこちなかったけどだんだんいつも通りに戻って来た


もう少し…かな?

もう少しでいい感じの雰囲気…かな?


「なぁ唯斗」


「ん?」


「ゲームしようよ」


「何だ?野球拳か?」


「野球ゲーはいいや」


「(しまった!こいつは『そういう知識』は全然無かったんだった!)…じゃあ何にする?」


「う〜ん、みんな(外人やらアキタやら)を誘って何か盛り上がるヤツがいいな」


「駄目だ」


「えっ?」


なぜに?


「今日はお前と久々の時間だ。他のヤツらを混ぜるなんて絶対に駄目だ」


か、カッコいいじゃん

…そ、そうだな。唯斗の言う通りだ。今日は2人だけで過ごそう


「(響が他のヤツと話してる事を想像するだけで…。今日は駄目だ。他のヤツと関わるなんて…)」


「う〜ん、じゃあ何しようか」


ゲームという選択肢は絶たれた

だって唯斗との大切な時間だもん。ゲームで潰すなんてもったいない!


「何処かに行こうか?」


「…うん!」


何処か…

具体的な場所なんて分からない。でも今は唯斗と居られるなら…

俺達はまだ高校生。そこらを歩けばその何処かはすぐに決まる


「いきなり言っちゃったけど、本当に外へ行けるのか?準備は大丈夫か?」


「大丈夫だ♪」


母さんの言った通りだ

あらゆる展開に備えて準備をしていけば美味しいチャンスもガッツリゲットだとか言ってたな


その為に黒くてひらひらしたワンピースを着てきたし、他にも色々オシャレしている。


まぁ、全部母さんのコーディネートだけど…




・・・・・・・・・・・・





一原市商店街

ここは何処かの大都会くらい大きな建物や店があちこちにあり、公園でもないのに噴水があったりする広間がある


人口密度は高くはなく、歩き回るには本当に適した所だと俺は思う


人口密度はわりと高くないという事は、そこへモニュメント的な目立つ存在があればそれはもう視線が集中する訳でございまして…


「あはは、…大丈夫か?」


「だ、大丈夫…。もうだいぶ慣れてるから…」


何となくチラチラ見てる人ばっかり…

見られてる人からすれば見てるのバレバレですよ…


恥ずかしいけど、俺だってこんな子がいたらチラチラ見ちゃうし文句は言えないよね


「何処へ行こうか?」


『それは男のお前がリードするべきじゃないのか?』って言おうとして口を押さえる


だって男達はまだ『恋人』ではなく『親友』だもん


まだ親友らしくしなきゃ

で、でもそれは今日で終わり…の筈?


「どうした?口なんて押さえて。そうか、口から熱い重いをぶつけるって言ったらカラオケだな。よし、カラオケへ行こう!」


カラオケ…か

久々に行ってみようかな


「あぁ、行こっか」


『笑顔よ笑顔!』


よし、笑顔だ!


「(うおっ!?なんつー可愛さだ!?)」





少しして





「(よ、よく考えるとこれって幼女…響と密室なんだよな?な、なんだかみなぎってきた!)」


「うおおおお!響もガンガン入れろよ〜?(その声をもっと!だからほぼデュエット曲だぁ!)」


「そ、そんなに歌ったら喉が大変な事に…」


「(喉がらがらになった響はどんな声を出すんだろう?もっと響を知りたい!今の俺って凄くヤバい奴かもしれん!)」




少しして





「アルスフィィィィィィー!!!」


「アルスフィィィィィィー!!!」


「「アルスフィィィィィィー!!!」」



「はぁ、はぁ…。何なんだ?この歌詞がほぼ全部『アルスフィー!』って曲は?」


「他にも『リスエルシアー!』とか言ってなかった?」


喉殺しの謎曲『アルスフィガーデン』は案外盛り上がった


いつかあいつらや三島さんも呼んで全員で叫んでみたいな


「よし、次は」


「解ってる唯斗。どうせヘビメタだろ?」


「オフコース!」


「まぁ、俺はまだまだ(喉的に)余裕だし」


「ふ、限界へ挑戦する俺の勇ましさと言ったら…」


「はいはい勇者勇者」





一時間くらいして




「(な、なんという事だ…)」


森長唯斗は目の前の光景に思わず涙を流しながら叫びそうになった


「(『常におしとやかに。元々小さいけど食べる時はいつもより小さく口を開けて食べなさい。あと内股は絶対条件よ!』…ちゃ、ちゃんとやれてるかなぁ?)」


どこかしおらしい様子で、内股で、身長のせいではあるが上目遣いで…

黒いワンピースに白銀の髪は何処か上品な感じがしたりして…


もはや明治響ではない

何処からどう見ても女の子。そして幼女


1人の小さな淑女がそこには居た。


そして森長唯斗はこんな可愛い子をチェーンのファミレスに連れてきた事を後悔した






「すまんな響、俺はファミレスしか思い浮かばないアホでさ…」


「大丈夫大丈夫。(デートの)定番でしょ?」


「あ、ああ…(な、なんて可愛さだ…!ちゃんと喋ってる筈なのに理性が飛びそうだ…)」


微笑ましい雰囲気に周りの空気も何処か優しげになっていく中、唯斗はひたすら理性と戦っていた


「…で、何食べるんだ?今日は俺の奢りだからな(デートだと思ってるのは俺だけだろうけど、奢る事くらいはさせてくれよな)」


「おぉー!つまりポテト食べ放題とな!?」


「いや、ポテト以外も食ってくれよ。ピザとかさ」


「じゃあそれも食べる」


今日ずっと微笑んでいる響に唯斗はすっかりやられてしまった


「全く…(可愛いなぁ)」


そこで唯斗は抑えつけられた欲望を少しでも発散すべく、ある事を思い付いた


「アー、ペン落トシチャッター。拾ワナキャー」


最初からペンなど持ってきてないというのに、病に犯されていなければ…。哀れ唯斗…


と、絶妙な演技力の無さだが天然の響には効く様だ


響の居るテーブルの下の世界はロリコン紳士にとってはまさに天国


膝下辺りまでのワンピースの為、絶対領域は拝めないもののある筈もないペンを探すという名目で堂々と天然な幼女の生足を見る事は至高(愚者)の極みである


「(少佐…。私にも天国の歌が聞こえます…)」


そして周りからの考えはこうだ


「(え?あの人彼女さんのパンツ見ようとしてるよ?)」


「(あの様子だとあの2人はカップルなんかじゃねぇ。妹か留学生のどちらかだ)」


「(なるほど、天然の妹or留学生のパンツを公衆の面前で見る事で新たなる世界へ行こうとしているのか…!)」


「(あの人、私からするとかなりタイプなのに…。残念だなぁ…)」


「(あの娘、あんなヘタレなんかほっとけば良いのに…。変態なら他にも沢山いるからうじゃうじゃ出てくるぞ)」


「(おい!あいつ更なる階段を登ろうとしてるぞ!)」


他人は案外他人をよく見ている。そしてそんな事をお構い無しに唯斗は更なる極みへと向かっていた


「(す、少しくらい捲っても良いよね?あいつ天然だし余裕っしょ)」


なんて響のワンピースに手を掛けていた


「よし、ライトOK消音OKカメラOK。ゆっくり捲る準備は?…OK!」


「(あ、あいつ強者じゃねーか!!?)」


「(通報した方が良いのかな?)」


「(バカ!勇者の儀式を邪魔するものは例え聖人や八百万の神だって許されないぞ!)」


「(あれ?あの娘少し泣いてない?)」


客達は響の方をチラチラ見ると、確かに少し泣いている様に見えた


「「(バレてるんじゃ…?)」」


しかし当の響はもちろん唯斗の怪しい行動に気付いている筈もなかった


「(嬉しいな…。またこうやってそこら辺をぶらぶら歩けて…)」


身体の変化の影響か、響のメンタルはかなり弱くなっていた。

見た目相応に喜怒哀楽が激しく、精神は成長した状態で子供そのもののメンタルを持つ響の心はすぐに涙を見せる様になっていた


「(えへへ…。なんだか急激に唯斗の顔が見たくなってきた)」


「(ああ、響…。ここまでくるともうスカートの下から顔を突っ込んでワンピースの中で暴れたいぜ…)」


「(唯斗、任務を遂行する!行きまーす!)」


「唯斗?見つかった?」


「「(あ…)」」


唯斗が響のワンピースの端を掴み顔を侵入させたその時、響は下を向いた


「(すっげー良いにおーい…。ハッ!?)」


「ゆ、唯斗…。な、なんて所に居るんだよ…(ど、どおりで生暖かい空気がさっきから足に当たってたんだ)」


「「(なんてこったい)」」


「(考えろ…!下手すりゃ一生嫌われる!優等生だろ俺!)」


(※優等生はこんな変態チックで羨ましい事はしません!)


「(な、なにやってんだ唯斗の奴…。す、少し良かったかもしれない…)」


「響、紙かティッシュかを取ってくれ。身体は動かすなよ?」


「え?う、うん…」


何がなんだかサッパリだった響だが、唯斗の言う通りファミレスにならよくある紙ナプキンを取って今まさに響の太ももで鼻息を荒くしてある唯斗に渡した


「はい」


「おう、サンキューな」


そして唯斗は受け取った紙ナプキンで響の太ももを撫で回すように動かした


「…ぁ……?」


「「、あいつ女の子のスカートの中で何モゾモゾしてるんだ!!)」」


数秒して唯斗は出てきた


「危ない危ない。これで響は安全だ」


「…なにしてたんだ?」


「これだよコレ」


唯斗は響に丸めた紙ナプキンを見せた


「まさか…」


「そう、変な虫が着いてたから取ってやったんだ(俺ってばなんて策士!)」


「「(…変な虫はお前だろう)」」


「む、虫?」


響は虫にはトラウマを抱えている為、とにかく苦手だ。

近くに虫が居ると頭で察知(又は勘違い)したら一気に真っ青になって震えだす


現に今も震えている


「だが大丈夫。俺が取ったからな」


「…そっか。助けてもらっちゃったな…」


「気にすんな」


「…ありがと」


「…うぐ(罪悪感が…)」


よっぽど虫の威力が強かったせいか色々と突っ込むべきところに気付かない響に罪悪感をおぼえる唯斗のもとへ、頼んだ料理を運んでウェイトレスさんが来た


「ポテトグリルセットと特盛ポテト、シーフードピザお待たせしましたー♪(…すげーなこの2人。この量のポテトを2人で?)」


(※特盛ポテトは感覚で言うとバレーボール一個くらいの量はあります)


「あーはいポテトはこっちです」


「…気をつけて下さいね〜(え?この娘の?)」


「(ふぅ…何とかなるもんだ…。YESロリータNOタッチ…か。確かにそうかも知れない…知れないが、彼女になっちゃえばYESタッチになるんだよな)」



すっかりご機嫌の響に罪悪感を抱いていた唯斗は何処へやら…

既に彼女になる事前提でよからぬ妄想をしている彼はきっと大物だろう…



「…………」




・・・・・・・・・・・・





「さて、次は何処へ行こうか」


「どーしようね…」


カラオケはもう行った

デート(自称)で買い物はおかしいよな


…やっぱこういうのは唯斗がリードするもんだよな。デート(自称)なら先に誘った男がリードするもんだと俺は思っている。

…した事ないけど


「行く宛もなく闇雲に歩くのは良くないな。何か目標地点でも決めてそこへ行く過程で寄り道するのが一番だよな」


「おお、流石唯斗だ…」


「誉めろ誉めろ」


「そ、そうだな…」


今日はいつもならスルーしてる言葉もなるべく真に受けようと決めたんだ


さて、どう誉めよう

頭を撫でるとか身長的に無理だし…

恥ずかしいけどアレだな


「(な、なんだと!?)」


響は唯斗の手を握った


「こ、これでどうだ」


「うむ、よろしい(あ、ああ…。そーいえばまだ響とはまともに手を繋いだ事はなかったなぁ…)」


響も唯斗もお互いに手を繋ぐのは嬉し恥ずかしといった感じだった


しかし身長のせいで余計に兄妹っぽくなったのは言うまでもない


「さて、行こうか(落ち着け俺…)」


「もう目標地点は決めたのか?(落ち着け俺!)」


「ああ、一応な。それまではブーラブラだ」






5時間くらいして



「ゆいと…」


「どうした響?」


「たのしいな…」


唯斗の言う目標地点まで適当にブーラブラしていた2人だったが、足がガクガクし始めた響を見て唯斗は一旦電車に乗る事にした


「大丈夫か?」


「だいじょぶあいじょぶ…。ゆいとがいるから…」


疲れたのか凄く眠たそうな響の思考は少し麻痺気味で、唯斗をドキッとさせるような言葉が出てきた


「眠いなら寝ていいぞ。着いたら起こしてやるから」


「…………」


「…寝るの早いな(まぁそれだけ疲れたんだな)」


そして唯斗は考えた


「(さっきの響の言葉。あれが本心からの言葉だとすると…。脈アリって事だよな…)」


「(よし決めた!もう『目標地点』に行こう。それが今回の目的なのだから)」


その時唯斗は、密度の低い電車を選んで本当に良かったと思い、響を軽く持ち上げ膝の上に乗せた


「うん、これでよし」


強い紳士は人目を気にしないのである





・・・・・・・・・・・・





―波頼高校周辺の丘


波頼高校は少し高め丘の土地に建っている。

超エリートの生徒が何らかの津波などで学校ごと流されない様にあえて台地より十数M高い所に建てたのが理由らしい


そんな波頼高校の丘の隣には更に数M高い丘がある


この丘は普段は何もない草原なのだが、学校行事で稀に使われる


そして今、ある男子高校生が運命の時を迎えていた



「さて、そろそろ6時手前か…」


太陽も沈み、大分暗くなった丘の上にいる2人は備え付けの電灯で照らされていた


「そろそろ起きてくれないと困るんだが…。まぁ、こんな可愛い寝顔ならいつまでも見ていられる自信があるからいいけどね…」


「…ゆ…いと…まって…」

「!?」


「…………」


「なんだ…寝言か」


そして唯斗は響をベンチに降ろし、ベンチの真後ろにある手すりの向こうに広がる町の風貌を見た


「最高のシチュだな…」


下から上がってくる風に当たって調子良い事を言っている唯斗だが、実は響が目覚めるのが少しだけ怖ようだ


もし失敗したら

告白を断られたら…


唯斗はここまで来ていきなりへたれる自分を情けないと責めていた


「友達か…恋人か…」






「………」


そして響の目は覚めた


「…!(ど、何処だ?…さっきよりは明るいけど…。唯斗は!?)」


響はスーっと立ち上がり、辺りを見回した

寝起きの視界はあまりよろしくなく、なかなか見つからなかった


「何処だよここ…」


響はここへは来た事はなかったみたいで、状況を把握するのは無理なようだ


唯斗が居ない寂しさ、不安や焦りで響はついに泣き出してしまった


「…ぐすっ、…ゆいとぉ…なんでいないの…?」


号泣は避けたものの、やはり泣くのを抑えるのは無理だったようだ


響は自分の寝ていたベンチに座り込み、1人黄昏はじめた


「(…どうしよう)」


「(何処だか解らないし帰れないよ…)」


「…うっ、…うう…」


そこへ誰かがやって来た


「(この局面で尿意とかあり得ないだろ…。ま、まぁ緊張してたし?仕方ないよな…)」


「(だ、誰?)」


「(…?誰か居る?)」


白銀の髪を見付けたその時、唯斗は気付いた


「!?」


先ほどまで横になっていた白銀の少女は既に起きている事に


「響…起きてたのか」


その声を聞いた時、響も唯斗に気付いた


「…ゆいと?」


響は目を擦り、唯斗の所まで走ってきた


「…お前、何処行ってたんだよ!」


「と、トイレに…(もしかして泣いてる?)」


「トイレ?」


それを唯斗から聴いて響は安心した


もしかしたら嫌われたのかも知れない

最初から嫌いだったのかも知れない


そんな不安を抱いていた響には救いの言葉だった


「ちょっと急に尿意がな。すまん、寂しかったか?」


「…。あはは、こんな小さな子を置いてトイレかよ」


どうやら響は元気になったようだ

しかし唯斗は焦り出した


「(やばい、このままじゃ告白する空気じゃなくなる!もう切り出さないと!)」


そして唯斗は響と同じ目線になるようにかがんだ


事実2人は両思いの為、それだけで空気は一変した


「ど、どうしたんだ?」


響の問いかけに、唯斗は軽く呼吸を整えてから答えた


「…これから響に言う事がある」


「俺に…言う事?」


「そうだ」


「(……?)」


まだ何も言われてないのに、響はドキドキしていた


「響、俺はお前が好きだ」


「!?」


あまりにも直球な台詞に響は衝撃を受けた


「唯斗…それって…」


「そうだ。そういう事だ」


「………(な、ななななな)」


「響はどうなんだ?」


「…そんな、いきなり答えるなんて出来ないよ」


「好きか?嫌いか?」


「お、俺は…。…す、…すぅ…」


「なんだ?」


「唯斗…俺は…」


「(頑張れ!頑張れ俺!さっき夢の中で誓っただろ?)」


「(押して引くとイイ感じ、だったかな?あの本によると…)」






「そうか…悪かった。だけど響、お願いがある。俺とはまだ友達で居てくれないか?(失敗したら大変だ…。だが恋は駆け引きだ。大きく出れば見返りは大きい)」


「…え?」


「さぁ、帰ろう。そろそろ時間もヤバいし響のお母さんも心配するしな(お願いだ響!俺の事を好きでいてくれ!)」


「(こ、このままじゃ…。折角のチャンスが無くなっちゃう!)」


「ほら、帰ろう?」


「う、うん…(あああああ!バカバカバカ!)」


「……おんぶするよ」


「う、うん…」



あまりにもヘタレな響によって唯斗の勇気ある行動は全て台無しになってしまった


気まずくなったのか2人はおんぶという形で密着しているのに話さなかった






そして帰り道



一原市住宅街家庭居住区



「(もう終わり…なのか?)」

「(どうしてこんな風になっちゃったんだろう…)」


「「(もっと良い終わり方は無かったのか?ハッピーでラヴなエンドは無かったのか?)」」


無言帰宅の中で2人の頭は凄く活発になっていた


愛しかった者を手に入れる事が出来ず、一層愛しさが溢れていく…

そのせいか2人は最後となるのかもしれない愛しい時間を大切にしたいという思いが行動に出ていた


唯斗は歩くスピードを遅くし、響は唯斗にいつもより強くしがみついた


「(明日…は休みか。来週からどうしよう…)」


「(眠くなってきた…。だめだだめだ!今はもっと唯斗を感じたい…)」


後悔が後悔を産み、2人はどんどん沈んでいった…


「(やばい…本格的に眠いぞ…)」


もう近所の公園に差し掛かって来ていた


誰も居ない寂しげな公園は今の自分と同じ様に感じた唯斗は余計に沈み、響に至っては今自分がどの辺に居るのか分からないくらいに意識が消え掛けていて、軽く夢を見ていた


「(あははは…あははは…。唯斗〜。だ〜い好きだよ〜♪)」

「……ぁぃぅぃぁぉ〜…」


「…?(くそぅ、暢気に可愛い寝言を言いやがって…。襲っちまうぞ!)」


「(『俺もだよ響ぃ〜♪大好きだからチューしちゃうぞ〜♪』)」


「(うんうん〜♪チューしちゃお〜♪…)」


「た…すき…」


「!!?」


響の寝言はすぐさま唯斗に届いた


「(す、好き?お、俺の事が!?好き!?)」


「(おおっとEクラスも最後の選手のようです!アンカーは明治響!今…)」


「たすきよこせ〜…」


「!?」


「(そ、そうか…さっき告って来た奴の背中の上でマラソン大会か…)」


唯斗は物凄くへこんだ


「(『よーし次は好きって言いあうぞ〜♪』)」


「(は、はずかしいよ〜)」


「(『バカだなぁ〜。それが良いんじゃないか〜♪』んじゃまずは響からね)」


「(う、うん…。す、す…)す…ぃ」


「(『もっとはっきり』)」


「(す…す…)」


「…すき」


「!?」


「(こ、今度はなんだ?すき焼きか?スキーか?ワルシャフスキーか?)」


「(『大好きって言ってみて』)」


そこで響も目が覚めるのだがもう遅い


「……大好き」


「!!?」


ドカーン!


唯斗の中で爆音が鳴った


「…響?」


「は、はい!」


「俺の事…好き?」


「は、はい…大好きです」


響はまだ頭が働かないせいか本音がバンバンでているようだ


「たすきでもスキーでもすき焼きでもない?」


「唯斗が…好きだ」


「!!?」


唯斗は辺りを見回し


「取り合えず…公園に入ろうか」


そういって公園へ入っていった




「響?」


「…なに?」


「好きだ」


「な…!?」


「何を今更驚く」


「………」


縮こまってしおらしくしている様子からして、かなり照れているようだ


唯斗はそれを察したのか響を優しく抱き締めた


「…!?」


驚いた響は顔を赤くしたまま『何をする!』と言わんばかりの表情で唯斗を見つめた


唯斗は何も言わずに抱き締めるばかり

響も遂に唯斗の背中に腕を回した


「(最高にカッコイイな、今の俺)」


「唯斗…」


「なんだ?」


「唯斗のお腹の辺りに飛び込むのは初めてだよ…」


「俺も響の(小さな)胸が背中以外で感じられるのは初めてだ…」


「そうかな…」




5分にも渡り抱き合うという脅威の何かだったが、これは単に2人ともこの先はどうやって進展させるのか分からない情けない恋愛初心者というだけだった


「取り合えず離れようか」


「…ふぁ…うん」


どうやら響はかなり眠いようだ


「(響が眠そうだ。早くなんか次に行かないと!)」


「響」


「…なーに?」


「いつから俺の事を?」


「…分からない。気づいたら好きになってた」


「そうか…」


「唯斗は?」


「実は俺もなんだ」


「唯斗も?」


「俺にはあるトラウマがあって女性が苦手になってな…。まぁこれはいつか話すとしてだ、取り合えず女性と付き合う事はなかったんだ」


「(女性が苦手?)」


「だからといって男食いに走る事もなく。周りが春色に染まる中俺はずっと灰色だった」


「(だから彼女居なかったのか…。モテてたのに)」

「そして一番の友達だったお前が女の子になって」


「(俺の事…かな?)」


「でも、…女の子になっても響は響のままで…最初は戸惑ったけどだんだん女の子の響に慣れてきて…」


「好きになった」


「唯…斗…」


しばらくの沈黙の後、今度は響が話しだした


「俺も…。俺もそうだ…」


「最初は…頼れる親友は唯斗しかいなかった。混乱してる俺を引っ張ってくれる人はあんまり居なかった」


「こんなになっても今まで通り…気持ち悪がらずに優しくしてくれた…」


「(響は気持ち悪くなんかない!!)」


「唯斗に優しくされた時はたまにドキドキした。それは女の子の性質上仕方の無い事だって逃げてきた。でも違った」


「俺は唯斗の事を心から好きになってたんだ!」


「響…」


「気付いたのは最近だった。その時からずっと唯斗に会いたくて会いたくて仕方がなかった」


「唯斗と登校出来ない朝はつまんなかった。唯斗と下校出来ない夕方は寂しかった。…唯斗の居ない学校で過ごす1週間は地獄だったと思う」


「(学校内で会う少しの時間ですら大事だったのか…)」


「俺はっ…!?」


響が何かを言おうとしたその時、唯斗は響をまた抱き締めていた


「…唯斗?」


「…………」


「…。唯斗…」


「大好きだ…響…」


「俺も…」






2人は気が済むまで抱き合っていた

唯斗が気がつく頃には響は既に寝ていた


「…(やばい、柔らかくて良い香りがするもんだからまた5分以上抱き締めてたわ…)」


ずっと抱き締めている分には問題ない唯斗であったが、流石に長すぎたなと思い響を離そうとしたら寄りかかってきた


「(甘えん坊さんだなぁ)」


「んん…唯斗ぉ〜…すぅ」


「って寝てるし…(夢の中でも俺の事を?)」


唯斗はなんだか優しい気持ちになってきた

さっきまでの感情とは違う、安心した気持ちだ


「…仕方がない、家まで送ろう」


その時唯斗はある事に気付いた


「(…あ!まだチューしてない!)」


否、気付いてしまった


取り合えず唯斗は響を持ち上げ、ベンチに下ろした


「ふふ、これで目覚めたら結婚確定だな♪」


ベンチで横になった響の顔に唯斗の顔が近づいた


「なんか寝込みを襲ってるみたいで悪いけど、寝ちゃった罰と可愛い寝顔を見せてくれたお礼だよ」


お互いの口が近付き、そして唯斗は響とキスした


「(最高のファーストをありがとう、響…)」


唇が重なるだけの短いものだったが、唯斗はそれで満足したようだ


「…やっぱり起きないか」


唯斗はそのまま眠り姫をおんぶし、響の家まで送り届ける事にした





「では俺はこれで」


「はーい、また来てねぇ。響も喜ぶからぁ♪」


「じゃあな博樹に七海ちゃん」


「唯斗さーんじゃあね〜」


「ばいばい唯斗さん」



バタン


響を運んだ唯斗は10分くらい響の家に居た後、明治家に送り出された


「…お姉ちゃん、起きなかったね」


「でも、兄ちゃんはなんか凄く幸せそうに寝てたし…」


「そうねぇ。一体どんな新婚生活の夢を見てたのかしらねぇ…ふふふ♪」


そんな幸せそうな寝顔の響を起こす訳にも行かず、美代は響を部屋に運んだ



「…唯斗君と恋人になれたかしら?」


「…んぅ、唯斗ぉ…だいしゅき〜…」


質問に答える様な響の寝言に美代は思わずクスッと笑った


「愚問だったみたいねぇ…。それじゃ、おやすみ響。良い夢を見なさい…」




こうして性の変わった不思議な女の子の恋愛事情は1つの終点を迎えた




        〈完?〉




これはまだ(仮)最終回

クリスマスに文化祭

ライバル登場に卒業式


そして仮予定としては最終的にはマルチでいきたいと思ってます


そう、響さんの日常はまだまだズルズル引きずりながら続きますよ!



…そして新作の出る予感がします

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