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空に歌えば  作者: カツオ
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第二十九話:青春オフコース不景気を駆け抜けて

 日曜日なのに人っ子一人いないまるで薬局にあるぞうさんの乗り物みたいな公園のブランコで、一人のサラリーマンがゆっくりブランコを漕いでいる。錆びているのか動くたびにキィーキィー鳴り響いている。

 私はなぜこんな所にいるんだ…?何故休日出勤ってウソついてこんなところにいるんだ。休日出勤なんて言わないで家にいればよかった。

  サラリーマンは今でも思い出す。誰もいない会議室の中で部長に告げられたあの言葉。その直後、多くの金を渡され二度と会社に来れなくなった。

 そう、彼はクビになったのだ。いわゆる仮ニート。彼は未だに仕事が無い。

 サラリーマンは思う。自分がよければそれでいいのか?人は他人の人生まで作れないっていうのか。俺の道をゴミだらけにしたんだ。あの稲垣という社長は…。


 

「辞めさせたんですか。その人を」

 俺のおかんがおとんのスーツをタンスに入れている。サザエさんでよくあるシーンだ。

「ああ。そろそろ私の会社も不景気でね…。あの人はクビにさせたくなかったな…」

 ならクビにするなよ。でも不景気かあ。俺んちの会社もとうとうこんな時期が来たのか。俺はそんな事を階段で思いながら、二人の話を立ち聞きする。これちょー日課。


「不景気ねぇ…俺んち塾の講師だからアブねぇかも」

 ライブハウスの中で俺がそんな話をしたら大塚が不景気に怯えた。

「おめえの父ちゃん塾長だろ」

 屋良がツッコむ。

「むしろ塾潰しておめえ専属の塾の講師になれよ」

 俺がふざけながら言う。

「てめぇら俺の頭より家の家計だろ」

「じゃあ大塚がおとんの塾に行けばいいんだよ」

 そんな俺たちの会話の中にちょっと聞こえる。微妙な何かを弾く音。それは無視して会話に移ろう。

「変わんねえよ」

「ははははは」

「いいから練習しろ!!くそ共が」

 福元ちゃんが一人で寂しくチェーニング。その背中は福元の全ての人生を未来予想図にしたみたいだ。

 きっと、クビになった人の背中も、福元みたいに寂しいのだろう。



「最近お父さんの背中、寂しそうじゃない?」

 髪は金髪、家の中なのに程良くおしゃれをして見るからに女子高生って感じの娘が母親に父親の事について話す。

「うん、それは私にも感じる」

 母親も父親の寂しそうな背中を感じ取っていたそうだ。これってディスティニー?

「お父さん、仕事で何かあったのかな?」

「さぁ…、給料は変わらないのにね」

「でもさ、最近は給与明細なのに現金で渡してこない?」

 そりゃクビになったからないだろう。

「さあ、そんな時代もあったんじゃないの」

 どんな時代だよ。(笑)

「最近さ、けっこう長い間働いてた人でも平気でクビにするんだよね。まさかお父さんも…」

「そんな訳ないでしょ」

 母親はテレビをピッと付けた。

 子供は、時により人生のパートナーよりも親をよく見るのだ。

 

 家に帰ってみると、見慣れない靴があった。俺は親父がまた新しい靴でも買ったのかと思ったが、所々に土の痕跡があるから、客が来てるのだと感じた。

 俺は廊下を歩いて二階に上がろうとした時に運がいいのか悪いのかリビングのドアに隙間があって、そこから何回も土下座をしているサラリーマンの姿が見えた。

 いい大人がだせぇなぁなんて思いながら、俺は二階へとあがった。

 

 愉快で楽しい学園生活。誰も入らない特別音楽室の中で美女キラー屋良が俺たちに恋の相談を持ってきた。もちろんターゲットは美女。ターゲットは硲麻里。金髪で私服が超おしゃれで可愛い。狙っている人も多いため、彼氏がいるという噂もある。

「彼氏がいるという噂だぜ。平気なのか?」

「大丈夫さ」

 屋良は立ち上がった。

「麻里ちゃんには彼氏はいない。俺のためにとっといているはずさ」

 彼氏っていうVIP席を。

 池永との恋、おおめぐさんとの恋に破れたため、屋良は可愛ければいいという面食いのいいモデルと変身を遂げた。屋良は改造人間面食いダーになった。

「とゆうわけで告白しゅる」

 屋良はそのままゆっくりと特別音楽室から去った。

 俺はそんな訳分からんようになった屋良の背中を見て思った。俺は青春を無駄遣いしないぞ。1日一回は充電しよう。と決めた。

 充電し終わったのかスッキリした顔の屋良が戻ってきた。そのスッキリした顔はそのまんま笑顔って感じだった。

「どうしたんだ。こんな顔して」

 俺がそう言って屋良の笑顔の真似をする。二人がめちゃくちゃ笑っていたから似てたんだろう。

「はははは!!超似てる」

「いや俺の笑顔のものまねの上手い下手じゃねえよ」

 そう言うと屋良はまた笑顔になって両手を挙げた。それに俺はびっくりする。

「俺の青春オフコース!!」

 なんだよ俺の青春もちろんって。屋良は両手を挙げたままぐるぐる回ったからウザかった。

「ありがとう、俺の青春、ありがとう」

 標語ですか。字余りがあるし小学生みたいな標語だな。それなら赤信号、みんなで渡れば、怖くないの方がうまいよ。

「俺、彼女ができましつぁ」

 えーーー!!

 出来ましたか、ついに、おめでとうですね。

「なんか俺の告白をした後いきなり泣き始めてマジ嬉しいって言っていいよって言った直後、俺の唇を奪いました」

 具体的な報告、ありがとう。結果、硲麻里は大胆アンド面食いが好きだと分かりました。硲ファイト。


 美女キラー屋良に彼女が出来ましたね、おめでとうですね。さて、次の話ですが、屋良の恋人とリストラおじさんの共通点を見てください。これが最大のヒントとなりますね。

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