第三話:ピリオドな妖精
ついに朝になった。
稲垣はいつもより早く起きた。てか寝なかった。緊張しすぎて寝れなかった。
だが、稲垣は夜中に変な事件が起きた。
それは、稲垣がメールの内容を考えている時に、シャラシャラとまるで複数の鈴を鳴らしている音がしている。
その音で稲垣が癒されている時に赤とピンクと水色の光の玉がたくさん出てきてグルグルと円を囲んだ。
稲垣はメールの内容を考えている時に寝ちゃったのかぁと思っていた。
すると、光の玉が囲んだ円の中から羽が生えていて、黄緑色のヒラヒラした服を着た少女が現れた。
稲垣は唖然としながらこの状況をゆっくり把握していた。
「こんにちは♪」
その少女はフワフワ飛びながら間違った挨拶をした。
妖精なのか?稲垣はこの状況を認めていいのか分からないまま頭を下げた。
「私はピリオドな妖精」
「ピリオドな…妖精…」
稲垣はこの妖精のネーミングに疑問を持ち始めた。
「私は、選ばれた人にしか見えない。そう、あなたは選ばれたの!」
「選ばれたの?俺が?」
妖精は笑顔で何回も頷いた。
稲垣はバカらしくなってきた。
「はあ?んなもん選ばれなくていいよ。んなら懸賞みたいなのに選ばれてほしーよ」
「んざけんな、うりゃー」
妖精はラリアットした。何故かそれがクリーンヒットした。
「妖精ってプロレスラーなんだ…」
稲垣は倒れた。
その頃、妹の萌が今までの様子をドアの隙間から見ていた。
「ねえ、お母さん。兄貴寝ぼけてるよ…」
「ええ、どうしたの?」
稲垣の母親も来た。
「なんかピリオドの妖精とか言って、一人で倒れてる。キモいよ〜、兄貴オタクになったの?」
「お父さんがあんな奴らとか言ったからかな」
萌は有り得ない顔をした。
「ひでえ、ひでえ。もし屋良様とツルむなって言われたらうちもそうする」
「……様って」
その後、稲垣が起き上がると朝になっていて、妖精もいなかった。
俺…夢でも見てたのかな。
稲垣がそう思いながら起きると、布団の上に羽が落ちていた。
拾ってみると、普通の鳥よりは小さすぎる。まるで妖精のような感じだ。
稲垣ははっとした。
「これは、夢じゃない」
稲垣は学校の準備をした。
「いってくる」
「誠、朝ご飯は」
「いらない」
そう言って家を出ようとした時。
「兄貴」
稲垣は萌に呼ばれた。
「なんだよ萌。早くしてくれい」
「実はさ、兄貴昨日妖精とか言いながら一人で倒れてるのをドアの隙間から見てたんだ。超キモかったよ」
「やっぱり、夢じゃないんだ」
稲垣が呟くと、『えっ?』と萌の返事が返ってきた。
「いやなんでもない。いってくる」
稲垣はドアを開けて颯爽に出ていった。
あの妖精、何なんだ?急に現れやがって…。
「俺は妖精が来て欲しいなんてオタクじゃねえよ」
稲垣は一人で叫び声を挙げていた。
「何一人で叫んでんだよ俺、バカみてえ」
稲垣が我に戻って独り言を呟いた。
「ほんと、バカみてえ」
は?と思って稲垣が後ろを向くと、大塚が笑いながら歩いてきた。
「なんだ大塚か…っておめーにバカって言われたくねえよ!!」
「まあまあ、…そっーだ。稲垣、俺今日何とか追試合格したから今日は来れるぜぃ」
「マジでおめでとう」
稲垣はガッツポーズをした。
こいつ、こんなに俺の事を心配していたのか…。
大塚はそんな稲垣を見ながら思って涙がポロリと出てきた。
「って何で泣いてんだよ」
「稲垣…おまえ…おまえ」
「キモいよ、ふぅー」
「大塚出れるだとー!!」
学ランの下にキラキラ光ったシャツを着ている黒崎が笑顔で怒鳴った。
「黒崎、このシャツは…?」
大沢が指を指しながら言った。
「買ってもらったんだよぉい」
「やっぱり、ホストだな」
大沢が稲垣に耳打ちをした。
「…」
午後9時になった。
「集まったかーい、不良諸君」
黒崎が買ってもらった黒光りのバイクをふかしながら叫んでいる。
「稲垣がいないけど…」
大沢が言うと、黒崎はサングラスをずらして『ぬあに?』とキレ始めた。
一方、稲垣はメールを打ち終わって一呼吸をしていた。
「うし、そー、送信!!」
稲垣は送信ボタンを押した。
黒崎達にメールが届いた。
「あっ、稲垣からメールだ」
大沢がケータイを開いた。
「あっ、俺もだ」
「オレも」
大塚と屋良もケータイを開いた。
「あいつぅ、また下痢で来れないのかぁ?」
黒崎がはははと笑いながらケータイを開いた。
「あいつ下痢で行けなかった事あったっけ?」
屋良が聞くと、黒崎がキレながら『ねえよ!!』と叫んだ。
「…」
「はぁ?旅に出るって」
「家出か?ついに家出か?」
「あいつ、家にいるな」
黒崎はケータイをポケットに入れた。
「何故に?」
大塚が聞くと、黒崎は笑顔なのか分からない顔になっていた。
「あいつな、小学生の時に授業が始まる前に机に旅に出るって置き手紙を置いて帰った事があったからぜってー家だ」
「へえ」
黒崎はバイクのアクセルを回した。ブォオオとバイクが鳴く。
「おめえら行くぞ!!」
「お、おう」
四台のバイクが稲垣の家へと向かった。
一方、稲垣は落ち着いてネットサーフィンをしていた。
不良からボランティアへと移動した青年の物語を見ていた。
「ふへー、いい話だなあ。…みんな稲垣ぃって言ってくれたかなあ」
稲垣は一人でシラケた。
「もいいや、寝よう」
稲垣はベッドに潜った。
そして、不安な結果を考えていた。
不安な結果。その1。
黒崎『…んにゃろー、俺の許可無しで旅なんか出やがって…(何故あんたの許可必要?)』
大沢『どうする?黒崎』
黒崎『もちろん、リンチタイム』
誰か『でも4人じゃなあ』
黒崎『ふふふ、俺の部下は8000人って知ってた?』
誰か『マジでー、俺らのほかにこんなにいやがって』
黒崎『違う、おまえらも(にっこり)』
誰か『ひい』
黒崎『行こうぜ』
鳴り止まないバイクのふかし音。
その2は無し。残念。
稲垣は急に緊張してきた。
すると、また光の玉が円を囲んだ。
「またかよ…」
稲垣はちょっとヘコんだ。
「そう、また私」
昨日の夜中、見事にラリアットをクリーンヒットしたピリオドな妖精だ。
「なんだよ、またラリアットしてきたんかよ」
「違うの、緊張する度に現れちゃうの私」
「ふーん、はっ!?」
稲垣が怒鳴った。それの反動でピリオドな妖精がちょっと飛んだ。
「なあもしやテスト直前に出ないよなぁ?」
「緊張、しなきゃあねえ」
「ふざけんなよ」
稲垣は崩れた。テスト直前に現れたらクラス全員に変人のオタクだと思われるからだ。
すると、何台ものバイクのふかし音が聞こえた。
「なんだ、この音…バイク?」
部屋を見渡すと妖精がいない。
「くそ、いい所でいなくなりやがって…」
稲垣は普通のバイク小僧かと思ったが、音からしてこっちに近づいてくる事が分かった。
「やべえよ、不安な結果。その1か?」
だんだんバイクのふかし音が出てくる。
稲垣、最大のピンチ!!
バイクのふかし音…。これは誰のものなんだ?
稲垣は震えている。
さらば、俺の人生よ…。




