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空に歌えば  作者: カツオ
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第五話:大沢の発表

 稲垣が真剣に自分の思いを話した翌日、黒崎は休んだ。

 同時に大沢の元気も無くなっていた。

 はぁとため息をついては机に俯く。

 隣にいる稲垣はそんな大沢を見て何があったんだ?と思っている。

 放課後、何もしないで帰ってきた大沢は部屋に入ってベッドに寝ころんだ。

「まさか、黒崎がな…」

 溜め息に交じりながら大沢は呟く。すると大沢のケータイの着信音が鳴った。

「誰だ…稲垣…か…」

 大沢は通話ボタンを押した。

「もしもし…」

『おう、大沢か。なあお前、最近どうしたんだよ』

「何が?」

『何が?じゃねえよ!最近元気ねえじゃん!!いつも溜め息ついてよ』

「ああ、これか」

『そうだよ』

「…」

『おい!』

「稲垣…」

『どうしたんだよ』

「今、暇か?」

 

「お前がファミレス誘うなんて久し振りだな」

 大沢は稲垣をファミレスに誘っていた。

稲垣は地鶏グリルを食べながら大沢に話しかけていた。

「ああ…」

「…、やっぱり元気ねえよ。大沢」

「別に元気だよ」

「コーヒーだけ飲んで平気かよ。金ないのか?」

「いや…」

「そうか!!」

 大沢はそれから黙って地鶏グリルを食べている稲垣を眺めている。

「なんだよ…気持ち悪いな」

 稲垣はドン引き。すると、大沢は俯いていた。

「なあ、稲垣、俺が元気を無くした理由、教えようか」

 稲垣が地鶏グリルを切るために必死に活動していたフォークとナイフを休ませる。

「お、おう」

「実は…」

「ゴクン(息を飲み込む音)」

「黒崎、引っ越すらしいんだ」

 その時、稲垣の頭にホワイトホールみたいに忘れられていた記憶がパァッと吐き出されていく。

 黒崎が女子と話している時に大沢と話した陰口。

バックレた集会。

黒崎の楽しみを全て裏切るような出張。そして、黒崎の悲しみのこもった笑顔。

「俺が黒崎に陰口したから、俺が黒崎にあんな事言うから、黒崎は俺らとの思い出を作るのを止めたんだな…」

「違うよ」

 大沢は否定してコーヒーをすすった。

「じゃあ何だよ!!」

 稲垣は立ち上がって叫び、大沢の胸ぐらを掴んだ。

 地鶏グリルとナイフが床に落ちる。

「何で黒崎は学校に来ないんだよ!!」

 周りからけんかか?とか外でやれよなとかそれぞれの意見が飛び交う。

「何で俺だけに言うんだよ!!おい、答えろよ!!おい!!」

 稲垣は大沢の胸ぐらを掴みながら大沢を揺らしていた。

「黒崎が、電話で誰にも言うなって言ったんだ…」

「えっ…?」

 稲垣は大沢の胸ぐらを離した。

大沢はストンと力が抜けたように椅子に座り、稲垣も座った。

「じゃあ、何で俺だけに言うんだよ?」

「お前なら分かると思って…黒崎の気持ち」

「…そうか。…出ようぜ」

 稲垣と大沢はファミレスを出た。

会計後に店員に『次からは他でやってください』と怒られてしまった。

 稲垣と大沢は歩いて帰った。

夕焼けが山に隠れながら二人を眺めるように半分だけ顔を出している。

「悪いな、胸ぐら掴んじゃって…」

「別に…」

「…大塚と屋良にはいつ言うんだよ?」

「学校で分かるだろ」

「…そうか」

 二人は家路へと向かった。

 夕焼けは完全に隠れ、夜を迎えるのを待っていた。


 分からない。全然分からない。

 稲垣は黒崎の気持ちが分からなかった。

 その時、稲垣は黒崎を見つける。


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