第二十四話:ペリーらしいバンド
隣の区までわざわざ自家用ヘリで来た俺たちは、ヘリに別れを告げ板橋区にあるライブハウスへと向かった。
俺たちがやってきたのはライブハウス『ゴイステさんいらっしゃい』。この店長、ゴイステが心から好きなのだと思う。
話にそれます。
読者に分かるかどうか知らないが、ゴイステとは略称で、実際はGOING STEADYと言う。
1999年にファーストアルバム、ファーストシングルを発売してから徐々に人気度が高くなっていき、2003年には、シングル『青春時代』が初登場04位を記録。
『青春時代』発売後、解散するが、解散以降でも人気度が変わってない。現在はボーカルの峯田、ベースの安孫子、ドラムの村井、そして、浅井に変わってギターがチンに変わり銀杏BOYZが結成。2005年の2タイトルのアルバムが初登場04位と05位を記録。ここまで詳しいのも俺がゴイステの大ファンであるからだろう。『銀河鉄道の夜』は鳥肌もんだったな。なんで解散したんだろう。
とりあえず俺たちはライブハウス『ゴイステさんいらっしゃい』に入った。
「いらっしゃい!!」
店長が軽快にあいさつをする。すごい。なんだこのライブハウス。ゴイステしかないじゃんか。ゴイステのポスターやサインは当たり前。今は入手不可能なデモテープや浅井のサインまである。すげーな。
「もしや、福元くんかい。懐かしいなぁ。大きくなったなぁ…」
店長がまるで親戚のおじさんのように福元と会話する。会話の中には『ゴイステ』という言葉と、『レインバーグ』って言葉が聞こえてくる。ゴイステは分かるけどレインバーグって何だ?
「よし、マンションが分かったから行こうか」
どうやら店長にマンションの場所も聞いたらしい。とりあえずライブハウスを後にして俺たちはそのマンションへと向かった。出ていく時に店長が『がんばれよ』と言ってた。
「でっけー」
俺たちがそう豪語する。
当たり前だ。まるで総合病院のようなでかさのマンション。見るからに家賃が高そうだ。
マンションの入り口はもちろん自動ドア。田舎のコンビニだって手動なのに…。
そこには指紋センサー付きのポストが部屋別にあって、ピカピカに輝いている。その近くには0〜9の数字ボタンがある機械がある。
これは、わざわざ部屋の前まで行かなくても部屋番号を押せばここで話す事が出来たり留守を確認出来るという画期的な機械だ。
「えっと…部屋番号は…」
ピッピッとボタンを押す。その指を見ると傷だらけだった。この傷は、一体何なんだろう。
『ただいま、留守中です』
留守を伝える機械。留守なんで俺たちはライブがあったら見ようなんて話になってマンションを後にした。
マンションを出た時、歩く美女センサー、屋良の目が点になった。何故ならば目の前にはスーパーで買い物してきたのかスーパーの袋を持った美女が歩いてこっちへ向かっているのだ。
「ヤバいよ。美女キラー屋良がやる気を見せてるよ」
大沢が言うように屋良が自分のメルアドをブツブツ言っている。早速メルアドを手に入れようとしてるのか!!こいつ。
すると、美女が俺らの方を見てきた。俺らは察した。俺らの誰かに一目惚れをしている。全員がいや、たぶん俺だろうと思っていた時、その美女が口を開いた。
「福元君、ペリーだよね」
福元のあだ名、ペリーを知っている。それじゃ、もしかしたらこいつが…。
「おおめぐ?」
福元が聞くと、おおめぐらしき人が笑顔になった。
「そうだよ。久し振りだね♪」
え、え、えーーーー!!
超美人じゃん。やるなペリー。
昼の公園のベンチで福元とおおめぐさんは中学時代の思い出話で盛り上がっている。
そのころの俺らはというと、公園のベンチの茂みの中で二人の思い出話をちゃっかり聞いています。俺の隣には泣いている振りをしながら俺に何か疑問をぶつけています。ウザいです。その疑問とは…
「稲垣ぃ。なぜ、なぜおおめぐさんは福元の事をーーーー……」
知らんわ。それならおおめぐさんに聞けよ。そんなお茶目な屋良君と付き合う気がある人いないのかな。
「んでよ、そいつが外人の警官の前でハローとか言ってるんよ」
「キャハハ。それ知ってるよ。その後、ヘイ、カモンとか言われて泣きながら謝ったんでしょ?」
どうやらあるクラスメイトが修学旅行の班別行動で、班の一人が外人の警官を見つけてハローと言ったそうだ。
「楽しかったな。修学旅行」
福元が空を見上げながら言った。
「うん、あれが一番の思い出だったよね」
二人がしんみりムードになっている時、俺らはすげー慌てていた。何故ならば、修学旅行でおおめぐさんが福元に告白してその返事を言わずじまいだって事を忘れていたのだ。
さあどうする。スカイ・オブ・ソング!!ボーカルの生まれて初めての男女交際、成功となるか!?
…ここで話が終わると思った人、はいベタ!!
おおめぐさんはこの時気付いたのです。自分が中学時代で一番勇気を出した事件を。
「ペリー、覚えてる?班別行動で二人になった時の事」
ついに来た。さあ、福元はどう答えるのか!!
…ピョンピョン跳ねました。ペリー。ピョンピョンね福元が何かを思い出す時に跳ねます。何やってるんだよ。俺らも引いたんだからおおめぐさんも引くだろ…。作戦失敗。
「懐かしいぃ!!ペリー中学時代もやってたよねぇ。テストの時に跳ねたのはマジ笑えたし」
意外な展開となった。俺らが引く行動で思い出を引き出しました。やろうかな。ピョンピョン。
「思い出したぁ!!!!」
「うるせえよ!!っていつもつっこんでたなぁ」
おおめぐさんすげー明るい人なんだな…。すげー福元と似合うじゃん。
「あの返事ね、明日ライブするから、うん、その時に言うよ。うん」
えええええ!!ライブ!?聞いてねぇよ!?もしかしたら、ライブするためにライブハウスに寄ったのか。わざわざ。
「バンド組んでるのペリー?」
「ああ、スカイ・オブ・ソングってバンドでね」
「空の歌、か。ペリーらしいバンドだね」
おおめぐさんは空を見上げた。
ならば、福元の恋愛のため、俺らの知名度アップのため、ペリーらしいバンドを見せてやろうじゃないか!!空の歌を歌おうじゃないか!!てかまだ一曲しか出来てないし、てかラブソングだし。
次回、ソング・オブ・スカイ初めてのライブです。その目的は恋愛成就。福元の恋愛のためならどんな曲も弾くぜ。んで初ライブの客は…。一人かよ!!