第二十六話:再会
数日前に俺たちが初ライブをしたライブハウス『ゴイステさんいらっしゃい』。
そこにいつも練習に来てるガールズバンドがいた。
その名もORANGE PUNCH。四人組のガールズバンドだ。その中のボーカル、池永凛は最近やる気を見せているのは訳があった。
絶対あの人たちに会いたい。会って話がしたい。そうするには頑張って有名にならなきゃ。
池永は本気で唄ってた。ガールズバンドの仲間達はそんな池永を見下していた。
「ねえ凛、ちょっと話があるんだけど…」
演奏が終わった所でガールズバンドのギターが凛に話かけた。
「いいよ、何?」
池永は少しでもみんなに役立つように振る舞う。
「そろそろさ」
「うん」
「解散しない?」
「えっ」
池永はメンバーの意外な言葉に驚いた。
「なんで!?みんな頑張ってたじゃん」
池永は反抗した。
「やっぱりガールズバンドなんて無理なんだよ」
ドラムがやりきれない感じで池永に訴える。
「そんな…」
池永はあまりに自分勝手な自分に腹が立ってそのまましゃがんだ。みんなはこんなに我慢してたんだって事に気が付かなかったからだ。
「いいよ…。したければして」
「…分かった。…今までありがとう。じゃあね」
三人はライブハウスからゆっくり出ていった。
残された池永はしゃがんだまま涙を流して床に顔を伏せた。
池永のケータイには『バンド大会参加を受け付けました』というメールが送られてきた。
「どうしよう、私、メンバーに捨てられちゃった。こんな時あなたはどうするんだろうね。ソング・オブ・スカイさん」
ライブハウスで池永の泣き声が響き続けた。
一方、『長橋ライブハウス』にはいつものように俺たち、ソング 一方、『長橋ライブハウス』にはいつものように俺たち、ソング・オブ・スカイの練習をしていた。
「屋良はなんで端っこで体育座りしてるんだ?」
大沢がさっきまで屋良と一緒にゲーセンにいた俺に聞く。
「俺たちがギタドラしてたらそこに女子高生が群がって大塚だけ逆ナンされたんだ」
「そんなんでへこむなよ」
まったくその通りだ。
「ただいまぁ!!」
大塚がニヤニヤしながら帰ってきた。
「いやぁ、ふふふ、今日だけで三十人もアド帳が増えたぜぃ」
バンドのメンバーから白い目の集中攻撃を受ける大塚。そして涙ぐむ。
「いいじゃんかぁあ…。俺だって欲しいのいっぱいアドレス欲しいの!!」
へぇ…。
とゆうわけで涙ぐんでいる大塚を福元がめんどくさそうになだめて俺たちはお世話になったからライブハウス『ゴイステさんいらっしゃい』の店長に顔を出しに行った。
「それにしても先日のライブハウスにいた女の子たちみんな可愛かったなぁ。今度会ったらアドGETだぜ!!」
屋良がはははと笑いながら言った。
そんな見事に会えねえよ。世界は見事に広いんだぜ。
福元がカラカラって音が鳴る扉を開ける。
「こんにちはぁ」
福元が言ったとたん。屋良の目がキラリと光った。
俺がその視線を追ってみると涙ぐみながら店長に話をしてるガールズバンドのボーカルを見事に発見。世界、てか板橋区は狭いんだね。
女になると黄金の脚へと進化する男、屋良が一瞬でボーカルに近づく。
「なんで泣いてるの?俺でよかったら何でも聞くよ。だからメルアド教えて」
屋良がケータイを取り出す。泣いてるのにケータイはないでしょう。
「…もしかしたらベースの屋良さん?」
「え、ええ」
すると笑顔で池永が立ち上がった。
「ボーカルの福元さんに、ドラムの大塚さん、ギターの稲垣さんに、キーボードの大沢さん」
次々と指を指して俺らの名前と役割を見事に当てる。この女、もしかして……。
「ソング・オブ・スカイ!!私、超ファンなんです」
超嬉しそうな表情で俺たちを見る。なんかこいつカワイイぞ。
「キターーー(・∀・)ーーー!!!!」
屋良が大声で叫び、ポケットからさっとメモを出してレジの台に置く。
「ここにメルアドアーンド名前を」
「いいょ♪」
池永はスイスイとメモに書き込む。
「名前は池永凛。カワイイ名前ぇ」
屋良がデレデレしながら誉めた。
「ありがと☆」
池永はめちゃくちゃ可愛い笑顔で屋良を見つめる。その笑顔に屋良はノックダウンした。
「あちゃー。屋良兄さん池永にメロメロだってぜござるよ」
大沢が訳分からない口癖でみんなに伝える。お前何人だよ。
「そうだったぜんですね。なんか頭っぽい所で湯気がでちゃったらいいってっちゃってね」
大沢の訳分からない口癖に負けないように訳分からない口癖で大塚が応える。幼稚園から国語を勉強しなおせ。
「そういえばさぁ、なんで池永くんは俺たちに会いたかったんだい」
福元が腕を組みながら池永に問う。
「そんなぁああん、俺らのふぁんだからに決まってるだろうがぁ!!!!!」
屋良が目を充血させながら福元を怒鳴る。うざいと判断した俺たちは、地獄のキックパーティーこと大塚にケツキックをさせた。屋良は『ぬはぁっ!!』と呻きながら倒れた。
屋良を道路のベッドで寝させて、俺たちはライブハウスへと入った。
「そうなのかぁ。んでバンド大会に出られないからどうしようという事ね」
福元が言うと、池永はコクリと頷いた。
「別にキャンセル料とかも掛からないから事情があって出られなくなったって言えばよくね?」
俺がそう言ったら池永の目からジワジワと涙が溢れてきたから俺は焦って『冗談だよ』と何回も言った。生まれて初めてだ。俺が女を泣かすなんて。
「女を泣かすなんて駄目だよぅ。稲垣くぅん」
屋良が何故か傷だらけになってライブハウスに戻ってきた。
「なんで傷だらけなんだよ」
「いや気付いたらさ…」
絶対リンチに会ったしかないだろ。
「私は私なりのバンドの鼓動を他の人たちに気付いて欲しくてバンド大会に参加したのにこうなるなんて…」
そういってまた池永が泣く。女ってほんとに涙もろいなっ!!(死ね)ついでに福元がもらい泣きする。目指せ一青窈。みんなほんとに涙もろいなっ!!(死ね)
「バンドの鼓動ね…」
福元が腕組みをして何かを考える。
「ひらめ!!」
福元が突然そう叫んだからビビっている。ひらめが何だよ。
「ひらめいたんだよ。耳を貸しな」
と言って俺たちを集める。
なんか大半がごにょごにょしか言ってなかったから何を話していたか全然分からなかったが、みんなのリアクションでだいたいの流れを掴んだ。って他のみんなは話が分かったのかよ。
「とゆうわけだ。池永凛。お前のバンドの鼓動を、俺たちに貸してくれ」
池永は嬉しそうに頷いた。
バンド大会まであと12日。
福元の考えた作戦とは…。
そのヒントを紹介しましょうじゃないか。
・ガールズバンド限定の大会
・バンドの鼓動を貸す?
のみだ。みんなで考えてくれ。俺ら、人間を捨てます。