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空に歌えば  作者: カツオ
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第二十五話:一人だけのライブ?

 初ライブの日、俺らはなぜか大塚邸に泊まった。それにしても大塚邸はすごいな。泊まりに来た時大塚の部屋の天井からウィーンって屋根付きベットが出てきたからね。

 それにしてもライブをやるってどんな気分なんだろう。

俺が前ライブを見た時は凄かった。

ボーカルも、ギターも、ベースも、ドラムも暴れに暴れまくってた。ライブをやったのは冬の夜中だったけどみんな半袖。なのにみんな唇をブルブル震えてないでみんな汗をかいていた。おまけに暴れてたのはバンドのメンバーだけじゃない。観客も暴れてた。ていうかみんなバンドのロックに共存ユニゾンしていた。俺もユニゾンしたかったがそんな余裕もなかった。

 そんなライブを参加したからにはこっちも暴れなきゃ意味ないし、客も埋まるぐらい来なきゃ意味がねぇ。

 『ゴイステさんいらっしゃい』の店長はチラシは配ってやるよと言っていたから客は来るだろうな。

 そんなこんなで俺らは生まれて初めての屋根付きベットで眠りについた。

 朝になった。

「んー…。なんてライブの日の朝はこんなにすがすがしいのだろう」

 屋良が大塚の部屋で叫ぶ。そんなの知るか。

「お前ライブの経験あるんかよ」

 大沢がすかさず突っ込む。

 そんななか福元はというと、屋根が邪魔だといって屋根を壊したから福元のベットの周りはすごい事になっている。

「のふぁわあ!!俺んちの屋根付きベットを…高いんだぞ!!」

 大塚が泣きそうになりながら叫ぶ。なんてみじめなんだろう。

「うっせぇよ!!こんな物買う金あるならドラムを買うかプレハブ建てろよこの野郎!!」

「ドラムはもうあるよ!!プレハブはないけどねぇえ!!」

 子供以下の喧嘩を見下しているともうライブ開始まであと二時間となった。

「ガキ以下の喧嘩はもう辞めろ!!三十分前にはリハーサルがやるんだぞ!!」

「レスポール!?」

 レスポールとは俺らの間では『マジですか?!』って時に使う。何故なのかは未だ不明。

 とにかくリハーサルに間に合わないのはバンドマンとしては凄い失礼な事なんでライブハウスへと急いだ。

「そういえば他のバンドは何が出るん?」

 板橋区へと向かう電車の中で俺は福元に聞いた。

「よくわからないけど俺たちよりも有名なバンドが出るのは間違いないよ」


 そりゃそうだよな。

 やっとライブハウスについた。

 その後、俺たちはライブハウスの店長からとんでもない事を言われてしまうのだった。

「えっ!!他のバンドはやらない!?」

「今日はやたらにライブハウスの練習の予約が多くてね。ライブをしてもそんなに時間が取れないからね。ごめんね」

 ライブハウスの店長は福元の肩を2・3回ポンポンと叩いてどこかへと消えた。

 そんなん客来ねえに決まってるだろ!!

「まあしょうがねえとりあえず『恋物語』の歌詞を変えるか」

 福元は俺たちの前で独り言を言ってライブハウスにあるテーブルに向かって何かを書き始めた。俺らはそんな福元をじっと見つめる。

「お前らもやるんだよ」

 キャハ。独り言じゃないのね。

 そして生まれて初めての(ライブも初めてだけど)ライブハウス独占ライブを始めた。

 客は…おおめぐさん一人です。なんか椅子持参して座ってます。

「一人だけかよ…」

 なんか悲しくなる俺ら。おおめぐさんはもう手拍子してます早いすよ。

 すると福元はすぐ息を吸った。これは俺ら流曲の始め方。さあ。ライブのはじまりだ。

 曲は勿論ラブソング『恋物語』。

 最初は静かだった音楽がいきなり激しくなったがラブソングだという事も踏まえてちょっとギターは静かだ。

 最初は手拍子してたおおめぐさんは急に手拍子を辞めておとなしくなった。たぶん福元との思い出を振り返ってるんだろう。

「どう思う?このバンド」

 おおめぐさんの他に影に隠れて聞いていたガールズバンドのメンバーの一人がソング・オブ・スカイを見てメンバーに聞く。

「はっきり言って微妙じゃない?客一人だし」

 メンバーの一人が福元たちをコケにして言う。

「でも…泣いてるよ。あの人」

 ライブを真剣に見てるメンバーの一人がおおめぐさんをみてそう言った。

「うそ…」

 見ての通りおおめぐさんはボロボロ涙を流していた。

 福元はそんなおおめぐさんをチラチラ見ながら歌っている。泣いてる事に気付いているんだろう。

 最後は大塚が静かにハミングをして終わらせた。

 おおめぐさんは盛大な拍手をしたが、ガールズバンドは拍手をしない。気付かれたくないんだろう。

「ありがとうございます。どうもソング・オブ・スカイのボーカルの福元です。いや恥ずかしい事にね、まだこの曲しか出来てないんすよ。すいませんね。まったく」

 福元は頭をかきながら頭を下げる。

「ねぇ…。教えて」

 ふと小さな声でおおめぐさんが言った。

「えっ?」

「告白の返事、教えて」

 まだ好きだったのかい。

 福元はしばらく無口だったがその内笑顔になった。

「Why Not?」

 これは英語で『もちろんだよ』って意味です。

 その意味を知ったのかおおめぐさんはやったぁと叫んで椅子を蹴った。激しいんですね。

 俺たちも拍手で祝う。すると、奥の方から小さな拍手が…。俺たちがよく見ると、ガールズバンドの一人が拍手をしていた。

「あっ、一人じゃなかった」

 俺は呟いた。


今回発表した『恋物語』の歌詞を載せます。

  『恋物語』

作詞:福元健吾

作曲:福元健吾

 

寂しく過ごしてた日曜日の午後に

僕は部屋の中君の事思ってた

広いと思ってた僕の愛用のベッド

君が入ればちょうどいいサイズさ

消えそうなくらい幸せだった

地球温暖化ぐらい顔が燃えちゃった

 

僕の想いと君の想いが重なれば

とてもとても幸せでした

知らない時の君の生活が気になった

僕の手がちょっと冷たくて

 

(サビ)

ポケットの中の初恋の思い出

赤くなった白い息がモヤモヤと

恋人たちがだんだんと

雪が溶けそうなくらい熱くなった

君の笑顔が消えちゃった

僕の笑顔がずっと見れなかった

サライの空に桜の花が

僕の右手に君の左手がHumー

 

桜が枯れた そして凍った

僕の右手に冬の氷風がHumー

 

(サビ繰り返し)

 

未来に向かった君と僕の物語

君と僕の物語Humー

 

次回新編突入!!


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