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響さんの日常  作者: ZEXAS
彼氏彼女になるまで
24/91

一学期終了(後編)


「さて、今学期は終了な訳だが1年生諸君は…って校長も言ってたな」


「先生〜、俺はサッサと通信簿を貰って帰りてぇ〜」


「そうか、そんなに通信簿を渡されたいんだな藤崎?どんな成績か知らんぞ?」


「…寝てよっと…」


「…まぁいい、大掃除も無事に終わったし後は成績で泣いたり笑ったりして貰って帰ってもらうか!」


竹田先生ってなんか色々と凄いな


「竹田先生ってオープンなんですね」


俺は何となくそう言った


「まぁな、それにお前らには楽しい夏休みがあっても俺等教員には無いようなもんだからな」


「「…?」」


「大体想像はつくだろうが、先生達にはそれはもう面倒な書類さまがエベレストな訳だよ。お前らの宿題とは桁違いにな」


「じゃあ俺等は何山なんですか〜?」


「お前寝たんじゃ無かったっけ?」


「高橋よ、細かいことを気にしてるとハゲるぞ」



「…お前らはそうだな…オーストリアの平べったい火山ってとこだな」


そいつは大変だ!

俺は宿題の量を思い出して冷や汗を流した、と描写してもいいくらい焦った


だってこの学校って10教科以上あるのに各教科から必ず1つは宿題が出てるからな


数学は竹田先生が情けを掛けてくれてプリント十枚を五枚にしてくれたけどそれでも多い…


「ふむ、明治のその顔を見ると二学期が楽しみだな」


竹田先生…、それはどういう意味だよ…


「じゃあ宿題が終わらなかったら罰ゲームでもやらせようぜ!」


「藤崎てめぇ!なんて余計な事を!」


俺に続きクラスのみんなも…ってあれ?

誰一人として反論しないんだが…


「明治、この高校は仮にも超エリートしか行けないスーパースペシャルな学校なんだぞ?」


「あ…」


「そんなエリート高校に通うのはドイツもコイツも超エリート」


「う…」


「つまり提出物や宿題を出さないのは問題だ。だからどんな罰ゲームがあろうとみんな平気だ。明治(赤点王女)もそうだろう?」


「ぬぬぬ…」


忘れてたよ…

いくら終業式でみんな寝てた学校でもココは超エリート学校…


授業についていけないから寝てたせいで忘れてたよ…


「じゃあ響ちゃんが宿題を出さなかったら罰ゲームとしてチューして!」


「藤崎!?何を!?」


「あ、私もー!」


「俺も俺も!」


「ひゅもももも!」


ナンテコッタイ…

明治特大ホームラン!


明治選手走る走る!

3馬身後ろからは「腐ジサキ」、その後ろからは「ミシ魔」だぁぁぁぁ!!


逃げ切れるか明治!


おーっと!最後尾から土煙だぁぁぁぁ!

土煙の正体はオッズ二着の2.1倍「タ火ハ(たかはし)」!!

早い早い!

おおおお!他の猛者共を蹴散らし響に一直線だ!


このままホールインワンかぁぁぁぁぁぁ!?



(※響さんの脳は『絶対終わんねえ!無理!』と言う絶望感で大変な事になっています!)


「響ちゃん震えてる…。うわっ、なんか新しいなんかに目覚めそう…」


「わ、私も響ちゃんに色々命令したくなってきた…」


「俺的に明治は実は泣き虫な子って感じがするから辞めとけ…。簡単に壊れそうだ、心も体も…(真面目ぶってる俺も実は…)」



「ははは、明治よ、そこまで宿題が大変なら何とかしない事も無いぞ?」


「えっ?ホントですか先生っ!?」


「ああ、夏休み中でも学校に来れば親切な先生達がみーんな教えてくれるぞ」


「え、それって…」


答えを教えたりしてくれる訳じゃないとか?


いや、まさか…


「宿題が出来ないと言う事は勉強が出来ないと言う事だ。だから夏休みに学校に来た真面目クン達には一学期分の部分を全面的に教え直すぞ!凄いだろう」


「「おおおお!」」

「え〜っ!?」


「「…………。」」


「……あれ?」


「もしかして、異議あり!な人は俺だけ?」


「そのようだな、赤点王女の名は伊達ではなかった様だな…まったく」


くそぅ、普段のみんなを見てる限りじゃ全然普通な人達だったのに…

やっぱりみんな超真面目さんかよ…


「あのさ、みんな」


「「なんだい?可愛い可愛い赤点王女♪」」


「いや、何でもないよ…」


…宿題、どうすっかな…


なんかもう机にへな〜っとなるしかなかった


「か、可愛い…」


「可愛い!」「可愛い!」

「うひょぉぉぉぉお!!こりゃもう飯三杯ってレベルじゃねーぞ!」


「五杯!いや、六杯!」


「よっしゃあテメエら写メりまくれぇぇぇ!!」


「「うおぉぉ!」」


教室中に広がる写メ音

なんとなく俺は顔を撮られたくなかったから成す術も無く机に伏せてるしかなかった


「お前ら静かにしろ!!これから成績返すんだから!」


「「す、すんません…」」


表向きには天才溜まり、しかし中身は本物のアホ

こんなアホ共を簡単に黙らせるとは…

流石竹田先生だ!


「放課後になりゃ牛丼屋にでも行ってタダ飯喰ってりゃいいだろが」


「「…え?」」


ん?


「ふっ、知ってる奴も居るかも知れんが…、とある牛丼屋は米も福神漬けも食い放題だ」


「「おお!聞いたか藤崎副司令官!」」


「あぁ、聞いたぜ」


おいおい…折角静かになったのにまた…


「おめえら身支度をしたらとっとと○○屋に突っ込むぞ!」


「「うおおおお!」」


「(あー、俺の指導が間違ってたな…。すまん、明治に高橋並びに女性徒諸君…)」



頭の良いバカ達が静まり返るまでには10分は掛かった…

つーか1つの話題でよく10分も持つね…

ほとんど俺の話でしたよ…



・・・・・・・・・・・・



「落ち着いた処で成績を返すぞー」


俺の様なタイプの人間には恐怖の時間っつっても過言では無いな…


誰だって確実に1が付いてる通信簿なんて欲しい訳ないだろう?


俺はそんなもん要らねえ

そんなもんより彼女が欲しいよ…

はぁ、悲しいなぁ…悲しいなぁ…


「じゃあまずは…」



「そう言えば明治」


「なんだ高橋」


「今まであまり気にしなかったが、普通は席順って男女混合じゃないよな」


「確かそうだったな」


「この学校は女子の1番から最後まで、次に男子一番から最後までって順番だよな?」


「ああ」


急に何の話だろう


教室の出入口、つまり右側に女子が居て、最終的に窓際、つまり左側に男子が居ると言う席順な訳だよな


「まぁ色々あって男女別の席順な訳だ」


「そんで?」


そう言えば窓際って風があって良いな〜

男子で良かった〜


…ん?


「あっ…」


「じゃあ何で明治は男子側に居るんだ?」


「あぅ…」


そうだったよ…

一学期終了前にして高橋がとんでもない事を気付かせてくれたよ…


「まぁ俺の推論からするとだな」


やべっ…バレたか?


「次は…三島ぁ」


「はーい」



「明治は帰国子女だって話が広まっててな」


「帰国…子女?」


なんだっそら


「『響』って男にも使われる…と言うか男の方が多いんだよね。…まぁ明治にはちょっと分からないかも知れないけどさ(ロシアっ娘だし…)」


「うーん…まだ真相が掴めないや」


…俺って帰国子女なんだ

別に帰国も何も国を出てすら居ないのにな


「まぁ、編入学的な感じで明治は入学していて、間違えて男として登録された的な感じで今に至るんだと思うよ」


「男として…ねぇ」


あながち間違ってはないんだけどね…

きっと3月末のこの学校もちょっとした騒ぎだっただろう…


だって男だと思ってた生徒が実は女だったとか…

少しは騒がれてもおかしくないな


「で、明治はやっぱり帰国子女なんだろ?」


「ん?あ、ああ」


ここで違うなんて言ったら今までの色んな矛盾が大変な感じになるから帰国子女というよく分からないヤツになっておいた


「やっぱり帰国子女だったか…」


何の事やらさっぱりだけどなぁ…



それから皆の通信簿は返されていった


「次は藤崎」


「へーい」


「俺はお前に『このバカタレがぁぁ!』と言ってやりたかった」


まぁアホだしな


「へぇ」


「だがお前はアホの癖して成績はちゃっかり良いもんだから叱るに叱れない!どうしてくれるんだ!(我ながら無茶苦茶言ってるなぁ)」


「ウェヒヒ、そりゃもう超超エリートですもの(笑)」


「うむむ…お前が礼儀正しい良い子だったらな、といつも思うよ…行ってよし」


「ふふふ、努力しま〜っす(笑)」


「はぁ…」


なんつーか…、なんつーかだな…



少し経って



「次は高橋」


「はいっす」


もう高橋か…

そして次は俺…

はぁ、ため息しか出ないよ


「藤崎と良くつるんでる割にはアホが移ってなくて俺は安心したぞ」


「まさか、アイツのアホはアホの中でも最上級のアホだから移りませんよ(笑)」


「それもそうだな(笑)」


「「はははははは」」


た、確かにアイツのアホは移る訳ないわな!あはは


「何て失礼な!ねぇ響ちゃん…って何で堪えてるの?」


「あはははは!」


「ひ、響ちゃぁん…」



少しの間の後


「はい、次は明治ね」


「あ…」


そうだったよ

笑ってられなかったよ…


うわぁぁぁ…

この息の詰まる何かヤバい何か…


「明治」


「た、高橋…」


「覚悟は決めたか?」


もうダメだ、おしまいだ


「逝ってこい」


高橋に背を押され、とぼとぼ歩き始めた


そして遂に教壇へ着いてしまった

…着いてしまったのだ



「さあて明治」


「………」


「嘆く前にコレを見ろ」


「え?」


先生の出した通信簿を見て俺は驚いた


「3…3333サンさんSUN…オール3!?」


どう言う事だってばよ…


「赤点の申し子でありながら授業中も寝てたりポケーッとしてたりと悪行の限りを尽くしてた筈なんだかなぁ…俺も詳細は知らん」


「まぁオール1じゃなくて良かったな」


…何だか分からんが俺は嬉しさで色んなものが込み上げてきていた


「やったぁぁぁぁぁ!!」


大きくて可愛い声を上げながら俺は万歳をしていた


「良かったな明治」


「はい!ありがとう先生!」


「「(て言うか、オール3ってそこまで凄くない様な…)」」


「ばんざーい!ばんざーい!」


「「(でも可愛いから成績とかどうでも良いや)」」


「「ばんざーい!ばんざーい!」」


「!?」



途端にみんなが俺の所へ行き、胴上げを始めてきた


既に机はどけられていた


「あわわわ、あぶ、危ない!」


「「どっせーい!どっせーい!」」


天井がっ!天井にっ!


「わぁぁぁぁ!」


何故かみんなは体勢を崩し、ばったばったと倒れていった


そして宙に投げ出されていた響の体は下降を始め


「あぐっ!」


藤崎の体へダイブ


「あたたたた…すまん、藤崎…大丈夫か?」


「ウン、ダイジョウブ(うほぉ!響ちゃんの身体がすぐそこに!…超良いお匂いだぁぁ!)」


「…重症だな」



その時誰も気付かなかった


竹田先生がカメラを握っている事に…

きっとこのシーンはアルバムにでも載せられるのだろう……




・・・・・・・・・・・・



「響のクラスはいつも賑やかだな」


「…何で知ってんの?」


今俺達…俺と唯斗は帰りの電車に揺られながら居た


「いやぁ、お前らのクラスはいつも騒がしいって他のクラスの奴が言ってたからな」


「否定はしねえよ…。それよりさ、コレを見てくれ唯斗」


「お?」


俺はカバンの中から通信簿を取りだし唯斗に見せた


「こいつをどう思う?」


「………」


「………」


「いやぁ、響はちっさいなぁ〜」


「……ちね」


「どれどれ……おお、オール3か!」


「どうだどうだ!赤点取りまくってたとは思えないだろう!」


ふふふ、唯斗も少しは諦めないと言う事を覚えるといい!



「ところで俺の(通信簿)を見てくれ」


「………」


べしっ


「痛気持ち良い♪」


なんとオール5だった…

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